【アメリカ】ビッグデータ分析によりリアルタイムでESG情報を提供するツールが登場

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 企業のサステナビリティ・ESGデータに関する需要が高まりを見せる中、米国サンフランシスコに本拠を置くTruValue Labs社は先月、Insight360という画期的なオンライン分析プラットフォームを発表した。同ツールにより、投資家は企業のサステナビリティ、ESGに関するビッグデータをリアルタイムで入手可能になる。  Insight360は、自然言語処理(NLP)および機械学習を使用したコグニティブ・コンピューティング(コンピュータ自ら学習し、考え、瞬時に膨大な情報源から大量のデータを統合し分析するシステム)プラットフォームだ。ビッグデータとトレンドを機械的に分析することで、Insight360はESGパフォーマンスを定量化し、企業にとって有益なパターンを発見することを可能にしている。  Insight360は従来のサステナビリティデータプロバイダーとは異なり、効率的に膨大な量のリアルタイムデータを処理し、関連性のあるコンテンツだけを抜き出すことが可能だ。リアルタイムでサステナビリティトレンドを分析することにより、投資家はより賢明かつ迅速な意思決定を下すことができるようになる。    Sinclair Capital のJonh Lukomnik氏は「TrueValueのリアルタイムデータ分析は、全く新しい視点からの企業評価を可能にし、トレンドを即時に可視化することでリスクと機会の両方を同時に見極めることができる」と語る。  また、TruValue LabsのCEOを務めるHendrik Bartel氏は「Insight360は、かつてはアクセスできなかった情報へのアクセスを可能にした。これらのデータは非常に貴重であり、ESG統合の真の価値を理解するアセットマネジャーにとって非常に有利な情報になるだろう」と語る。今後、TruValue社はInsight360に興味を持ち、賛同してくれる投資家らに独占的にアクセス権を提供する予定とのことだ。  なお、TruValue Labsは6月3日、米国のサステナビリティ会計基準、SASBとデータ提供パートナー契約を締結したと発表している。SASBのリサーチャーらはInsight360を活用し、80以上の業界に渡る企業に影響を与えるサステナビリティ要因の特定に活用するという。  ESGデータの分析、提供にビッグデータや機械学習といった最新のテクノロジーが活用されることで、投資家の企業とのコミュニケーションの形は年に一度の報告書による情報開示といった従来の方法から大きく変わっていきそうだ。 【参照リリース】Access to Real-Time ESG Data by Insight360 Now Available to Investment Professionals 【参考サイト】Insight360 【企業サイト】TruValue

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【アメリカ】SASB、2014年のアニュアルレポートを発表

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 米国のサステナビリティ会計基準を提供しているSustainability Accounting Standards Board(以下、SASB)が5月14日、2014年のアニュアルレポート"Today's Sustainability Challenges Mean Business: Are our markets ready?"を公表した。  同報告書によると、SASBの基準を採用する米国企業の数は順調に増加しており、2014年末までに2,100社以上の企業が参加、その総計資産は21.7兆米ドル、時価総額は9.8兆米ドル以上に上っている。2014年末時点でSASBは6セクター、45業界のサステナビリティ会計基準を発行しており、2016年までに10セクター80業界へ向けた基準を完成させる予定だという。  また、レポートではClimate Change、Product Alignment & Safety、Access & Affordability of Services、Financing & Responsible Lending、Resource Intensity & Scarcityの5分野に渡り、特にそれぞれの課題と関わりが深い業界において鍵となる情報開示項目を挙げ、詳しく説明している。さらに、広範な業界に影響をもたらす気候変動については、各業界が受ける影響の違いを示した一覧表なども提供しており、SASBが特定を進めている業界ごとのマテリアリティが俯瞰できるようになっている。  SASBのCEOを務めるJean Rogers氏は、アニュアルレポートの中で「持続可能な未来のための会計。それが我々のなすことだ。我々のサステナビリティ会計基準は、今日そして未来の我々に影響を与えうる様々な課題を反映するものだ。サステナビリティ会計基準は、投資家や社会にとって重要なリスクと機会の双方を伴う課題に対処するものだ。これはどのように環境・人間・社会資本を測定するべきかを示すものであり、今日の変化が激しい世界において最も成功に近い位置にいる企業を選択する手助けとなるものだ」と語っている。  SASBの提供するサステナビリティ会計基準の採用により、上場企業は自社のサステナビリティ課題をSASBの特定する業界別のマテリアリティに基づき認識、報告することができ、投資家側も同じ基準に沿い、企業の成長性やリスクを判断できるようになる。  SASBは今年の1月から元FASB(Financial Accounting Standards Board:米国財務会計基準審議会)会長のRobert Herz氏を役員に迎えるなど、目標の一つでもあるSEC(米国証券取引委員会)への基準導入に向けて着実に歩みを進めている。レポートは下記からダウンロード可能。(※参考記事:【レポーティング】SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)を徹底解説) 【レポートダウンロード】Today's Sustainability Challenges Mean Business: Are our markets ready? 【団体サイト】SASB

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【国際】Corporate Reporting Dialogue、企業報告の主要8フレームワークの俯瞰マップを公開

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 企業報告に関する代表的なイニシアチブのCDP、GRI、CDSB、FASB、IASB、ISO、SASB、IIRCの8団体による共同組織、Corporate Reporting Dialogueは5月6日、各団体のフレームワークや基準、要求事項などを一覧で比較、俯瞰できるランドスケープマップを公開した。  Corporate Reporting Dialogueは、企業報告に関する複数の団体のフレームワークや基準の一貫性や比較性を高めてほしいという市場からの要望に応える形で2014年に結成された組織だ。現状は複数のフレームワークが乱立しており、報告企業側はどのガイドラインやフレームワークを参照すればよいかについて困惑するケースもよくあった。今回公表されたオンラインマップの目的は、これらの混乱を防ぎ、各ガイドラインやフレームワークの目的や対象範囲、関係性を明示したえで報告者の正しい理解を促進することだ。  また、同マップではそれぞれの企業報告イニシアチブがどのよう統合報告の<IR>で示されている6つの資本および各項目に結びついているかについても示されている。フレームワーク同士の関係性や適用範囲を確認する上で非常に役立つコンテンツとなっているので、企業報告に携わる方はぜひ確認して頂きたい。マップおよびPDFバージョンは下記から確認可能。(関連記事:【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関) 【参考サイト】Landscape Map 【PDFダウンロード】NAVIGATING THE CORPORATE REPORTING LANDSCAPE 【団体サイト】Corporate Reporting Dialogue

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private 【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関

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(図)サステナビリティ報告ガイドライン カオスマップ。Sustainable Japan作成。 複雑化するサステナビリティ(CSR)ガイドライン  サステナビリティ報告やCSR報告を担当する方々からよく受ける質問があります。「一体、どのガイドラインを参照すれば良いのか」。実はこの種類の問いは非常に回答に窮します。もちろん、有名なガイドラインはあります。例えばGRI、サステナビリティ報告についての包括的なガイドラインと言っても過言ではなく、先進国・新興国問わず世界中で参照されています。しかしながら、当サイトSustainable Japanでは日々GRI以外の多の多くのガイドラインについてもご紹介をしています。ISOが定めたISO26001、温室効果ガス算出方法で有名なガイドラインのCDP、紛争鉱物報告ガイドラインを制定しているcfsi、財務情報と非財務情報の統合を試みる<IR>などなど。これらのガイドラインを全体として公式に統括する機関は今のところ存在していません。それぞれの機関はお互いに連携をしつつも、独立した動きを見せ発展してきています。こうした体系的に整理されずにルールやガイドラインが増殖していく動きは、中央政府の省庁が一元的にルールを管理する傾向の強い日本にはあまり馴染みのない状態です。整理されないルール増殖というのは悲観すべきなのかもしれませんが、それだけ今サステナビリティ報告や非財務情報報告の領域は急速に発展してきていることの証左でもあります。産業革命やIT革命の際に数多の技術が一度に勃興してきたように、サステナビリティや企業情報開示の分野も今まさに革命期にあると言うことができるでしょう。正直、この領域の専門家でない限り、全ての動きに日々目を向けていくのは非現実的です。ですので、今回は、いまこうしてますます複雑化していくサステナビリティ報告ガイドラインの状況を俯瞰的にまとめてお伝えしていきます。 GRI 〜サステナビリティ報告ガイドラインの中心的存在〜  GRIとは (more…)

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2015/04/28 体系的に学ぶ

【アメリカ】 SASB、資源加工セクター向けの暫定サステナビリティ会計基準を公表

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 米国のサステナビリティ会計基準を提供しているSustainability Accounting Standards Board(以下SASB)は3月25日、新たに資源加工(Resource Transformation)セクターに属する5つの業界に向けた暫定基準を公表した。SASBが定めるこれらの基準は、企業がフォーム10-K(年次報告書)の中でレギュレーションS-Kを遵守した形でマテリアルな情報を開示する手助けをするものだ。今回SASBが発表した資源加工セクター向けの暫定的な基準は下記5つの業界をカバーしている。 Aerospace & Defense:航空・防衛 Chemicals:化学 Containers & Packaging:容器・包装 Electrical/Electronic Equipment:電気・電子機器 Industrial Machinery & Goods:産業機械・機器  SASBの定めた開示項目の中には有害廃棄物管理や製品の安全性、消費段階における化石燃料および排出、資源調達などが含まれる。基準は産業ごとに平均7項目となっており、83%の測定方法は量的なものとなっている。  SASBの創設者兼CEOのJean Rogers氏は「資源加工セクターは我々が乗る飛行機から我々が輸送する包装物にいたるまで、膨大な規模において製造における責任を負っている。人口増加はこれらの製品に対する需要拡大につながった一方で、より多くのCO2排出、水資源不足、自然資源の激減を引き起こしている。競争力を維持するために、この産業に属する企業はこれらの課題に対応しなければならない」と語った。  資源加工産業セクターのワーキンググループには225の時価総額1.3兆米ドルに相当する上場企業や運用資産4.7兆米ドルに相当する投資会社らが参加している。参加組織の一覧はこちらから確認可能。  SASBの特徴は、上記の基準のように業界ごとのマテリアリティを示してくれている点だ。マテリアリティの特定に悩む企業にとってはとても参考になる。資源加工セクターに属する企業はぜひ今回公表された暫定基準を確認して頂きたい。(SASBについて詳しく知りたい方は「【レポーティング】SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)を徹底解説 」もどうぞ。) 【参考ページ】Resource Transformation Standards Download 【団体サイト】SASB

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【イギリス】サステナビリティ報告を価値創造に結び付けるための鍵は透明性

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「多くの企業が、サステナビリティ報告書の作成に費やしている時間や資源に見合った価値を報告書から生み出せていない。」そんな最近の傾向に警鐘を鳴らしたのは、ロンドンに本拠を置くサステナビリティ戦略コンサルティング会社のSustainAbilityだ。 SustainAbilityは昨年12月に公表した”See Change How Transparency Drives Performance”というレポートの中で、現状多くの企業がサステナビリティ報告から大きなインパクトを生み出せていない点を指摘しており、現状を改善するためのポイントとして”Transparency(透明性)”の重要性を説明している。 同レポートは、SustainAbilityが約500名以上のサステナビリティ専門家へのサーベイおよび50以上のインタビューを通じてまとめたものだ。サステナビリティ報告におけるTransparency(透明性)の重要性を説明するとともに、透明性を実現し、報告から価値を生み出すためのポイントとしてMateriality(マテリアリティ)、Externalities(外部性)、Integration(統合)の3つを挙げており、それぞれのポイントにおける現状の課題および改善に向けた道筋を示してくれている。 例えば、マテリアリティの特定については、現状だとGRIやIIRC、SASBなど様々なガイドラインがそれぞれ独自の視点から異なる定義を行っているため混乱が発生している点や、マテリアリティ特定プロセスが戦略立案のためではなく報告書に掲載するコンテンツ決定のためになっている点、財務の観点から見たマテリアリティとの一貫性に欠けている点、など様々な課題があるとしたうえで、それらの課題をどう乗り越えていくべきかについて具体的なステップや企業の事例と共にポイントが紹介されている。 SustainAbilityは、企業価値を向上させるサステナビリティ戦略を立案・実行し、サステナビリティ報告をその価値創造プロセスとして機能させるためには、まずは自社にとってのマテリアリティを正しく特定し(Materiality)、次にマテリアルな課題がもたらす外部性およびその外部性が生むインパクトを測定し(Externalities)、その上で戦略的に優先順位づけされた課題を自社の企業戦略に統合する(Integration)必要があり、その一連のフローを通じて企業の透明性(Transparency)が担保されてはじめて持続可能な価値創造ができるとしている。 現在はデジタル化の影響やステークホルダーからの要望もあり報告に向けて収集するべき情報の量も莫大に増えており、かつソーシャルメディアなどステークホルダーとコミュニケーションをとるための新たな手段も次々に生まれているなど、効果的なサステナビリティ報告を実践する難易度はより高まってきている。そのようなタイミングだからこそ、改めてサステナビリティ報告の本来の意義に立ち返って現状を見直してみる価値は大きい。 自社のサステナビリティ報告書がもたらしているインパクトに疑問を感じている方や、より本質的な価値創造の観点から現状の報告活動を見直したいという方にとっては、同社のアドバイスが参考になるはずだ。興味がある方はぜひ下記からダウンロードして一読して頂きたい。 【レポートダウンロード】See Change How Transparency Drives Performance 【企業サイト】SustainAbility

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【国際】CSR情報プラットフォームのCSRHub、新機能をリリース

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本格的なデジタル時代の到来によりサステナビリティ関連のデータや情報量が爆発的に増加している昨今においては、信頼できるデータをどのように効率的に入手、活用しながら自社のサステナビリティ戦略を構築していけるかがより重要になってきている。そうしたデジタル時代ならではのニーズを満たしてくれる心強いツールが新たに発表された。 世界最大のオンラインCSR情報データベースを提供しているCSRHubは12月15日、新たにExcelベースで活用できる分析ツール、CSRHub Dashboardを機能に加えたと発表した。同機能により、CSRHubのユーザーは同社の保有するCSR情報データベースから数百万件のデータを抽出し、カスタムテンプレートや自社の社内システムに取り込むことが可能となる。ユーザーは企業名と日付を入力するだけで残りの作業はCSR Hubが全て行ってくれる。 また、CSRHubは2010年のサービス開始以降、5度目となるサイトの大幅更新を実施し、2008年の12月から現在までの過去7年間分のデータを遡って閲覧することができるようになるという。 CSRHubによれば、今回のアップデートにより新たに12 のサブカテゴリレベルで対象企業の評価・ランキングを閲覧可能になったほか、各評価項目に貢献している情報源への導線追加、インタラクティブなグラフを用いて企業の評価を競合企業や業種平均、国平均と比較できるようになったという。 CSRHub Dashboardを活用することで、ユーザーは同社が365の情報源から収集している104ヶ国、135業種、10,000以上の企業のCSR情報データを自由に活用し、競合企業や地域、業界の動向を分析することができる。また、ユーザーは90以上ある機能を用いて独自のモデルやトラックを構築することも可能で、あらゆる角度から分析対象のサステナビリティ評価を把握することが可能だ。 同社はB Corporation認証を取得しているほか、GRI(Global Reporting Initiative)のOS(Organizational Stakeholder)、CDP(Carbon Disclosure Project)のシルバー・パートナーおよびSASB(Sustainability Accounting Standards Board)のAdvisory Council Memberでもあり、世界のサステナビリティ業界をリードする情報プロバイダーとしてグローバル企業や調査機関などに信頼性の高いCSRデータを提供している。 CSRHubのWebサイトからデータの一部の閲覧やデモのリクエストも可能なので、同社のツールに興味がある方は、ぜひ下記から確認して頂きたい。 【企業サイト】CSRHub

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【アメリカ】SASB、FASB元会長のRobert Herz氏を役員に招聘

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米国上場企業向けサステナビリティ会計の基準作りを進めているSASB(Sustainability Accounting Standards Board:米国サステナビリティ会計基準審査会)は10月21日、FASB(Financial Accounting Standards Board:米国財務会計基準審議会)元会長のRobert Herz氏を新たにSASBの役員として迎えることを発表した。 Herz氏は2015年1月1日から3年間の任期を務めることになり、SASBメンバーと密に恊働しながら、SASBの基準完成に向けたプロセスにおいて重要な意思決定役を担う予定だ。 同氏の就任発表にあたり、SASBの会長を務めるMichael R. Bloomberg氏は「今日の投資家は、従来の財務報告が提供できる情報よりもより完全な情報を求めている。財務会計の世界はサステナビリティ会計が企業の成功、投資家の意思決定の双方において欠かせないものであることを認識している。会計・財務報告分野の第一人者であるRobert Herz氏の就任はSASBの役員会にとって大きな助けとなり、財務の分野にも利益をもたらすサステナビリティ基準の完成に向けて価値のある専門性を提供してくれることだろう」と同氏の就任を歓迎した。 Herz氏は2002年から2010年までFASBの会長を務めた経歴を持つ。その以前にはPwCグローバルおよび米国の双方のボードメンバーを務めていたほか、IASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)の初期メンバーの1人でもある。 さらに、同氏は米国公認会計士協会のSEC規制委員会会長、および国際会計士連盟の多国籍監査委員会会長を務めた経験もあり、その他にも米国の財務会計における主要な組織の要職を数多く歴任してきたエキスパートだ。また、かねてから企業価値における非財務要素の重要性を認識し、書籍などを通じて訴えかけてきた人物としても知られている。 Herz氏は「SASB基準により、投資家は業界によって様々に異なるマテリアルなサステナビリティ情報のインパクトをよりよく理解し、比較し、ベンチマークすることができる。SASBの役員会への参加することで、企業報告の進化に向けてさらに継続して貢献することができる」と就任の喜びを語った。 来年から米国の財務会計分野で大きな功績を残してきたHerz氏を役員として迎えることで、SASBが自身の最終目標である非財務情報開示の法的義務化に向けてまた一歩大きく前進することは間違いない。 【団体サイト】SASB 【参考サイト】FASB

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【戦略】欧米CSRの最前線 〜Sustainable Brands 2014参加レポート〜

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世界の先進企業のCSR・サステナビリティマネジメント事例が共有されるカンファンレンス、Sustainable Brands。毎年、世界約10都市で開催されており、私も今年10月に開催されたアメリカ・ボストン、11月に開催されたイギリス・ロンドンの会に参加してきました。カンファレンスは通常、2日間にわたる各企業のプレゼンテーションと、別日程1日で催される少人数のワークショップで構成。30社ほどの企業がプレゼンテーションを行い、会場にはコーポレート・サステナビリティ分野の関係者300人ほどが集います。欧米では今、何がホットな話題となっているのか。ボストン、ロンドンの2回分のイベントをダイジェストでご紹介します。 Sustainable Brands New Metrics '14 in Boston Sustainable Brands New Metricsは、サステナビリティ分野の中でも「測定」「データ管理」「定量マネジメント」「レポーティング」というMetrics(尺度・測定)にスポットを当てた特別イベント。今年からマサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン経営大学院のサポートを得てパワーアップしました。 環境・社会分野のデータ収集 欧米先進企業の特徴は、環境・社会に対するアウトプットを本業の成果指標の中に組み込んできているということです。データ収集の点でも様々な進化を遂げてきています。従来、データ計測が進んできた環境分野に対し、遅れが指摘されてきたのがソーシャル分野。ここにきて、NPOやIT企業が中心となりソーシャル分野のデータ測定インフラが整備されつつあります。 フェアトレード認証の民間団体Fair Trade USAは、フェアトレードの実施状況に関する情報を、一次産品の製造現場に従事する生産者自身から収集する体制を構築。フェアトレードの履行を確実にするとともに、生産者の生活の改善度合いを測定する手法を実現しました。オーガニック茶ブランドで全米一の売上を誇るHonest Tea社は、Fair Trade USAからの認証を獲得することで、自社製品のブランドを確実にするとともに、社会に対する正のインパクトをKPIとして測る運用を開始しています。 米国のITスタートアップであるSourceMap社は、製品のサプライチェーンを可視化して把握できるウェブツールをリリース、紛争鉱物などサプライチェーン上の課題に対する状況把握が進むことが期待されています。 オランダと米国に本拠地を置くサステナビリティ・コンサルティング企業大手のPRè Sustainability社は、商品開発の分野で社会問題へのインパクトを測定していくためのガイドライン、"Handbook for Product Social Impact Assessment"を最近リリース。すでに欧米を代表する企業であるAkzoNobel, BASF, BMW, L'Oréal, Marks&Spencer, Philips等が同社のコンサルティングのもとでガイドラインを本業の事業管理に取り入れています。 一方、環境分野のデータ測定も高度化しています。IT世界大手のHP社は、生物多様性の分野で存在感を発揮する国際NGOのConservation Internationalと提携し、ビッグデータマネジメントを環境測定分野に応用するプロジェクトをスタート。プロジェクトでは、世界17ヶ所の熱帯雨林で275種の生物を常時モニタリングするデータ測定インフラを構築し、190万枚の画像や400万種類の環境データを含む合計3テラバイトの常時データ測定を実現。実社会の複雑なデータを統合して分析・予測できるツールとしては世界に類をみない規模と精度だと言います。このプロジェクトはHPが掲げる環境への貢献だけでなく、HP社自身のR&Dとしても価値を発揮しているとのことです。 データの報告 データ報告の分野での注目は、やはり統合報告<IR>、そして米国で浸透しつつあるSASBの動きです。<IR>に関する企業報告では、<IR>ガイドライン作成にも加わったNovo NordiskやSAPがプレゼンテーションを担当し、同社においてはすでに<IR>がCXOレベルの経営サイクルの中心に据えられており、これなしでは経営管理の議論が成立し得ない次元まで来ているという共有がありました。一方、多くの企業が抱える課題、<IR>が曖昧なガイドラインでしかなく何を作ればいいのかわからない、については、「曖昧なものになってしまったことには、議論に参加していた我々にも責任があり、申し訳ないと感じてる。他社への範を示すためにも、弊社内で統合報告のあり方を進化させ、産業界をリードしていく責任を果たしたい。」と反省と抱負を吐露していました。また、財務・環境・社会という膨大なデータをグループ各社から収集するという難題をどう克服しているのかについては、「環境・社会に関するデータは、従来各部署から予算データを報告してもらっていたフローをそのまま踏襲している。報告ツールは、ある部門からはエクセルだったり、ある部門からはERPだったりと、柔軟に対応している。社会・環境の社内報告のために特別なツールを導入してはいない。」という回答でした。 SASBについては、企業だけでなく、金融業界からの参加者からも注目が集まっていました(SASBについては「【レポーティング】SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)を徹底解説」で詳しく紹介しています)。 投資家からの発表セッションもありました。UBSやBloombergからのプレゼンテーションでは、投資家内でESG格付の重要性が年々増加していること、ESG考慮が企業の中長期的な成長と密接にリンクしているという内容が強調されていました。また、ESG格付が様々な団体によって設立されている中、業界全体を束ねる団体であるGISRからは、ESG格付自身の認証制度を整備しているという報告がありました。業界のネットワーク組織であるGISRには、金融業界からはUBS、ドイツ証券、モルガン・スタンレー、アセットマネジメント世界大手のBlackrock、情報大手のBloomberg、コンサルティング業界からは大手のCeresやSustainAbility、デロイト・トーマツ、事業会社からはP&G、マクドナルド、ボッシュ、民間団体からはGRI、SASB、CDP、BSR、Oxfamなどが参加しており、業界を牽引する知が結集しています。 事業へのデータ活用 収集してきたデータを、どのように商品開発に活かすのか。この問いに対する事例も紹介されていました。会場から大きな喝采を集めたのは、ホテル予約の世界大手TripAdvisor社。ホテル業界に対するグリーンホテル化(環境に配慮したホテル経営)への啓蒙という事例です。耳目を集めたポイントは「グリーンホテル化の取組は、当初は大きな事業になるとは考えもしなかった」というプロジェクト開始時点での内部事情です。社内からは「本当に宿泊客はグリーンホテルに泊まりたいと思っているのか?」と懐疑的な見方が噴出、さらに肝心のホテル業界自身からは「我々の経験上、グリーンホテル化は宿泊客増加に寄与しない。無駄な試みだ。」と大反対を受けたと言います。そんな逆風の中、TripAdvisorは、自分たちの企業理念の遂行のため、とりあえずスタートさせてみようという姿勢で、画面上のホテル検索をする際にグリーンホテル度合いで絞り込める機能を搭載します。結果として得られたのは、想定以上にこの絞り込み機能を使う人が多かったというデータ。このデータを武器に、TripAdvisorはホテルに対しグリーンホテルに関する情報開示を要求していきます。今やグリーンホテルの情報開示を渋るホテルから「御社のグリーンホテルへの取組のせいで自社の集客力が減ってきている。どうしてくれるのか?」という非難も浴びる程までに。そのような非難について同社は「だからグリーンホテル化が大事だと言っているのです。情報を開示してください。」と強気を貫いています。このグリーンホテル化を呼びかけられる力強さの背景には、TripAdvisor社の事業モデル自体が関係しているようです。TripAdvisor社のホテル予約サービスは、直接ホテルと契約しているのではなく、ExpediaやHotels.com等ホテル予約サイトのメタ価格比較サイトという形式をとっており、ホテルとは直接の利害関係はありません。ホテルはどの予約サイトを選ぼうとも、結果的にTripAdvisorの影響を受けることとなります。TripAdvisorはこのような自社の「立ち位置」を理解した上で、ホテル業界への強気の啓蒙を推進しているのです。 Sustainable Brands 2014 London CSR経営で注目を集めるイギリス。Sustainable Brandsは西欧地域でのカンファレンス実施国として以前からロンドンを会場とし、参加者はフランス、ドイツなどヨーロッパ各地から集まるイベントになっています。 サステナビリティと事業経営の一体化 ロンドン会場で目立ったのは、サステナビリティやCSRを「ついでにやるもの」ではなく、事業経営そのものに統合している企業事例の報告でした。前回のボストン会場でも報告を行った化学業界世界最大手の独BASFは、環境・社会ファクターをもとに事業や製品のポートフォリオの組換えまでを実施している事例を紹介していました。同社では、自社が定める環境・社会目標に対し製品の到達度を測り、Accelerator, Performer, Transitioner, Challengedの4段階に分類、Acceleratorの割合を増やして、Challengedの割合を減らすことに経営資源を集中させています。環境・社会を経営の中心に据えるBASFの考えの背景には、「社会・環境に寄与する商品ほど顧客に支持されていくはずだ」という根本的な思想があります。経済界の需要を先取りし、自社のブランドとポジショニングを際立たせる尺度として、社会・環境要素を大々的に取り入れているのです。 アルコール飲料世界大手のHeinekenは、同社のセンセーショナルなテレビCMを紹介していました。内容は、ダンスクラブを舞台とした実験について。いまいちなDJのもとではダンスクラブの客が盛り上がらず気晴らしにビールの購入数が増えるのに対し、優秀なDJの日には客がダンスに集中しビールの購入数が少なくて済む。この"Dance more, Drink less"というキャンペーンは、Heinekenにとってどんなメリットがあるのでしょうか。 一見、Heinekenの売上を傷つけかねないこのキャンペーン。なぜHeinekenの上級経営ボードは承認したのでしょうか。プレゼンターの説明は、「このキャンペーンにより短期的に売上は落ちるかもしれない。だが、長期的な視点に立つと、人々の幸福を最重要と考える同社の姿勢を顧客に示すことで、強い企業ブランドを構築できる」というものでした。会場からも"Heinekenはそこまでやるのか"という驚きの眼差しが集まっていました。 サーキュラーエコノミー ロンドンではサーキュラーエコノミーに対する取組事例も豊富に紹介されました。サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、日本語にすると循環型経済。一見すると非営利団体の活動のように見えますが、企業自身の取組です。自社製品の素材の有効活用を進めていこうという経営戦略のことを指し、今年に入り、マッキンゼー・アンド・カンパニー社からも"Moving toward a circular economy"という提唱があり、製造業を中心に注目されている概念です。 サーキュラーエコノミーの推進については、複数の企業から発表がありました。アルミニウム総合メーカー世界大手のNovelisは、同社製品を顧客から回収し再利用していく比率を2015年までに80%に高めることを経営目標として掲げ、顧客からの資源回収及び再利用を活用した製造方式へ転換するための設備投資へと大きく舵を切っているとのこと。また、電子部品大手のPhilipsは、製品の「修理・商品の再利用・素材の再利用」を高めていくだけでなく、さらにサーキュラーエコノミーを徹底するために事業モデルを「製品販売からサービス提供へ」とシフトさせていると言います。具体的な事例としては、ニューヨークの駐車場のケースがあり、電球を売るのではなく、「灯り」というサービスを提供する契約を駐車場と交わすことで、より耐久性が高く廃棄が少ない電球を開発するインセンティブを同社内でも高めているとのことです。 社外からの圧力 サステナビリティ経営が推進される要因には、企業の自助努力だけではなく、社外からの圧力もあります。Greenpeaceは、近年「IT企業のクリーンエネルギー促進」をターゲットとし、FacebookやAmazonなどの電力消費量や再生可能エネルギーによる電力シフトを独自調査し、成績の悪いAmazonに対しネガティブキャンペーンを張っているという報告がありました。同団体は、ネガティブキャンペーンとして動画やパンフレットなどをインターネット上で拡散させ、さらにCEOに対してレターを送って直接改善を迫るということまで手がけています。 気候変動に対する警鐘とガイドライン作成で有名なCDPは、最近は水問題に大きな関心を寄せているようです。CDPは、水汚染によって工場が活動停止に追い込まれた事例などを取り上げ、企業のサプライチェーンにとって水問題が死活問題となっていると断言していました。 今後のSustainable Brands開催 次回以降のSustainable Brandsの開催予定は、来年3月にタイ・バンコク、4月にスペイン・バルセロナ、5月にトルコ・イスタンブール、6月にアメリカ・サンディエゴ、8月にブラジル・リオデジャネイロ、9月にアルゼンチン・ブエノスアイレス、10月にアメリカ・ボストン、12月にマレーシア・イスタンブールが計画されています。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/11/13 体系的に学ぶ

【アメリカ】オンラインでステークホルダーとマテリアリティ特定に取り組めるツールが発表

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オンライン上でステークホルダーとディスカッションができるツールを運営している米国のスタートアップ企業Convetitは10月1日、同社のオンラインプラットフォームConvetitに新たにMateriality Mapping Toolというマテリアリティ特定のためのマッピング機能を追加したと発表した。 同機能は、オンライン上の議論に参加しているステークホルダーとインタラクティブなやり取りを通じてマテリアリティのマッピング作業を行うことを可能にするもので、GRIの提唱するガイドライン、G4が要求しているマテリアリティの特定に関する事項に対応したサステナビリティ報告をサポートする。詳しくは、下記のデモ動画を見て頂くのが分かりやすい。 Convetitの共同創業者兼CEOのTom O’Malley氏は「Convetit ThinkTanksは、主要なステークホルダーとグローバルの時間差を気にせず都合の良いタイミングでインタラクティブなコミュニケーションを行うという、効率的かつ効果的な新しい体験を提供する。そして企業はその対話の中で、Materiality Mapping Toolを用いて自社のマテリアルなサステナビリティ課題をステークホルダーと協力しながら特定、優先順位づけ、確認、評価することができる」と説明する。 また、同氏は、Convetitを利用することで「個々の会議や電話会議、ウェビナーなどのような従来のリアルタイムのエンゲージメントによるコストや日程調整の手間、カーボンフットプリントなどを削減することができ、企業およびステークホルダーに対し、有意義でより深い対話の、日常業務への統合を後押しする」とそのメリットを語る。 Convetitの優れた点は、利用者がマテリアリティ・マッピング作業をよりスムーズにスタートできるように、サステナビリティ調査・研究のGovernance & Accountability Institute(以下、GA Institute)と協力し、同社が1,200以上のGRIに準拠したサステナビリティ報告書(”What Matters”)の分析に基づいて特定した、35のセクター毎の15のマテリアリティ課題を、最初のテンプレートとして利用できる点だ。 GA Instituteの副社長を務めるLou Coppola氏は「我々のWhat Mattersの調査は、ConvetitのMateriality Mapping toolにとって完璧なスタート地点となる。1,200以上のサステナビリティ報告書の中で同業他社が最も頻繁に言及している15のマテリアリティ課題が分かっていれば、あと重要なのは自社のステークホルダーが、その課題が自社にとっても最重要課題であるということに同意するかどうかを確認することだけだ」と語った。 Convetitのサービスは、コーポレート・サステナビリティの分野におけるステークホルダーエンゲージメントとマテリアリティ特定に対する昨今の注目の高まりを受けて生まれたものだ。 サステナビリティ報告に関わるガイドラインとしては、GRIの掲げるG4の要求に加えてSASB(Sustainability Accounting Standards Board)が業界ごとのマテリアリティ特定を実施しているほか、IIRCもマテリアリティおよびステークホルダー・リレーションシップの両方をガイドライン原則に含めているなど、ステークホルダーエンゲージメントとマテリアリティ特定がレポーティングの中心的要素となりつつある。 ConvetitのMateriality Mapping Toolは、先日ボストンで開催されたSustainable Brands #NewMetricsのイベントでも紹介されており、Strategic Sustainability Consultingの代表を務めるJennifer Woofter氏は「過去に80以上のサステナビリティ支援オンラインツールを試してきたが、Convetitはその中でももっとも効果的で強力なツールの一つだ」と評価する。 近年、サステナビリティの分野ではオンラインテクノロジーを利用した企業支援ツールが新たな市場として盛り上がりつつある。今後はこれらのツールを企業がどのように自社のサステナビリティ活動に統合し、成果につなげていくかが問われそうだ。 【企業サイト】Convetit 【企業サイト】Governance & Accountability Institute

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