【国際】石油・ガス大手10社、低炭素化技術開発のため10億ドル投資ファンド設立

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 石油・ガス世界大手10社で構成する石油・ガス気候変動イニシアチブ(OGCI)は11月4日、石油・ガス産業からの二酸化炭素排出量を削減するための技術開発のため投資ファンド「OGCI Climate Investments」を共同設立することを発表した。ファンド規模は10億米ドル(約1,100億円)。OGCIは2014年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)で構想が発表され、同年9月の国連気候変動サミットで正式に発足した組織。BP(英国)、Eni(イタリア)、レプソル(スペイン)、サウジアラムコ(サウジアラビア)、ロイヤル・ダッチ・シェル(英国・オランダ)、スタトイル(ノルウェー)、トタル(フランス)、ペメックス(メキシコ)、リライアンス(インド)、中国石油天然気集団(中国)の10社が加盟している。米国大手は入っていない。ファンド設立発表式には、BP、Eni、レプソル、サウジアラムコ、ロイヤル・ダッチ・シェル、スタトイル、トタルの7社のCEOまたは会長が直接参加し、調印を行った。  設立されたファンドが投資対象とするのは4つの分野で、そのうち特に2分野に注力する。一つ目は、低炭素社会に向けて天然ガス・サプライチェーンからのメタンガス漏洩量・排出量を削減し天然ガスを気候変動に資するものにすること。もう一つは、炭素回収・貯蔵(CCS)技術を発展させた新概念「炭素回収・使用・貯蔵(CCUS)」技術の開発を支援し低炭素社会でも石油・ガスを推進できるようにすること。その他二つは、工業分野でのエネルギー効率改善と交通分野でのエネルギー効率改善。  今回のファンド設立の背後には、気候変動への関心が高まる中、石油・ガス産業の戦略的な狙いがある。目下のところ、低炭素社会に向けては、二酸化炭素排出量が多く、大気汚染物質も多い石炭を減少することで、世界(日本を除く)は大方のところ見解一致しているが、石油とガスについては、意見が二つに分かれている。低炭素社会に向けた最大限の努力を模索する支持者は、石油とガスを含めた削減と再生可能エネルギー推進を呼びかけているが、一方で急速な脱化石燃料を望まない再生可能エネルギー懐疑派からは、石炭から石油・ガスへのエネルギーシフトを提言している。石油・ガス産業大手の多くは、世界的にエネルギー需要が増加する中、石油・ガスは引き続き世界の主要エネルギー源となると考えており、脱石油・ガスではなく、石油・ガス産業でのエネルギー効率を上げる取組を推進している。  OGCIは、気候変動枠組条約COP21パリ会議が開催される直前の昨年10月にも、石油・ガスのエネルギー効率改善に向けた共同声明を発表している。声明ではCOP21での政府合意や2℃目標を支持するとともに、エネルギー改善やCCS技術開発のための投資やアクションを行っていくことを宣言していた。  一方、米国の石油・ガス大手であるエクソンモービルやシェブロンは、OGCIに加盟することを渋っている。石油・ガスの低炭素化では、米国とそれ以外で温度間に差が出てきている。 【参照ページ】OGCI announces $1 billion investment in low emissions technologies 【参照ページ】CEO Declaration: Accelerating a low emissions future 【参照ページ】Oil and gas CEOs jointly declare action on climate change

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【エネルギー】石油産業の構造① ー供給の歴史:石油企業と産油国の150年ー

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 石油。化石燃料の中でも最もその動向が話題になる物質です。石油は自動車燃料やジェット燃料、また火力発電所の燃料として使われるだけでなく、プラスチックやナイロン、芳香剤など化学素材の原料ともなっています。シェールオイル、OPEC、スーパーメジャー、イラン、サウジアラビア等、毎日のように登場する石油産業のキーワード。世界経済の根幹として機能している石油の価格はここ数年、大きく変動しており、経済関係者や投資家はその変動を固唾を呑んで見守っています。いま石油価格の変動に影響を与えているものは何か。今回は石油産業の供給側の状況を見ていきます。 石油産業の始まり  日本人にとって石油と言えば中東というイメージが強いですが、石油産業はアメリカで始まりました。1850年代、日本ではペリー来航で江戸幕府が右往左往していた時代、アメリカではすでに鯨油を用いたランプ灯が使われ始めていました。当時江戸近郊に出没するアメリカ船も鯨油獲得のための捕鯨目的だったと言われています。時は1858年、日本で日米修好通商条約が締結されたこの年、アメリカ東部ペンシルバニア州で、弁護士エベレス、事業家ビゼル、その他富裕層投資家によってセネカ・オイル社という企業が設立されます。この会社が狙ったものは当時、アメリカで存在が噂されはじめていた地下に眠る石油の採掘でした。この企業に一人の男が偶然、投出資者の一員、そして採掘責任者として採用されます。それがエドウィン・ドレークです。彼は、後に「世界で初めて石油を発掘した男」と呼ばれることになる人物です。  ドレークはペンシルバニア州タイタスビルで採掘を開始します。当時タイタスビルは地表上に石油が滲みでる場所があり、そこから採取された石油がランプ油として使用できると判断されていたからです。世界で初めてとなる地下石油の採掘には困難に直面します。岩塩採掘機などを改造して作ったドリルは、ある程度は掘削を進めましたが、固い岩盤にぶつかってからは掘削速度がダウン、時が過ぎ資金は枯渇、ついにセネカ・オイルの出資者たちは音を上げて事業から手を引いてしまいます。ドレークは知人などから資金をかき集め自力で採掘を続けました。彼の執念は実を結び、1859年、ついに石油が掘削パイプから湧出、地下石油の採掘に成功したのです。  このドレークの成功にニューヨーク・ウォール街は即飛びつきます。当時の欧米経済の中心といえばロンドン。ロンドンには数多の証券会社が集積しヨーロッパ中の資金が集まってきていました。そしてそのロンドンにとって、発展著しい新大陸アメリカは格好の投資先。資金がロンドンからウォール街へと流れ込んでいたのです。ドレークの成功から数年、アメリカでは空前の石油投資ブームが沸き起こります。タイタスビル周辺だけでなく全米各地で新規参入者が次から次へと地下を掘り進め、産油量はいっきに増加、オイルラッシュ時代に突入します。結果起こったことはオイルバブルの崩壊でした。石油需要がランプ灯に限られている中で産油量ばかりが増加した結果、原油価格が崩落、当初1バレル当たり20米ドルついていたものが、1861年には10セントにまで下がったと言われています。「世界で初めて石油を発掘した男」ドレークの命運はここで付きてしまいます。世界初の採掘製法に関して特許保護策を取らなかったドレークは新規参入者の波に飲まれる中、採掘にお金を注ぎ込み資産を喪失、議会からの温情を受け特別年金手当を受けて暮らすという寂しい晩年でした。  石油価格の急落に直面した事業家たちは、産油量の自主規制による価格保護という手を打ち、価格は数ドル程度まで回復。それでも、石油の海外輸出網が整備されるなど、全米の産油量は増加していきました。やがて生き残りをかけた事業者の統合の時代が到来します。この熾烈な生き残り勝負を勝ち抜いたのが、ジョン・ロックフェラー率いるスタンダード・オイル社でした。ロックフェラーはトラストいう金融手法を駆使し、1882年までにペンシルバニア州の油田の多くを手中に収め、さらにテキサス、カリフォルニアなど全米各地で石油採掘事業を手がけていったのです。 スタンダード・オイルからセブンシスターズの時代へ (出所:ニューラル作成)    20世紀に入り、1908年にはフォードのT型生産方式が確立するなど、石油はガソリンとして、またストーブ燃料としても活用されはじめます。この石油需要の急増を追い風に、スタンダード・オイルは石油生産シェアの90%を誇る巨大企業に成長していきました。このスタンダード・オイル一人勝ちの状況を危惧し、ついにアメリカ連邦議会が動きます。1911年、「反トラスト法」が制定、スタンダード・オイルは地域ごとの34社への分割解体を余儀なくされました。  そしてその後、石油産業はセブンシスターズの時代へと変遷していきます。分割解体されたスタンダード・オイル各社が目をつけたのは海外でした。1910年代は第一次世界大戦が勃発し、軍需としての石油需要が増えるだけでなく、今に続く大きなできごとが起こります。それは、第一次世界大戦敗戦国となったオスマン帝国の解体です。新生トルコ、またオスマン帝国の支配下にあったイラクなどにイギリスの息が及ぶようになり、中東全域での石油採掘ブームを巻き起こしました。そして地域の各政府と交渉を重ね石油採掘権を握っていったのが、スタンダード・オイルの生き残り各社と、植民地での石油採掘に成功していたイギリス、オランダの企業です。このようにして、世界の石油採掘は、スタンダード・オイルを前身とするエクソン、モービル、ソーカル、20世紀初頭テキサス石油ブームで力をつけたガルフ、テキサコ、植民地での石油採掘を始めていたロイヤル・ダッチ・シェル、ブリティッシュ・ペトロリアムの7社が支配する「セブンシスターズ」時代が開幕するのです。  勢いに乗るセブンシスターズは産油についてのデファクトスタンダードを築いていきます。その集大成となったのが、1928年にスタンダード・オイルニュージャージー(後のエクソン)、ロイヤル・ダッチ・シェル、アングロ・イラニアン石油(後のブリティッシュ・ペトロリアム)の3社で締結された赤線協定とアクナキャリ協定だと言われています。これは旧オスマン帝国領土内の石油の単独開発を禁じ、アメリカ及びソ連領土内の石油販売シェアを固定したものだと言われています。結果、セブンシスターズ時代には世界の石油価格決定権はセブンシスターズのカルテルによって一元的に管理され、その方式は「ガルフ・プラス方式」「中東プラス方式」と呼ばれていました。 (出所:エネルギー庁)  セブンシスターズの時代はその後1970年代まで続きます。上のグラフからは、第二次世界大戦後の1949年当時でも、セブンシスターズは世界の産油量の65%、埋蔵量の43%の利権を手にし、石油産業を完全に支配していたことがわかります。 OPEC(石油輸出国機構)の創設  この状況に一矢を報いたのが、中東諸国を中心に結成されたOPECの創設です。産油国は、国家財政の大半をセブンシスターズからの収益分配金で担っているのに、その石油の価格決定権をセブンシスターズに握られてしまっている、この状況を打破しようと考えたわけです。1960年設立当初のメンバーは、イラン、イラク、サウジアラビア、クウェート、ベネズエラ。その後10年の間に、カタール、インドネシア、リビア、アラブ首長国連邦、アルジェリア、ナイジェリアなどが加盟、産油国がセブンシスターズから石油利権を取り返す攻勢を繰り出します。 (出所:エネルギー庁)  OPEC諸国が狙ったのは石油利権の奪還と石油価格決定権の確保です。石油利権の奪還では、OPEC創設より前の1951年に、イラン政府がアングロ・イラニアン石油(後のブリティッシュ・ペトロリアム)が持つイラン石油利権を国有化、1960年にインドネシア、1967年にアルジェリア、1970年にはリビア、1972年イラク、1973年サウジアラビア、1976年カタールとクウェート、UAEアブダビ、ベネズエラ、1979年にナイジェリアで、セブンシスターズが持つ石油資源会社の国有化が実施されました。こうして、OPEC諸国で産油地を失い、産油国政府から石油採掘工事を受託するサービス業者へと転換したセブンシスターズは、その権勢の旗を降ろしていきます。小説「海賊とよばれた男」のモデルとなった出光興産の出光佐三社長が、石油利権を1951年に国有化したイランから独断で石油の輸入を断行した日章丸事件を引き起こすのが1953年。当時はこのような時代背景があったのです。 (出所:Business Insider)  価格決定権の確保では、当時セブンシスターズが決めていた公示価格を1971年のテヘラン協定、トリポリ協定で段階的に引き上げさせ、そして1973年の第四次中東戦争を機にOPECがセブンシスターズへの相談なく立て続けに、70%の価格引き上げ(10月16日)、イスラエル支援国への石油禁輸(10月17日)、130%の価格引き上げ(12月)を実施するという第一次オイルショックを経て、セブンシスターズは価格決定権を完全に喪失しました。このことは、セブンシスターズによる石油価格安定の時代の終わりも意味していました。 OPECの一時的な衰退  1973年の第一次オイルショック、そして1978年のイラン革命による第二次オイルショック。1970年代はOPECが石油の実権を確保した時代でした。OPECは石油価格を高く維持することに成功し、同時に石油利権そのものを国有化して懐を富ませていきます。OPECの中でも特に活躍を見せたのが産油量が大きいサウジアラビアでした。サウジアラビアは自らが産油量のスィングプロデューサー(生産量の調節役)となることで需給を調整し、世界の石油価格をコントロールしていったのです。特に、1978年にイラン革命が起こり、一方の地域の盟主的存在であったイランが欧米から制裁を受け、他のスンナ派中東諸国から警戒されることで、サウジアラビアの存在感は増していったのです。  しかしながら、OPECの支配、そしてサウジアラビアの支配は長くは続きませんでした。中東諸国への依存に怯えた欧米諸国とセブンシスターズは新たな油田開発に挑んだからです。オイルショックで石油価格が高騰していたこともセブンシスターズにとって資源開発投資の強い追い風になりました。1977年にはアラスカのプルドーベイ油田が操業を開始、1980年代には北海油田の開発が本格化します。その結果、1985年から1986年の間に原油価格は大暴落、サウジアラビアはついに1986年原油の公示価格制を放棄し、OPECの価格統制力は一時的に弱まり、価格は低迷していきます。その後、ソ連崩壊、湾岸戦争などがありましたが、旧ソ連諸国の市場経済化の影響もあり、石油価格は比較的安定していました。しかし2000年に入ることから石油業界の構造は大きな転換点を迎えていきます。 2000年代 アメリカ・OPEC・BRICs  2000年代には、最も老舗の産油大国であるアメリカ、マーケットシェア40%を握るOPEC、そしてBRICsという新興国の台頭が産油マーケット全体に大きな嵐を呼び起こしていきます。まず、アメリカ。1970年代からのアラスカ油田で一度は産油量を回復させたアメリカも、1987年をピークに産油量を年々減少させていきます。資源大国アメリカも国内の油田が劣化していったのです。同様のことは北海油田についても言え、イギリス、ノルウェー政府も安穏とはしていられない状況になっていきます。  一方、OPEC。1997年のアジア通貨危機を機に急落した原油価格を持ち上げようと、1999年にOPEC加盟国が集い久々に全加盟国が減産に合意、価格引き上げに成功します。世界中のどの他の地域よりも経済を石油に依存している中東OPEC諸国は、世界の国々の中でも最も価格に敏感にならなければいけない必然があったのです。その後、OPECは、OPEC主要油田の原油価格を加重平均した「OPECバスケット価格」というインデックスを創設してこれを政策決定のベンチマーク指標としていきます。  そしてBRICs。今までは資源開発投資にも積極的になれなかった中国、ロシア、ブラジルが急速に石油採掘に力を入れ始めます。彼らはNOC(National Oil Company:国営石油会社)というスタイルを取り、政府主導での油田開発を実施していきます。その結果、中国では国有企業のペトロチャイナ(中国石油天然ガス集団)、シノペック(中国石油化工集団)やCNOOC(中国海洋石油総公司)、ロシアでは国有企業のガスプロム、ブラジルでは国有企業ペトロブラスが急速に世界の中でのプレゼンスを高めていきました。これらの企業はセブンシスターズでもOPECでもない第三極を構成してきています。ペトロチャイナ、ガスプロム、ペトロブラスに、サウジアラビアのサウジアラムコ、ベネズエラのPDVSA、マレーシアのペトロナス、国営イラン石油を加えた7社は、「新セブンシスターズ」と呼ばれるようになりました。  こうしてマーケット環境の急激な変化の中で、セブンシスターズは自らの経営基盤を強化する必要性を感じ統合を繰り返し、国際石油メジャーと呼ばれる企業は、現在はやや格下であった仏トタルを含めた5社にまで絞りこまれている状況です。国際石油メジャーは、旧来から保有していたアメリカを始めとする先進国国内の油田産油量が減少する中、周辺領域の海底油田やアフリカ、中南米の途上国での新たな資源開発に活路を見出そうとしているのです。 (出所:Forbes)  今や日量バレルのトップ10にはOPEC諸国だけでなくガスムロムやペトロチャイナが入っています。 シェールオイルという新たな担い手  産油事情にとって最も新しい動きがシェールオイルです。通常の石油より奥深いシェール層に埋まっているシェールオイル、2014年頃から急速にアメリカで採掘が広がり、衰退していたアメリカの石油業界が息を吹き返したような状況になっています。シェールオイル採掘の担い手は、国際石油メジャーではなく多くが投機的とでも言えるようなリスクテイキングなスタートアップ企業です。彼らには投資家からのリスク資本がついており、それが開発を促しています。最近では国際石油メジャーも関心を寄せ始め、一部では開発プロジェクトへの出資が始まっています。   (出所:Crude Oil Peak)  シェールオイルの採掘が始まり2013年頃からアメリカの産油量は上昇に転じました。もちろんこの産油量増加にはメキシコ湾等の海底油田からの産油も大きく後押ししています。今後の見通しではシェールオイルによる産油量の押し上げは今後数年は続くようです。 (出所:JOGMEC)  また、上記はシェールガスに関する調査報告ですが、シェールガスとシェールオイルの分布は似ており、シェールオイルの埋蔵量も中国が最も多いと言われています。しかしながら、まだアメリカおよびカナダ以外の地域でのシェールオイル開発は活発化していません。特に中国のシェールオイルは地層の非常に深いところにあり、採掘コストがまだ投資対効果に見合わないと言われています。 価格調整メカニズムはどうなるのか?  国際石油メジャーが価格統制力を失い、第三極のNOCが台頭してきている中、価格調整は誰が果たしていくべきなのでしょうか。2015年の石油価格の下落に関してはOPECの不調和が話題に上がりました。2014年11月27日ウィーンで開催されたOPEC総会は世界中の注目を集める中、減産に踏み切らなかったことが石油価格の下落基調を特徴づけました。その後今日まで石油価格が20米ドル台にまで下がてきつつもOPECでの減産決定はなされていません。OPECが現状維持を貫く背景には、アメリカのシェールガスやシェールオイルが市場に出てくる中、マーケットシェアを死守するために価格破壊を容認してまでも販売量にこだわっているからだとも言われています。 (出所:BP)  では本当に価格調整をOPECだけに委ねることができるのでしょうか。2014年の数値では何年かぶりにアメリカが世界最大の産油国に復活し、サウジアラビアやロシアを上回るまでに成長しました。さらにカナダ、中国はサウジアラビア以外のOPEC諸国を上回る産油実績を見せています。また、OPEC諸国は現段階で確認埋蔵量に対して抑制的に産油を行っているところ、アメリカやカナダは非常に積極的に産油を行っていることがわかります。さらに現在、アメリカ連邦政府は1975年に発動した国内産石油輸出禁止の解除を検討しているとの報道もなされています。この輸出解禁は、世界最大量を誇るアメリカ産原油がアメリカ国内に過剰流通することで国内石油価格を押し下げており、シェール関連投資への冷え込みを懸念してのことだと考えられるます。比較的産油が容易で産油コストの低いOPECの石油に対し、アメリカのシェールオイルは産油コストが高く、石油価格が低くては生き残れない事情があるためです。こうしてみてくると、世界経済全体の冷え込みを前にOPECの意見不一致に責任が帰されている感がありますが、実際にはシェールオイルを活発化させたアメリカ自身にその責任があるようにも見えてきます。  時を同じくして、サウジアラビアとイランの対立も激しくなっています。石油の文脈ではサウジアラビアが圧倒的な産油量と埋蔵量を誇っていますが、域内2位であるイランは2016年1月16日に欧米諸国からの経済制裁解除を果たし、これまで制限されていた石油の海外輸出が解禁するとも言われています。こうして欧米諸国とイランが接近する中、反対に欧米諸国とサウジアラビアの距離が拡大してきています。ロイター通信は1月27日、サウジアラビアを始めとするOPEC加盟国とロシアが石油減産について協議する可能性があると報じており、ロシアがサウジアラビアにアプローチしているようにも見えます。  一方的にアメリカが産油量を拡大させる中、我慢比べ戦法をとったOPECはどうなるのか。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は昨年9月、アメリカ国内のシェール企業が経営危機を迎えている様子を報道しており、アメリカのシェール企業も生き残りに必死のようです。そのような未来を予見してか、OPECが昨年12月に発表した「世界石油見通し」報告書では、「OPEC産原油の生産が2040年には現状より1,000万バレる多い日量4,070万バレルに達するだろう」と述べ、従来予測であった3,970万バレルより100万バレル上方修正し、一方でOPEC以外の国の生産量を下方修正しました。  政争の具として使われてきた石油。サウジアラビアとイランの対立を前にOPEC加盟国だけで結束を築くことは難しくなっていますが、第三国がOPEC加盟国に働きかけ、減産へと導く可能性は残されています。エネルギー業界にとって石油価格は巨大なインパクトを与えます。2016年は石油市場の動向から目が離せない状況が続きます。

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2016/01/28 体系的に学ぶ

【ランキング】BrandZ「最も価値のあるグローバルブランド トップ100」に学ぶ業界別の代表的サステナビリティ

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 市場において競争に勝ち抜いていくための競争。マーケティングの権威と言われるマイケル・ポーター・ハーバードビジネススクール教授は、競争戦略の基本として、コストリーダーシップと差別化を提唱し、その概念は今や広くビジネス界に浸透しています。差別化とは、提供する財・サービスを他社のそれとにはない「付加価値」をつけるということ。企業が多種多様な「付加価値」を提供することで競争力を獲得しようとしています。この「付加価値」のあり方は様々です。価格や製品・サービス特性という付加価値もあれば、温室効果ガス排出量が少ないなどといった環境配慮型の経営方針も、一つの付加価値と言えます。  サステナビリティと付加価値。植林活動などがサステナビリティの代表事例だと思われていた時代には、両者は無関係だと思われていましたが、今やこの二つは密接に結びついてきています。事実、サステナビリティ戦略の目的を「付加価値の獲得」としている企業は多く、その戦略の策定に「クライアント・消費者」が最も影響を及ぼしていると認識されていることが、EY新日本サステナビリティ社とGreenzbiz社の合同調査によって明らかにされています。  「消費者」からの視点から、世界のブランドをランキングした代表的なものに、Millward Brown社が発表している“BrandZ Top100 Most Valuable Global Brands (最も価値のあるグローバルブランド トップ100)”があります。世界中の企業のブランド力を定量化しランキングにしたものであるため、マーケティング専門家の間では広く認知されています。今回はこのランキングで上位に入った企業がどのようにサステナビリティ戦略と「付加価値」を結びつけようとしているのか、その実態に迫ります。 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成) BrandZ 業界別上位企業とその対応 アパレル 自動車 ラグジュアリー トイレタリー 小売 ビール ファストフード ソフトドリンク 金融(銀行・保険) 石油・ガス テクノロジー 通信 アパレル (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  消費者にとって情報を得るチャネルは、店舗だけでなくオンライン検索にまで拡大しました。消費者は、かつてないほどの膨大な情報を収集し、数ある商品の中から自分が最も価値を感じるものを選ぶようになってきています。上位を獲得した企業は、自らが選ばれるための付加価値のひとつとして、サステナビリティの分野でも凌ぎを削っています。  アパレル業界の主なサステナビリティ戦略は大きく分けて2つです。 サプライチェーンの改善 衣服に使われる資源のサステナビリティ向上  例えば、サプライチェーン改善のために、ナイキはサステナビリティの分野への関心が高く、長期的良好関係を築けるサプライヤーに調達先を限定しています。また、H&MはILO(国際労働機関)の定める国際労働基準および国連児童権利条約に基づいてCode of Conductを作成し、日々サプライヤー工場を訪問し、親密な関係を構築しています。(※1)さらに、これら2社だけでなくユニクロブランドを持つファーストリテイリングも2020年までに自社製品の製造工程すべてにおいて有害化科学物質を全廃することを約束しており、サプライチェーン改善に取り組んでいます。(※2)  資源のサステナビリティ向上の分野では、H&MはBetter Cotton Initiative(コットンのサステナビリティ向上に取り組む国際NPO)の活動に積極的に取り組んでいます。同社は2010年時点でオーガニックコットンを世界で最も多く利用した企業となり、2020年までに持続可能なコットンの調達を100%にするという目標を掲げています。2013年時点での進捗は15.8%で、毎年着実に比率を高めています。  ナイキのCSO(最高サステナビリティ責任者)・H&M担当社へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【アメリカ】ナイキが語る「サステナビリティ」と「イノベーション」 【スウェーデン】H&Mの考えるサステナビリティとファッション 自動車 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  自動車の売上高は、米国や中国では好調なものの、ヨーロッパの経済低迷が尾を引き、不況前の水準には戻っていません。また、各自動車の製品クオリティは全体的に向上している一方、ブランドとしての差別化は徐々に難しくなってきています。  自動車業界の主なサステナビリティ活動は大きく分けて2つです。 製品性能の改善 サプライチェーンの改善  現在、自動車メーカー各社は、エンジンの性能の向上に努めており、稼働効率や温室効果ガス排出量ともに以前と比べ改善されてきています。しかしながら、排ガス規制や燃費向上に関する規制は年々厳しくなっており、製造工程も含めたサプライチェーン全体での取組が求められるなど、社会からの要求レベルは上がっています。実際、気候変動対策の情報開示を求める機関投資家らによる国際イニシアチブのCDPが発表している報告書では、(1)自動車の走行中の温室効果ガス排出量、(2)次世代車両技術への取り組み、(3)製造時の温室効果ガス排出量 の3つの基準で各社が評価付けされています。(※3)  また、自動車メーカーにおけるサプライチェーン改善には、製造工程で発生する温室効果ガスの削減だけでなく、サプライチェーン上の人権問題も関わります。例えば、トヨタやフォードはガイドライン(The Automotive Industry Guiding Principles to Enhance Sustainability in the Supply Chain)を策定しています。同ガイドラインはサプライチェーン全体を通じて、社会、環境面の改善に取り組み、持続可能な形で成長を実現していくという高い基準のコミットメントを明確に示しており、特に倫理・環境・人権・労働に焦点が当てられています。(※4)  自動車業界各社が上記のような活動を行う中、特にBMWはBrandZの自動車業界で2位にランクインするだけでなく、ダボス会議で発表されている「世界で最も持続可能性のある企業100」でも総合6位を獲得するなど、サステナビリティの分野においても先進的企業だといえます。活動内容としては前述のものに加えて、ドイツのハンブルグ市の交通インフラに関するサステナビリティ向上プロジェクト(※5)や、アルミニウムのバリューチェーン全体におけるサステナビリティ向上を目的とする国際イニシアチブなどに参画しており(※6)、自社の事業に関わるサステナビリティ分野で広くリーダーシップを発揮していることが伺えます。 ラグジュアリー (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  ラグジュアリー業界は中国やブラジル、ロシアなどの景気停滞を受けて、ほとんどのブランドがブランド価値を下げる結果となりました。特に中国の影響は大きく、売上の1/3をアジア・パシフィック地域が占めているプラダなどは前年比で大きく収益やブランド価値を下げています。  さらに、ミレニアル世代はラグジュアリーブランドを「高い」と感じており、謙虚でサステナブルな生活を望む彼らのニーズに合致しづらくもなっています。MSL Groupの調査結果によると、ミレニアル世代の多くは、企業に対し消費者が社会的な課題に関われるようにしてくれることを望んでいることがわかっています。  ラグジュアリーブランドが全ての客層をターゲットにしているわけではないとはいえ、ミレニアル世代の経済圏は決して無視できるものではなく、サステナビリティ活動が新たな活路になることも考えられます。  そのようなラグジュアリー業界において、中心となっているサステナビリティ活動はサプライチェーンの改善です。例えば、グッチを抱えるファッション・コングロマリットのケリングは、自社およびグループ全体のサプライチェーンにおける環境への影響を計測し、金銭的な価値に置き換える自然資本会計を導入しています。(※7)それにより事業活動に対する理解を深め、環境負荷を減らすだけでなく原材料の調達リスクを含めたサプライチェーンの変化に対応することを可能にしています。  他にもジュエリーを取り扱うティファニーは、CSO(最高サステナビリティ責任者)を設置するだけでなく(※8)、ダイヤモンド産出国への積極的な投資によりサプライチェーンの健全性を維持する傍らで現地雇用の創出、スキルトレーニングなどを通じて地域経済にも貢献しています。同社はジュエリー業界の中でも珍しくダイヤモンドや貴金属を供給する鉱山の多くと直接取引を行っており、2013年には100%のダイヤモンド原石の調達を自社の目が行き届く採掘場所から行うことを実現しました。(※9)  一方で、ルイヴィトンをはじめ数多くのラグジュアリーブランドを抱えるLVMHグループやエルメスは、大手アパレル企業がサプライチェーン上で講じている有害物質除去・水質汚染対策の取り組み状況を評価した、グリーンピース・イースト・アジア公表のオンラインプラットフォーム「Detox Catwalk」で、コミットメント不足という評価をされてしまっています。(※10) トイレタリー (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  トイレタリー業界のグローバル大手は、製品性能そのものだけでなく、消費者および従業員の幸福といったサステナビリティ活動に本格的に取り組み始めています。  この理由は消費者の目が成熟してきていること、ミレニアル世代の存在、ソーシャルメディアの影響力の高まり等様々ですが、より崇高なビジョンを掲げることが製品の差別化に繋がっていると言えるでしょう。  そのためブランド各社、これまで理想像とされてきた美ではなく、健康やナチュラルさ、内なる美などを強調するようにもなってきています。消費者の選択性が強くなっていることや中国・ブラジルの成長鈍化などを受け、業界全体のブランド価値は昨年比2%しか伸びていませんが、消費者の目が成熟していることはサステナビリティ展開の追い風となると言えるでしょう。  トイレタリー業界は市場ニーズも相まってサステナビリティ活動が多岐にわたっています。 サプライチェーン改善 ダイバーシティの尊重 再生可能な原料の利用 再生可能エネルギーの利用 温室効果ガス削減 サーキュラーエコノミーの推進(廃棄物ゼロ&リサイクル) コミュニティ支援  例えば、ロレアルはSharing beauty with allというプロジェクトを実施し、全サプライヤーを社会・環境面での実績で評価することを宣言。結果として2014年末には2004年比で57%ものCO2削減に成功しています。また同プロジェクトでは再生可能エネルギーにも取り組んでおり、2020年の目標達成に向けて邁進しています。(※11)また、障がい者採用も積極的に行っており、社会に対して新たな機会を創出しています。(※12)CSR担当者向けITツールも積極導入しサステナビリティレポート作成に取り組んでいます。(※13)  「ダブ」ブランドの商品を持つユニリーバは、サステナビリティ戦略を積極展開していることで世界的に有名です。2010年にUnilever Sustainable Living Planというプロジェクトを開始、2020年までにビジネス規模を2倍にしながら環境負荷を減らし、社会にポジティブインパクトをもたらすことを目指しています。その達成に向けて同社は、サプライヤーやコミュニティの支援、貧困の撲滅に取り組むべくNGOと協力し気候変動への対応を呼びかけるキャンペーンや、リサイクル促進のために消費者家族に向けたキャンペーンを展開しています。  2015年現在、ユニリーバが調達する農作物原材料の55%以上は持続可能な形で調達されており、2020年までに100%持続可能な調達を実現するという目標を半分以上到達しています。さらに、同社は工場ネットワーク全体で非有害廃棄物の埋め立てをゼロにするという目標を達成したほか、2008年と比較して製造時にエネルギーから生まれるCO2排出量と水消費量をそれぞれ1トンあたり37%、32%削減することにも成功しています。(※14)  こうした試みもあって、サステナビリティ分野のアドボカシーNPOのセリーズが5月に発表した大手食品会社らの水リスク対応力を評価したランキングでユニリーバは1位を獲得したほか(※15)、国際NGOのオックスファムが3月に公表した大手食品・飲料企業10社の食糧課題・サステナビリティへの取り組み状況を評価したランキングにおいても1位、サステナビリティ分野のコンサルティング企業のSustainly社に公表した「ソーシャルメディア・サステナビリティ・インデックス」でも1位を獲得しています。(※16)  ユニリーバが全業界的に先進的であるために、同業者でサステナビリティ活動に遅れをとっている企業は何から始めればいいかを戸惑うかもしれません。そういった場合、まずはサプライチェーンの改善から取り組むべきだと言えます。サプライチェーンの見直しは、リスク管理になるだけでなく業務効率の向上も期待できるため、部門を超えて理解が得やすく、また数値的な効果も比較的見えやすいからです。  ユニリーバCEO、副社長そして、「ニベア」ブランドを持つバイヤスドルフ社のCorporate Communications & Sustainabilityを統括する副社長へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【イギリス】ユニリーバのCEOが語るサステナビリティへのコミットメント 【イギリス】サステナビリティ目標の達成に向けてユニリーバが導入した新たな仕組みとは? 【ドイツ】世界を代表するスキンケアブランド「NIVEA(ニベア)」を支えるサステナビリティ戦略 小売 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  Alibabaの登場により、業界全体のブランド価値が急成長しているのが小売業界です。興味深いことに業界トップを走る二社はどちらもeコマースであり、実店舗を持っている企業ではありません。以前は価格、選択の幅、利便性のそれぞれがトレードオフであったものの、現在はこれらのeコマースを通し全ての便益を享受できるようになりました。来る高齢社会に向けてeコマースの存在は必要不可欠なものとなっていくでしょう。  小売業界の主なサステナビリティ活動は次の3つです。 再生可能エネルギーの利用 再生可能な材料の利用 サプライチェーン改善  たとえば、アマゾンは国際NGOのGreenpeaceによる抗議活動を受けて、昨年11月にクラウドサービス部門、AWS(Amazon Web Service:アマゾン・ウェブ・サービス)に使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達するという誓約を発表し、大きな一歩を踏み出しました。(※17)しかし、その透明性については疑問視されており、風力発電によって生み出された100メガワットの電力を購入する計画を発表したものの、AWSがいまだ再生可能エネルギー比率が2%しかなく、これからの取組みに期待が寄せられます。(※18)  他にも、サステナビリティ先進企業として知られるIKEAは、自社および自社製品のサステナビリティ向上を通じて消費者の毎日の生活をより持続可能なものにするというビジョンの下、再生可能エネルギー投資を加速しており、その具現化が進んでいます。(※19) また同社は、LED技術を活用した省エネの追求やリサイクル可能な材料を利用することで、自社製品のサステナビリティを担保しつつ、手頃な価格を維持しています。(※20)  同じく実店舗を保有するウォルマートも、サプライヤーと協働によりサステナブル素材でできた商品の開発をしています。(※21)それだけにとどまらず、3月にサステナブルな商品だけを集めたオンラインショップを開設し、より一層の意気込みを見せています。(※22) ウォルマート会長へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【アメリカ】「消費者はサステナビリティのためにより多くを支払うか?」に対するウォルマート会長の答え ビール (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  中国と南米の消費量の増大により、消費者からのブランド価値が向上しています。ミレニアル世代はビールの味において、間違いのないものよりも新感覚を欲しており、ビールメーカー各社はブランド内の商品ラインナップの拡充や、他社買収・ブランド開発による新ブランドの確立などの対応を迫られています。  それぞれのビールブランドには固有のアイデンティティーがありますが、時折クラフトビールの方がメジャーブランド以上に巧みなストーリーテリングでアイデンティティーの確立に成功しています。  そういったストーリーテリングとしての役割をも果たすのがサステナビリティ活動です。ビール業界が主に展開しているのは次の2つです。 サプライチェーンの改善 水の利用効率の改善  例えばハイネケンはストーリーテリングを通して同社のサステナビリティに対する取り組みをより多くの消費者に知ってもらおうと、ソーシャルメディアなどを活用したユニークなデジタルキャンペーンを展開しています。同社は2020年までに主要な原材料の50%を持続可能な調達にすることを宣言しているほか、新興国の水のサステナビリティに向けてUNIDO(国連工業開発機関)と協働で解決に取り組んでいます。(※23) 実際にハイネケンが行っているストーリーテリングの詳細は以下をご覧ください 【オランダ】ハイネケンが仕掛けるユニークなデジタル・サステナビリティ・ストーリーテリング ファストフード (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  マクドナルドの事件を受け、食の安全への関心が一層の高まりを見せています。ヘルシーかどうか、サプライチェーンは倫理的か、環境への責任を考えているか、そういった関心ある消費者にとってファストフードは不充分だと感じられてきています。  消費者の期待に応えるため、ファストフード企業各社も材料の調達からメニュー、店舗での経験価値を検討し直しています。ファストフード業界の主なサステナビリティ活動は次の3つです。 サプライチェーンの改善 コミュニティ支援 ダイバーシティ  例えば、食の安全性に関する事件に揺れたマクドナルドは、今年3月に抗生物質を使用していない鶏肉のみの調達、rbSTと呼ばれる人工成長ホルモンが投与されていない牛の低脂肪ホワイトミルクと無脂肪チョコレートミルクを提供など、原材調達に関する新たな方針を発表しています。(※24)  他にもスターバックスは、CSRを単独の行動ではなく企業のDNAそのものとしており、水不足に対処するため水の供給源をカリフォルニア州からペンシルヴァニア州に変更するなど節水に取り組んでいます。(※25)また恵まれない若者を対象に就業プログラムを提供するなど地域コミュニティにも貢献しています。  ダイバーシティに関しても退役軍人を採用するだけでなく、アメリカ国内で白人警官による黒人射殺事件が発生した際には、顧客に手渡すカップに “Race Together”というメッセージを書き、消費者間における人種問題についての会話を促すキャンペーンも実施しています。(※26)  さらに、対内的には従業員の学位取得プログラムの学費の全額をスターバックス社が負担するなど従業員にも細やかな対応が見られます。(※27) ソフトドリンク (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  消費者が人工甘味料を避けるようになり、ダイエットコークやエナジードリンクの消費量はあまり増えていません。長きにわたりコーラが人気であった中国やインド、メキシコ市場にも健康や肥満への問題認識が高まってきています。市場ニーズに応え、メジャーブランドは商品ラインナップの拡充や製品工場の見直し、生産工程におけるカーボンニュートラルなどに取り組み始めています。  ソフトドリンク業界が主に行っているサステナビリティ活動は次の2つです。 水の利用効率の改善 コミュニティ支援  たとえば最大手のコカ・コーラは2020年までの水資源保護目標を掲げ、進捗状況を公開しています。(※28)同社は世界自然保護基金(WWF)とパートナーシップを締結し、この水資源保護にグローバルに取り組んでいます。(※29)  また同社の持つロジスティクスを活かし、「100万人の就学児童に安全な飲料水を届ける」というプロジェクトも展開。(※30)それだけでなく医療インフラが整っていない地域に住む人々に対して、自社の物流やサプライチェーンを活用して医薬品や医療用品を届ける「ラストマイル・プロジェクト」をも展開し地域コミュニティの支援にも貢献しています。  さらに技術革新により世界初の100%植物性由来のペットボトルを開発することにも成功し、環境・社会面への正の影響の向上、食品の安全性に対する悪影響の回避というコカ・コーラの基本原則の下、強固なブランドを築き上げています。(※31)  コカ・コーラの地域コミュニティ支援の詳細は以下をご覧ください 【アフリカ】コカ・コーラ、アフリカで医薬品を供給する「ラストマイル・プロジェクト」を10ヶ国へ拡大 【アラブ首長国連邦】1ヶ月で200万人が視聴。コカコーラが始めた新キャンペーン”Hello Happiness” 金融(銀行・保険) (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  グローバルに展開する銀行は、世界を不況に陥れたことが明らかになり、依然として社会から厳しい目で見られています。他方、ローカルに展開する銀行は、世界的な金融危機の際に、悪事に加担していないとみられたことからグローバルバンクと比べて社会的信用力が高いとされており、現在業界全体での成長性はローカル銀行の方が高くなっています。  また、保険業界は、提供するサービスのコモディティ化を避ける取り組みを展開しています。また、中国では生命保険は急成長している業態で、中国の保険会社らが牽引し業界全体での成長率は高くなっています。  金融業界が長期的な視点に基づく投資として主に取り組んでいるサステナビリティ活動は以下の3つです。 ESG投資 グリーンボンド リスク管理  ESG投資としてはUNPRI(国連投資原則)に署名し、今まで特殊な資産運形態とみなされていたESGを、通常のアセット運用でもリスク管理のひとつに加えていく動きが加速しています。また、気候変動の原因となる温室効果ガスの主たる排出元セクターに対する投資を長期的な観点からリスクと認識し、再生可能エネルギーファンドへの出資も大きなトレンドです。  グリーンボンドの発行分野では、例えば、モルガン・スタンレーは昨年10億円規模のグリーンボンド案件に関わるなどで貢献しています。(※32)  またリスク管理としては、ERP(統合リスク管理)やバーゼルⅢで検討されている銀行の資産健全性の強化などが挙げられます。  ESG投資に関する詳細は以下をご覧ください。 【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線 石油・ガス (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  アメリカのシェールガス革命や中国の景気の減速を受けて原油価格が低下したため、上流ビジネスである石油の採掘は控えられるようになっています。このような事態を受けて業界各社は、比較的利益率の低い下流ビジネスの製油所やガソリンスタンドの見直しに注力する結果となりました。  資源が直接収益に繋がる石油・ガス業界が主に取り組んでいるサステナビリティ活動は温室効果ガス排出量の削減です。  たとえば英国エネルギー大手のBPは4月の年次総会で低炭素経済の実現に向けた事業の変革を促すための株主提案であるResolution 25を可決しました。この決議案の中には、温室効果ガス排出削減マネジメントによりCDPのパフォーマンスバンドでA評価を獲得することや、ポスト2035シナリオに向けたアセットポートフォリオのレジリエンス強化、低炭素エネルギーのR&Dや投資戦略策定などが含まれています。(※33) テクノロジー(消費者・法人向け) (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  テクノロジー業界は、競争と移り変わりが激しく、それぞれのブランドにとって消費者を安心させロイヤリティを高めることがより重要となってきます。BrandZ総合ランキングのトップ4は全てテクノロジー企業が占めており、その影響力の高さが伺えます。  テクノロジー業界はそれぞれの企業の提供しているサービスが多岐にわたりそれぞれの企業が強みを活かしたサステナビリティ活動を展開していますが、主なものは次の3つです。 サプライチェーン改善 再生可能エネルギー ビッグデータを活用したサステナビリティ活動のサポート  例えば、アップルはサプライヤー19カ国633施設での監査及び3万人の従業員に電話インタビューを実施し、サプライヤー規範に則したサプライヤーのみと契約を継続しています。実際2014年時点で規範に違反する18社との契約を解除しています。(※34)それだけでなく、同社は初めて有害物質のポリ塩化ビニル(PVC)と臭素化難燃剤(BFRs)を外部ケーブルも含む全製品から取り除いた企業でもあります。(※35)  また、同社は国際NGOのGreenpeaceの抗議活動を受けて再生可能エネルギーへの投資も行っており、太陽光発電所や再生可能エネルギー100%のデータセンターの建設などが進められています。(※36)アップルに並び業界を代表するグーグルも風力発電ファンドを組成し、再生可能エネルギーへの投資を進めており、グリーンインターネット化が推進されています。(※37)  SAPはToyota Info Technology Center USA、VeriFoneと共同でドライバーのガソリンスタンド探しをシンプルにするプロジェクトを推進し、無駄なエネルギー消費の削減に取り組んでいます。これら3社はそれぞれの技術を活かし、車両の位置やルート、燃料レベルなどの情報収集、POSソリューション、テレマティックスデータを統合しソリューションを提供しています。(※38)  IBMは食品大手のMarsと提携しグローバルサプライチェーンにおける食の安全の確保に取り組んでいます。(※39)同じく食に関わるものとしては農業のサステナビリティ向上のためにビッグデータ解析ソリューションを提供もしています。(※40)さらには、市民一人一人から寄付されたコンピュータの空き容量を集め、仮想スーパーコンピュータを創りだし、科学者に気候変動関連オープンデータ分析のために無料で提供するといったプロジェクトのコーディネートも行っており、自社の強みをサステナビリティに活かす好事例といえるでしょう。(※41)  これらテクノロジー企業を代表するアップルの環境イニシアチブ担当副社長、SAPのサステナビリティ責任者へのインタビューおよびオラクルのサステナビリティ戦略に興味のある方は以下をご覧ください。 【アメリカ】アップルはどのようにサステナビリティ先進企業になったのか? 【アメリカ】SAPのサステナビリティ責任者が語る、統合報告とサステナビリティ戦略 【アメリカ】オラクルのサステナビリティ戦略 通信 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  中国やインドでのスマートフォン利用者の拡大を受けて、通信業界では巨大市場を押さえるためのM&A等が進んでいます。またIoTへのインフラ投資といった将来への投資機会にも恵まれています。一方でインターネット・プロバイダーがネット回線での通話を可能にするなど新たな競合の参入という事態にも直面しています。  そのような通信業界が主に取り組んでいるサステナビリティ活動はエネルギー利用効率の改善です。  たとえばAT&Tはエネルギー効率化や省エネを目指しIoTを推進しています。しかし一方でIoTの進展は、電子廃棄物の増加という新たな問題を生むことを危惧されてもいるのも事実です。(※42)また同社は、ダイバーシティの促進に積極的なことでも知られ、ダイバーシティがビジネスにもたらす利益について周知することを目的とする組織DiversityIncからも、ダイバーシティへの取り組みに積極的な上位50社に選ばれ、見事トップ10入りを果たしています。(※43)  他にもVerizonはアメリカ国内において教育水準の低い24の地域の教師に対し、モバイル通信記述を活用した教育メソッドを提供し、地域コミュニティに貢献しています。(※44) 総論  今回のBrandZのランキングは中国の景気減速を示しつつも、中国企業の台頭を明確に示すものとなりました。市場のグローバル化に伴い、新興国企業がグローバル市場での新たなプレーヤーとして登場するなど、今後製品性能や価格戦略による差別化はますます厳しさを増していきます。  その中、BrandZに選定されている企業の投資パフォーマンスは2006年からの10年間で102.6%上昇しています。これはS&P 500の63%、MSCIの30.3%よりはるかに高く、消費者視点でのブランドがいかに企業にとって重要なものかを物語っています。  そのBrandZにランクインする各業界トップ企業のサステナビリティ戦略を参考にすることで、より現実的な路線でそれぞれの企業が自社の事業領域の中でどのように責任を負い、またその責任を全うするためにどのような行動をしていくべきかが見えてくるでしょう。

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2015/06/18 体系的に学ぶ
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