【国際】G20財相・中央銀行総裁会議、FATFに対し仮想通貨規制基準の10月までの整備を要求

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 G20財相・中央銀行総裁会議が7月20日から22日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催され、共同声明を発表。マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)に対しFATF基準をどのように仮想通貨に適用するかを10月に開催予定の会合の中で明確にするよう求めた。  今回の共同声明の中では、仮想通貨について「暗号資産(Crypto-assets)の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。しかしながら、暗号資産は消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起する」と、規制の必要性を強調した。  また、「暗号資産は、ソブリン通貨の主要な特性を欠いている。暗号資産は、現時点でグローバル金融システムの安定にリスクをもたらしていないが、我々は、引き続き警戒を続ける。我々は、FSB及び基準設定主体からのアップデートを歓迎するとともに、暗号資産の潜在的なリスクを監視し、必要に応じ多国間での対応について評価するための更なる作業を期待する。」と言及し、リスク監視の求めた。3月に同じくアルゼンチンで開催されたG20財相・中央銀行総裁会議では、「暗号資産に適用される形でのFATF基準の実施にコミットし、FATFによるこれらの基準の見直しに期待し、FATFに対し世界的な実施の推進を要請する」と時期については言及しておらず、今回スケジュールを明らかにした。  仮想通貨規制に関する議論では、FATFは2015年6月、仮想通貨関連事業に関する規制ガイダンス「Guidance for a Risk-Based Approach to Virtual Currencies」を公表。同ガイダンスは各国規制の参考となる自主的ガイダンスの位置付けだが、日本の金融庁はこのガイダンスに基づき、国内の仮想通貨ライセンス制度を整備した。今回、FATFで検討するルールは、各国政府に整備を義務化するもの。基準が強化されれば、日本での規制強化にもつながる。 【参照ページ】20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2018年7月21-22日 於:アルゼンチン・ブエノスアイレス) 【参照ページ】20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)(2018年3月19-20日 於:アルゼンチン・ブエノスアイレス) 【ガイダンス】Guidance for a Risk-Based Approach to Virtual Currencies

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【国際】G20グリーンファイナンス検討グループ、「G20サステナブルファイナンス・スタディグループ」に改称

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 G20でグリーンファイナンス議論を主導してきた「G20グリーンファイナンス・スタディグループ(GFSG)」は2月24日、名称を「G20サステナブルファイナンス・スタディグループ(SFSG)」に変更すると発表した。議論を対象を「グリーン(環境)」だけでなく、雇用創出や所得格差等の社会的側面も踏まえたサステナビリティ全般へと広げる。 【参考】【金融】中国が主導する世界のグリーンファイナンス。強かな中国の戦略とその本気度(2016年9月23日)  G20グリーンファイナンス・スタディグループは、2016年のG20杭州サミットに向け、中国の中央銀行である中国人民銀行と、英国の中央銀行であるイングランド銀行が共同議長となり発足。国連環境計画(UNEP)が事務局を担っている。同スタディグループは、同年にグリーンファイナンスの未来に向けた包括的な展望レポート「G20グリーンファイナンス総合レポート」を発表。以来、国際社会のグリーンファイナンス議論をリードしてきた。  G20には他に、「G20サステナビリティ・ワーキンググループ」があるが、同グループは「G20エネルギー・サステナビリティ・ワーキンググループ」と「G20気候サステナビリティ・ワーキンググループ」で構成されており、対象領域が環境に絞られるとともに、金融はメインのテーマとはなっていない。  G20の2018年の開催国はアルゼンチン。ブエノスアイレスで開催される。各スタディグループやワーキンググープの会合は、毎年サミットに先駆け数回開かれ、G20サステナブルファイナンス・スタディグループも2月にロンドンで2018年第1回会合を開催した。  サステナブルファイナンスという用語は、EUも使い始めている。サステナビリティに向けた金融は環境だけから幅広い対象に拡大してきた。 【参照ページ】G20 Sustainable Finance Study Group meeting held in London

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【国際】InsuResilience、気候変動脆弱国に保険・金融サービスを提供する国際パートナーシップ発足

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 気候変動リスク保険推進国際イニシアチブInsuResilienceは11月14日、気候変動枠組み条約ボン会議(COP23)の場で、先進国・新興国と後進国の双方を巻き込んだ新たなパートナーシップ「InsuResilience Global Partnership for Climate and Disaster Risk Finance and Insurance Solutions」を発表した。InsuResilienceは2015年G7ドイツ・エルマウ・サミットで発足した新たなイニシアチブ。G7諸国政府が資金拠出し、世界銀行グループ、保険開発フォーラム(IDF)、世界食糧計画(WFP)、COP21パリ会議で発足したA2R Initiativeがパートナーとなっている。  今後起こり来る気候変動に対し、最も影響を受け脆弱な状態にあるのは新興国の人々だと言われている。現在、様々な機関の取り組みにより、後進国の貧困層1億人が気候変動リスク保険に加入できているが、InsuResilienceは、加入者を2020年までに4億人に広げることを掲げている。そのため、InsuResilienceは、直接保険サービスを提供したり、保険機関に資金供給をしたりしている。  今回発足した新たなグローバル・パートナーシップは、気候変動に脆弱な後進国49カ国が集まるV20と、G20諸国の双方を加え新たな活動を展開する。グローバル・パートナーシップでは、V20各国の実情に合わせた気候変動関連データやリスクの分析、技術支援やキャパシティ・ビルディング、金融・保険商品の設計・提供、進捗状況の評価を行う。構想には、太平洋、アフリカ、カリブ諸国の国家信用リスク(ソブリンリスク)を引き受ける保険プールも含まれる。保険スキームはマクロではなくミクロで、都市部の貧困者やその他脆弱性の高い人々を対象として設計される。  同パートナーシップの発足では、V20議長であるエチオピア、ドイツ、英国、世界銀行が主導。すでに今年7月に英国政府が3,000万ポンドの資金拠出を表明し、グローバル・パートナーシップの発足に合わせて、ドイツ連邦経済協力開発省も1億2,500万米ドルの拠出を表明した。その他、政府、NGO、国際機関、学会、産業界からも30以上の組織が支援と参画を表明している。  また、ボン会議では、国連気候変動枠組み条約事務局が、革新的な保険商品提供国と需要国をAIを使って効率的に結びつけるプラットフォーム「Clearing House for Risk Transfer」も発表している。 【参照ページ】Launch of InsuResilience Global Partnership to enhance financial protection against climate risks

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【国際】G20ハンブルク・サミット首脳宣言、気候変動・租税回避・サプライチェーン等内容盛り込む

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 ドイツ・ハンブルクで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は7月8日、「G20ハンブルク首脳宣言」を採択。気候変動、国連持続可能な開発目標(SDGs)、雇用、租税回避、医療、サプライチェーン等に関する内容が盛り込まれた。  気候変動に関しては、「パリ協定から脱退するとの米国の決定に留意する」と明記する一方、他の19カ国・地域は「パリ協定が不可逆的である旨表明する」と宣言し、米国以外の国々は結束してパリ協定を推進していくことを意思を固めた。さらに19カ国首脳は、「我々は、パリでの結果に沿って緩和及び適応のための行動に関し開発途上国を支援するための財政資源を含む実施手段の提供についての先進国による国連気候変動枠組条約上のコミットメントを達成することの重要性を再確認」した。同時に米国は、「その他の国の自国が決定する貢献におけるエネルギーへのアクセス及びエネルギー安全保障の重要性に鑑み、これらの国々による化石燃料へのよりクリーンで効率的なアクセス及び利用並びに再生可能エネルギー及びその他のクリーン・エネルギー源の普及を支援すべくこれらの国々と緊密に連携するよう努める旨表明する」と、他国の政策には協調する姿勢を示した。会議の記者会見で、仏マクロン大統領は今年12月12日に、再度パリで気候変動に関する首脳会議を開くと発表。パリ協定履行と資金メカニズムがテーマになる。  雇用では、20カ国・地域首脳は「雇用形態がますます多様化していることを認識しつつ、この多様化が社会的保護及び労働条件に与える影響を評価し、新たな技術、人口構成の転換、グローバル化及び変化する労働関係が労働市場に与える影響を含め,地球規模の傾向を引き続き監視する。我々は,労働市場の転換の間のディーセント・ワークの機会を促進する」とディーセント・ワークの重要性に言及。さらに、「労働市場へ若者を統合するための質の高い実習制度を含め、職業教育・訓練の重要な役割を認識」した。  租税回避については、「『共通報告基準(CRS)』に基づく金融口座情報の初回の自動的交換が2017年9月に行われることを期待」するとともに、「全ての関係法域が遅くとも2018年9月までに交換を開始すること」を要求した。これに向け、来年サミットまでに経済協力開発機構(OECD)に対し改善が必要となる法域のリスト作成を要望した。リストに掲載された法域に対しては防御的措置を検討していく。  医療分野では、「WHOによって特定された優先度の高い病原菌及び結核に関するR&Dを促進する重要性」を強調。「既存及び新規の抗微生物剤の基礎及び臨床研究イニシアティブ並びに製品開発の効果を最大化するため,新たな国際的R&D連携ハブ」の創設を求めた。この取組に向けて、全ての関心のある国及びパートナーに対し参加を呼びかけた。  農村部の若者雇用では、アフリカに焦点を当てた「G20農村部の若者雇用のためのイニシアティブ」を創設することを表明。発展途上国の政策に沿い、2022年までに110万人の新たな雇用を創出し、今後5年間に最低500万人の若者に対しイノベーティブな能力開発プログラムを提供していく。また、深刻な飢餓状態にあるソマリア、イエメン、ナイジェリア北東部の人道支援のために、G20加盟国・地域から必要資金の3分の2超が拠出されたことも歓迎した。  持続可能なグローバル・サプライチェーンに関する内容では、「労働、社会及び環境上の基準の実施の促進並びに国連ビジネスと人権に関する指導原則やILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言のような国際的に認識された枠組みに沿った人権の促進にコミットする。OECD多国籍企業行動指針を遵守している国は,同指針を促進することにもコミットし,他国が後に続くことを歓迎する」と、政府が積極的に企業のサプライチェーン改善にコミットすべきだと宣言した。2025年までの児童労働撲滅、現代奴隷の撲滅も明言した。  主に中国で問題となっている過剰生産能力問題では、「杭州サミットによりマンデートを与えられ、OECDにより支援される鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの構成国に対し、情報共有と協力の強化に関するコミットメントを2017年8月までに達成し、かつ鉄鋼の過剰生産能力を減少させる具体的な政策的解決策を速やかに構築」することを呼びかけた。中国では、鉄鋼の過剰生産により、価格破壊とともに環境汚染の問題も発出しており、中央政府は対策の声を挙げているが、地方政府や国営企業の動きをコントロールできていない状況がつづいている。 【首脳宣言】G20ハンブルク首脳宣言 【首脳宣言】G20 Leaders´ Declaration 【付属文書】G20 Hamburg Climate and Energy Action Plan for Growth

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【国際】G20労働雇用大臣会合、インクルーシブ・ビジネスに向けた共同宣言を採択

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 ドイツのバート・ノイエンアールで5月18日から19日にかけて開催されたG20労働雇用大臣会合は5月19日、共同宣言「インクルーシブな未来に向けて」を採択した。インクルーシブ(Inclusive)とは、近年「インクルーシブ・ビジネス」という用語で語られており、貧困層の人々を消費者、生産者、流通者などビジネスのバリューチェーンの中に包摂していくという動き。共同宣言では、世界経済が地球上の全ての人のもとで繁栄していけるよう、インクルーシブな経済成長を促す雇用政策や経済政策を実施することを謳われた。  共同宣言は、技術の変化、デジタル化、グローバリゼーション、地理的なシフト、労働への期待の変化などが、雇用市場を大きく変化させているとともに、新たな機会と課題を生み出してていると認識。そのため、G20諸国に対して、スキル開発、社会保障、適切で公平な雇用条件や人材配置に関する社会との対話、地域プログラムの展開、持続可能な企業などの分野で具体的な政策を打ち出していくことを求めた。  ILO事務総長は、その中でも、ドイツとノルウェーが強く推進しているサプライチェーン上の労災ゼロを目指す基金「ビジョン・ゼロ・ファンド」の活動を高く評価。同基金は、G7から生まれた活動の一つで、2016年6月から2020年6月まで運営される。  その他、男女平等、ディーセント・ワーク、移民の労働問題などについても意見が交わされた。 【参照ページ】G20 agrees on policies to shape the future of work for inclusive growth and development

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【国際】G20、省エネ分野に民間投資を促進するための政策提言レポートを発表

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 G20省エネ・ファイナンス・タスクグループ(Energy Efficiency Finance Task Group:EEFTG)は5月4日、省エネ分野への投資を加速させるための政府政策課題を整理し提言をまとめたレポート「G20 Energy Efficiency Investment Toolkit(G20省エネ投資ツールキット)」を発表。G20加盟各国に対して、喫緊の国際課題である気候変動問題に対処する投資を加速するための制度整備を訴えた。EEFTGは、2009年のG8ラクイラ・サミットで組成された「IPEEC(国際省エネ協力パートナーシップ)」のもと、2015年3月に立ち上がったG20内のタスクグループ。EEFTGは、IPEECが2014年に定めた「G20省エネ・アクションプラン」を複数年単位で実現していくための会議体としての役割を果たしている。  EEFTGの共同議長国はフランスとメキシコ。またEEFTGにはG20のほとんど国が参加しているが、日本、イタリア、ブラジルは参加していない。G20以外ではアルゼンチンが参加している。今回の報告書は、EEFTGの3年間の検討の成果としてまとめられ、EEFTG事務局の他、IPEEC事務局、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、国際エネルギー機関(IEA)も作成に加わった。  同レポートの中でIEAは、G20諸国の経済では、建設、産業、輸送のエネルギー効率改善に、毎年2,210億米ドル(約25兆円)以上が投資されており、そのうち建設分野が半分を占めていると報告。国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は、銀行、機関投資家、保険会社のそれぞれの分野の資金を省エネに投じていくための提言部分を担当し、G20諸国政府が自発的に参照すべき4つの内容をまとめた。 業種や地域毎の省エネ投資の現状の評価 G20諸国の省エネ投資に関する制度設計の優良事例を紹介。2015年に制定された「自発的省エネ投資原則(Voluntary Energy Efficiency Investment Principles)の導入国事例の紹介 民間の省エネ投資に資する優良な金融商品事例を紹介 国際開発金融機関や政府系金融機関が果たすべき役割を紹介  同レポートは、省エネ分野向け民間投資について、「Core」「Integrated」「Inefficient」の3つに分けて議論を展開している。Coreとは、再生可能エネルギー向けの投融資などエネルギー効率改善に直接資するもの。Integratedは、直接的な投資ではないが、投融資の中で国際的なエネルギー効率改善を考慮しているもの。レポートは世界全体の投融資のうち、Coreは数%、Integratedが約30%と試算。エネルギー効率が考慮されていない残りの60%を「Inefficient」と呼び、これを課題として捉えている。  省エネ民間投資の分野では、UNEP FIの主導で、機関投資家向けの「G20 Energy Efficient Investor Statement(G20省エネ投資家声明)」と銀行向けの「G20 Bank Statement on Energy Efficiency(G20省エネ銀行声明)」への署名を呼びかけている。G20省エネ投資家声明には、CalSTRS、AP1、AP2、AP3、AP4、AP6、アムンディ、Mirova、AVIVA Investors、AXA Investment Managersなど39の機関投資家(総運用資産額4兆米ドル)が署名。G20省エネ銀行声明には、BNPパリバ、INGグループ、ABNアムロ、クレディ・アグリコル、中国工商銀行など42ヶ国122行(総資産額110兆ドル)が署名している。日本勢については、日本政府がEEFTGに参加していないためか、三井住友トラスト・ホールディングスが「G20省エネ銀行声明」に署名しているのみ。 【参照ページ】G20 ENERGY EFFICIENCY INVESTMENT TOOLKIT HIGHLIGHTS US$ 221 BILLION INVESTMENT OPPORTUNITIES 【報告書】G20 Energy Efficiency Investment Toolkit 【原則】G20 Voluntary Energy Efficiency Investment Principles 【参照ページ】G20 ENERGY EFFICIENCY INVESTOR STATEMENT

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【国際】欧米機関投資家、G20政府に対し2020年までの化石燃料補助金撤廃を要請

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 欧米の機関投資家16機関は2月15日、G20参加国政府に対して化石燃料への補助金を撤廃するよう要請する共同声明を発表した。共同声明では、化石燃料が世界の気候変動リスクを高めていると指摘。G20各国政府に対し、化石燃料分野への補助金や政府系金融機関からの投融資を2020年までに全廃することを求めた。  今回共同声明に署名したのは16機関、運用資産総額は2.8兆米ドル(約320兆円)。 英国環境保護庁年金基金(英国・公的年金基金) Bayerische Versorgungskammer(ドイツ・公的年金基金) Actiam(オランダ・運用会社) Aegon Asset Management(オランダ・運用会社) Aviva Investors(英国・運用会社) EdenTree Investment Management(英国・運用会社) Inflection Point Capital Management(英国・運用会社) Legal and General(英国・運用会社) Trillium Asset Management(英国・運用会社) Dana Investment Advisors(米国・運用会社) First Affirmative Financial Network(米国・運用会社) Trilogy Global Advisors LP(米国・運用会社) Friends Fiduciary Corporation(米国・宗教系運用会社) KBI Global Investors(アイルランド・運用会社) La Francaise(フランス)運用会社 Australian Ethical Investment(オーストラリア・運用会社)  G7参加国はすでに化石燃料分野への補助金撤廃で合意している。2016年のG7北九州エネルギー大臣会合でも、共同声明「グローバル成長を支えるエネルギー安全保障のための北九州イニシアティブ」の中で、「我々は、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の段階的廃止に引き続き専念するとともに、全ての国に対し、2025 年を期限に同様の取組を奨励する。」と定めている。同じく2016年のG20杭州サミット共同声明の中でも低炭素社会を推進して宣言が盛り込まれた。その上で、今回機関投資家らが表明した共同声明は、G20参加国が化石燃料への補助金と政府系金融機関の投融資を2020年までに全廃する期限を明確にするという内容を、今年のG20ハンブルグサミットでの共同声明に盛り込むことを求めている。さらに2018年までに化石燃料補助金の状況をG20加盟国が相互にチェックし合う仕組みを整備する内容についても、共同声明に盛り込むよう求めた。  化石燃料への補助金撤廃という国際合意に対し、日本政府は、高効率火力発電は低炭素経済を実現するための技術であり、G7で合意している「化石燃料からの補助金撤廃」には該当しないという姿勢をとっている。一方、今回の機関投資家らの共同声明の中には、高効率火力発電が該当するか否かについては明確な言及はない。 【参照ページ】G20 Must Phase Out fossil fuel Subsidies by 2020 【共同声明】Statement: G20 governments must lead in phasing out subsidies and public finance for fossil fuels - to accelerate green investment and reduce climate risk 【G7共同声明】G7エネルギー大臣会合共同声明

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【国際】G20のEEFTG、活動報告書発表。省エネ金融の政策をリード

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 G20省エネ・ファイナンス・タスクグループ(Energy Efficiency Finance Task Group;EEFTG)は11月10日、これまでの活動をまとめたレポート「2016 Activity Report」を発表した。  G20省エネ・ファイナンス・グループとは、2009年のG8ラクイラ・サミットで組成された「IPEEC(国際省エネ協力パートナーシップ)」のもとに、2015年3月に立ち上がったタスクグループ。IPEECに参加している国は、現在G8諸国の他、G20構成国であるオーストラリア、ブラジル、中国、EU、インド、メキシコ、南アフリカ、韓国の全16ヶ国・地域。EEFTGは、その中で、IPEECが2014年に定めた「G20省エネ・アクションプラン」を複数年単位で実現していくための会議体としての役割を果たしている。EEFTGに参加している国は、IPEEC参加国のうち日本、イタリア、ブラジルを除き、アルゼンチンを加えた14ヶ国・地域で、フランスとメキシコが共同議長国を務めている。またEEFTGには、経済協力開発機構(OECD)、欧州復興開発銀行(EBRD)、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP-FI)、クリーンエネルギー閣僚会議(CEM)のクリーンエネルギー・ソリューションセンターなど国際機関も支援している。EEFTGの役割は、今年のG20杭州サミットで合意された「G20エネルギー効率リーディング・プログラム(EELP)」の中にも組み込まれている。  今回発表されたレポートは、EEFTGにとっての初めての活動報告書で、省エネ分野への投資を活性化させる動きに関し、G20諸国での進展と国レベルの好事例がまとめられている。レポートでは、省エネ分野への投資を加速させなければいけない背景について、エネルギー生産性の向上は経済活動のベースであるという経済的側面、パリ協定で定めた2℃目標の達成という気候変動的側面、国連持続可能な開発目標(SDGs)の目標7である「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の達成という発展的側面の3点から説明している。  EEFTGが今年に実施してきた内容は、国際会議の場でのワークショップを計18回開催し1,200人を動員。またEEFTG参加国でオンライン調査を実施し専門家72人から140を超えるアイデア提供を受けた。特にEEFTGは、省エネ・ファイナンスの分野で資産額世界上位の中国の金融への働きかけを強化しており、銀行世界トップ中国工商銀行(ICBC)が他の中国銀行大手とともに推進している「金融機関声明(Financial Institutions Statement)」とともにキャンペーンの立ち上げも行った。結果、現段階で世界117の銀行から省エネ投資コミットメントが表明されており、合計4兆米ドルの資産が省エネ声明のもとで運用されている。  省エネに向けたファイナンス活動というテーマは、今年のG20杭州サミットの場でも中国政府の強いリーダーシップのもとで大きく取り上げられている。主要国の環境金融の枠組みづくりや意見交換は、今後EEFTG含めたG20の活動が台風の目となっていきそうだ。 【レポート】2016 Activity Report 【機関サイト】IPEEC 【プログラム】G20エネルギー効率リーディング・プログラム(EELP)

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【金融】中国が主導する世界のグリーンファイナンス。強かな中国の戦略とその本気度

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G20杭州サミット首脳声明に盛り込まれたグリーンファイナンス  今年9月5日から6日まで中国の杭州で開催されたG20杭州サミット。サミット後に発表された首脳声明(コミュニケ)には、グリーンファイナンスを推進していくという文言が盛り込まれました。グリーンファイナンスとは、グリーンボンド(グリーン債)、再生可能エネルギー事業への投資、環境プロジェクトへの融資など環境に資する資金提供を意味する非常に広範囲の概念です。昨年12月に気候変動枠組み条約(COP21)パリ協定で、気候変動への対応が世界規模での国際合意となり、とりわけ政府及び経済界の両面から、この気候変動の分野に対するファイナンスの重要性が大きく指摘されてきました。気候変動抑制や気候変動適応のために必要な資金は膨大で、世界全体での対応に数千兆円規模の資金が必要だとも言われています。  一昔前まで、グリーンファイナンスと言えば、国連などの国際機関が資金を拠出するもの、もしくは環境に優しい取組に対する倫理的な投資という説明が特に日本ではなされていました。この「倫理的」にという言葉の裏側には、「経済的には非合理的」「儲からないもの」という意味付けが込められていました。しかし今、グリーンファイナンスは世界の金融機関にとっての大きな収益事業としての認識されつつあります。今回のG20杭州サミット首脳声明にグリーンファイナンス推進の文言が盛り込まれたことは、各界からの昨今の関心を示す象徴的なできとごとなりました。このグリーンファイナンスに対する姿勢をとりまとめた中国には、世界各界から高い評価が寄せられています。 G20サミットとは  グリーンファイナンスの話を始める前に、簡単にG20サミットについて抑えておきたいと思います。日本人に馴染み深いサミットと言えばG7サミットがあります。米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの先進国7ヶ国が集う会議で、1975年にカナダを除く6カ国の第1回会合がスタートし、翌1976年にはカナダを加えた7ヶ国会合が、今に至るまで年に1回開催されています。今年のG7が日本の三重県・伊勢志摩にて通称「伊勢志摩サミット」が開催されたことは記憶に新しいことだと思います。一方、G20サミットは、2008年に第1回会合がスタートした比較的新しいサミットです。G20の参加国は、G7メンバー7ヶ国に加え、EU、ロシア、中国、韓国、インドネシア、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンの13ヶ国・地域です。G20サミットの正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」。第1回会合はリーマンショックを発端とする世界金融危機真っ只中の2008年です。このG20には、中国、ロシア、インド、ブラジルのBRICs4ヶ国、またこれに南アフリカを加えたBRICS5ヶ国も参加し、ASEANからはインドネシアが参加しています。G20が立ち上がった背景には、新興国の経済力や政治力が強くなり、国際的な諸問題を議論するにはG7メンバーだけでは役不足になってきたことがあります。G20サミットもG7同様年1回開催されます。開催地と議長国は20ヶ国が持ち回りで担当。議長国がその年のG20事務局の役割も果たします。今年の開催地は冒頭のとおり中国の杭州。そしてこの1年間、G20事務局は議長国である中国が担っていました。 G20杭州サミット首脳声明  G20杭州サミット首脳宣言の中で、グリーンファイナンスに係る事項は第21項です。 21 我々は、環境的に持続可能な成長を世界的に支えるためには,グリーンファイナンスを拡大することが必要なことを認識している。グリーンファイナンスの発展は、とりわけ環境的外部性の内生化における困難、償還期日のミスマッチ、「グリーン」の定義の明瞭さの欠如、情報の非対称性、不十分な分析能力を含む多くの課題に直面しているが,これらの課題の多くは,民間セクターとの連携によって策定された選択肢によって対処され得る。我々は、グリーンファイナンス・スタディグループ(GFSG)によって提出された「G20グリーンファイナンス総合レポート」と、金融システムがグリーンファイナンスに民間資本を動員する能力を高めるため、GFSGによって構築された自発的な選択肢を歓迎する。我々は,明確な戦略的政策のシグナル及び枠組みを提供し、グリーンファイナンスのための自発的な原則を促進し、能力構築のための学習ネットワークを拡大し、ローカルなグリーンボンド市場の発展を支持し、グリーンボンドへの国境を越えた投資を円滑化するための国際協調を促進し、環境及び金融のリスクの知識の共有を促進及び円滑化し、グリーンファイナンスの活動及び影響の測定方法を改善するために努力が払われるべきであると確認する。 (出所)外務省による仮訳を筆者が修正  この文書には、グリーンファイナンスに関する課題や方向性がつらつらと書かれています。ここでのポイントの一つ目は、これまで政府や国際機関が担い手だと思われていたグリーンファイナンスを、今後は民間資本すなわち民間の金融機関が中心となって担うべきだという考えが示されたことです。グリーンファイナンスの一形態であるグリーンボンドも、従来は国際機関が発行主体となり、国際機関が調達した資金を政府や企業に提供していくというスキームが一般的でした。しかし今回の首脳声明には、政府や国際機関による政策的な金融ではなく、市場原理に基づき民間の金融機関が担うグリーンファイナンスの姿を強く意識した内容となりました。  そしてもう一つのポイントは、「グリーンファイナンス・スタディグループ(GFSG)によって提出された『G20グリーンファイナンス総合レポート』と、金融システムがグリーンファイナンスに民間資本を動員する能力を高めるため、GFSGによって構築された自発的な選択肢を歓迎する。」の箇所です。実は杭州サミット開催の9ヶ月前から、G20にグリーンファイナンス・スタディグループという会合が設置され、実質的にこのグリーンファイナンス・スタディグループがグリーンファイナンスに関する検討会議体となっていました。そして、このグループがまとめた報告書「G20グリーンファイナンス総合レポート」がG20サミットの場に提出され、G20首脳によってその内容を「認める」という「儀式」がなされました。首脳声明に含まれている上記の諸々の内容は、いずれも全て「G20グリーンファイナンス総合レポート」の中に具体的に記されています。 G20グリーンファイナンス・スタディグループ  では、グリーンファイナンス・スタディグループとは何なのでしょうか。これはG20杭州サミットに向け、議長国である中国政府が主導し設置した会議体です。正式には、中国の中央銀行である中国人民銀行と、英国の中央銀行であるイングランド銀行が共同議長となり、国連環境計画(UNEP)が事務局を担い、会合にはG20メンバー20ヶ国の代表者が出席するということが、2015年12月に中国・三亜で開催されたG20財務次官・中央銀行副総裁会議の場で決定したのですが、実際には議長国・中国の強いイニシアチブがありました。  会合は、今年1月に北京で第1回会合が開催され、その後3月にロンドン、4月にワシントン、6月に中国・廈門と計4回開かれました。ワーキンググループの主なミッションは、G20杭州サミットに提出する「G20グリーンファイナンス総合レポート」の作成。中国人民銀行調査部の馬駿チーフ・エコノミストとイングランド銀行シニアアドバイザーのMichael Sheren氏、2014年1月にUNEPに設置されたUNEP Inquiry into the Design of a Sustainable Financial System(持続可能な金融システムのデザインに向けたUNEP調査、UNEP Inquiry)のSimon Zadek共同ディレクターの3者がレポート作成の指揮をとり、各会合ではG20メンバーとの間でのレポート内容の確認など手続きが行われてきました。  馬駿氏は、2014年までドイツ銀行のエコノミストとして活躍していた国際実務派で、2014年に中国人民銀行にチーフエコノミストとして招聘されています。またMichael Sheren氏は、ニューヨークやロンドンで約20年間投資銀行勤務の後、2013年にイングランド銀行のシニアアドバイザーに就任しました。Simon Zadek氏は、主にシンクタンク分野で活躍してきており、過去には中国の清華大学で客員研究員にも着任、2014年にUNEP Inquiryが設立された際に共同ディレクターに就任していました。 G20グリーンファイナンス総合レポート  「G20グリーンファイナンス総合レポート」は、全35ページの英語文書で、グリーンファイナンスが必要となる背景、グリーンファイナンスの課題、銀行・債券市場・機関投資家が果たすべきグリーンファイナンスの役割などが非常によくまとめられています。G20首脳声明内にある「GFSGによって構築された自発的な選択肢を歓迎する」の選択肢もこの文書に「7つ選択肢」として記されています。 1. グリーンファイナンスが直面する5つの課題  レポートでは、グリーンファイナンスが直面している5つの課題として、「環境的外部性の内生化における困難」「償還期間のミスマッチ」「グリーンファイナンス定義の明瞭さの欠如」「情報の非対称性」「不十分な分析能力」が特定されています。  「環境的外部性の内生化における困難」で言う「外部性(Externality)」とは、経済学用語で波及効果を示す言葉です。例えば、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、天候の変化や海水面の上昇を引き起こし、その変化がさらに別の環境変化を引き起こしていきます。このように影響が波及的に広がっていくことを外部性と言います。ある環境変化がもたらす経済的な影響を的確に数値化できれば、融資や保険、企業価値評価など様々なファイナンス行動の中に織り込むことができます。しかしながら、現在このような外部性を的確に評価・算出することは容易ではなく、環境要素をファイナンスの中に組み込む上での大きなハードルとなっています。レポートの中でも、この外部性の問題がグリーンファイナンスの最大のチャレンジだと位置づけられています。  また「償還期間のミスマッチ」とは、一般的にグリーンファイナンス需要サイドからは長期的資金が求められている一方で、現在のグリーンファイナンスの担い手である銀行融資は短期返済を求める傾向にあり、ミスマッチが発生しているというものです。そのため、新たなグリーンファイナンスの担い手としてグリーンボンドや担保貸付、再生可能エネルギー事業で活用されるイルドコ(Yield Co)と呼ばれる収益事業会社スキームなどが期待されると記されています。  「グリーンファイナンス定義の明瞭さの欠如」については、昨今ブラジルや中国、ICMAやCBIなどの機関によりグリーンボンドに関する定義が定めれられてきている一方、依然その他の分野やグリーンボンドの分野でもさえも運用実態としては「グリーン」の定義が曖昧であり、それによってグリーンファイナンスの需要サイド、供給サイドともにグリーンファイナンスに乗り出すことにブレーキがかかっていると指摘しています。また、グリーンファイナンスを求める投資家に対して、グリーンファイナンスの資金需要者の所在がはっきり伝わってない事態や、グリーンプロジェクトを行う企業側の情報開示の不徹底、各国ごとの情報開示ルールの違いなど「情報の非対称性」が存在していることや、金融機関側が十分に環境リスクを金融商品に反映させられない「分析能力の欠如」が課題として挙げられています。 (出所)G20グリーンファイナンス総合レポート 2. グリーンファイナンス課題克服のための7つの選択肢  レポートでは、指摘した5つの課題を克服するために各国や国際機関が打つべき施策として、7つの選択肢を提示しました。 投資家に対して明確な環境及び経済政策とフレームワークを提示すること グリーンファイナンスの運用に関する自主的ガイドラインを推進すること 金融機関の能力向上のための国際的なネットワークを広げていくこと 各国内のグリーンボンド市場活性化のため情報収集や知識共有などを支援すること クロスボーダーのグリーンボンド投資の活性化のため支援を行うこと 金融セクターの環境金融リスク認識知見の共有を支援すること グリーンファイナンスの指標や定義を明確化していくこと  とりわけ今回のレポートの中で強調されているのがグリーンボンドです。グリーンボンドには融資に比べ長期的な資金供給に適しており、グリーンファイナンスの中心になりうると位置づけられています。そのためには、グリーンボンドの定義の国際的な共有、グリーンボンド格付の整備などが必要だと記されています。このような整備をG20メンバー各国や国際機関が進めていくと、民間レベルでのグリーンボンドの発行やグリーンボンドへの投資家が大幅に増えていくことが予想されます。  グリーンファイナンス・スタディグループがまとめたレポートは、グリーンファイナンスが抱える課題を包括的に捉え、各国政府や国際機関がアクションを取るべき内容を示したよくできた内容です。今回G20サミットの場で20ヶ国首脳は、このレポートを歓迎し、アクションを起こしていくことを表明しました。グリーンファイナンスの世界は各国の協調でもあり競争でもある分野です。各国の協調によりグリーンファイナンスを盛り上げていく同時に、グリーンファイナンス資金市場の中心地を巡る国際的な競争が展開されます。その競争はすでに始まっています。そして、中国が猛烈な勢いで、その中心の一角を担うべくアクションを起こしてきています。 中国政府が公表した「グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン」  グリーンファイナンス・スタディグループを主導し、G20杭州サミットでもグリーンファイナンスを議題のひとつに加えた中国。そのG20杭州サミットの直前の8月31日に、中国政府は「グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン」という文書を公表しました。発表主体となったのは、中国人民銀行、財務部、国家発展改革委員会、環境保護部、中国銀行業管理委員会(銀監会)、中国証券監督管理委員会(証監会)、中国保険監督管理委員会(保監会)の7機関。中国中央政府の金融政策、環境政策を司る主要機関が勢揃いです。中国にはグリーンファイナンスを進めたい事情があります。中国は経済発展が急速に進むとともに環境対策も急務である状況。経済大国でもあり、温室効果ガス排出量も世界トップクラスの中国には、膨大なグリーンファイナンス資金需要が存在しています。G20杭州サミットでグリーンファイナンスを取り上げたのには、パリ協定後初のG20サミットで国際的なイニシアチブを発揮する絶好の政治的タイミングであったとともに、自国にとっても急務であるグリーンファイナンスをなんとか普及させたいという経済的な思惑もありました。各国首脳が集うG20サミットの前に、見せ場を作る舞台として用意されたのが、中国自身のグリーンファイナンス改革の内容を記した「グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン」でした。  中国はこのガイドラインの中でいつくもの具体的な指示を国内の各行政機関に発しています。このガイドラインの作成を主導したのは、「G20グリーンファイナンス総合レポート」の作成も担当した中国人民銀行。この国内向けのガイドラインの中でも、グリーンファイナンス推進に向けた包括的な分析と打つべき施策が網羅されています。 グリーン融資 グリーン融資促進のためのグリーン融資統計・監督システムの整備 中国人民銀行によるグリーン再融資制度の整備 グリーン融資利払いに政府が補助金を出す制度の整備 グリーン融資状況を中国人民銀行のマクロプルーデンス政策に反映 各銀行融資での自主的環境基準の整備推進 政府による各銀行のグリーンファイナンス実施評価の開始(大手銀行から着手) 銀行の環境責任を追及する法整備 グリーン融資を担保とした債務担保証券の促進 銀行の社会・環境観点でのストレステスト実施を支援 企業の信用情報データベースに環境情報を追加 グリーンボンド グリーンボンドの定義とグリーンボンド発行基準のさらなる明確化 地方政府によるグリーンボンド発行政府保証の追加などによる発行コストの削減 グリーンボンド第三者評価制度の整備 認定されたグリーン企業の株式公開を支援 グリーン債券インデックス、グリーン株式インデックスの整備 上場企業に対して環境情報開示を段階的に義務化 PPP 中央政府によるグリーン開発基金の設置 地方政府や民間資本、外国資本によるグリーン開発基金設置を支援 グリーンプロジェクトにPPP(官民パートナーシップ)を導入 グリーン保険 環境リスクの高い企業に環境破壊責任保険への加入を義務化 環境保護部は保監会と連携し、環境破壊責任保険実施ルールを制定 保険会社に対し環境破壊責任保険の商品化を支援 保険会社に対しその他環境保険やキャット保険(大災害保険)の商品化を支援 保険会社に対しITを応用した環境リスクモニタリングシステムの導入を支援 企業の環境権 二酸化炭素排出権取引市場及びカーボン・プライシング(炭素価格制度)の設立 炭素債券、炭素先物、炭素先渡、炭素オプション、炭素リース、炭素リース制度の整備 企業の排出権、環境汚染権、エネルギー使用権、水使用権、その他環境権制度の整備 国際協調 「一帯一路」戦略や上海協力機構、中ASEAN協力、南南協力、AIIB、BRICs開発銀行にグリーンファイナンスを適用 国内投資家による海外グリーンボンド購入を支援 海外投資家による中国国内グリーンボンド、グリーン株、他のグリーン金融商品の購入を支援 国際機関や海外企業の中国国内でのグリーンボンド発行を支援 グリーン政策に向けての中国政府の戦略と本気度  グリーンファイナンスに関する中国の本気度。日本では従来、PM2.5など中国については環境被害に関する報道が多く、中国が積極的にグリーンファイナンスや環境政策を先導していることに違和感を感じる方が少なくないかもしれません。確かに中国は日本や他の先進国と比べ、環境規制が緩かったり、環境に関する取締が徹底されていなかったり、政府の腐敗による不正が横行していたりと、改善の余地は山ほどあります。しかし中国は今、膨大な投資需要と世界一二を誇る資金力を背景に、この環境という分野を経済的な武器に変えようとしています。 第13次5カ年計画で謳われる「生態文明」と「美麗中国」  中国にとって国家戦略を定めた最も重要な文書である「5カ年計画」。今年から始まった「第13次5カ年計画」文書には、国家発展の理念として「生態文明」「美麗中国」が掲げられています。生態文明とは日本語で言うと「エコ文明」。「美麗中国」とはそのまま「美しい中国」という意味です。従来の中国は、環境や社会への影響を軽視し経済発展を至上命題として突き進んできたと言っても過言ではありません。しかし経済発展の失速が顕著となった今、中国政府は緩やかになった経済発展を「新常態(ニューノーマル)」として捉え、悪い事態ではなく新たな「通常」の状態であると受け止めています。そしてこれまであまり優先してこなかった環境や社会という側面を国家戦略として重視していく姿勢を鮮明にしています。 減少する中国の石炭火力発電  この中国の環境政策の本気度を示す一例が石炭政策です。石炭はエネルギー源の中でも最も温室効果ガスを排出し大気汚染も引き起こすことため、エネルギー源として特に問題視されている原料です。中国のPM2.5の発生源もこの石炭燃焼からだと言われています。近年、中国はこの石炭の生産と消費を大幅に減らしてきています。 (出所)JOGMEC「中国における脱石炭の動きと 石炭需給及び石炭輸出入動向調査」  上の図は中国の電源別発電電力量の推移を表しています。中国は経済発展を続けながらも2015年には発電総量が減少に転じました。特に減っているのが火力発電です。一方で原子力発電と再生可能エネルギーを含めた「その他」は伸びています。ちなみに中国の火力発電はほとんどが石炭をエネルギー源としています。 (出所)JOGMEC「中国における脱石炭の動きと 石炭需給及び石炭輸出入動向調査」  こちらの図からは、中国が石炭の生産と消費を双方ともに減らしていることがわかります。石炭の生産も消費もピークは2013年で、その後2015年まで継続して減っています。 (出所)JOGMEC「中国における脱石炭の動きと 石炭需給及び石炭輸出入動向調査」  こちらからは中国が石炭輸入も減らしていることがわかります。中国は世界1位の石炭生産国でありながら、世界1位の石炭輸入国でもあります。それだけ国内での石炭需要が多い国だと言えます。しかしその輸入量も2013年をピークに年々減っています。昨年2015年は前年より30%も少なくなっています。  もちろん上記の統計を100%鵜呑みにできないという声もあります。重いプレッシャーをかけられている中国の政治家や官僚は、自身の成績をかさ上げするため、不正統計を発表するということが日常的になっています。石炭減少を示すデータにも、石炭を減らすようにとの中央政府の大きなプレッシャーから不正がないとも言い切れません。しかしそれでも、かくの如く中央政府は石炭減少に躍起になっていることは伝わってきますし、国全体として環境に配慮をしない行動が抑制される雰囲気になっていることが見てとれます。 グリーンファイナンスという戦略的な投資呼び込み戦略  新常態に突入した中国は、現在非常に難しい国政の舵取りを迫られています。気候変動や環境汚染の抑制のために必要な膨大な資金需要。一方で、中国の金融当局は過去数年間に加熱した経済投資を沈静化させるため不良債権の処理と銀行の貸出抑制を必死に進めようとしています。今の中国は環境投資需要がありつつも中国の国内マネーを十分に活用できないというジレンマに陥っています。そこで中国政府が着目しているのが、グリーンファイナンスという名での海外からの投資呼び込みです。世界的にグリーンファイナンスという仕組みが回り始めれば、資金が大量に投じられるのは経済大国中国です。再生可能エネルギー、汚染防止設備、省エネ設備、緑化プロジェクトなど、中国には技術開発とプロジェクト案件が顕在化しており、潜在需要も非常に多くあります。この案件の実現のために海外から資金を呼び込もうと、中国政府は、G20杭州サミットに合わせ「G20グリーンファイナンス総合レポート」を作成し、中国政府としても「グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン」を公表するというグリーンファイナンス推しの展開を見せています。  この動きは中国が推進する他のプロジェクトとも連携しています。日本では評判の悪いアジアインフラ投資銀行(AIIB)や、BRICS新開発銀行も、中国が海外投資を中国に呼び込むために機能しています。もちろん、これらの中国主導新開発銀行は中国以外の市場も投資対象にしています。しかし、新興国市場の中でも一際存在感の大きいのが中国市場。新興国全体に資金が流入するようになれば、自ずと中国にたくさんの資金が入ってきます。「グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン」の中にもAIIBやBRICS新開発銀行にグリーンファイナンスを反映させていくとはっきりと記されているように、世界的なグリーンファイナンスの推進と中国主導新開発銀行の動きは連動しています。 中国が主導するグリーンファイナンス  G20杭州サミットで見せた中国のグリーンファイナンスへの意気込み。そこには世界的なグリーンファイナンスへの関心を中国の事情と結びつけていく中国の強かさがあります。もちろん世界的なグリーンファイナンスの潮流を中国だけで築いていくことは不可能です。G20首脳声明でも示されているように、グリーンファイナンスの主役は民間の金融機関や投資家。中国の国内銀行は資金力はありますが、銀行としてのノウハウや信用度はまだ欧米の金融機関には及びません。今後グリーンファイナンスに大きな影響を及ぼしていくのはきっと欧米の金融機関でしょう。しかしこの欧米の金融機関も、グリーンファイナンスを強く意識する中国政府に魅せられ急速に接近していくはずです。AIIBやBRICS新開発銀行にもすでに多くの欧米の金融機関が関心を寄せています。これまで環境後進国と呼ばれてきた中国。G20杭州サミットの前後から、環境政策の注目の地へと急激な飛躍を遂げています。 【参考ページ】外務省「G20杭州サミット首脳コミュニケ」 【参考ページ】G20 Green Finance Synthesis Report(G20グリーンファイナンス総合レポート) 【参考ページ】Guidelines for Establishing the Green Financial System(グリーンファイナンスシステム構築のためのガイドライン) 【参考ページ】中国人民银行 财政部 发展改革委 环境保护部 银监会 证监会 保监会关于构建绿色金融体系的指导意见 【参考ページ】中华人民共和国国民经济和社会发展 第十三个五年规划纲要 【参考ページ】JOGMEC「中国における脱石炭の動きと 石炭需給及び石炭輸出入動向調査」

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【国際】IIRC、統合報告は経済の安定性と持続可能な発展の基礎をなす

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IIRC(The International Integrated Reporting Council:国際統合報告委員会)のCEOを務めるPaul Druckman氏が、先日世界銀行で開催された統合報告セミナーの中でイングランド銀行総裁、G20金融安定理事会の議長を務めるMark Carney氏が紹介した“tragedy of horizons(限界の惨事)” という経済リスクに関する新しい言葉をIIRCのブログの中で紹介している。 “tragedy of horizons”とは、企業や投資家らが、気候変動などの長期的なグローバル課題が経済の安定性に与えるリスクを十分に認識していながらも、短期的な思考に基づきそうした課題に対する適切な対応を怠ることでもたらされる市場の失敗を意味する。 IIRCのDruckman氏によれば、Carney氏はセミナーの中で統合報告の価値について「統合報告は、投資家らが『短期志向で管理できるものだけではなく、長期的な課題に対応する際のコスト』についても考える手助けをしてくれる」と語ったという。 また、Druckman氏はCarney氏がセミナーの中で語った「(統合報告を通じて)あらゆる組織は自身の考えを表現し、資本や信用の配分に影響を与えることができる」というコメントに対し、これは非常に重要なポイントで、統合報告は資本をより生産的な形で流動させ、短期・中期・長期を超えた価値創造を促すものであり、それこそが財務の安定性および持続可能な発展の基礎をなすと述べている。 現在統合報告を推進している世界銀行CFOのBertrand Badre氏もCarney氏の考えに賛同している。世界銀行とIMFは、長期的な課題に対するリスク管理の失敗は過去数十年に渡る新興国へのインフラ投資を無駄にすることにつながりかねないと懸念しており、Badre氏は「統合報告は、政府やステークホルダーが入手可能な資本に対する理解を深め、それらをより効率的に管理できるよう手助けすることを可能にしてくれる」と統合報告の意義を語ったとのことだ。 IIRCは、”tragedy of horizon”の分析を正当化するために一連のリスクを声高に主張することも有効だが、本当の意味で統合報告が利益を生み出すのは、政府、企業、投資家らが相互の関係の中でそのリスクを認識したときだとしている。 IIRCは、気候変動などの長期的リスクが実際の経済に与える影響は大きく、対応の如何でグローバルで年間5,000億ドルのインフラ投資の差を生み出すと推定しており、それこそが統合報告の推進に向けたG20からの支援が重要な理由だとしている。企業報告のあり方を経済政策の目標に一致させることが重要だというのがIIRCの考えなのだ。 Druckman氏は、Carney氏の言う”tragedy of horizons”は統合報告をリスク管理・報告の新たなベストプラクティスとして採用するべき理論的解釈を提供してくれており、統合報告は財務安定性と持続可能な発展を実現する上で大きな手助けとなると表現している。 気候変動などのグローバル課題は政府、企業を問わず全てのステークホルダーに共通の課題であり、その解決に向けて統合報告が果たす役割は今後ますます大きくなると考えられる。 財務情報と非財務情報を統合した企業報告の実践により、企業と投資家のコミュニケーションを短期重視からより長期重視の視点へと変え、グローバル課題の解決に積極的に取り組む企業に市場のお金が集まるような仕組みを作り出していくことが、統合報告の役割だと言える。 【記事原文】Carney: Integrated Reporting provides chance to address “tragedy of horizons” ? the great risk to economic stability today 【団体サイト】IIRC

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