【1/10@東京 セミナー】CSRアジア東京フォーラム2019〜「サステナビリティごっこ」からの脱却〜

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 今年は「透明性とは? 日本企業が目指すべき世界レベルのインパクトあるサステナビリティ」がメインテーマです。世界では「透明性」「インパクト」「誠実さ」が企業が持続可能であることの条件です。たとえば、これまで問題など起きないだろうとされてきた日本企業による日本国内のサプライチェーンの中ですら、人権侵害など想定外の事態が散見されます。  また、世界で問題視されているマイクロプラスチックの対策も日本企業は「様子見」が多く、横並び意識から脱せません。基調講演として貧困漁民から仕入れた海藻を原料に食べられるプラスチックを実用化しているインドネシアの新進気鋭の若手実業家を迎えます。  日本企業が陥りがちな「サステナビリティごっこ」からの脱却を目指すため、サステナビリティの最前線に関わるスピーカー陣らがこの日のために世界中から参集し、みなさんと知見を共有するビッグチャンスです。この機会にぜひご参加ください。(通訳付) 【日時】2019年1月10日(木) 10:00~17:00 (9時45分受付開始) 【場所】飯田橋レインボービル会議室 (東京都新宿区市谷船河原町11) 【アクセス】JR飯田橋駅西口、地下鉄飯田橋駅神楽坂 B3出口 【参加費】21,600円(消費税込)*昼食、資料代が含まれています。 【主催】CSRアジア 東京事務所 【お問合せ】japanoffice@csr-asia.com 【詳細】http://csr-asia.co.jp/tokyoforum2019/ CSRアジア東京フォーラム2019 予定プログラム 9:45  受付  10:00  開会のご挨拶: CSRアジア日本代表 赤羽真紀子 10:05  基調講演:貧困問題とプラスチック問題を同時に解決:インドネシア発イノベーションで世界に挑む      デイビッド・クリスチェン氏 Evoware社 (海藻由来の食べられるプラスチック開発) 10:55  プレナリーセッション1:ロレアルのサステナビリティへのコミットメント:すべての人が美しく      デルフィーヌ・ブーヴィエ氏 ロレアル・リサーチ&イノベーションセンター基礎研究所所長 11:25  休憩 11:40  プレナリーセッション2: 掘り下げてみる サプライチェーンの深層      リチャード・ウェルフォード CSRアジア会長 12:20  昼食 13:20  分科会A1:イノベーションと技術を用いた責任あるサプライチェーン:アジア企業の事例紹介      ワースー・シーヴィーバー氏 サシン経営大学院      分科会B1:エシカル・ソーソングワークショップ「本当に起きていること」      青沼愛 CSRアジア アソシエイト 14:50  休憩 15:10  分科会A2: 世界潮流:デジタル時代の報告書のコツ      アーロン・スローンCSRアジア 香港事務所      分科会B2:対談:「社会監査で日本企業の工場をよく見てみると」      青沼愛 & レイモンド・ハン (エレベイト社北アジア統括) 16:45  閉会のご挨拶 赤羽真紀子 (CSRアジア 日本代表)  *上記プログラム内容は一部変更される場合がございます *日英の同時通訳がつきます *昼食はお弁当をご用意いたします *お申込みは先着順で受付け、満席になり次第締切ります

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2018/12/28 行動する

【香港】オックスファム、食品企業大手61社の2014年度サステナビリティ評価を実施

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 国際NGOオックスファム・インターナショナルの香港支部オックスファム香港は10月17日、CSRコンサルティングのCSRアジアと共同で、香港の食品大手のサステナビリティ評価結果を発表した。対象となったのは香港証券取引所に上場する食品関連企業61社。2014年度のホームページ等公開情報を元に企業を評価。100点満点で30点以上を獲得した企業は3社しかなかった。  今回の調査は、GRIガイドラインを基に、二酸化炭素排出量、エネルギー消費量、水消費量等環境に関する27項目と、ダイバーシティ、差別、人権、地域社会への配慮、政治献金、雇用慣行等社会に関する66項目の計93項目で評価を行った。環境と社会それぞれについて点数が集計され、その平均点が総合スコアとなった。同調査では、公開情報では補足できない情報やSDGs関連の情報等を収集するため、企業に個別の調査票が送られたが、回答をした企業はゼロ。そのため、公開情報のみでの評価となった。  総合スコアでは、40点以上の企業はなく、30点台が3社、20点台が3社、10点台が20社、一桁台が35社で、平均点は100点満点で10.6。非常に厳しいスコアだった。また、環境、社会別では、環境については40点台の企業が1社、30点台が3社ある一方、社会については40点台はゼロ、30点台が1社と、環境のほうが点数が高かった。オックスファム香港はこの状況について、GRIガイドラインの項目は多岐に渡るため、そもそも香港企業では開示に課題があると言及した。  香港証券取引所は2015年12月21日、上場規則の中のESG報告ガイドの内容を変更し、上場企業に対し「Comply or Explain原則」に基づくESG情報開示義務化を発表した。同ルールは、2段階で導入され、第1フェーズは、2016年1月1日以降の会計年度より標準項目開示が、次に第2フェーズとして2017年1月1日以降の会計年度より環境KPIの開示が義務化される。今回の調査は、2014年度の開示状況を対象としたため、香港証券取引所のESG情報開示義務化の影響は反映されていない。  また、GRIガイドラインは、マテリアリティ(重大性)のある項目の情報開示を要求しており、ガイドライン全ての開示を評価体系とした今回の調査手法は必ずしも適切とは言えない。だが、NGOの勝手格付は欧米でも企業の情報開示推進に少なからず影響を与えてきた。香港証券取引所の義務化ルールと、NGOの監視により、香港企業にも変化が現れてきそうだ。 【報告書】An assessment of Environmental and Social transparency of food related companies currently listing in Hong Kong Stock Exchange

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【香港】CSRコンサルティングELEVATE、CSRアジアを買収。両社のサービスエリアを相互にカバー

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 CSRコンサルティングのCSRアジアは2月22日、企業のサプライチェーンにおける社会・環境コンサルティングを提供しているELEVATEに買収され、傘下に入ったと発表した。CSRアジアとELEVATEはともに香港に本社を置いているが、CSRアジアは日本や東南アジアに拠点を持つのに対し、ELEVATEは中国や南アジアの他、北米や欧州にも拠点を持つ。今回の買収により、両社はお互いのカバーエリアを拡大できる。  ELEVATEは2013年に、香港に本社とする工場生産性向上コンサルティング企業Legal Worksと、同じく香港に本社を置き中国での事業の社会性向上コンサルティング企業INFACT Global Partnersが合併し設立された。Legal Worksは、香港、中国、ベトナム、フィリピン、インド、バングラデシュ、スリランカ、トルコ、南アフリカ、英国、米国、メキシコ、エルサルバドルなど世界の広域をカバーしてきた。一方INFACT Global Partnersは、中国で強かった。この両社の合併後、拠点の配置は多少変ったが、ELEVATEは今でも、香港、中国、ベトナム、インド、バングラデシュ、トルコ、英国、ドイツ、米国、メキシコの10か国に拠点を置き約40カ国をカバー、全体で350名の従業員がいる。  買収されるCSRアジアは、2004年に香港で設立され、現在、香港、シンガポール、マレーシア、タイ、日本、英国の6ヶ国に拠点を持ち、またオーストラリアにも顧客ネットワークを持つ。  CSRアジアは今回の発表にあたり、CSRアジアのオフィスや従業員に買収後も変更はないとしている。これまで通り、CSRアジア会長はリチャード・ウェルフォードが務め、マラ・チオリアンとメイベル・ウォンはエグゼクティブ・ディレクターとして、それぞれCSRアジアの香港およびシンガポール・オフィスを統括する。英国拠点にいるエリン・ライオンは、CSRアジアの業務に加え、ELEVATEのクライアント・サービス・ディレクターも兼任し、ヨーロッパを統括していく。 【参照ページ】ELEVATE and CSR Asia to deliver full value chain sustainability services 【参照ページ】エレベイト社によるCSRアジアの合併について  

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【アジア】「アジアで最も持続可能な100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキング2016年版公表

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 シンガポールに拠点を置くニュース専門テレビ局、チャンネル・ニュース・アジアは9月28日、CSRコンサルティング企業であるCSRアジアおよびサステナリティクス(Sustainalytics)とともに、今年で3回目となる2016年度の「アジアで最も持続可能な100社(2016 Channel NewsAsia Sustainability Ranking)」を公表した。同ランキングは、チャンネル・ニュース・アジアが取り組んでいるCSRプロジェクト「Changing Lives」の一環。このランキングは幅広いESG(環境・社会・ガバナンス)ファクターを考慮し企業をランク付けしている。発表されたランキングでは、テクノロジー関連企業が100者のうち38社と多かった。  今回の調査対象は、中国、香港、インドネシア、日本、マレーシア、フィリッピン、シンガポール、韓国、台湾、タイの11国・地域。トップ100にランクインした企業は、日本(33社)、台湾(22社)、インド(16社)、韓国(13社)の4カ国で82%に達した。これらの国では、サステナビリティ関連の情報開示に関する規制が強化されていることがその背景にあるのではと分析されている。とりわけ日本企業は、トップ20のうち昨年は1社しかなかったが、今年は5社と大きく躍進した。  ランキングのもととなる企業評価では、サステナリティクスが収集している企業のESGデータが使用されている。サステナリティクスは、アニュアルレポートやCSR報告書、企業ホームページなど企業が発信している公開情報とともに、政府発表資料、NGOリサーチデータ、CDPなど国際的な団体が発表するデータ、さらに世界55,000以上の報道ニュースをチェックし、独自に企業のESG評価を行っている。今回のランキングで使われた具体的な項目は、環境イニシアティブ、地域におけるインパクト、従業員に対する処遇、サプライチェーンの管理等に関する情報。各項目で重大なネガティブ報道やNGOからの非難などがあった場合、各項目のスコアから減点がなされている。その上、該当する企業には直接Eメールを送り、企業からのも直接情報収集をしている。2016年7月中旬に送られた今年のEメールでは、約40%の企業がサステナリティクスに回答を寄せた。  トップ100入りした日本企業33社のうち、10位以内に2社、20位以内に5社、一方で40位以下に26社がある。このランキングからは、日本企業の平均的なESG水準の高さが伺えるが、アジア企業の中でもトップ企業は日本の平均水準以上のパフォーマンスを出していることもわかる。トップ10の中に入っているインドIT大手ウィプロ(1位)やインフォシス(7位)、台湾半導体大手TSMCやUMCは世界市場でもプレゼンスが大きい。それ以外でも、インドIT最大手のタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)21位、インド大手ヒンドゥスタン・ユニリーバ(59位)、マヒンドラ&マヒンドラ(62位)、フィリピンの不動産大手アヤラ・ランド(65位)など新興国の大手企業も多数入った。韓国のサムスン電子(35位)、LG電子(37位)他、台湾の半導体や電子電気機器大手も高順位につけている。 アジアのトップ10企業 1位 ウィプロ(IT)(インド) 2位 シティ・ディペロップメンツ(不動産)(シンガポール) 3位 ライトン・テクノロジー(電機電子)(台湾) 4位 ハンコック・タイヤ(輸送機器)(韓国) 5位 Qisda Corporation(電機電子)(台湾) 6位 UMC(半導体)(台湾) 7位 インフォシス(IT)(インド) 8位 TSMC(半導体)(台湾) 9位 カルソニックカンセイ(輸送機器)(日本) 10位 NEC(電機電子)(日本) トップ100入りした日本企業 9位 カルソニックカンセイ(輸送機器) 10位 NEC(電機電子) 16位 国際石油開発帝石 17位 花王 18位 コニカミノルタ 26位 旭硝子 39位 東京エレクトロン 42位 アンリツ 44位 ライオン 46位 富士通 48位 凸版印刷 50位 大和ハウス工業 53位 キヤノン 66位 大阪ガス 67位 クボタ 71位 帝人 72位 ソニー 74位 東京ガス 76位 ルネサスエレクトロニクス 77位 野村ホールディングス 80位 太陽誘電 82位 沖電気工業 87位 古河電気工業 88位 住友金属鉱山 89位 SCREENホールディングス 90位 JSR 91位 パナソニック 92位 アシックス 93位 ニコン 95位 シャープ 96位 NTTドコモ 98位 住友林業 100位 東芝テック 【参照ページ】Technology companies take top spots in the 2016 Channel NewsAsia Sustainability Ranking 【ランキング】TOP 100 COMPANIES IN ASIA (2016) 【メソドロジー】2016 RANKINGS METHODOLOGY

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【インタビュー】ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏「事業成長を支えるグローバルCSR戦略」

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 携帯電話基地局など通信関連機器で世界第2位のシェアを誇り、スマートフォンでは世界第3位のシェアを誇る、中国発のテクノロジー企業があるのをご存じだろうか?それが、今や世界のICT業界を代表する1社となった、ファーウェイ(華為技術有限公司、以下「ファーウェイ」)だ。  中国の深圳に本拠を構えるファーウェイは、1987年の設立以降、積極的な研究開発投資を武器に事業を急拡大させ、現在では世界170以上の国と地域で事業を展開し、160以上の国籍にまたがる17万人以上の従業員を抱えるグローバル企業へと成長している。  2015年の売上高は約3,900億元(約7.2兆円)に達する見込みであり、世界のICT通信インフラを支える企業として世界人口の約3分の1にサービスを提供している。2005年には日本にも進出し、ファーウェイ・ジャパンを設立。現在760名以上の従業員を抱えている。  そんなファーウェイはCSRを事業戦略の核に据えており、従業員が全額出資しているプライベートカンパニーでありながらも自主的に非財務情報開示を継続しているなど、アジアを代表するサステナビリティ先進企業としても知られている。  同社は「Bridging the Digital Divide(デジタル・デバイドの解消)」「Ensuring Stable and Secure Operation of Network(安定性・安全性の高いネットワーク運用のサポート)」「Promoting Green Environment(環境保護に向けたイノベーション)」「Seeking win-win development(相互に利益のある発展の追求)」という4つをCSR戦略の柱に据えて、世界各地でテクノロジーを強みとする革新的なCSRプロジェクトを展開し、コミュニティ投資を行ってきた。  中国発のファーウェイがこの短期間でどのようにグローバル企業へと成長し、その成長を同社のCSR・サステナビリティ戦略がどのように支えてきたのか。そしてそれを実現するために、グローバル、ローカルの双方において社内ではどのようなCSRマネジメントが行われているのか。その秘密を探るべく、Sustainable Japanでは1月18日に開催されたCSRアジア主催の「CSRアジア東京フォーラム2016」に参加するために来日したファーウェイのグローバルCSR責任者、Holy Ranaivozanany氏にインタビューを実施した。  Holy氏はフランスの通信事業者大手、オレンジで組織開発や人材育成、マーケティングなどに携わった後に2011年にファーウェイに入社。現在では同社のグローバル全体のCSRを統括する責任者として活躍している人物だ。フォーラムの講演では同社のコミュニティ投資の取り組みについて、グローバル全体としての戦略とローカルプロジェクトの事例をバランスよく交えながら解説し、改めてファーウェイのCSR推進力の高さを力強く印象づけるとともに、参加者らに多くの気付きを与えていた。  インタビューではHoly氏が強調していたグローバルとローカルにおけるCSRマネジメント推進のポイントを中心に話を伺った。 ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏 インタビュー ポイントは、グローバルにおける一貫性とローカルにおける重要性 ―世界中で多くのCSRプロジェクトを展開しているが、ローカルに最も適したプロジェクトはどのように決定しているのか?  CSRプロジェクトの決定にあたっては、企業としての戦略と地域にとっての優先順位を整合させる必要があります。我々はグローバルにおける一貫性を非常に重要視しており、実施する全てのプロジェクトはCSR戦略の4つの柱のいずれかに関連している必要があります。  加えて、我々はグローバルだけではなくローカルの視点も大事にしており、その地域にとって重要な課題は何かという点を重視しています。それを理解するためには、ローカルレベルのCSRトレンドや優先順位の高い課題を教えてくれるパートナーを特定し、彼らと協働する必要があります。  このように、政府やCSRネットワーク、顧客、学術機関、メディア、ローカルコミュニティなどのステークホルダーと深く関わることはとても大事です。彼らが、我々が向かうべき方向についての理解を深めてくれるのです。また、ローカルの課題は常に変化していますから、常にステークホルダーの声に耳を傾け続け、毎年レビューを行いながら変化に対応していくことも重要です。 CSRプロジェクトを主導するのはローカルオフィス ―例えばマレーシアのプロジェクトについて決める際、深圳の本社にいるHoly氏はどのように情報を得て、どのように意思決定をしているのか?  日本と同様にマレーシアにもCSRチームがあり、責任者がいます。前提として大事なことは、まずグローバル全体で企業戦略に関する共通理解を醸成しておくことです。そのために我々は定期的にトレーニングを実施しています。その上で、マレーシアのチームは何がローカルのコミュニティにとって重要な課題なのか、マレーシアにおける優先順位についても理解する必要があります。  ローカルの状況を理解し、優先順位を定め、それが企業全体としての戦略やCSR上の優先順位とマッチしているかを見極め、それが正しいプロジェクトなのかを判断する意思決定は各ローカルオフィスに委ねられています。そのために、ローカルオフィスはステークホルダーの声を何度も聞きながら地域社会にとってもファーウェイにとっても重要な課題を特定していきます。  このように、マレーシアのプロジェクトについて決めるときは基本的にマレーシアのチームが主導するのですが、そこには私も関わります。なぜなら、その中でグローバル全体に適用できる素晴らしいアイデアを発見する可能性があるからです。例えばマレーシアでは6年間にわたり教育プロジェクトを展開していますが、それはアジアやアフリカ、南米や欧州でも適用できるかもしれません。マレーシアのプロジェクトが我々に新たなアイデアを与えてくれて、グローバルのプログラムに発展する可能性もあるのです。 重要なのはガバナンスとストラクチャー ―マレーシアの場合、ローカルの戦略担当者、CSR担当者、コーポレート全体の戦略担当者、CSR担当者はどのようにコミュニケーションを図っているのか?  ガバナンスと組織構造に関するとても重要な問題ですね。まず、マレーシアのCSRチームとは私が直接コンタクトをとっています。私が彼らにファーウェイ全体としての経営目標とCSR戦略を共有し、マレーシアのチームはファーウェイ・マレーシアとしての目標を共有します。コンタクトポイントを一つにしたほうが簡単ですしガバナンスも明確になりますので、ローカルとのやり取りはこのようにしています。  また、コーポレートレベルで言えば、当社にはCSD委員会があります。この委員会は全ての事業部門から構成されており、その中には戦略部門や人事部門や広報部門、調達部門など全ての間接部門も含まれます。私は、戦略の意思決定にあたってコーポレートレベルでの情報や協力が必要な場合、その中で一人のキーパーソンにコンタクトするようにしています。特定の国や課題について最新の情報を持っているキーパーソンを特定しておくことは非常に重要です。関わる人が多すぎると意思決定が難しくなり、上手く機能しなくなります。だからこそ、コーポレートレベル、ローカルレベルにおいても組織のストラクチャーはとても重要です。 パートナー選定のポイントは「戦略との整合性」「活動記録」「モニタリング」 ―ローカル・パートナーを選定する際の判断基準やスクリーニングプロセスは?  我々はパートナー選定における基準を持っており、パートナーシップを締結する前にデュー・デリジェンスを実施します。その際の最初のポイントは、我々の事業戦略との整合性です。当社の掲げるCSR戦略の4つの柱と全く関わりがないパートナーと協働することはできません。また、相手の過去の活動記録も確認します。パートナーシップの締結は結婚のようなものですから、提携先が過去に社会からの信頼を損ねるような大きな問題を起こしていないかなどを確かめる必要があります。  そして、提携時には互いの責任と役割を明確にすることも重要です。我々が望むのはパートナーシップであり、スポンサーシップではありません。ただお金を提供するのではなく、実際に自社が貢献することを望んでいますので、互いの責任と役割についての共通理解が得られるかは重要です。例えば、当社は技術的なサポートを提供し、相手はコンテンツを提供する、といった形で、お互いがそれぞれ何を期待されているのかを明確にすることが大事です。  その上で、明確なモニタリングプロセスを用意します。例えば3年間のパートナーシップを締結するとして、その間にどのように資金が使われたのかを何もチェックしなかったとしたらそれはお互いにとって時間とお金の無駄になってしまいます。もちろんローカルのプロジェクトを主導するのはローカルオフィスであり、パートナーなのですが、我々が常に現場にいられるわけではない以上、明確なガバナンス、モニタリング、トラッキングができるかという点は重要になってきます。 ステークホルダーからフィードバックを得る仕組みづくり ―プロジェクトの成果(アウトカム)はどのように測定しているのか?  具体的な成果の測り方は、担当するステークホルダーによってそれぞれ異なります。当社にはCSD委員会があり、そのメンバーはフルタイムでCSRに従事しています。責任は一人一人に移譲されており、例えばサプライチェーン担当のメンバーは、何社のサプライヤーに対してトレーニングを実施したか、サプライチェーンの安全衛生環境がどの程度改善されたかなどの指標に責任を負っており、その進捗を管理しています。  また、我々は毎年マテリアリティ・イシュー・アセスメントというサーベイを実施しており、政府やメディア、顧客、サプライヤー、地域社会、学術機関など、200以上のステークホルダーに対して調査を実施しています。それによりステークホルダーが重要だと考えている課題を把握し、毎年情報をアップデートします。  我々はその結果を共有し、ステークホルダーの関心の高さと、自社にもたらすインパクトという2つの観点からそれらをマッピングすることで、我々が目を向けるべき最も重要な課題を特定します。  さらに、我々は当社だけではなく、我々のパートナーも有益なフィードバックを得られる機会も設けています。具体的には自社が主催でカンファレンスを開催し、ステークホルダーから影響力のある人々を集めて相互理解を深めるための会議を行います。これは当社にとっても大きな利益をもたらしますが、出席した全員が多くのフィードバックを得られます。  2014年には深圳で初めてサステナビリティカンファレンスを実施しました。そのときは参加者の多くがテクノロジー業界でしたので、テクノロジーの話題が中心となりました。2015年には少しアプローチを変えて、夏にヨーロッパのブリュッセルで会議を開催しました。  その際はテクノロジー業界から対象を広げ、小売業界など他業界からも参加者を招きました。もしかしたら彼らと協働できることはないかもしれませんが、異なる業界の話には驚くべきことが多くありますので、その中から素晴らしいアイデアが見つかるかもしれません。  そして昨年12月には、日本オフィスの協力も得て、SDGsに関するテーマでステークホルダーを集め、25名という小規模のサステナビリティサロンを開催しました。これは当社について話す場ではなくSDGsについて話す場です。国連からゲストを招いてSDGsについて話してもらい、コカ・コーラやVISAなど異業界の担当者、アカデミアの人々も招きました。  このように、当社ではサーベイ以外にも他者から学び、フィードバックを得られる新たなプラットフォームづくりに取り組んでいます。 ローカルの仲間が共有するローカルのストーリーが、グローバルに共感を呼ぶ ―サステナビリティレポートの中で、ケニアから日本にいたるまで非常に多くの国々の課題を網羅しているが、どのようにそれを実現しているのか?  我々も以前は年次のサステナリティレポートと各地域に特化したローカルレポートとを別々に作成していました。今でもいくつかの地域ではローカルレポートがあります。我々は170ヶ国で事業を展開していますから、全ての国の課題についてレポートの中で触れることはできません。  しかし、我々はできる限り多くの地域の異なる課題に対する異なる事例を紹介しようと努めています。なぜなら、そうすることで国を超えてパートナーや他企業に対し、我々の取り組みに加わるように鼓舞することができるからです。実際、ほとんどのケースにおいて我々が取り組んでいる課題はグローバルイシューですから、例えばウガンダで起こっている問題は、他の多くのアフリカ諸国の人々の共感を呼ぶかもしれませんし、南米諸国の人々に響くかもしれません。また、我々は先進諸国が高い関心を持つ課題についても取り上げており、バランスをとろうと試みています。これを実現する上で重要なことは、我々にはローカルのステークホルダーにアプローチすることができ、ローカルのストーリーを共有してくれる仲間がいるということです。 CSRにおいては、全ての国が等しく重要 ―事業機会が多い国のCSRプロジェクトを重視するなど、国ごとの優先順位づけはしているのか?  全ての国が等しく重要だと考えています。当社はほぼ全ての国々でCSRプログラムを展開しており、その規模や内容は国によって異なりますが、それは国としての優先順位があるからではなく、各地域のローカルな課題やニーズに基づいているからです。  例えば日本では環境問題に積極的に取り組んでおり、植林活動もその典型例の一つですが、他の国では環境よりも教育のほうが重要かもしれません。解決すべき課題はローカライズされるべきであり、そのために我々はローカルのステークホルダーと協働する必要があります。そうしない限り、インパクトを生み出すことはできません。  より多くの人々が関心を持ち、より多くのステークホルダーがいる課題という意味での優先順位付けは大事ですが、ポイントは、あくまでそれらがローカルの人々にとって本当に重要な課題なのかどうかという点なのです。  もちろん、我々も完璧ではありません。大事なことは、限られた資源の中でいかに大きなインパクトを生み出せるかという点です。我々の場合、専門はテクノロジーですから、いかにテクノロジーを活用して貢献できるかを考えます。我々にはテクノロジーに精通した人的リソースがあり、ナレッジが共有できる。そしてそれは時にお金に代えがたいほどの価値を生み出します。ただお金を寄付するよりもはるかに大きなインパクトを生み出せるのです。 きっかけは海外進出。外部からの支援がCSRレベルを高めてくれた ―ファーウェイは一般的な中国企業と比較してはるかに先進的なCSRを展開しているが、何かきっかけがあったのか?  きっかけは、2000年から本格化した海外進出です。そのとき経営陣は、環境や社会といった側面に配慮をしなければ事業を継続することはできないことを悟りました。今から16年前のことですから、とても早い時期ですね。しかし、本当の意味でCSRやサステナビリティの重要性を理解し、それを戦略レベルで実行するまでにはそこからさらに数年がかかりました。  当時から経営陣からの多大なるサポートはあったのですが、実際に戦略を実行するミドルマネジメント層が、具体的に何をすべきかが分からなったのです。我々にはコアとなる事業がありますが、サステナビリティがそれらの事業にとってどんな意味を持つのかを理解するのに時間がかかりました。サステナビリティ報告書を発行し始めたのも2008年のことです。当社はプライベートカンパニー(非公開企業)ですので報告する義務はないのですが、我々はそれが改善の手助けとなることを知っていますので、現在もレポートを発行し続けています。  また、2004年に国連グローバルコンパクト(UNGC)に加盟したのですが、これはとても良い経験となりました。なぜなら、UNGCは我々にフレームワークを与えてくれたからです。UNGCの提示する10原則は戦略を形作るうえで非常に役立ちました。我々は今もなおUNGCと密接に協働しています。彼らは中国ネットワークも持っていますし、ニューヨークを拠点とするグローバルネットワークも持っています。UNGCはサステナビリティ課題の優先順位を決める上でも役立っています。  そして、UNGCと同様に大きかったことは、パートナー、とりわけ我々の顧客企業が、当社のサステナビリティの取り組みを手助けしてくれたという点です。特にヨーロッパの顧客企業は様々な要求を通じて我々のCSRの水準を高めてくれました。これこそが、我々が現在サプライヤーを支援している理由でもあります。我々が彼らにしてもらったことを、今度は我々がサプライヤーに対してお返しする番なのです。 ブリティッシュテレコムのサプライヤーフォーラムでゴールドを受賞 ―具体的にどのような企業が後押ししてくれたのか?  多くはヨーロッパの通信キャリア企業でした。彼らは非常に先進的なサステナビリティ戦略を持っており、我々にそのやり方を示してくれました。例えばブリティッシュテレコムは"Better Future Supplier Forum"(BFSF)という非常にユニークなイニシアチブを展開しています。  昨年、我々はBFSFでゴールドサプライヤーとして表彰されました。2年前はシルバーでしたので、我々の取り組みは改善されたということです。常に自らの課題に挑戦し続け、改善を継続する上でこうしたイニシアチブの存在はとても重要です。 ミドルマネジメント層への働きかけ、経営陣の理解 ―経営陣からのサポートには満足しているか?現状の課題は?  経営陣はとても協力的で、これは素晴らしいことです。現在の我々の課題は、いかにミドルマネジメント層を巻き込むかという点です。戦略もあり、経営陣からのサポートもある。あとはその戦略を実行するだけです。我々は部門を超えてミドルマネジメント層に対して戦略の実行を促しており、新しいCSRプログラムを開始するときは彼らからのサポートを得ようと努めています。  これは簡単なことではありませんが、我々にはCSD委員会があり、四半期ごとに全事業部門が集まり進捗を確認する機会があります。これはとても良い仕組みです。なぜなら、目標の達成に向けた障壁があれば、経営陣がそれをサポートすることができるからです。  一方で、経営陣は協力的ですが、この機運を失わないことも重要です。彼らのサポートを受け続けるためには、常に彼ら自身に関与してもらい、常に状況は変化しているということ、例えば彼らが数年前に決定したことはもう機能しないかもしれないといったことを理解してもらう必要があります。そのためには、彼らに対してCSRが進展していることを示す必要があります。  これはとても重要なことで、もしも彼らがCSRと事業戦略との関連性や実行したプログラムの結果を見ることができなければ、彼らのサポートや推進力を失ってしまう可能性があります。だからこそ我々は社内のコミュニケーションを強化しており、経営陣に対してもCSRのトレーニングを実施し、最新の課題やトレンドを伝えながら、我々は変化し、適応する必要があり、ときには優先順位を変える必要があるということを理解してもらおうと取り組んでいるのです。 オフライン、オンライン双方を活用したCSRトレーニング ―世界中にオフィスを展開しており、多くのミドルマネジメント層を抱えていると思うが、どのようにトレーニングに取り組んでいるのか?  いくつかの方法があります。幸運なことに、本社では外部のトレーナーがいます。我々はBSRと協働しており、彼らは専門家としてサプライチェーンや環境など様々な課題に関するトレーニングをCSD委員会に対して定期的に実施してくれています。  しかし、その場には海外拠点のスタッフは参加できませんので、我々はオンラインプラットフォームを活用して研修資料を共有したり、ビデオカンファレンスを行ったりしています。私自身も年に一度はローカルオフィスから責任者を集め、半日かけてCSRトレーニングを実施しています。  このようにオンライン、オフライン、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを通じてトレーニングを行っていますが、全ての情報はオンラインプラットフォーム上で更新されています。全ての国を網羅するためには、テクノロジーを活用する必要があります。 SDGs達成の鍵を握るのはテクノロジー。業界を超えた協働も必要 ―MDGsとSDGsの一番の違いとして「テクノロジーによる解決」を挙げていたが、テクノロジーとサステナビリティの関係についてはどう考えるか? [caption id="attachment_21038" align="alignright" width="350"] UNHCRとの協働により、ケニアの難民キャンプでタブレットを使った教育を展開[/caption]  テクノロジーとSDGsとの間には非常に高い関連性があると考えています。SDGsで掲げられた17の目標のうちいくつかは我々がこれまで取り組んできたことと非常に関わりが深く、テクノロジーの活用により確実に目標の実現を後押しできる分野だと言えます。  例えば教育は非常に重要なテーマですが、これには単なる能力開発といった観点だけではなく、遠隔地における教育課題の解決に向けていかにコミュニケーションテクノロジーを活用するかといった点も含まれます。ビデオカンファレンス、スマートフォン、アプリ、タブレットなどをどう活用するかも重要です。こうした活動は既に我々が行っていることでもあり、例えばケニアの難民キャンプでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と協働し、彼らにタブレットを提供することで難民の子供たちの学習支援を行っています。 ※参考記事:Innovation: Instant Network Schools open up a new world for Somali refugees ※参考記事:Huawei supports Vodafone Foundation Instant Network Schools Programme with tablet donation  ヘルスケアの分野も同様です。健康のモニタリング用デバイスやデータ収集、リモート手術など、テクノロジーが解決できることは数多くあります。  そして最大のグローバルイシューの一つでもある気候変動について言えば、スマートシティの推進もテクノロジーの活用分野です。COP21では各国に向けてCO2削減に向けた更なる努力を求める合意が実現しましたが、その手段の一つとして不可欠なのがスマートシティです。全ての交通や住宅をスマート化するというのはとても野心的な目標ですが、一歩ずつ着実に取り組んでいくことが重要です。  これらの課題は確実にテクノロジーが解決できるものです。MDGsの時期を振り返ってみると、我々は現在のようなテクノロジーを持っていませんでした。テクノロジーは我々により多くの機会をもたらしているのです。  将来的には、より業界横断型の協働も必要となるでしょう。例えばCO2排出を削減し、低炭素経済への移行を推進するためには、我々ICT業界が自動車業界やインフラ業界といかに協働するかが鍵を握っています。 プログラムに参加した学生とは常にコンタクトを取り続ける ―コミュニティ投資についての話があった。コミュニティ投資のメリットとして人材プールを作ることができる点を挙げていたが、人材が実際に育つまでには時間がかかる。そうした中・長期的な投資について、どのようなマネジメントをしているのか?  それはとても重要なテーマで、フォローアップについての話です。我々は学生を対象とするSeed for the Futureというプログラムを展開しています。プログラム参加者の中には修士や博士に進む学生もいれば卒業してすぐに働き始める学生もいますが、我々はプログラムの終了後も参加者全員とコンタクトを取り続けています。(※参考PDF:Seed for the Future) [caption id="attachment_21036" align="alignleft" width="350"]Seeds for the Futureの様子(2015年8月)[/caption]  我々のプロジェクトへの参加機会を提供することもありますし、単にイベントへ招待するだけのこともありますが、我々はプログラムの終了後も彼らのキャリアパスをフォローできるように努めています。  例えば、企業レベルでの取り組みとしては、我々はオンラインプラットフォームのリンクトインにコミュニティを作っており、プログラムに参加した全ての学生がそのコミュニティに参加しています。我々はそこで彼らの進路を確認することができますし、ICT業界の最新ニュースなども共有しつつ、もし当社に空きポジションがあれば彼らに最初にその機会を伝えるようにしています。例えば日本のプログラムに参加した学生が日本ではなくスペインでの就業を希望する場合、彼らはそれに応募することもできるのです。  このように我々は彼らとコンタクトを取り続けるためのプラットフォームを持っていますが、さらにローカルレベルでもローカルチームが大学と協力して彼らをフォローしています。もちろん彼らの全員を当社が採用できるわけではありません。一部は我々の顧客企業で働くかもしれませんし、競合企業に入社するかもしれません。しかし、我々はそれでいいと思っています。彼らは依然としてICT業界に関わっているわけですから。  そしてさらに面白いことに、彼らの一部は起業家となります。プログラムに参加し、ファーウェイのストーリーに鼓舞されたのかもしれません。我々も最初はスタートアップでしたから。彼らは会社を作るという決断をしましたが、我々はいつでも彼らに対してアドバイスをすることができますし、将来はファーウェイファミリーになる可能性もあるのです。 CSR部門とHR部門との協働が生んだプログラムが、学生の人生を変えるきっかけに ―サステナビリティ部門とHR部門が協力的な体制を築けている印象を受けるが。  我々CSR部門は、HR部門と多くの面で協働しています。Seeds for the Futureはインターンシッププログラムであり、HRに関わるものです。しかし、このプログラムにはそれ以上の意味があり、採用活動を超えたリーダーシップ育成プログラムなのです。 [caption id="attachment_21035" align="alignright" width="350"]Seeds for the futureの様子(2015年8月)[/caption]  プログラムに参加する学生は中国に来ると、トレーニングの内容を学ぶと同時に中国のカルチャーについても理解を深めます。また、彼らは世界中の仲間とコネクションを作ることができます。我々は現在このプログラムを60ヶ国で展開していますが、参加した学生はたったの数週間で、世界に対してはるかにオープンな視点とマインドを手にします。  例えば日本人の学生はパキスタンとポーランドの学生とチームを組み、そこから多くを学びました。これには採用活動以上の意味があります。我々は彼らに対してグローバルな視点を持つことを望んでおり、将来ビジネスを行う際に、より大きく、よりグローバルに考えられる人材に育って欲しいのです。たった数週間で世界を変えられるわけではありませんが、彼らにとってはその数週間がスタート地点となるのです。  実際に彼らは中国にやってきたときと帰るときでは大きく見違えたようになります。スキルトレーニングとリーダーシップ育成を統合したこれほどユニークなプログラムを私はこれまでに聞いたことがありません。彼らはとても優秀ですが、エンジニアにはテクニカルなスキルだけではなく、人と関わり、物事をより早く前に進めるためのリーダーシップも必要なのです。 「スキル」「カルチャー」「グローバルネットワーク」のバランス ―同様のプログラムをIT各社が提供しているが、他社と比較した際の貴社プログラムの特徴は?  我々のプログラムのユニークな点としては、社内の異なる事業部からエキスパートのエンジニアを呼んで、学生に対して最新のテクノロジーに関するトレーニングを実施します。レクチャーもありますが、それに加えてハンズオン型のプラクティスもあり、展示ホールや工場など社内のキャンパスビジットも多く含まれています。製品がどのように作られているのかを実際に目で見て手で触って確かめることは、我々がグローバルに展開しているビジネスを理解する上でとても良い経験となります。 [caption id="attachment_21037" align="alignleft" width="350"]Seeds for the Futureの様子(2015年8月)[/caption]  また、もう一つのポイントは、彼らに対して中国に対する新たな見方を提供できるという点だと思います。これはプログラムの文化的なパートですが、参加学生は北京に行き、中国語のクラスなども体験しながら、中国の文化に肌で触れます。  さらに、先ほどお伝えした異文化交流も重要な要素です。中国の文化だけではなく、グローバルなメンバー構成によるプラクティスに参加することで彼らは将来的にファーウェイに入社する、しないにかかわらず、グローバルコミュニティの一員になることができます。  このようなプロフェッショナルスキルの育成、中国の文化理解、そしてグローバルネットワークの構築というバランスが、我々のプログラムをとてもユニークなものにしています。 CSRの柱は災害復興 ―日本におけるサステナビリティプログラムの特徴や課題は?  日本チームは素晴らしい働きをしています。あえて海外と日本を比較するとすれば、日本のCSRには災害復興というとても重要な柱があります。これは日本特有の取り組みで、地震の多いフィリピンなどでも同様の取り組みはありますが、日本ほど強いエンゲージメントは実現できていません。  これは我々がグローバル全体で推進しているローカリゼーションの観点からも重要です。ローカルにとって重要な課題に取り組むことが最優先であり、日本の場合、それは災害復興というテーマです。  また、日本はCSRに対する理解という点でも進んでいると思います。これまでは国内にどのようなベストプラクティスがあるかを聞く機会にあまり恵まれませんでしたが、CSRネットワークやプラットフォームなども数年前と比較して増えてきているのは素晴らしいことです。それにより、アジアで何が起こっており、何が重要なのかを理解することができます。災害復興以外に目を向けるべき問題がないか、中国や韓国などと協働できることはないか、など、我々が考えるべきことは多くあり、そのために我々は日本チームとも密接に協働しています。また、我々はアジアについてより大局的な理解を得るために、日本のアカデミアとも協働しています。  さらに、昨年の夏には先ほどご紹介したSeeds for the Futureプログラムに20人の日本人学生が参加し、深圳の本社にやってきましたが、彼らは中国企業がテクノロジー面でいかに進んでいるかを知り、とても驚いていました。  日本人は中国から歴史的に文化面の影響を強く受けているためか、中国といえば「文化」に関するイメージを強く持つ日本人学生も多いようですが、アフリカの学生は中国のイメージについて聞かれると「テクノロジー」だと回答します。このように、中国に対する認識も国によって異なります。実際に今や中国はテクノロジー分野において世界で最も先進的な国の一つです。我々は学生に対してこうしたグローバルに対するニュートラルな視点を持って欲しいと考えています。欧米だけを見るのではなく、もう一つの視点を持って欲しいのです。 あきらめず、社内へ働きかけ続ける。 ―日本のCSR担当者に向けたメッセージをお願いします。  Don’t Give Up!(あきらめるな!)。これが一番大事です。CSRの仕事は、とても長い道のりです。私は既にこの仕事に10年近く取り組んでいますが、残りの人生全てを費やすこともできるでしょう。常に状況は変化しており、常に多くの課題が存在しています。我々は幸運にも経営陣からのサポートを受けていますが、それでもなお我々は取り組みを強化し、継続的に改善を重ねながら彼らに結果を示していかなければいけません。  決してあきらめず、社内に働きかけましょう。「CSRを事業に統合する」というのは言葉で言うのは簡単ですが、1日でできるようなことではありません。マインドセット、プロセス、ガバナンスなど、注意を払うべきポイントは数多くあります。パートナーとの協働やコミュニティ投資よりも前に、まずは社内において共通のビジョンを持つことがとても大事なのです。  そしてそのためには、コミュニケーションが重要です。社内の人々は、あなたが偉大な仕事に取り組んでいるということを知らないかもしれません。もし彼らがあなたの仕事を理解していなければ、彼らはあなたに協力しようとは思わないでしょう。でもお互いをよく知り合っていれば、お互いにより多くの貢献をすることができるのです。だからこそ、社内を歩き回って、話に行くのです。  「戦略を持ち、実行し、コミュニケーションをとり、改善する。」これら全てには多くの努力が求められますし、忍耐も必要となるでしょう。常に創造的で、批判に対してオープンであるべきです。そして、変化に適応できるようにしておくことも大事です。これら全てが、将来大きなインパクトを生み出す上で重要なのです。 インタビュー後記 [caption id="attachment_21024" align="alignright" width="350"]中央右はファーウェイ・ジャパン CSR担当シニア・マネジャー 柳原 なほ子氏)[/caption]  Holy氏が講演の中でもインタビューの中でも繰り返し強調していたのが、「ステークホルダーにとって何が重要なのかを理解すること」、そしてそのためには「ステークホルダーエンゲージメント」が非常に重要だということだ。  社外のパートナーとの協働によるプロジェクト推進やフィードバックの仕組みづくりはもちろん、社内における部門を超えた協働、経営陣やミドルマネジメントへの働きかけ、トレーニングの実施など、あらゆるステークホルダーに対する強力なエンゲージメントがファーウェイのCSR推進力を支えていることが良く分かる。  これらのエッセンスを全て自社に取り入れることは難しいかもしれないが、Holy氏が語るように、まずはステークホルダーと密なコミュニケーションをとり、相手のニーズや課題をしっかり理解するというところからCSRの仕事は始まるということを改めて強く認識させられた。  2015年はSDGsやCOP21におけるパリ合意など歴史的転換点となるイベントが目白押しの年だったが、2016年は各企業がそれらの実現に向けて具体的にアクションを起こす最初の年となる。ぜひHoly氏のインタビューを参考にしつつ、最高のスタートダッシュを切りたいところだ。 参考サイト Huawei Huawei Sustainability CSRアジア東京フォーラム2016 CSRアジア

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【1/18・東京 セミナー】CSRアジア東京フォーラム2016が開催!

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リーバイス、ファーウェイ、インドからスピーカー陣が来日! CSRアジアでは、2016年1月18日(月)に「CSRアジア東京フォーラム」を開催致します。今年は「アジアにおける戦略的価値の創出」をメインテーマとし、アジアでのCSR展開に欠かせないトピックであるサプライチェーン管理、マテリアリティとレポーティング、コミュニティ投資、SDGs、CSV、インドのCSRなどを取り上げ、スピーカーらの実務経験を踏まえてご紹介します。アジアの現場で、実際に指揮をとられる企業のCSRエキスパートから直接お話しを聞けるチャンスです。この機会にぜひご参加ください。(同時通訳付) 基調講演には、リーバイ・ストラウス社グローバル・サステナビリティ・オペレーション部長マヌエル・バイゴル氏をお迎えし、世界ブランドとしてのリーバイスがどうやってサステナブル・バリューチェーンを実践しているかについてお話いただきます。また、インドと中国から、実際に現場で指揮をとられている企業や組織のCSRエキスパートの貴重なお話が聞けるチャンスです。この機会にぜひご参加ください。 フォーラムの詳細 日時:2016年1月18日(月)10時から17時 (9時45分受付開始) 場所:飯田橋レインボービル1階会議室 (東京都新宿区市谷船河原町11) 参加費:21,600円(税込) 詳細・お申込み:http://csr-asia.jp/tokyoforum2016/ 登壇者のご紹介 マヌエル・バイゴル氏(リーバイ・ストラウス社 グローバル・サステナビリティ・オペレーション部長) ホリー・ラネヴォザナニー氏(ファーウェイCSR部長) ニーラジ・ジャイン氏(ウォーターエイド・インド CEO) リチャード・ウェルフォード氏(CSR アジア会長) サマンサ・ウッズ氏(CSRアジア 香港事務所 シニア・プロジェクトマネジャー) お申し込み方法 CSRアジアのウェブサイトからお申し込みを受け付けております。 URL:http://csr-asia.jp/tokyoforum2016/ なお、上のリンクからお申し込みができない場合は、お名前、社名、所属部署、住所、郵便番号、電話番号をご記載の上、下記メールアドレスまでお申し込みください。またフォーラムに関するお問合せも以下までお気軽にご連絡ください。 Email: japanoffice@csr-asia.com 関連URL CSRアジア東京フォーラム2014の様子 【日本】CSRアジア赤羽氏インタビュー 「日本企業の課題は『報告』」

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【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」

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 今年の10月、マレーシアの首都クアラルンプールにおいてCSR・サステナビリティに関するグローバルカンファレンスが2つ開催されました。一つは10月7日~8日にかけて行われた「CSR Asia Summit 2015」、もう一つは10月12日~13日にかけて行われた「Sustainable Brands 2015 Kuala Lumpur」です。  最近ではアジアで大規模なCSRカンファレンスが開催されるケースが増えてきており、世界全体のビジネスやCSR・サステナビリティの枢軸が徐々に欧米中心からアジアへとシフトしてきていることを感じさせます。  アジアは21世紀のグローバル経済を牽引する新興市場として世界中から熱い視線を浴びる一方で、環境破壊や気候問題、貧困や人権など様々なサステナビリティ課題に直面しています。そのような中、アジアのCSR・サステナビリティを牽引するグローバルブランドや現地企業のリーダーらは一体何を考え、どんなことを話し合っているのでしょうか。  今回は、自ら現地に出向いて上記2つのカンファレンスに参加された株式会社レスポンスアビリティの代表を務める足立直樹氏に、アジアの最新のCSR・サステナビリティ事情についてお話をお伺いしてきました。 CSR Asia Summit 2015について Q:今年のCSRアジアはいかがでしたでしょうか。  CSRアジアの年次サミットは今年で9回目となり、クアラルンプールでの開催は今回が2回目となります。今回は開催地のマレーシアをはじめ、シンガポールやタイ、インドネシアなどアジア各国から400名以上の参加者が集まりました。日本からの参加者は私を含めて5名程度と少なかったですが、海外の情報収集にも積極的な大手製薬メーカーや金融機関のCSR担当者の方が参加していました。  今年はマレーシアが開催地ということで、トピックとしては森林やパーム油に関する話などが多かったです。マレーシアのパーム油プランテーション大手、サイアムダービーは副社長が参加するほどで、パーム油の生産に伴う森林破壊というテーマが最も話題となっていました。また、グローバルブランドとしてはコカ・コーラ、ネスレ、VISAなどが参加していました。 Q:今年は9月にSDGsが採択されましたが、当日はSDGsについても触れたのでしょうか?  SDGsについてのセッションもありましたし、企業はSDGsについてもかなり意識をしているなと感じました。CSRアジアはもともとオーストラリアの創業者らが設立した団体ということもあり、アジアだけではなく西洋的な考え方も取り入れているので、SDGsのようなグローバルのトピックについてもしっかりとフォローしていると感じます。 Q:当日発表された「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングでは今年から初めて日本企業が対象になりましたね。  「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングは今回が二回目で、今年から日本企業も対象に入ったのですが、トップ100社のうち32社が日本企業だったというのは当日会場でも話題になっていました。日本はこの分野でも非常に頑張っているなという印象を与えられたのではないかと思います。 (参考記事:【アジア】「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングが公表)  一方で、会場でも何人かの参加者が話をしていましたが、今回ランクインした日本企業32社のうち、トップだったNECの順位は全体で14位でした。トップ20位にランクインできた日本企業はNECのみという結果となり、日本は全体としては頑張っているけれども突出した企業はないという印象も受けました。 Q:ランキングを見て気になるところはありましたか?  1位のウィプロをはじめ、トップ10位の中にインドのIT企業が多くランクインしていました。最近インドは全般的にCSRを頑張っている印象があります。2013年にCSRが法律で義務化されたことも影響しているのかもしれません。  特に今回上位を占めた企業は老舗企業というより比較的新興系のIT企業が多いのですが、新しい企業が頑張っているというのはとてもいいことだと思います。一方、日本では新興企業がCSRを頑張っているという話はあまり聞かないので、少し差を感じました。 Q:サミットに参加していた企業の中で特に目立っていた企業などはありましたか?  今回はセッション数自体が少な目でしたが、全体としては地場企業よりもグローバルブランドのほうが活躍している印象を受けました。特にイケアやVISAなどがアジアで積極的な取り組みを行っているのは印象的でした。また、パーム油の取り組みなどで目立っている地場企業としてはサイアムダービーやムシム・マスなどですね。 Q:どんなセッションが印象に残りましたか?  印象に残ったセッションは、森林に関するワークショップ形式のセッションです。「Conservation vs Development(保全か、開発か)」というテーマのセッションだったのですが、参加者は自分自身がプランテーションを経営する企業の役員になったと仮定して、仮想の国の農地開発に関する判断を求められるのです。現地では農業生産の需要があるものの、開発をするためには自然を破壊しなければならず、また先住民の生活に影響を及ぼす可能性もあります。その状況下において、自分が役員だとしたらどのような判断を下すかについて参加者同士で議論するというワークショップです。  セッションを通じて感じたのは、事業を開発する側の立場になると、環境を破壊する側の経営者の気持ちも分かるということです。自社が保全を重視して開発から撤退するとなれば、自社よりもっとひどい別の会社が開発に参入してくる可能性もあります。そういう意味で、保全を重視して撤退するのがベストな回答とは一概に言えません。  また、意外だったのは、環境保護に取り組むNGOの人々のほうが「どうしようもない会社が入ってくるぐらいであれば、まだ自社でやったほうがまし」という考え方をするという点でした。NGOの中でも実際に問題に直面している人々はより現実的な思考をするということが分かりました。    我々は概してNGOらの主張の結果の部分だけを見てしまいがちですが、その裏には色々な苦渋の決断もあるということを理解する必要があります。また、必ずしもNGOのほうが理想論的に考えていて、企業がそうではないというわけでもありません。実際に相手の立場になって考えてみるという状況を創り出すということはとても有効だと感じました。 Q:とても有意義な気付きのあるセッションですね。他に気になるテーマはありましたか?  「From disaster response to resilience(災害対応からレジリエンスへ)」というセッションがありました。一時期、日本でも震災を機に災害復興の話題が盛り上がったことがありましたが、今や世界では気候変動による巨大台風や大雨洪水などの気候災害が、震災のような例外的イベントではなく毎年一定の確率でどこかに被害をもたらす定常的な災害として認識されるようになってきています。  そのため、災害レジリエンスの向上には一時的なものではなくより組織的な対応が求められるのですが、ここで出てくるのが貧困の問題です。なぜなら、災害で一番被害を受けるのは貧困層だからです。富裕層はそもそも安全なところに住んでいますし、お金があるのでいざとなれば対応もできる。しかし、貧困層は海岸沿いなど被害を受けやすい地域に密集しており、建物も脆弱なので被害を受けるとより立ち直りが遅れてしまいます。まさにこうした部分に貧富の差が表れてしまうのです。災害レジリエンスは単なる災害対応の問題だけではなく貧困問題とも密接に結びついており、その部分をどう支援していくか、という点もポイントになると感じました。 Q:貧困問題は貧困そのものだけではなく他の様々な社会課題とも結びついているのですね。問題解決を考える上で非常に重要な視点ですね。話は少し変わりますが、イベント期間中はヘイズ(煙害)もひどかったと聞きましたが。  イベントが開催された10月7日、8日はちょうどヘイズがひどく、クアラルンプールの街全体が霞んでいました。原因は主にインドネシアで起きている野焼きによる森林火災なのですが、今年はエルニーニョの影響などもあり特に乾燥が激しく、火災が鎮火せずに8月頃からヘイズがひどくなっていたようです。  ショックだったのは、ヘイズに関する状況が今と昔でそれほど変わっていなかったことです。私が最初にマレーシアに行ったのは20年前だったのですが、当時からヘイズは問題視されていました。しかしその後に野焼きは禁止され、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)のような団体もできるなどヘイズ対策はもっと進化していると思っていたのですが、未だ20年前と変わらない状況が続いていました。 Q:ヘイズについては、政府なども対策に乗り出していますよね。  マレーシアやシンガポールの政府も困っており、憤っています。例えばシンガポール政府はヘイズの原因となる企業を排除する動きをとっており、大手小売企業らに対してサプライヤー企業がヘイズと無関係であることを宣言するよう求め、宣言できない企業は政府が運用している独自の環境認証ラベルを剥奪するという措置をとりました。  その結果、フェアプライスやワトソンなど現地の大手小売チェーンがヘイズと関連する疑いがある企業の製品を商品棚から撤去したのです。そのことがちょうど会議の朝に報じられたこともあり、会場でもとても話題になりました。(参考記事:【シンガポール】最大手スーパーチェーンのフェアプライス、APP製品の販売を停止へ) Q:ヘイズの話題は当日のセッションの中でも出てきたのでしょうか?  ヘイズについてはオフィシャルなセッションというより、当日の参加者同士の会話の中で話題が多く出ていたという感じです。というのも、実はヘイズに関わる話はそれほど単純ではありません。  インドネシアで野焼きをやっている人たちがいるのですが、誰が実際にやっているのかは分からない。個人に関して言えば、必ずしも違法とまでは言えないのですが、どれが組織的なのかは判別できない。  また、森林火災を起こしている場所は分かるのですが、それを衛星画像で把握すると、そのうちのいくつかがシンガポールやマレーシアの財閥が出資している企業の管理地域だったりするわけです。つまり、問題が起こっているのはインドネシアなのですが、実は憤りを見せているシンガポールやマレーシアも完全に脛に傷がないわけではないのです。  また、この森林火災の問題については日本企業も無関係ではありません。先日NGOのTuk INDONESIAがインドネシアの森林火災に関わる企業に融資している企業のリストを公開したのですが、その中には日本のメガバンクや商社の名前も挙がっています。日本ではあまり話題になることはありませんが、結局ヘイズの問題一つをとっても全てはつながっているのです。 Q:なるほど、参加者同士の会話から得られる生の情報も大事ですね。  実際にイベントに参加してみると、海外の企業や人々がどんなことを考えているのかが良く分かり、とても勉強になります。また、色々な人が集まるのでネットワーキングの場にもなります。今回は日本からは5名程度の参加でしたが、こうした場に参加しないのはそうした機会を逃しているということですから、とてももったいないなと感じます。  また、今回はサミットの中でブースを出したりセッションに登壇したりした日本企業はありませんでしたが、現地の人々は実際に日本企業が何をやっているのかに興味を持っています。日本企業は色々な取り組みをしているのに、それを知らしめることができないのは残念ですし、ブランディング上ももったいないですね。最初は参加するだけでもよいですし、その次のステップとしてプレゼンテーションを行ったりスピーカーとして登壇したり、もっと自社のことをアピールしていくべきだと思います。 Q:海外のカンファレンスに参加するのはハードルが高いと感じる気持ちも分かります。  なぜ日本企業からの参加者が少ないかというと、大きく理由は2つあると思います。一つは言語の壁です。しかし、言語については個々人として問題があるのなら、会社全体で考えれば、英語ができる人を参加させれば済む話だと思います。社内にそうした人材がいなければ採用することもできるわけですから、それは簡単に克服できることです。実際どこの会社だって、海外でビジネスをするときにはその国の言葉ができる人を雇いますよね。  もう一つの理由は、会議に参加することがどのように役に立つのかが分からない、という投資対効果に対する疑問なのではないかと思います。確かに会議に一度参加しただけで何かが変わるわけではないかもしれません。しかし、実際に参加してみて初めて気づくことは非常に多くありますし、その場での人的ネットワークも自然と生まれます。こうした会議への参加は短期的な成果というよりは長期投資と考えるべきです。少なくとも確実に言えることは、行動を起こさない限りは絶対に成果は出ないということです。 Sustainable Brands Kuala Lumpurについて Q:続いて、Sustainable Brands Kuala Lumpurについても教えて頂けますでしょうか。今年はアジアではバンコクに続き2回目の開催となりました。  私自身は今回初めてSustainable Brandsのイベントに参加したのですが、結果的には非常に面白かったです。Sustainable Brandsはアメリカ発のイベントで、「サステナビリティを事業のブランドにどう結びつけるのか」という観点が中心となっています。実際に当日集まった参加者の属性を見てもCSR関係者は半分を切っている印象で、かなりがマーケティングやメディア関係者という構成でした。  サステナビリティのための会議というよりは、ブランディングにサステナビリティをどう取り込んでいくかという視点が強いのですが、そうした視点からサステナビリティに新たに関心を持つ企業もあることを考えれば、大きな意義があると思います。  また、このサステナビリティのマーケティングやブランディングといった部分は日本企業が一番弱い部分でもあるのです。  トヨタのプリウスなどごく一部の成功例もありますが、日本企業は全体的にサステナビリティをうまくブランド化できているところがほとんどありません。そういった点はSustainable Brandsに参加しているようなグローバル企業から学ぶべき点が多いと思います。  例えば、当日のプレナリーのプレゼンテーションでは、動画を非常に上手に活用している企業が多かったのが印象的でした。動画はものすごく効果的で、30分間の詳細なプレゼンテーションを聞くよりも、3分間の動画を見たほうが心に残ります。 Q:なるほど、CSRアジアとは異なり、ブランドやコミュニケーションといった要素にフォーカスしたイベントということですね。特に印象に残った企業はありますか?  コカ・コーラ、ユニリーバ、イケア、BASFなどは頑張っているなと感じました。グーグルも来ていました。また、グローバルブランドだけではなくマレーシアの現地企業もプレゼンテーションをしていました。マレーシアは大手企業のほとんどがインフラ系の国営企業で、内容としては社会貢献に関する話がメインだったのですが、自社がいかに地域や国に貢献しているかということを今風な手法でプレゼンテーションしており、印象的でした。 Q:今年のSustainable Brands Kuala Lumpurのテーマ、"How to successfully innovate your brand for sustainability Now."の冒頭に"How"とある通り、今回のイベントでは「なぜ」サステナビリティに取り組むのか、という点から一歩進んで「どう」取り組むか、という点に議論の重点が置かれていたと思います。  まさにその通りで、Whyの議論よりもHowの議論が中心でした。これはCSRアジアも同じなのですが、今やアジアではCSRという考え方そのものについては誰も疑問を持っていません。CSRをすること自体は前提として共有されており、参加者は皆それを「どう実行するか」という点に興味を持っています。CSRアジアの場合は「実務としてどうしていくべきか」に焦点を当てていますし、Sustainable Brandsの場合はそれを「どう伝えるか」という点に焦点を当てているという感じです。  いずれにせよアジアでは「なぜやるべきなのか」という議論は既に終わっており、Howにシフトしています。 Q:特に印象に残ったセッションはありましたか?  当日のセッションの中で異色だったのは、マレーシアのSecurities Commission Malaysia(マレーシア証券監督当局)のGoh Ching Yin氏が参加し、プレナリーで話をしていた点です。マレーシアではBursa Malaysia(マレーシア証券取引所)が昨年の12月にFTSEと共同でESGインデックスを開始しました。また、ESG開示の義務化に向けたドラフトも7月に公開しています。(参考記事:【マレーシア】マレーシア証券取引所、サステナビリティ情報開示の義務化に向けた諮問書を公表)  他のスピーカーは基本的に消費者向けにどうブランドを伝えていくかという話をしていたのに対し、同氏はなぜESGが必要なのか、というテーマで投資家に関する話をしていました。投資家もコミュニケーションのターゲットになるということがマレーシアの企業関係者にしっかりと伝わったのではないでしょうか。 Q:イベントに参加する中で見えてきた日本企業の課題というものはありますでしょうか?  内に籠っていてもしょうがないという点でしょう。既にグローバルでビジネスを展開するのが当たり前になっている昨今では、日本の中だけで物事を見ていると誤った判断をしてしまう可能性があります。やはり自ら外に出て現場を見に行く必要性を感じます。大変な部分があるのは分かるのですが、言語の問題など、できない部分は誰かに手伝ってもらえればよいですし、内容的に分からない部分は専門家からアドバイスをもらえればいい。とにかく外に出て、現場で見てみるということが大事なのではないでしょうか。 Q:確かに、国内だけを見ていると、意識せずに誤った判断をしてしまうこともありますね。  日本企業の中には「自社はCSRをしっかりとやっている」という認識を持っている企業も多いと思いますが、それはあくまで国内における評価であって、国際的な評価とはずれている可能性もあります。特にCSRは余技でやるべきものではなく、会社の方向性と完全に統一してやっていく必要があります。そのあたりを国際的な感覚でゼロから考え直していかないと、これまでの取り組みも台無しになってしまいます。 Q:逆に、日本企業のほうが優れていると感じる点はありましたか?  アジアの企業と比較すると、実務的な管理面では日本企業のほうがしっかりできていると思います。環境面の取り組みは特にそうです。ただしそれもあくまで一定の枠の中の話であって、枠をはみ出して新しいことや革新的なことをするという意味では、世界の先進企業と比べると、まだまだ足りないと感じます。  ではアジアの企業が現状それをできているかと言えば必ずしもそうではないのですが、今のアジアを見ていると、とてつもない革新的な取り組みがいつ出てきても不思議ではない勢いのようなものを感じます。そうした実感を持ち、新しい取り組みを生み出すという意味でも、海外の視点というものを取り入れていく必要があります。 Q:自ら外に出てみて「知る」ということがまずは何より大事ですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。 編集後記  今回足立氏のインタビューから感じたのは、日本企業に対する強烈な危機感です。「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングでは日本企業が100社中32社ランクインするなど、日本企業はアジアの中で一定の存在感を見せました。一方で、残念ながらトップ10位には1社もランクインできませんでした。  その大きな原因の一つとして挙げられるのが、日本企業は自社の取り組みを海外で十分に発信しきれていないという点です。CSRアジアの赤羽氏も日本企業の課題について「報告」を挙げていましたが(参考記事:【ビジネス・サービス】CSRアジア赤羽氏インタビュー「日本企業の課題は『報告』」)、足立氏も同様に、海外カンファレンスへの参加やそこでのプレゼンテーションなどのアピール、ブランディングへの活用などを課題として挙げています。  せっかく優れた取り組みをしていても、それが消費者や投資家などに伝わなければCSRやサステナビリティ活動の投資効果は半減してしまいます。社内の中で「CSRは利益につながらない」という考えが未だに根強い企業もあると思いますが、それは活動自体に価値がないのではなく、その後の報告やコミュニケーションに原因がある可能性もあります。  CSRアジアやSustainable Brandsといったイベントは自社の取り組みを世界のCSR専門家やCSR先進企業にアピールする絶好の機会でもあります。最初は参加者として情報収集をしにいくだけでもよいですし、スピーチやブース出展を通じて自社の取り組みを発信するのも効果的でしょう。ぜひ海外の現地イベントに参加してみてはいかがでしょうか。 参考サイト CSR Asiaについて アジアにおけるCSR・サステナビリティの推進を目的として2004年に設立されたアジア最大のCSR戦略コンサルティングファーム。香港を本拠地として、シンガポール、マレーシア、タイ、日本、インドネシア、英国に拠点を持ち、企業向けにCSRリサーチ、研修、アドバイザリーサービスなどを提供している。年に一度開催されるCSR Asia Summitはアジア最大のCSRカンファレンスとなっている。 URL:CSR Asia Sustainable Brandsについて 米国サンフランシスコに拠点を置くSustainable Life Media社が運営するサステナビリティ専門のカンファレンス及びオンラインメディアの総称。コカ・コーラやネスレ、ユニリーバなど50社以上の会員企業を持ち、サステナビリティに関する世界有数のプロフェッショナルコミュニティへと成長している。2006年の設立以降、米国、欧州、中南米を中心に会議を開催しており、2015年3月、タイのバンコクにて初めてアジアにおける会議を開催した。 URL:Sustainable Brands

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【インタビュー】CSRアジア赤羽氏「日本企業の課題は『報告』」

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 今、世界のサステナビリティ・CSR業界ではアジアに対する注目度が急速に高まっています。環境から人権にいたるまで多くの社会課題を抱えるアジアでは、2013年のインドのCSR義務化、2014年の中国と米国のCO2削減に関する歴史的合意など各国の政策的後押しに加え、社会課題を事業機会と捉えて積極的にサステナビリティ活動を展開する多国籍企業や地場企業が急速に増えているのです。  このような状況を踏まえ、日本企業はアジア、そして世界の中でどのように存在感を出していくべきか。今回はアジア最大のCSR戦略コンサルティングファーム、CSRアジア東京事務所の代表を務める赤羽真紀子氏に、これまでのCSR担当者としての自身の経験から見てきたアジアや世界、そしてアジアのCSRの現状、日本企業の課題などについて詳しくお話を伺ってきました。 CSRアジア東京事務所代表 赤羽真紀子氏インタビュー:日本企業の課題は「報告」 Q:まずは赤羽様のこれまでのご経歴をお伺いしたいと思います。どのようなきっかけでCSR分野に関わるようになったのでしょうか?  私はもともと大学時代から環境分野、特に企業の環境対応に興味を持っていました。しかし、当時はちょうど1992年のリオの地球サミットではじめて「生物多様性条約」についての話が出たような頃です。「生物多様性」という言葉自体が非常にマイナーですし、まだ「CSR」という言葉もなく、日本でも環境対応といえば工場の環境対策ぐらいしか取り組んでいなかった時期でした。  そんなこともあり、大学卒業後は直接環境やCSRに関わる仕事ではなく、当時はまだ少なかった女性総合職として金融機関に入社しました。入社後は支店配属となり、顧客対応や事務手続きなど幅広い仕事をしていました。  しかし、入社後3年ほどしてから、もともと興味があった企業の環境対応について本格的に学ぼうと思い、アメリカへの留学を決意しました。アメリカでは環境学の分野で生物多様性について学べたらと思っていたのですが、当時は専門の研究室がなかったので、生物学の研究室に入りました。環境やCSRといった分野に本格的に関わり始めたのはそれからとなります。 Q:アメリカではどのようなご経験をされたのですか?  私が行った大学は学部全体でも日本人が一人しかおらず、最初は言葉も通じない環境の中で差別のような扱いを受けることもあり、とても苦労しました。しかし、その後に学部生のティーチングアシスタントを任されるようになり、そのときの経験はすごく役に立ちました。彼らの実験を毎週1度受け持つことになったのですが、私が生徒たちの成績をつける立場に変わった瞬間、周りの反応が大きく変わったのです。  アメリカは移民社会で、アジアや中東系の移民の子供たちは皆医者になって立身出世するという選択肢を狙います。医者になるためにはメディカル・スクールに行かなければならないのですが、そのためには大学で優秀な成績を収めなければいけません。そこで彼らにとって重要になるのが、私が担当していた生物学の授業の成績だったのです。  生徒たちは少しでも私からよい成績をもらおうとすごく媚びてくるようになり、これまでの言葉もあまり通じず冷たく対応されていた環境ががらりと変わりました。このとき、アメリカで移民が生き抜いていくためには厳しい競争を勝ち抜ける必要があり、その背景には根強い学歴社会があることを実感しました。「自由の国」アメリカの裏の側面を見た気がして、どのような社会にも外からは見えない課題があることを知りました。 Q:環境以外にも様々な学びがあったのですね。そしてその後、スターバックスに入社をされました。  アメリカでは企業の環境対応について勉強していたので、日本に戻ってきたら企業に就職したいと思っていたのですが、就職活動はうまく進みませんでした。そのため、しばらくはアルバイトをしながら、やがてとある環境庁の外郭団体で仕事を見つけ、そこで1年ほど環境ニュースレターの発行や学会誌の編集などの仕事をしていました。ある日、新聞の求人広告を見ていたらスターバックス コーヒー ジャパンが新たに環境関連の人材を募集していることを知り、応募してみたところ、自分の変わった経歴に興味を示してくださり、拾って頂けました。 Q:スターバックスではどのような仕事をされたのでしょうか?  スターバックス コーヒー ジャパンでは、ミッションとして最初から環境のことをやってくれと言われました。当時は広報室が環境と社会貢献をやっていたのですが、私のミッションは新たに環境専門の部署を立ち上げるということでした。  そのときはISO14001の取得や、牛乳パックのリサイクルの仕組み作りなどを行いました。牛乳の紙パックをトイレットペーパーにリサイクルして店舗で使うといった取り組みですね。日本では牛乳パックが個人用も業務用も同じ小分けのサイズしかなく、大量の廃棄パックが出るのです。他には資材の見直しなどにも取り組みました。 Q:スターバックスでは環境活動の推進にあたり苦労されたことはありましたか?  私がいたころのスターバックス コーヒー ジャパンでは、店舗で働く若い世代の社員は環境意識も高く新しい取り組みに対する受容度も高かったのですが、中途採用で入社してきた中間管理職層などはコストや負担が増えることはやりたがらず、とにかく「店舗の負担を増やすな」という要望が強くありました。    そのため、店舗側のオペレーションが増えるような環境手順の導入には抵抗もかなりありました。こうした社内の抵抗を解消するためには、対話しかありません。管理職の人たちは現場のことをよく分からずに反論していることもあるので、現場に直接行って話をすることもよくありました。  しかし、もちろん経営陣は環境の取り組みを推進したがっていましたし、若い社員も盛り上がってくれるので、上と下からの圧力により、2年間ぐらいすると中間管理職の人たちの態度も徐々に翻ってきました。決して意図していたわけではないのですが、CSR活動を社内浸透させる際には、上と下の両方から攻めるというのが効果的だと感じました。 Q:CSRを社内に浸透させる上での大事なポイントですね。そしてその後セールスフォースに移られるわけですが、何かきっかけがあったのでしょうか?  日本での部署立ち上げにあたり、セールスフォース・ドットコムから声がかかったのがきっかけですね。セールスフォースはCSRの一環としてNPOやNGOに対して無料で自社のデータベースを提供しているので、NGOの人々の間では知名度も高い会社ですし、新しいチャレンジができるかなと思いました。  セールスフォースでは、日本での部署立ち上げに関わった後、アジア・パシフィックのCSR担当としてシンガポールに行きました。当時のシンガポールではCSRといえば寄付とボランティアぐらいでしたので、社員研修などを積極的に進めつつ、地域のニーズに合ったCSRをしていこうと考えました。 Q:シンガポールはどのような社会課題があり、どのようなCSRプログラムを展開されたのでしょうか?  シンガポールは一人あたりのGDPがアジアで一番高く治安も良い国なので、一見すると外からは大きな問題があるようには見えにくいのですが、中に入ってみると実は様々な社会課題を抱えていることが分かります。  たとえばシンガポールは日本よりももっと明確な学歴社会で、小学校、中学、高校、大学と進んでいく中で一度でもコースを外れてしまうと、もう復活することはできません。そのため、青少年の層は大きなストレスを抱えています。それ以外にも高齢化の問題もありますし、貧富の差もあります。また、シンガポールは多民族国家ですが、国の経済は中華系の人々を中心に回っているため、マレー、インド、アラブ系などの移民が出世しづらいなどの問題もありました。  そこで、セールスフォース・ドットコムでは地元のNPOと協働し、シンガポール のマイノリティの高校生に対する職業体験プログラムを企画して展開しました。問題意識がないと勉強もやる気になれないと思ったので、社会に出ると自分たちはどうなるのかを伝えたうえで、ビジネスプランづくりやプレゼンテーションなど、より実践的で考える力を身につけるプログラムを作成しました。 Q:その後、CSRアジアの東京事務所を設立されたのですね。どのような経緯だったのでしょうか?  CSRアジアの東京事務所は2010年の4月末に登記し、正式にキックオフしたのがそれから3か月後の7月でした。今からちょうど5年前ですね。もともとCSRアジアとの出会いは、セールスフォース時代にシンガポールの社員のCSR研修を依頼したのがきっかけでした。  当時はアジアのCSRは世界と比較しても遅れていて、CSRアジアのような組織は他にありませんでした。そのため、こうした組織があるのは面白いなと思っていたのに加えて、CSRアジア創業者のリチャード氏の話も直接聞いて興味を持っていました。  そこでCSRアジアのサミットに参加を申し込んでみたのですが、そのときちょうど妊娠が重なってしまい、サミットに参加できなくなってしまいました。しかし、CSRアジアの方がチケットを次回の参加までとっておいてくれたので、それから2年後にようやくそのときのチケットでサミットに参加してみたら、そこで衝撃を受けました。  何に驚いたのかというと、アジアにおける日本のプレゼンスが、産休前よりもさらに薄くなっていたのです。日本の状況自体は産休前と後であまり変わっていなかったのですが、私が休んでいたたった2年の間に、アジアのCSRは大きく進化していました。これまでは日本がアジアの経済を牽引していると思っていたのですが、もうそうではなくなっていると実感しました。  実際にCSRアジア自体も、私が出会った頃はまだ拠点は香港とシンガポールだけでしたが、産休中にバンコクや中国などいろいろなところに拠点ができていました。しかし、日本だけはありませんでした。  私はこの状況を見たとき、このままだと日本は「日の沈む」国になってしまう気がして、自分には何ができるだろうかと考えました。そして、CSRであれば日本のプレゼンス向上のために何かできることがあるかもしれないと考え、CSRアジアのリチャード氏に「日本でもし拠点を作りたいのであれば、手伝えるよ」と伝えておいたのですね。  そうしたらサミットが終わった数か月後に彼から連絡が来て、日本での事務所立ち上げを依頼されました。彼が来日して打ち合わせして、その3ヶ月後の2010年7月にCSRアジアの東京事務所が立ち上がりました。 Q:アジアの日本でのプレゼンスの低さがきっかけとなり、立ち上げにつながったのですね。  そうですね。私の中では日本を何とかしなければまずいという思いがありました。たった数年間で他のアジア諸国とは大きな差が開いていたのです。CSRアジアのイベントでも、参加者500人中、日本人はいつも10人程度。スピーカーにいたっては40人中、1人か2人ぐらいしかいません。日本の経済規模を考えれば、この割合はどう考えても低いと思います。こうした問題意識もあり、先日も日本企業のCSRをもっと海外の人々に知ってほしいと思い、CSRレポートの英訳サービスをオープンしました。 Q:CSRの側面から見た、アジアと日本の違いは何なのでしょうか?  アジア諸国の場合は政府の力が社会課題に追いついておらず、それを企業も分かっているので、それであれば資金も実行力も持っている企業が社会課題の解決主体となるべき、という考え方が前提にあります。インドやインドネシア、中国といった国々は人口も多く社会課題も溢れているので、そうした暗黙の了解がある点がまず日本とは違います。  日本の場合、アジア諸国と比較すれば政府がしっかりと社会課題に対応しようとするマインドを持っていますし、これまでも政府に頼ることで何とかなってきたので、社会課題の解決をするのは政府だろうという考えが未だに根強いと感じます。例えば待機児童の問題を一つとってみても、企業内保育所をどう増やすかではなく、行政がなんとかしろという議論が先にくるのが日本です。そのため、日本企業のCSRはあくまで本業のプラスアルファであって、企業自らが社会課題の解決に関わろうとすることはあまりないのかなと感じます。  アジアで主流なのは、企業やビジネスがいかに社会課題を解決するかという点です。企業は利益の追求するのが本分ですが、利益が得られるのであれば社会善のために動いてよいというのがアジアの考え方なのです。彼らには社会課題をどうCSRで解決するかという共通した考えがあり、例えばサプライチェーンをどうするかといった自社に関わるところだけではなく、もっと広く大きな社会課題そのものを向いているように感じます。  特に最近では農業や鉱業なども含めた一次産業に関わる地場企業は、NGOからのプレッシャーもあり、しっかりとCSRをやっている印象があります。これらの産業は環境に影響を及ぼしやすいですし、人も使いますし、先住民の土地の権利なども関係してくるため、きちんとした対応が求められるという背景があります。インドネシアなどは数年前までは厳しい状況でしたが、最近になって大きく変わってきています。  日本企業もグローバルに事業を展開している以上、やるべきことはあると思っています。日本ではアジアのような喫緊の社会課題が身の周りにないため実感しづらいという点はあるかもしれませんが、ひとたび外に出てみれば政府がいろいろとやってくれるのは日本だけだということに気づくはずです。 Q:CSRにおける日本企業の一番の課題は何だと思いますか?  CSRを戦略策定、活動、評価、報告といったフェーズに分けるとすると、一番の課題は「報告」だと思いますね。例えば、中国企業や米国企業などのCSRレポートは、伝え方、見せ方がとても上手だと感じます。  活動内容自体に目を向けてみると日本企業のほうがしっかりやっていると感じることもあるのですが、日本企業は概して伝え方が控えめで、120%ぐらいできていないと「やっています」と言わない傾向があるように感じます。「これからやります」でもいいので、情報はどんどんと積極的に出していくべきですね。  最近では会社の評価はウェブサイトやCSRレポートなど公開情報だけで評価されることも多くなっていますので、英語で積極的に情報発信をしていかないと、せっかくの良い取り組みも伝わりません。 Q:海外から日本企業に対する関心はあるのでしょうか?  もちろんあります。日本の存在感は薄まっているとはいえ、日本企業がどんな取り組みを行っているかはみんな関心を持っています。CSRアジアの海外オフィスからは、日本企業の取り組みに対する質問がよく東京事務所に来ています。日本企業は環境技術や品質管理も優れていますし、福利厚生プログラムもしっかりしていて従業員の忠誠度も高いので、なぜそうした取り組みができるのか、海外の人々も知りたいのです。でも、そうした問い合わせが頻繁に来るということは、裏を返せば日本企業の情報が彼らには届いていないからだとも言えます。  日本企業はまだ最新情報の発信も日本語だけに限定されており、英訳版も忘れた頃に出てくるというケースも多いのですが、グローバルに事業を展開する以上は海外の思考回路に合わせる必要があると思います。少なくとも英語の思考回路で伝えることは重要でしょう。また、仮に自社ではグローバルに事業を展開していないとしても、ほとんどの日本企業はサプライチェーンを通じて海外企業と何らかのかかわりを持っているわけですから、その意味では日本だからよい、という言い訳は通じないと考えたほうがよいでしょう。 Q:アジアではこの企業のCSRレポートは優れているといった事例はありますか?  例えば、シンガポールに拠点を置く世界最大のパーム油企業、ウィルマーのレポートなどはしっかりしていますね。他にも、香港のキャセイパシフィック航空や、シンガポールのシティ・デベロップメンツ・リミテッドなどは参考になると思います。 ウィルマー:"Sustainability Reports" キャセイパシフィック航空:"Sustainable Development Report 2013" シティ・デベロップメンツ・リミテッド:"Sustainability Reports" Q:最後に、日々CSR推進に取り組まれている日本企業の方々にメッセージがあればお願いします。  繰り返しになりますが、日本企業は他のアジア企業と比較すると、「活動をやっている割には伝わっていない」ということが言えます。  海外からの日本企業の情報が欲しいというニーズは強く感じていますので、ぜひ自信を持って自社のことを伝えて頂ければと思います。CSRアジアでは、そうした日本企業と海外をつなぐ役割を果たしていきたいですね。 Q:ありがとうございました。 編集後記  「日本企業に足りないのは報告」。CSRアジアの赤羽氏はそう明確に指摘します。「活動の内容自体は他のアジア企業にも引けをとらない」「海外は日本企業のことを知りたがっている」という同氏の言葉には勇気づけられますが、一方で相手に伝わる報告ができなければ、いくら良い活動をしていたとしてもそれが評価されることはないのが現実です。  評価のための活動ではありませんが、優れた報告は優れたフィードバックをもたらし、優れた戦略策定、活動のサイクルへとつながります。その意味で、CSR活動全体の質を向上させる上で報告の質向上を起点とすることは有効です。  英語、中国語など多言語の情報発信はもちろんですが、今ではその中身も問われるようになってきています。ただ単純に日本版を翻訳していればOKということではなく、海外の文脈、ニーズにあった内容、表現となっているかという点も鍵を握ります。  これまで企業のアジア・パシフィックのCSR担当として、そしてCSRアジアのコンサルタントとして世界と日本企業のCSRの現場を見てきた赤羽氏からのリアリティのあるメッセージを、どこまで強く認識し、実際のアクションに変えていけるのか、私たち一人一人の意識と行動が問われていると感じました。

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2015/08/03 事例を見る

【アジア】CSRアジア、オックスファムと共同でレポート「インクルーシブビジネスを通じたCSV」を公表

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 CSRコンサルティングのCSRアジアは3月19日、貧困問題に取り組む国際NGOのオックスファムとの共同研究の一部として、インクルーシブビジネスを通じてCSV(共通価値創造)を実現する方法についてまとめた報告書、"Creating Shared Value Through Inclusive Business Strategies"を公表した。  今、世界では人口の3分の2が貧困層に属しており、彼らの多くは必要最低限のサービスさえ受けられないでいる。彼らが独力で自らの経済的困難を打破するのは非常に困難な場合が多い。企業は雇用創出やサプライチェーンを通じて貧困にあえぐ人々の苦難を軽減することができるが、今、企業にはそれだけではなく、貧困層の人々を自社のバリューチェーンに巻き込みながら共に発展していくという事業の在り方、インクルーシブビジネスが求められている。  そしてその根幹となるのが「共通価値創造(CSV)」の考え方だ。CSVは事業として成り立つ形で社会的課題を解決することを目指しており、企業に対してグローバル課題の解決、開発への貢献をしながら競争力を高める機会を提供する。CSVは事業の成長、生産性の向上、収益と新たな機会の創出と同時に、貧困にあえぐ人々に収入をもたらし、さらには持続可能な技能やテクノロジーの導入により、環境と資源の保全も実現する。  CSRアジアの代表を務めるRichard Welford氏は「効果的なインクルーシブビジネス戦略は、貧しい人々や社会的弱者に経済的便益をもたらすだけではなく、企業のバリューチェーンの競争力を高める」と語る。  同レポートはインクルーシブビジネス戦略を通じていかにCSVを実現するかを解説しており、また、インクルーシブビジネス戦略の導入に関心を持つ企業が実行するべき、実践的なロードマップを提示している。また、発展途上国で実践されているインクルーシブビジネスの実例も数多く紹介されている。  「CSVアプローチの大きなメリットは、取り組みが自然と拡大していく点にある。企業は社会的ニーズに取り組めば取り組むほど、そのぶん利益は増加する」とWelford氏は語る。  レポートではインクルーシブビジネスによって共通価値を創造する方法は一つではないと結論付けた上で、バリューチェーンの性質を見極め、貧しい人々に利益をたらす援助方法を注意深く設計することが重要だとしている。  インクルーシブビジネスは、急速な経済発展とそれに伴う環境破壊や貧困格差などが深刻化しているアジアや中南米において、今もっとも注目されているビジネス手法の一つだ。発展途上国で事業を展開している企業にとっては同レポートで提示されているフレームワークや事例が多いに参考になるはずだ。レポートは下記からダウンロード可能。 【レポートダウンロード】Creating Shared Value Through Inclusive Business Strategies 【企業サイト】CSR Asia

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【1/27 セミナー・東京】CSRアジア東京フォーラム2015が開催!

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アジア各国で開催されているCSRアジアのフォーラムを今年も東京で開催します。今年のメインテーマは「アジアにおけるCSV(共通価値の創造)の実践」。持続可能なビジネスを実践するためにはCSVの概念をビジネスに取り入れ、それを実践していくことが必須です。 本フォーラムでは先進企業の事例を紹介しつつ、どのようにCSVを実践し、企業が社会課題の解決に取り組めるかについて実際に役立つ情報を提供します。CSVに関連してインクルーシブ・ビジネスやインドネシアのCSR専門家による事例発表、さらにアジアのサプライチェーン管理、CSRのグローバル展開など、アジアでCSRを進める上で欠かせない様々な主要トピックも取り上げます。 多くのみなさまのご参加をお待ちしております。 開催概要 日時:2015年1月27日(火) 10:00~17:00 (9時45分受付開始) 場所:飯田橋レインボービル1階会議室 (東京都新宿区市谷船河原町11) アクセス: JR飯田橋駅西口下車5分 有楽町線/南北線「飯田橋」駅から徒歩5分 東西線/大江戸線「飯田橋」駅から徒歩9分(地下鉄はB3出口) 地図はこちらから 参加費:21,600円(消費税込)*昼食、資料代が含まれています。 定員:100名(先着順) 登壇者: ミン・ヒギョン氏 (韓国CJコーポレーション副社長兼CSV担当役員) パトリック・シルボーン氏(グローバルファンド 世界エイズ・結核・マラリア対策基金 民間セクター連携部長) 岸本吉浩氏(東洋経済新報社CSRデータ開発チーム『CSR企業総覧』編集長) 袴田淑子氏(株式会社ニコン経営戦略本部 CSR推進部長) ビクトリア・ボーラム氏(株式会社LIXIL グローバルCSVディレクター) 三本松真広氏(株式会社バンダイ プロダクト保証部品質マネジメントチーム サブリーダー) ジャラール(A+ CSRインドネシア共同創設者、CSRアジア インドネシアパートナー) リチャード・ウェルフォード(CSRアジア会長) 登壇者のプロフィール及び当日のプログラムはこちらからダウンロードいただけます 主催:CSRアジア 後援:株式会社 東洋経済新報社 特別協力:グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金) 日本国際交流センター 協力:CSR JAPAN 野村ホールディングス株式会社 富士ゼロックス株式会社 英語での講演には、英日の同時通訳がつきます。 お申込み方法 こちらをクリックし、専用フォームに必要事項をご記入の上、送信してください。後日、ご請求書を郵送致します。お振込みをもちまして、ご参加登録とさせていただきます。(受講証は発行致しません)

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