【国際】フォーチュンのCSV観点企業ランキング「Change the World 2018」発表。日本企業1社のみ

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 「フォーチュン500」、「フォーチュン・グローバル500」などで知られる米ビジネス誌のフォーチュン誌は8月20日、事業を通じて社会に変革をもたらしている企業ランキング「Change the World 2018」を発表し、トップ57社を選出した。このランキングは2015年から開始され、今年で4年目。選出対象は年間売上10億米ドル以上の企業。ランキングの発表は、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授やマーク・クラマー教授らが設立したコンサルティングNGOのFSGとCSV推進機関Shared Value Initiativeが協働で実施している。「Change the World」ランキングの特徴は、マイケル・ポーター教授らが提唱する「CSV(共通価値創造)」の観点から、(1)企業が生み出したソーシャルインパクト、(2)ソーシャルインパクトが企業自身にもたらした成果、(3)イノベーションの3つの観点で、独自に企業評価を行う点にある。 Change the World 2018 トップ15企業 Reliance Jio(通信)(インド) メルク(医薬品)(米国) バンク・オブ・アメリカ(金融)(米国) インディテックス(アパレル)(スペイン) アリババ・グループ(IT)(中国) クローガー(食品)(米国) ザイレム(水インフラ)(米国) ABB(化学)(スイス) ウェイト・ウォッチャーズ(ヘルスケア)(米国) Hughes Network Systems(通信)(米国) ダノン(食品)(フランス) アルファベット(IT)(米国) ウェスファーマーズ(食品)(オーストラリア) ブラスケム(化学)(ブラジル) インテル(IT)(米国) Change the World 2018 日本企業 31位 トヨタ自動車(自動車)  評価観点である「ソーシャル・インパクト」では、社会課題に対して企業が影響を発揮したソーシャル・インパクトをフォーブスとFSCが独自の情報源を活用して評価を行っている。また、「企業自身にもたらした成果」の観点では、そのソーシャル・インパクトがもたらした企業への具体的な財務的価値を測定しており、とりわけ収益性の向上や株式価値の貢献に繋がった場合は高く評価される。一方で、レピュテーションや従業員満足などの成果に関しては考慮されるものの相対的な価値は収益貢献などより低い。「イノベーション」観点では、ソーシャル・インパクトをもたらし活動が革新的であり、他の企業にとっても広がりを見せる可能性のあるものが高く評価された。  同ランキングは、毎年ランクインする企業が大きく変わる傾向にある。昨年から2年連続でトップ15入りを果たしたのは0社。しかしながら、昨年の15位以内企業のうち、JPモルガン・チェース18位、DSM26位、アップル24位、ウォルマート16位、リーバイ・ストラウス37位等は今年もランクインした。  日本企業では、2015年に3位にランクインしたトヨタ自動車は、2016年にはトップ50から姿を消したが、昨年は8位に復活。今年も31位にランクインした。一方、2016年にトップ50入りしていた伊藤園とパナソニックは今年もランクインできなかった。  新興国企業の台頭も目立ち、今年はトップ15内に、中国企業が1社、インド1社、ブラジル1社が入った。16位以下でも、インドのマヒンドラ・アンド・マヒンドラが23位、インドネシアのBank Rakyat Indonesiaが40位、中国のJD.com(京東商城)が45位、滴滴出行が53位に入るなどしている。  また、今年も昨年に続き、売上10億米ドル未満の企業の中から「Rising Star」として傑出した6社を選出。医療アプリ提供Dexcom(米国)、電子送金Wari(セネガル)、EコマースEtsy(米国)、異文化コミュニケーション研修EF Education First(スイス)、冷蔵設備販売Aucma(中国)、ヘルスケアアプリThrive Global(米国)の6社が選ばれた。 【参照ページ】Applauding the Changemakers Behind Fortune's Change the World List 【ランキング】Change the World 2018 【参照ページ】6 Small Companies With a Big Social Impact

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【国際】フォーチュンのCSV観点企業ランキング「Change the World 2017」発表。日本企業1社ランクイン

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 「フォーチュン500」、「フォーチュン・グローバル500」などで知られる米ビジネス誌のフォーチュン誌は9月7日、事業を通じて社会に変革をもたらしている企業ランキング「Change the World 2017」を発表し、トップ50社を選出した。このランキングは2015年から開始され、今年で3年目。選出対象は年間売上10億米ドル以上の企業。ランキングの発表は、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授やマーク・クラマー教授らが設立したコンサルティングNGOのFSGとCSV推進機関Shared Value Initiativeが協働で実施している。「Change the World」ランキングの特徴は、マイケル・ポーター教授らが提唱する「CSV(共通価値創造)」の観点から、(1)企業が生み出したソーシャルインパクト、(2)ソーシャルインパクトが企業自身にもたらした成果、(3)イノベーションの3つの観点で、独自に企業評価を行う点にある。 Change the World 2017 トップ15企業 JPモルガン・チェース(金融)(米国) DSM(化学)(オランダ) アップル(IT)(米国) ノバルティス(医薬品)(スイス) LeapFrog Investments(金融)(モーリシャス) Ant Financial(金融)(中国) ウォルマート(小売)(米国) トヨタ自動車(自動車)(日本) ジョンソン・エンド・ジョンソン(医薬品)(米国) ヤラ・インターナショナル(化学)(ノルウェー) リーバイ・ストラウス(アパレル)(米国) SAS(IT)(米国) ベンディゴ・アンド・アデレード銀行(金融)(オーストラリア) ネスレ(食品・消費財)(スイス) テンセント(IT)(中国) Change the World 2017 日本企業 8. トヨタ自動車(自動車)  評価観点である「ソーシャル・インパクト」では、社会課題に対して企業が影響を発揮したソーシャル・インパクトをフォーブスとFSCが独自の情報源を活用して評価を行っている。また、「企業自身にもたらした成果」の観点では、そのソーシャル・インパクトがもたらした企業への具体的な財務的価値を測定しており、とりわけ収益性の向上や株式価値の貢献に繋がった場合は高く評価される。一方で、レピュテーションや従業員満足などの成果に関しては考慮されるものの相対的な価値は収益貢献などより低い。「イノベーション」観点では、ソーシャル・インパクトをもたらし活動が革新的であり、他の企業にとっても広がりを見せる可能性のあるものが高く評価された。  同ランキングは、毎年ランクインする企業が大きく変わる傾向にある。昨年から2年連続でトップ15入りを果たしたのは、7位ウォルマートと14位ネスレの2社のみ。トップ50まで広げると、Sustainable Japanでお馴染みの、ユニリーバ(21位)、マイクロソフト(25位)、IBM(35位)、セールスフォース(36位)、マリオット(43位)、デル(48位)。  日本企業では、2015年に3位にランクインしたトヨタ自動車は、2016年にはトップ50から姿を消したが、今年は8位に復活。一方、昨年トップ50入りしていた伊藤園とパナソニックは今年はランクインできなかった。  新興国企業の台頭も目立ち、今年はトップ15内に、中国企業が2社ランクイン。メキシコのセメックスが18位に、バングラデシュのbKashが23位に、インドのタタ・コンサルタンシー・サービシズが30位につくなど、社会課題を的確に捉え、それを売上に結びつける企業がじわじわ力を備えてきた。  また、今年は、売上10億米ドル未満の企業の中から「Rising Star」として傑出した6社を選出。NGOのファンドレイジング支援ソフト提供Blackbaud(米国)、小型浄水装置提供Medentech(アイルランド)、データ可視化ツール提供タブロー(米国)、特殊ガラス提供View(米国)、ITセキュリティサービス提供HackerOne(米国)、農業支援ソフトウェア提供Peat(ドイツ)の6社が選ばれた。  グローバルの企業競争がますます激しくなる中、社会課題を的確に捉えた経営を行うことは、将来の売上向上に大きく響いてくる。以前は欧米企業は短期的経営だと批判されたが、同ランキングにランクインしている企業等はここ10年ぐらいで長期的経営に舵を切り、さらなる売上拡大へと着実に実を結んできている。来年は日本企業は何社ランクインできるだろうか。 【参照】How Fortune’s ‘Change the World’ Companies Turn Doing Good Into Good Business 【ランキング】Change the World 2017 【参照】6 ‘Change the World’ Companies That Are Rising Stars

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【国際】フォーチュンのCSV観点企業ランキング「Change the World 2016」公表、日本企業2社ランクイン

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 「フォーチュン500」、「フォーチュン・グローバル500」などで知られる米ビジネス誌のフォーチュン誌は8月22日、事業を通じて社会に変革をもたらしている企業ランキング「Change the World 2016」を公表し、トップ50社を発表した。昨年に第1回の発表があり、今年で2年目。ランキングの発表では、昨年同様、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授やマーク・クラマー教授らが設立したコンサルティングNGOのFSGと協働で行われた。「Change the World」ランキングの特徴は、マイケル・ポーター教授らが提唱する「CSV(共通価値創造)」の観点から、独自に企業評価を行う点にある。対象企業は年間売上10億米ドル以上の企業。昨年はランキング手法については多くは公表されなかったが、今年はランキング手法として、(1)企業が生み出したソーシャルインパクト、(2)ソーシャルインパクトが企業自身にもたらした成果、(3)イノベーションの3つの観点で実施されたことを明らかにした。 Change the World 2016 トップ15企業 1. グラクソ・スミスクライン(医薬品)(英国) 2. IDEテクノロジーズ(産業用機械)(イスラエル) 3. GE(産業用機械)(米国) 4. ギリアド・サイエンシズ(医薬品)(米国) 5. ネスレ(食品・消費財)(スイス) 6. ナイキ(アパレル)(米国) 7. マスターカード(金融)(米国) 8. ユナイテッド・テクノロジーズ(航空宇宙・防衛)(米国) 9. ノボザイムズ(特殊化学薬品)(デンマーク) 10.ファースト・ソーラー(エネルギー)(米国) 11.コカ・コーラ(飲料)(米国) 12.インテル(半導体)(米国) 13.ミュンヘン再保険(保険)(ドイツ) 14.フィブリア(木材・紙)(ブラジル) 15.ウォルマート(量販店)(米国) Change the World 2016 日本企業 18.伊藤園(飲料) 39.パナソニック(電気・電子)  評価観点である「ソーシャル・インパクト」では、社会課題に対して企業が影響を発揮したソーシャル・インパクトをフォーブスとFSCが独自の情報源を活用して評価を行っている。また、「企業自身にもたらした成果」の観点では、そのソーシャル・インパクトがもたらした企業への具体的な財務的価値を測定しており、とりわけ収益性の向上や株式価値の貢献に繋がった場合は高く評価される。一方で、レピュテーションや従業員満足などの成果に関しては考慮されるものの相対的な価値は収益貢献などより低い。「イノベーション」観点では、ソーシャル・インパクトをもたらし活動が革新的であり、他の企業にとっても広がりを見せる可能性のあるものが高く評価された。  今年のトップ50は、昨年から大きく変わり、ランキング手法に変化があったことが伺える。一方で、今年1位のグラクソ・スミスクラインは昨年6位、今年15位のウォルマートは昨年4位、その他ユニリーバなども、2年連続でトップ50入りを果たしている。今年トップ50に選出された企業には、他にもSustainable Japanでお馴染みの、シーメンス(21位)、マクドナルド(25位)、セールスフォース(26位)、ユニリーバ(27位)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(31位)、ペプシコ(38位)、GAP(40位)、ハイネケン(43位)、スターバックス(45位)、テスラ・モーターズ(50位)などがランクインしている。昨年はトヨタ自動車が3位にランクインしていたが、今年はトップ50から姿を消した。  マイケル・ポーター教授とマーク・クラマー教授は、CSVに取り組む企業の数は増えており、経営の主流になりつつあるとコメントをよせている。CSVを志向する企業は、慈善主義や従来型のCSRに引き続きコミットしつつも、企業競争戦略の中心に「測定可能なソーシャル・インパクト」という点を据えてきていることを両氏は強調した。また、両氏は、ソーシャル・インパクトをもつ活動が、パイロット・プロジェクトや二次的市場から中核的市場や全体戦略へとシフトしてきており、それが戦略的・構造的な経営の変革を引き起こしていること、また、企業リーダーの観点が自社の製品やサービス中心のものから、社会のニーズに自社の製品やサービスを充足させる方向へと変化していることも指摘した。     【ランキング】Change the World 【参考ページ】The Lesson Behind Fortune's 'Change the World' List 【関連ページ】フォーチュン誌、世界を変える企業ランキング「Change the World」を公表

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【インタビュー】シチズン、現場主導のCSVが実現。担当者が語る工夫と苦労

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 シチズン時計。日本では非常によく知られている国産時計メーカーだ。同社の前身「尚工舎時計研究所」は1918年に創業、シチズンは英語で「市民」を表す名詞。「市民に親しまれるように」という願いを込めて、尚工舎時計研究所の創業者であり社長であった山崎亀吉氏と親交の厚かった後藤新平・東京市長(当時)が命名した。同社はその後、時計で培った精密加工技術を活かし製品ラインナップを拡大、今では幅広く電子機器や電子部品の製造メーカーとしても知られている。  2016年5月現在、シチズンは、ホールディングス制を採用しており、シチズンホールディングス株式会社のもとに、シチズン時計株式会社、シチズンマシナリー株式会社、シチズン電子株式会社など事業会社が置かれている。そのため、同社のCSR体制としては、ホールディングス会社の中にCSR室が置かれており、各事業会社のCSR委員会との連絡窓口機能も果たしている。同社は「シチズングループCSR報告書」を毎年発表しており、環境会計、化学物質管理、ダイバーシティ、労働慣行、コミュニティ支援、コーポレートガバナンスなどESG情報が記載されている。この報告書作成の実務作業もシチズンホールディングスのCSR室が担っている。  今年3月スイス・バーゼルで開催された世界的な時計の祭典「BASEL WORLD 2016」の場で、シチズン時計社から新しいコンセプトのレディス向け腕時計が発表された。「CITIZEN L Ambiluna(シチズン エル アンビリュナ)」と名付けられたこの新しいラインナップでは、時計業界で初めてカーボンフットプリントを公開、さらにDRCコンフリクトフリーを宣言するものとなった。このように、時計デザインとしての表面的な美の追求だけでなく、内面の美として社会・環境への配慮を強く打ち出すという時計業界における画期的なブランドを打ちたて、バーゼルの場でも海外の報道関係者から高い評価を博した。この商品プロジェクトの過程では、時計ではじめてカーボンフットプリントの第三者認証取得の取り組みや、関係各部門に対しCSRに関するより深い理解をもとめるなど商品企画部門が率先するという奮闘がなされていた。シチズン時計にとって「CSV(共有価値の創造)」とも言えるこの取り組みの影には、担当者の壮大な努力があった。  CSVという考え方は、すでに日本でも広く浸透してきているが、実際に形にしていくことに難しさを感じる企業は少なくない。同社ではこれまで商品企画とCSRが協力することは基本的になかったという。そのような中、シチズン時計はどのようにしてCSVを強く意識した製品の発表にまで漕ぎつけることができたのか。今回の取材で、シチズン時計社で商品企画を担当した櫻井沙織氏と宮川花菜氏、企画立案当時にシチズンホールディングス社CSR室で企画をサポートした山田富士子氏から、当時の状況や具体的なプロセスを伺った。 そもそも企画はどのような発端で生まれたのですか? 山田氏:  シチズングループにとっての事業と一体となったCSRは、2013年にCSR室主導の経営層向けCSRセミナーを実施したことから始まりました。当時はちょうどドッド・フランク法の紛争鉱物の問題などが話題となっていました。同じ頃、人権課題に関して何か具体的に取り組めないかとCSR室から時計事業部に対しコーズ・マーケティングの提案した時期と重なります。その結果、2013年末より当社の主力レディス時計ブランドの「クロスシー」の売上の一部を国際NGOプランの「Because I am a Girl」キャンペーンに寄付し、途上国の女の子の教育支援を行うことになりました。これが、社内におけるCSVに向かう第一歩になったと思います。  それと平行して、2013年度~2015年のCSR報告書においてCSVの可能性ついてを社長メッセージの中で発信しました。社長メッセージは対外的な意味がありましたが、社内の意識醸成という意味もありました。また、CSVを知ってから、私自身が考えるようになったことですが、「社会課題の解決とシチズンの社名の親和性」についてを常にイメージするようになりました。その実現には、シチズンホールディングスとシチズン時計が連携することが必須だと感じており、このことが事業とCSRを結びつけるファクターになったのだと思っています。 櫻井氏:  商品企画としては別の課題感を持っていました。2014年春に「Beauty is Beauty」をコンセプトとするレディスブランド「CITIZEN L」をリターゲティングしようとしていました。「CITIZEN」は男性腕時計のイメージが強いので、女性向け腕時計を強化したいという目的がありました。しかし、デザイン性といった表面的な美しさについてはこれまでも取り組んできたのですが、真の美しさをどう社会に発信するのか、時計として何ができるのかを考えたときに、具体的にどうするのかで悩んでいました。そんなときに偶然山田さんから、紛争鉱物や二酸化炭素排出量の明記など社会課題を事業の中で解決するCSVという方法があるという提案を受けたんです。  そこから相互でいろんな話をしました。グローバル企業や有名ブランドのCSVの事例を具体的に教えて頂きました。CSVに詳しい方の話を聞きに行く機会を提供してくださったときに、その方からエシカル・ファッションに詳しいファッション・ジャーナリストの生駒芳子さんを紹介して頂きました。生駒さんにブランドアドバイザーになって頂き、どういうものが現在の女性に刺さるエシカルやサステナブルなのかという話をしていただきました。元々のエシカルに関するイメージは少し真面目すぎる、地味、ボランティアのようなものだったたんですけど、生駒さんは、そうではなく、エシカルやサステナブルはもっとかっこいい新しいライフスタイルなんだ、時計が現代女性のエンパワーメントにつながる新たなお守りのようなものになるといいね、と教えて下さいました。 山田氏:  そしてこの生駒さんとの出会いが、新たな出会いを呼んでいきました。 櫻井氏:  生駒さんからは国内外で活躍されている建築家の藤本壮介さんを紹介して頂きました。建築は一番サステナビリティを考えなければいけない分野だと思うんです。一度造ったものを壊すということは、建築では簡単にできない。藤本さんは自然と建築の融合ということを追求されている方でした。社外の人と組む時計のクリエイティブというと普通はファッションデザイナーの方とコラボレーションするというのが一般的なんですが、そうではなく、エシカルやサステナブルという考え方を造形として取り組まれている藤本さんにデザインをお願いすることにしました。「CITIZEN L」の時計にはもともとシチズンが開発していたエコ・ドライブという光発電の技術を搭載しているのですが、それもサステナブルという考え方から生まれたアイデアです。 新しい考え方を社内で理解してもらうのは容易でしたか? 櫻井氏:  そこは山田さんが2013年から実施されて啓蒙活動が本当に実を結んだと思います。私たちがその提案を社内会議で行った際にはすでにCSVやコーズ・マーケティングという考え方がある程度理解されていたんです。 山田氏:  実はCSVの実現にあたってはCSR室もアクションを起こしていました。「CITIZEN L」の企画と同時並行のかたちで、従業員向けにCSVセミナーを開催しました。もともとCSR報告書の中で、CSVというキーワードに反応した従業員から、「CSVについて知りたい」という声が集まっていたという理由もあります。このセミナーには、時計事業に関わる技術部門、調達部門、生産部門をはじめグループ企業、開発R&D部門からも多数参加がありました。外部講師によるセミナーでは、多岐にわたる事例をはじめ、組織を越えたグループディスカッションなど、CSVが一部門のものでなく全社的な取組みであると伝わる工夫も取り入れました。CSR室の役割は社内への「種まき」だと思って活動しました。 櫻井氏:  商品企画としてはCSR室がバックアップしてくださる環境に合わせて動きました。関連部署に説明に回る際に、エシカルやサステナブルが一時的なトレンドだと思われないようにするために、CSR報告書のトップメッセージで発信していた「市民に愛され、市民に貢献する」という企業理念や、シチズンが1976年に開発した光発電技術(現在のエコ・ドライブ)などの歴史から、みんなが誇りを持てる取り組みだということを説明して回りました。 山田氏:  オフィスのフロア移動も大きかったと思います。それまでホールディングスのCSR室と時計事業の商品企画とはフロアが離れていたのですが、このタイミングの直前に偶然、同じフロアになりました。CITIZEN Lのリターゲティングは公式プロジェクトの発令などなく動いていたのですが、お互いの動きがよく見えるようになりました。 櫻井氏:  構想が大きくなっていくことを感じたので、実は企画の初期に、トップダウンで進めて頂かないと難しいという話を上長に相談しました。ですが、上長からは、逆に大きな動きだからこそ、本当にやりたいことはこれなんだというボトムアップのアプローチのほうがうまくいくんじゃないかという話がありました。ですので、公式なプロジェクト発令や大々的にやりますというメッセージはありませんでした。もちろん、途中には自分たちで関係者に全部説明して回らなければならないという大変さはあったのですが、結果的にそのやり方で良かったなといま思います。 山田氏:  全社的なCSR部門では、事業会社の業務や生産現場に直接助言することは難しく、今回の取り組みは商品企画主導だからこそ実現できたのだと思います。規模が比較的小さかったことが功を奏したのかもしれません。 櫻井氏:  そうかもしれません。今回の取り組みもシチズン時計の一(イチ)ブランドという規模で実施しました。これが初めからシチズングループ全体でとなっていたら難しかったかもしれません。 上層部の理解が得られてからは動きは早かったですか? 櫻井氏:  上層部の理解が得られても実際に動くのは現場なのでいろいろありました。各部署に出向いて相手に極力負荷がかからないよう、「ここだけお願いします!」というように説明して回りました。おそらく、「全てのサプライヤーからEICCテンプレート(紛争鉱物報告テンプレート)をもらって欲しい」とだけ言っていたら誰も動いてくれなかったと思います。そのため、商品企画のほうで紛争鉱物対象物質と部材の対応表をつくり、さらに部材ごとのサプライヤーを把握した上で、さらに確認が漏れているサプライヤーがないか教えていただけると助かります、というように調達を担当している技術部門に伝えていきました。ある程度こちらで知ることができることはわかった上で伝えていきました。  こうしてある程度実務が回るとわかった状態で、時計事業の役員が集う経営会議にかけ、新ブランドではDRCコンフリクトフリーなどを謳うという承認を仰ぎました。それでもそこでストップがかかりました。今はできているけれども今後どれくらいの負荷がかかるのかがわからないという理由でした。それでも諦めず、負荷がそれほど大きくないのだということを説明して回りました。同時にメリットも伝えていきました。これまでのスイスのバーゼルワールドでの発表は、新たなムーブメントの開発など技術的なものが主だったのですが、新たなコンセプトそのものを発表できるという話題性を伝えました。最終的には、反対していた役員にも、不可能なことではないということを理解して頂くことができました。 二酸化炭素排出量の公開はどのような内容だったのですか? 山田氏:  環境に関してはCSR室とは別に環境マネジメント室が担当しています。ですので、まずは商品企画から環境マネジメント室へ正式な依頼をするところからスタートしました。 櫻井氏:  環境マネジメント室の方々には本当に尽力していただきました。今回、カーボンフットプリントの算出に関しては、一般社団法人産業環境管理協会のカーボンフットプリントプログラムに参加し第三者認証を受けました。この認証を受けるには製品カテゴリごとに「カーボンフットプリント製品種別基準(CFP-PCR:Carbon Footprint of Products – Product Category Rule)」算出方法」が必要でしたが、業界団体である日本時計協会の環境委員会で、ここ数年かけて検討してきたCFP-PCRが、昨年ちょうど登録されたところでした。そういう意味では幸運でした。しかし、最初のPCRはエコ・ドライブタイプを想定していなかったため、時計他社のご協力も得て短期間にPCRを改定し、今回のモデルにも適応できるものとしました。そのPCRにしたがい各モデルごとカーボンフットプリントを算出し、その検定を受ける過程でも環境マネジメント室には大きな負荷をかけたのですが、これまでの部門の取り組み成果を発揮できる機会だということで積極的にサポートしてくれました。 バーゼルで発表した時の反応はどうでしたか? 櫻井氏:  メディアの反応がとても良かったです。ヨーロッパやアジアからのライターさんの感想を聞いてみたのですが、特に女性のライターさんからデザインだけでなくコンセプトについても好反応が得られました。デザインについても、生駒さんや藤本さんのアドバイスにより良い意味で今までのシチズンのイメージとは違った非常に斬新な時計を作ることができました。  メイン商品の時計は6万7,000円なんですが、エシカルで、漆を使っていて、手作業でひとつひとつ作っているという説明したあとでのメディアの方の反応は「6万7,000円って安いよね!」というものでした。 販売に向けてのお考えを聞かせて頂けますか? 木下氏:  今回の「CITIZEN L」は、シチズン時計のレディス商品の強化を狙う位置づけがあります。これまで国内ではクロスシーというブランドがあり、中価格帯と言われる3万円から10万円では売上ナンバーワンを確立している、20代から30代の女性には浸透しているブランドがありますが、今後は30代以上の女性やもともと海外ブランド嗜好の方、また、時計を持っていない方にもシチズンを新たにアプローチしたいと考えています。「CITIZEN L」はグローバルブランドとして展開していきます。「CITIZEN L」はもともと2012年からヨーロッパとアジア向けのブランドとして立ち上げられ、その後北米、そして今回満を持して日本でデビューさせるものとなります。エシカル消費者の多いヨーロッパに対してはもともとエシカルという側面を考慮していたのですが、今回のCITIZEN L Ambilunaの発表であらためてエシカルを強く出すプロモーションをかけていきます。 商品プロフィール  今回発表されたCITIZEN L Ambiluna(シチズン エル アンビリュナ)コレクションは、今年秋に販売が開始される。同コレクションは3シリーズで展開しており、世界限定1,000個で販売予定のCITIZEN L Ambiluna(シチズン エル アンビリュナ)は、オリジナル西陣テキスタイルバングルとクラッチバックとの一式セットで18万円(税別)。通常モデルのCITIZEN L Ambilunaは6万7,000円(税別)と4万2,000円~4万5,000円(税別)の二種類ある。それぞれ3色。 ■CITIZEN L Ambiluna限定モデル ■CITIZEN L Ambiluna通常モデル(67,000円) ■CITIZEN L Ambiluna通常モデル(42,000-45,000円)

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2016/05/12 事例を見る

【南スーダン】ネスプレッソ、初となる南スーダン産コーヒーを取り扱い開始。農家と経済発展を支援

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 コーヒー大手のネスプレッソは10月7日、初となる南スーダン産コーヒーの取り扱いを開始すると公表した。"SULUJA ti SOUTH SUDAN"(現地語で"Beginning of South Sudan"の意味)と名付けられたこのコーヒーは、同国にとって石油以外では初めての主要な輸出品となり、今後の経済発展に向けた大きな一歩となることが期待される。  コーヒー生産に関する高い専門性とサステナビリティ・イノベーションの掛け合わせの結果として生まれたこの新たなコーヒーは、ネスプレッソの掲げるCSV(Creating Shared Value:共通価値創造)のアプローチおよび、南スーダンのコーヒー農家を支援するという同社の現在進行中のコミットメントを反映したものだ。  もともと南スーダンはコーヒー栽培において長い歴史を持っていたが、度重なる内戦によりコーヒー産業の大部分が破壊されてしまっていた。このコーヒー産業を再建するべく、ネスプレッソ及びNPOのテクノサーブは南スーダンが独立した2011年以降、地元のコーヒー農家と協働して高品質なコーヒー生産の再開に向けて取り組んできた。  ネスプレッソは既にスーダンのイェイ地域におけるコーヒー産業の再建のために700万スイスフラン(約8500万円)を投資しており、今後数年で250万スイスフラン(約3億円)の投資を完了させ、2020年までに更に数千の農家へとプログラムを拡大していく計画だ。  SULUJA ti SOUTH SUDANは10月からごく少量限定でフランスのネスプレッソクラブ会員が最初に手にすることになるという。なお、ネスプレッソはこの取り組みは南スーダンのコーヒー産業の再建を支援するための長期投資であり、短期的な投資回収は期待していないとしている。  Nespresso AAA Sustainable Quality™ Program(ネスプレッソAAAサステナブル品質プログラム)のもとで、現在南スーダンにおけるネスプレッソの取り組みには現在約500の農家が関わっている。この取り組みは既に3つの新たなコーヒー共同組合の設立につながっており、流通やインフラの発展に貢献しているとのことだ。これらの取り組みによりコーヒー栽培が商業化することで、コーヒー農家およびその家族らにより多くの収入がもたらされ、最終的に国家の経済基盤の多様化につながることが期待されている。  長く続いた内戦を経て独立後、収入の多くを原油関連の輸出に頼っていた南スーダンにコーヒーという新たな産業をもたらし、国家の経済発展を支援するとともに地元農家の人々の生活向上も目指すネスプレッソの取り組みは、まさに事業を通じて社会的な価値を創造するという同社のCSV戦略を体現していると言える。 【参照リリース】Nespresso launches SULUJA ti SOUTH SUDAN, the first coffee exported from the country 【企業サイト】Nespresso (※写真提供:Rob d / Shutterstock.com)

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【国際】フォーチュン誌、世界を変える企業ランキング「Change the World」を公表

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※2016年最新版は【国際】フォーチュンのCSV観点企業ランキング「Change the World 2016」公表、日本企業2社ランクインを御覧ください。  「フォーチュン500」、「フォーチュン・グローバル500」などで知られる米ビジネス誌のフォーチュン誌は8月20日、初めての試みとして事業を通じて社会に変革をもたらしている企業トップ50社を格付した新たなランキング、「Change the World 2015」を公表した。  同ランキングは自社の事業戦略の中核に主要な社会課題を位置づけ、その解決に向けた取り組みにおいて優れた功績を挙げている企業を表彰するものだ。候補企業の選定や格付にあたっては、2011年に「CSV(共通価値創造)」の概念を提唱したことでも知られるハーバード大学のMichael Porter教授や、CSVを世界的な規模で推進しているNPOシンクタンクFSGらが監修を担当した。  初回となる2015年のランキングで1位に輝いたのは、英携帯大手ボーダフォンの合弁会社、ケニアのサファリコムだ。同社のスマートフォンを活用したバンキングシステム「M-Pesa」が、東アフリカやインドなど1700万人以上の人々に対して新たに金融サービスへのアクセスを提供した点が評価された。    2位に輝いたのはグーグルで、3位にトヨタ、4位にウォルマートと続く。トヨタはハイブリッド車のリーディングカンパニーとして自動車業界のCO2排出削減に大きく貢献した点が評価された。そのほか、トップ50社にはスターバックスやユニリーバ、イケアなど優れたサステナビリティ戦略で知られる大手企業が数多くランクインしている。トップ10社は下記のとおり。 ボーダフォン/サファリコム(英国/ケニア) グーグル(米国) トヨタ(日本) ウォルマート(米国) エネル(イタリア) グラクソ・スミスクライン(英国) ジェイン・イリゲーション(インド) シスコ・システムズ(米国) ノバルティス(スイス) フェイスブック(米国)  今回の「Change the World 2015」の発表にあたり、フォーチュンは同社のウェブサイト上で「資本主義」の質的な変化について解説している。同誌は「過去20年間は、中国の指導者らが平等という衣を脱ぎ捨てて自由市場を認めたことにより10億人が貧困から脱するなど、人類の歴史上において資本主義の恩恵が最も際立っていた」としつつ、グローバル化やテクノロジーの進展が貧富の格差を広げている現状や2008年の金融危機の事例などを挙げながら、「賢い経営者は、従来の資本主義とは異なる大きな流れが進行していると感じており、その流れを無視すれば危険にさらされると認識している」と指摘する。    また、同誌は社会的関心の高い消費者や理想を求める従業員、そして懐疑的な市民に突き動かされる形で企業は社会課題を是正する資本主義の力を示す新たな方法を模索しているとしたうえで、従来の資本主義のあり方を修正する必要性を強調している。また、政府の力が弱体化しつつある現状において、資本主義の力がかつてないほどに必要になっていると指摘している。  今回の「Change the World List」は、このような認識のもとに作成されたものだ。経営戦略の一部として社会課題に立ち向かい、課題解決に向けた重要な進展に寄与した企業の実績を評価するというのが格付の主旨だ。ランキングリストでは各社の具体的な取り組み事例も掲載されているので、興味がある方はぜひ下記から確認していただきたい。 【参考サイト】Change the World list 【参照リリース】Introducing Fortune's Change the World list: Companies that are doing well by doing good

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【スイス】ネスレ、2014 Nestlé in society reportの完全版を公表。初のG4対応。

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 食品大手のネスレは4月7日、今年の3月に要約版を公表していた「2014 Nestlé in society report」の完全版を公表した。  完全版のレポートはGRIのG4ガイドラインおよびFood Processing Sector Supplement(食品加工業界補則)に従って作成されている。ネスレがG4に沿ったサステナビリティ報告を行うのは今回が初めてとなる。データは毎年更新され、ステークホルダーは人権、ダイバーシティとジェンダー、気候変動、生物多様性、ガバナンス、腐敗対策などのGRIの定める各分野におけるネスレの進捗状況を確認可能だ。  レポートの記載されている同社の2014年度の主な進捗は下記の通り。 2014年末までに子供向け製品の98%がNestlé Nutritional Foundationの基準をクリア 2014年はヘルシー・グローバル・キッズ・プログラムを73ヶ国、760万人以上の子供に展開 Tier1サプライヤー10,000社のうち8,700社に監査を実施し、そのうち73%でネスレのサプライヤーコードの完全遵守を確認  また、ネスレはG4に沿った報告の一環としてマテリアリティ分析も実施しており、ステークホルダーの関心が最も高い経済、社会、環境課題およびそれらのネスレがもたらすリスクと機会についてまとめている。数あるサステナビリティ課題の中でも同社が特に重要な課題だと考えているのは、栄養(肥満や栄養不足)、水スチュワードシップ、食品の安全性、ビジネス倫理などだ。 (※Nestle:Measuring what matters: mapping the challenges we faceより引用)  2014年のマテリアリティ分析はネスレの既存のコミットメントの精査および改善すべき分野の特定に役立てられ、結果として、2015年に向けた新たな3つのコミットメントが生まれた。  ネスレは2014年のOxfamによる"Behind the Brands"でもトップスコアを獲得したほか、Access to Nutrition Indexでも食品・飲料メーカーでTOP3に選出、Dow Jones Sustainability IndexやFTSE4GOODなどのサステナビリティインデックスにも選出されているなど、CSV(共通価値創造)戦略に基づくサステナビリティ先進企業として知られている。同社のG4レポートを確認したい方は、ぜひ下記からどうぞ。 【レポートダウンロード】2014 Nestlé in society report 【企業サイト】Nestle

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【アジア】CSRアジア、オックスファムと共同でレポート「インクルーシブビジネスを通じたCSV」を公表

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 CSRコンサルティングのCSRアジアは3月19日、貧困問題に取り組む国際NGOのオックスファムとの共同研究の一部として、インクルーシブビジネスを通じてCSV(共通価値創造)を実現する方法についてまとめた報告書、"Creating Shared Value Through Inclusive Business Strategies"を公表した。  今、世界では人口の3分の2が貧困層に属しており、彼らの多くは必要最低限のサービスさえ受けられないでいる。彼らが独力で自らの経済的困難を打破するのは非常に困難な場合が多い。企業は雇用創出やサプライチェーンを通じて貧困にあえぐ人々の苦難を軽減することができるが、今、企業にはそれだけではなく、貧困層の人々を自社のバリューチェーンに巻き込みながら共に発展していくという事業の在り方、インクルーシブビジネスが求められている。  そしてその根幹となるのが「共通価値創造(CSV)」の考え方だ。CSVは事業として成り立つ形で社会的課題を解決することを目指しており、企業に対してグローバル課題の解決、開発への貢献をしながら競争力を高める機会を提供する。CSVは事業の成長、生産性の向上、収益と新たな機会の創出と同時に、貧困にあえぐ人々に収入をもたらし、さらには持続可能な技能やテクノロジーの導入により、環境と資源の保全も実現する。  CSRアジアの代表を務めるRichard Welford氏は「効果的なインクルーシブビジネス戦略は、貧しい人々や社会的弱者に経済的便益をもたらすだけではなく、企業のバリューチェーンの競争力を高める」と語る。  同レポートはインクルーシブビジネス戦略を通じていかにCSVを実現するかを解説しており、また、インクルーシブビジネス戦略の導入に関心を持つ企業が実行するべき、実践的なロードマップを提示している。また、発展途上国で実践されているインクルーシブビジネスの実例も数多く紹介されている。  「CSVアプローチの大きなメリットは、取り組みが自然と拡大していく点にある。企業は社会的ニーズに取り組めば取り組むほど、そのぶん利益は増加する」とWelford氏は語る。  レポートではインクルーシブビジネスによって共通価値を創造する方法は一つではないと結論付けた上で、バリューチェーンの性質を見極め、貧しい人々に利益をたらす援助方法を注意深く設計することが重要だとしている。  インクルーシブビジネスは、急速な経済発展とそれに伴う環境破壊や貧困格差などが深刻化しているアジアや中南米において、今もっとも注目されているビジネス手法の一つだ。発展途上国で事業を展開している企業にとっては同レポートで提示されているフレームワークや事例が多いに参考になるはずだ。レポートは下記からダウンロード可能。 【レポートダウンロード】Creating Shared Value Through Inclusive Business Strategies 【企業サイト】CSR Asia

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【スイス】ネスプレッソのCEOが語るCSV戦略の重要性とそれを実現する方法

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 ネスプレッソのCEOを務めるJean-Marc Duvoisin氏は2月23日、今年5月にニューヨークで開催予定のShared Value Leadership Summitでの講演に先立ち、なぜCSV(Creating Shared Value:共通価値創造)が企業にとって必要不可欠なのか、そして同社の展開するNespresso AAA Sustainable Quality™ Program(ネスプレッソAAAサステナブル品質プログラム)が、どのようにコーヒー農家コミュニティに対して良い影響を生み出しているのかについて、インタビュー形式のプレスリリースを発表した。下記に、その内容のポイントをご紹介する。 ネスプレッソのリーダーとして、なぜ共通価値の重要性は高いのか?  Duvoisin氏は、ネスプレッソのビジネスを持続可能なものにし、高品質なコーヒーという同社のブランドを守るうえでCSVは必要不可欠だとしている。農家に寄り添って働くことで初めて高品質なコーヒーを顧客に対して提供できるだけではなく、コーヒー豆の長期的な供給を確実にし、自社のビジネスを持続可能なものにしてくれると語る。  また、同氏はCSVのアプローチはビジネスモデルと密接に結びついている必要があり、ネスプレッソのアプローチは常によりシンプルで、ステークホルダーへの悪影響を最小限にするように設計されてきたと説明する。 ネスプレッソの業界に影響を与える緊急の社会的課題は何か。また、共通価値のソリューションを通じてどのようにそれらの課題に対処できるのか。  ネスプレッソにとって重要なサステナビリティ課題としてDuvoisin氏が挙げているのが、同社の高品質なコーヒー供給を実現している農家の生活を脅かす、社会・経済状況の変化や気候変動だ。具体的には、それらの影響による農家の生産性の低下や価格の不安定性の向上、通貨レートの変動などの問題を挙げている。 また、同氏は農家の高齢化と若年層離れのリスクについても指摘しており、コーヒー農業という仕事が魅力的であり続けるための方法を模索する必要性を指摘している。 組織内でどのように共通価値に向けたイノベーションを起こすのか。その事例を教えてほしい。  CSVの実現に向けた組織における具体的なイノベーション方法と事例について、Duvoisin氏は昨年コロンビアで開始した、コーヒー農家向けの退職年金基金の取り組みを挙げている。これはコロンビア労働省やサプライヤー企業、フェアトレード・インターナショナルなどとの革新的な官民パートナーシップだという。  また、同社の展開するAAA Sustainable Quality™ Program自体が、パートナーNGOのレインフォレスト・アライアンスとの協働による革新的なCSVの取り組みだとしたうえで、共通価値を創造し、良い影響を生み出すためには、パートナーシップが必要不可欠だと強調する。 社会的価値とビジネス上の価値の関連性について何を学んでいるか。  Duvoisin氏は、共通価値のアプローチを自社のビジネスモデルに統合しようとすれば、ビジネスを加速させる革新的なソリューションが見つかるだけではなく、農家の人々に対する社会・環境面の価値も見つけることができると語る。  同氏によれば、実際にネスプレッソのAAA Programに参加した農家は、参加していない農家と比較して、社会的状況が22.6%改善し、環境の状況が52%改善、経済的な状況が41%改善されたとの報告が示されているとのことだ。  また、社会的価値とビジネス価値が結びついた具体的な事例として同氏が語るのが、コロンビアにおける地域パートナーのセントラルミル社との、コーヒー豆の品質向上に向けた共同出資の事例だ。この取り組みでは、それぞれの農家がコーヒーの実をコーヒー豆へ加工する代わりに1か所へまとめた工場で加工を行うことにより、コーヒー豆の品質を保ち、コーヒー豆の損傷率を大きく削減することに成功した。  その結果、出荷前の品質チェックにパスできなかったコーヒー豆の割合を約50%からほぼ0%まで低下させることに成功し、農家は以前の2倍ものAAAレベルのコーヒーを生産できるようになり、純収益が17%増加し、農家の生活レベルが改善されたとのことだ。  さらにこの取り組みは収穫期における農家の人々の労働時間を4時間以上減らすことに繋がり、農家の人々は余った時間を利用し、家族と共に農場の管理に時間を割けるようになったという。また、環境面からみると、セントラルミル社は水使用量を以前と比べて63%まで削減させることに成功したという。Duvoisin氏はこの成功事例をトリプル・ウィンと呼んでいる。 共通価値の実現に向けて、あなたが直面している最大の課題は何か。そうした課題を克服するためにどのような機会の展望を持っているのか、またこうした取り組みを独自に進めるのか、それともパートナーと共に進めるのか。  Duvoisin氏は、共通価値の実現には時間と資源が必要で、忍耐強く、謙虚に適応と改善に取り組む必要があるとしたうえで、それは決して一人で行うことができず、パートナーが必要だと語る。また、ネスプレッソが実際に直面した課題としては、農家の人々にAAA Programへの参加を説得する難しさを挙げている。  AAA Programへの参画にあたっては、これまでの仕事のやり方にプライドを持っている農家からの抵抗もあり、中にはネスプレッソの提案する方法が間違っており、自身のこれまでのやり方が正しいということを証明するためにAAA Programへと参画した農家もあったとのことだ。しかし、その農家も実際にプログラムに参加してみて考えが変わり、ネスプレッソが提供する支援やアドバイスの価値を理解してくれたことが最高の喜びだったと語る。  いかだろうか。Duvoisin氏の言う通り、共通価値の創造は即座に実現できるものでは決してなく、多様なパートナーとの連携と長期に渡る地道な努力が必要不可欠だ。CSVを理論だけではなく実際に実践に移すことで多くの成果を挙げてきた同社の取り組みから学べる点は多い。インタビューの詳細についてより詳しく知りたい方は下記からどうぞ。 【参考サイト】Nespresso CEO explains how the company’s approach to creating shared value drive positive impact for coffee farmers 【企業サイト】Nespresso (※写真提供:Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com)

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【TED】マイケル・サンデル対マイケル・ポーター 〜社会正義とCSVとは〜

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 今回ご紹介するのは、ハーバード大学の教授で著書『これからの正義の話をしよう』でおなじみのマイケル・サンデル氏と、ハーバード・ビジネス・スクールの教授で、CSVの提唱や著書『競争の戦略』で有名なマイケル・ポーター氏の討論動画だ。  それぞれの主張は同日に開催されたTED「Why we shouldn’t trust markets with our civic life」(マイケル・サンデル氏) およびTED「Why business can be good at solving social problems」(マイケル・ポーター氏) で明らかになっており、世界を代表するマイケル同士の対談とあって注目を集めた。 両者の基本的な立場はこうである。 マイケル・サンデル氏  市場原理がいたるところに登場した結果、現代社会はもはや「市場社会」と化してしまっており、日常に現れる全てのものに値段が付く現状を憂慮すべきだという。  現在たとえば、それが裁判の公聴の整理券獲得のためであれ、テーマパークの順番待ちであれ、お金を払うことで自ら順番を待つ必要はなくなっている。刑務所ですらお金を払うことで部屋をアップグレードできるのだ。  そのような市場社会に我々が不安を感じる理由は以下の2つだとしている。 1.資産の有無による不平等が発生するから 2.市場原理を導入することで物事の本質が失われるから  まず(1)について、お金で手に入るものが贅沢品に限られれば不平等はさして問題でないものの、市場社会においてそれは保険や教育など豊かな生活に不可欠なものにまで顕在化してきている。すべてが自由市場化することは、文字通りお金がモノを言う社会を指し、市民生活に不安感を与えているという。  そして(2)とは、すべてのものに値段がつくことで、それぞれの事柄が持つ意味合いを変えかねないということである。具体的には、成績を向上させることを意図して、子供に「本を一冊読んだら$2」といったモチベーションを与えた場合、目的は成績向上ではなくお金になってしまい、本を読むという行為を完遂するために薄い本を読み出し、結果的に成績は伸びないという。つまり、このようにお金が介在することにより本来的な意味が失われてしまうということが日常生活に現れることを危惧しているというわけだ。 マイケル・ポーター氏  一方、ポーター氏はNGOや慈善活動が社会に与えることのできる規模の小ささに焦点を当て、資本を基に大規模改善を図ることのできる経済主体としての企業の在り方を提唱している。  現在、我々は温暖化や大気汚染など様々な社会問題を抱えている。それに対してNGOらが取り組んでいるが資本規模的に大きな成果を出せずにいるという。そこで同氏が着目したのが、企業の事業活動を通した社会問題解決である。今まで社会問題への取り組みというのは企業にとってコストであり、利益とトレード・オフの関係になる慈善活動としての位置づけに甘んじてきた。しかし、実はこれはトレード・オフでないだけでなく、社会問題に真剣に向き合うことで利益に繋がることがわかってきているという。たとえば労働環境を整え事故発生率を抑えるためにかけたコストは事故による補償や悪評といったコストより低く、これにより「劣悪な労働環境」という問題を解決するといった例がこれに当てはまる。  同氏はこれをCSVと呼び身を切る社会貢献とは別物として紹介している。 (詳細は『【戦略】CSRからCSVへ? 〜CSV、CSR、サステナビリティ、CR、SRの違い〜』へ) 経済的・社会的価値の創造主体としての“ビジネス”を打ちたて、NGOや政府と協力することこそ、これからの社会問題に対峙に必要だという。 両者の問題認識  市場経済の浸食を危惧するサンデル氏と、市場の可能性を標榜するポーター氏。一見すると両者は対立するように見えるが、実はそうではない。  本動画でサンデル氏が言明しているように、同氏が危惧しているのは市場原理が日常生活にまで入り込み、自由市場の下にすべての事柄に値段がつけられる社会であり、市場経済そのものはむしろ【ツール】として利用するべきだとしている。これはポーターが提唱するビジネスによる経済的・社会的価値創造を否定しているわけではない。  もちろんポーター氏が主張する“ビジネス”による社会問題解決とは、市場経済を利用したものであるため、それが市場社会にまで及んでいる場合はサンデル氏に非難されるべき対象になるといえよう。しかし、今回ポーター氏が提唱したCSVとは「日常のすべてのものに値段が付けられた社会」を条件に行われることではなく、社会問題を解決する【ツール】として企業活動という市場経済を利用しているに過ぎない。例えば、サンデル氏は、文化的・精神的なものにまで市場経済という得体のしれないものが一方的に「価格付け」することを大きく危惧している様子があるが、ポーター氏のCSVのもとでは、価格付けとはむしろステークホルダーとの関係性を通じて形成され、その中には社会的価値や環境的価値が含まれていくだけでなく、市民・地域社会の価値観もその中に包摂されていく。企業活動がモチベーションとするコストメリットとは、そのような多様な価値観の中で形成された「価格」によって行われていくため、サンデル氏の懸念は、ポーター氏のアイデアによってむしろ解消していくとも言える。  今回、両者の対談を経て、行き過ぎた市場経済は市民生活を苦しめ得るが、市場経済は上手く使うことで現代社会が抱える問題の解決に寄与し、市民生活の豊かさにも貢献することが改めて明らかになった。「正義とは何か」で著名なサンデル氏との対話によって、CSVの哲学もより磨き上げられたのはないだろうか。

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2015/03/18 事例を見る
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