Sustainable Japan | 世界のサステナビリティ・ESG投資・SDGs

【国際】「中国での金と銅のリサイクルコストは資源採掘価格を下回る」米化学会論文発表

 アメリカ化学会の学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された論文「Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining」が注目を集めている。今年3月に発表されたこの論文は、北京市の清華大学環境研究科の曽現来(Xianlai Zeng)准教授を中心とした研究者らが執筆。金と銅のリサイクルコストは、原料市場価格を下回ると発表した。

 同論文は、家庭や企業等からの電子廃棄物(いわゆる都市鉱山)をリサイクルした金属類の抽出と、従来の天然資源の鉱区からの採掘(バージン材料)とのコストを比較。比較の対象は中国で電子廃棄物の大半を占めるブラウン管テレビとプリント基板(PCB)に使われている銅と金。テレビに関しては、中国のリサイクル業者8社からデータを入手した。銅と金は、電子機器に使われている割合が多く、回収する社会的意義が高い。

 一般的にリサイクル業者は、廃棄物の回収、運搬、保管、解体、処理、リサイクル設備および建物の設備費等の経費がかかるが、中国では2011年にリサイクル法「WEEE(電気電子製品廃棄物回収処理管理条例)」が発効し、正規のリサイクル業者は政府から補助金が支給されるようになった。例えば、調査対象のあるリサイクル業者によると、2015年に平均13.83kg のブラウン管テレビ1台から原料回収にかかったコストは16.95米ドル(約1,818円)。補助金の13米ドル(約1,394円)を差し引くと、同社の負担額は3.95米ドル(約424円)となる。

 中国では補助金を考慮したリサイクルコストは年々減少しており、銅のリサイクルコストは、2010年の6.70米ドル/kgから2015年には5.68米ドル/kgに減少。金は2010年に8,438米ドル/kgから2015年には6,829米ドル/kgに下がった。一方、バージン材料の2015年の市場価格は、銅が6.00米ドル/kg、金が38,000米ドル/1kgで、銅はリサイクルコストの方が5%安く、金は82%も安かった。バージン材料の市場価格は、市況により変化するが、2010年から2015年の間、バージン材料がリサイクルコストを下回ることは一度もなかった。

 さらに同論文は、ブラウン管テレビに使われている金属に関してはリサイクルによる回収が約13分の1、プリント基板に関しても約7分の1の費用で済むという結論に至っている。

 金属資源が含まれる電気・電子機器廃棄物は、最も急速に増加している廃棄物の1つであり、将来的には世界規模の脅威となることが予測される。現状では、テレビ、パソコン、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等、年間4,000万t以上が廃棄されており、2020年には5,000万tにまで膨れ上がると見られている。廃棄の際の細断処理や焼却、特に私的な場での焼却は、ダイオキシンや水銀等の有害物質を放出する可能性が大きい。

 その一方で、これらの電気・電子機器廃棄物を有効活用せず、従来の方法で原料の天然資源の採掘を続けることは、環境面でも経済面でも負荷が大きく、全世界が目指す線形経済(Linear Economy)からサーキュラーエコノミーへの転換に逆行することに他ならない。今回、曽准教授らが発表した論文は、各国における都市鉱山の研究を進める上で大いに参考になりそうだ。

【参照ページ】Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining
【参照ページ】Supporting Information for Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining

 アメリカ化学会の学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された論文「Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining」が注目を集めている。今年3月に発表されたこの論文は、北京市の清華大学環境研究科の曽現来(Xianlai Zeng)准教授を中心とした研究者らが執筆。金と銅のリサイクルコストは、原料市場価格を下回ると発表した。

 同論文は、家庭や企業等からの電子廃棄物(いわゆる都市鉱山)をリサイクルした金属類の抽出と、従来の天然資源の鉱区からの採掘(バージン材料)とのコストを比較。比較の対象は中国で電子廃棄物の大半を占めるブラウン管テレビとプリント基板(PCB)に使われている銅と金。テレビに関しては、中国のリサイクル業者8社からデータを入手した。銅と金は、電子機器に使われている割合が多く、回収する社会的意義が高い。

 一般的にリサイクル業者は、廃棄物の回収、運搬、保管、解体、処理、リサイクル設備および建物の設備費等の経費がかかるが、中国では2011年にリサイクル法「WEEE(電気電子製品廃棄物回収処理管理条例)」が発効し、正規のリサイクル業者は政府から補助金が支給されるようになった。例えば、調査対象のあるリサイクル業者によると、2015年に平均13.83kg のブラウン管テレビ1台から原料回収にかかったコストは16.95米ドル(約1,818円)。補助金の13米ドル(約1,394円)を差し引くと、同社の負担額は3.95米ドル(約424円)となる。

 中国では補助金を考慮したリサイクルコストは年々減少しており、銅のリサイクルコストは、2010年の6.70米ドル/kgから2015年には5.68米ドル/kgに減少。金は2010年に8,438米ドル/kgから2015年には6,829米ドル/kgに下がった。一方、バージン材料の2015年の市場価格は、銅が6.00米ドル/kg、金が38,000米ドル/1kgで、銅はリサイクルコストの方が5%安く、金は82%も安かった。バージン材料の市場価格は、市況により変化するが、2010年から2015年の間、バージン材料がリサイクルコストを下回ることは一度もなかった。

 さらに同論文は、ブラウン管テレビに使われている金属に関してはリサイクルによる回収が約13分の1、プリント基板に関しても約7分の1の費用で済むという結論に至っている。

 金属資源が含まれる電気・電子機器廃棄物は、最も急速に増加している廃棄物の1つであり、将来的には世界規模の脅威となることが予測される。現状では、テレビ、パソコン、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等、年間4,000万t以上が廃棄されており、2020年には5,000万tにまで膨れ上がると見られている。廃棄の際の細断処理や焼却、特に私的な場での焼却は、ダイオキシンや水銀等の有害物質を放出する可能性が大きい。

 その一方で、これらの電気・電子機器廃棄物を有効活用せず、従来の方法で原料の天然資源の採掘を続けることは、環境面でも経済面でも負荷が大きく、全世界が目指す線形経済(Linear Economy)からサーキュラーエコノミーへの転換に逆行することに他ならない。今回、曽准教授らが発表した論文は、各国における都市鉱山の研究を進める上で大いに参考になりそうだ。

【参照ページ】Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining
【参照ページ】Supporting Information for Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining

 アメリカ化学会の学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された論文「Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining」が注目を集めている。今年3月に発表されたこの論文は、北京市の清華大学環境研究科の曽現来(Xianlai Zeng)准教授を中心とした研究者らが執筆。金と銅のリサイクルコストは、原料市場価格を下回ると発表した。

 同論文は、家庭や企業等からの電子廃棄物(いわゆる都市鉱山)をリサイクルした金属類の抽出と、従来の天然資源の鉱区からの採掘(バージン材料)とのコストを比較。比較の対象は中国で電子廃棄物の大半を占めるブラウン管テレビとプリント基板(PCB)に使われている銅と金。テレビに関しては、中国のリサイクル業者8社からデータを入手した。銅と金は、電子機器に使われている割合が多く、回収する社会的意義が高い。

 一般的にリサイクル業者は、廃棄物の回収、運搬、保管、解体、処理、リサイクル設備および建物の設備費等の経費がかかるが、中国では2011年にリサイクル法「WEEE(電気電子製品廃棄物回収処理管理条例)」が発効し、正規のリサイクル業者は政府から補助金が支給されるようになった。例えば、調査対象のあるリサイクル業者によると、2015年に平均13.83kg のブラウン管テレビ1台から原料回収にかかったコストは16.95米ドル(約1,818円)。補助金の13米ドル(約1,394円)を差し引くと、同社の負担額は3.95米ドル(約424円)となる。

 中国では補助金を考慮したリサイクルコストは年々減少しており、銅のリサイクルコストは、2010年の6.70米ドル/kgから2015年には5.68米ドル/kgに減少。金は2010年に8,438米ドル/kgから2015年には6,829米ドル/kgに下がった。一方、バージン材料の2015年の市場価格は、銅が6.00米ドル/kg、金が38,000米ドル/1kgで、銅はリサイクルコストの方が5%安く、金は82%も安かった。バージン材料の市場価格は、市況により変化するが、2010年から2015年の間、バージン材料がリサイクルコストを下回ることは一度もなかった。

 さらに同論文は、ブラウン管テレビに使われている金属に関してはリサイクルによる回収が約13分の1、プリント基板に関しても約7分の1の費用で済むという結論に至っている。

 金属資源が含まれる電気・電子機器廃棄物は、最も急速に増加している廃棄物の1つであり、将来的には世界規模の脅威となることが予測される。現状では、テレビ、パソコン、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等、年間4,000万t以上が廃棄されており、2020年には5,000万tにまで膨れ上がると見られている。廃棄の際の細断処理や焼却、特に私的な場での焼却は、ダイオキシンや水銀等の有害物質を放出する可能性が大きい。

 その一方で、これらの電気・電子機器廃棄物を有効活用せず、従来の方法で原料の天然資源の採掘を続けることは、環境面でも経済面でも負荷が大きく、全世界が目指す線形経済(Linear Economy)からサーキュラーエコノミーへの転換に逆行することに他ならない。今回、曽准教授らが発表した論文は、各国における都市鉱山の研究を進める上で大いに参考になりそうだ。

【参照ページ】Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining
【参照ページ】Supporting Information for Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining

ここから先は有料登録会員限定のコンテンツとなります。有料登録会員へのアップグレードを行って下さい。

 アメリカ化学会の学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された論文「Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining」が注目を集めている。今年3月に発表されたこの論文は、北京市の清華大学環境研究科の曽現来(Xianlai Zeng)准教授を中心とした研究者らが執筆。金と銅のリサイクルコストは、原料市場価格を下回ると発表した。

 同論文は、家庭や企業等からの電子廃棄物(いわゆる都市鉱山)をリサイクルした金属類の抽出と、従来の天然資源の鉱区からの採掘(バージン材料)とのコストを比較。比較の対象は中国で電子廃棄物の大半を占めるブラウン管テレビとプリント基板(PCB)に使われている銅と金。テレビに関しては、中国のリサイクル業者8社からデータを入手した。銅と金は、電子機器に使われている割合が多く、回収する社会的意義が高い。

 一般的にリサイクル業者は、廃棄物の回収、運搬、保管、解体、処理、リサイクル設備および建物の設備費等の経費がかかるが、中国では2011年にリサイクル法「WEEE(電気電子製品廃棄物回収処理管理条例)」が発効し、正規のリサイクル業者は政府から補助金が支給されるようになった。例えば、調査対象のあるリサイクル業者によると、2015年に平均13.83kg のブラウン管テレビ1台から原料回収にかかったコストは16.95米ドル(約1,818円)。補助金の13米ドル(約1,394円)を差し引くと、同社の負担額は3.95米ドル(約424円)となる。

 中国では補助金を考慮したリサイクルコストは年々減少しており、銅のリサイクルコストは、2010年の6.70米ドル/kgから2015年には5.68米ドル/kgに減少。金は2010年に8,438米ドル/kgから2015年には6,829米ドル/kgに下がった。一方、バージン材料の2015年の市場価格は、銅が6.00米ドル/kg、金が38,000米ドル/1kgで、銅はリサイクルコストの方が5%安く、金は82%も安かった。バージン材料の市場価格は、市況により変化するが、2010年から2015年の間、バージン材料がリサイクルコストを下回ることは一度もなかった。

 さらに同論文は、ブラウン管テレビに使われている金属に関してはリサイクルによる回収が約13分の1、プリント基板に関しても約7分の1の費用で済むという結論に至っている。

 金属資源が含まれる電気・電子機器廃棄物は、最も急速に増加している廃棄物の1つであり、将来的には世界規模の脅威となることが予測される。現状では、テレビ、パソコン、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等、年間4,000万t以上が廃棄されており、2020年には5,000万tにまで膨れ上がると見られている。廃棄の際の細断処理や焼却、特に私的な場での焼却は、ダイオキシンや水銀等の有害物質を放出する可能性が大きい。

 その一方で、これらの電気・電子機器廃棄物を有効活用せず、従来の方法で原料の天然資源の採掘を続けることは、環境面でも経済面でも負荷が大きく、全世界が目指す線形経済(Linear Economy)からサーキュラーエコノミーへの転換に逆行することに他ならない。今回、曽准教授らが発表した論文は、各国における都市鉱山の研究を進める上で大いに参考になりそうだ。

【参照ページ】Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining
【参照ページ】Supporting Information for Urban Mining of E-Waste is Becoming More Cost-Effective Than Virgin Mining