【アメリカ】IKEAが過去最大規模の再生可能エネルギー投資、165メガワット風力発電所を取得

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サステナビリティ先進企業として知られる家具業界最大手のIKEAが、再生可能エネルギー投資を加速している。 IKEAは11月18日、テキサス州にある165メガワットの集合型風力発電所をApex Clean Energy社から取得したと発表した。これは、同社の再生可能エネルギー投資で過去最高規模となる。同発電所はテキサス州南部のキャメロン郡に既に建設中で、2015年後半には全55タービンから成る風力発電所がフル稼働することになる。 同社は今年の初めにイリノイ州フープストンの風力発電所を購入したことも発表しており、今回の発表と合わせると1年あたりおよそ1,000ギガワット時の発電を見込んでいる。これは米国における平均家庭の年間電気使用量90,000世帯分に相当する発電量だ。 また、同社は米国で展開する店舗の90%に合計165,000枚のソーラーパネルを設置しており、38メガワット分の出力を保有している。さらに、冷暖両方の地熱システムをコロラド州、カンザス州にある2店舗で導入しているほか、9カ国で279の風力タービン稼働を建設中で、2015年までに再生可能エネルギーに対して合計1.9億ドルの投資を計画している。 IKEA社は、今年の9月に行われたClimate Week NYC2014で発足したThe Climate GroupとCDPによる共同プロジェクト、”RE100プロジェクト”の参加メンバーでもある。同プロジェクトでは、NGOや環境問題の専門家、IKEA、Swiss Re、BTをはじめとする大手企業が協力し、2020年までに世界中の100の大企業の事業運営を100%再生可能エネルギーに転換することを目指している。 IKEAグループで最高サステナビリティ責任者を務めるSteve Howard氏はそこで、「再生可能エネルギーへの投資は、ビジネスとして全くもって合理的なものだ。それは財務的リターンという点でも価値観という点でもIKEAの期待に沿っている。企業には安定的かつ経済的で安全なエネルギー供給が必要だが、それを長期的に実現できるのはクリーンエネルギーだけだと言える」と語った。 また、The Climate Groupの役員を務めるBen Ferrari氏は、「IKEA社の風力発電所取得は、クリーンテクノロジーへの投資が企業にとって増益以上の便益をもたらす賢明な選択だと判断したことの証明だと言える。IKEAはかねてから将来の地球環境を見越し、他社に先がけて低炭素化に向けた投資を行っている。RE100プロジェクトで再生可能エネルギー100%へと動き出した企業と同様に、IKEA社のクリーンエネルギー化に向けたビジョンと行動はとても素晴らしいものだ」と述べた。 IKEAは、再生可能エネルギー投資をはじめとするサステナビリティの推進はビジネスの視点で考えて合理的な判断だという明確な価値観があり、そこに迷いがない。自社および自社製品のサステナビリティ向上を通じて消費者の毎日の生活をよりサステナブルなものにするという同社のビジョンは、大胆なコミットメントと多額の投資により具現化が進んでいる。 【リリース原文】The IKEA Group Makes Largest Wind Farm Investment to Date 【参考サイト】The Climate Group "IKEA buys biggest ever wind farm and plans to invest US$2 billion in renewables by end of 2015" 【企業サイト】IKEA 【企業サイト】Apex Clean Energy (※写真提供:Niloo / Shutterstock.com)

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【エネルギー】洋上風力発電の技術的革新

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風力発電とは、風の力を電力に変換することによって、電気を発電する方法です。燃料を使わない再生可能エネルギーに属す発電方法で、燃焼による二酸化炭素の発生も無いため、クリーンなエネルギーとして太陽電池と共に注目を集めています。なお本文では洋上風力発電との比較のため、一般的に風力発電と呼ばれている地上に風力発電機を設置するタイプの発電方法を地上風力発電と表記します。 地上風力発電の一般的な原理 風力発電は、風の力によってプロペラを回転させ、接続されているタービンを回転させることにより電力を得ます。一般的な地上および洋上風力発電機とその周辺機器の図を記します。 図1:典型的な(左)地上、洋上(右)風力発電機 (NEDOエネルギー白書より) 風力発電機は、ロータ系、伝達系、電気系、制御系、支持系の5つの部分に大別されます。ロータ系はブレード・ハブ・ロータ軸により構成され、風を受け、ブレードを回転させます。ロータ軸は伝達系の主軸と接続されており、回転をギアを用いた増速機により回転数を上げます。その回転エネルギーを使って、電気系において電気を発電します。発電されたエネルギーは電力変換・制御装置、変圧器で電流形式の変換や変圧が行われます。発電された電気は送電ケーブルにより送電されます。風力発電機を安全に運転させ、発電効率を向上させるために、制御装置が備わっています。風向・風速計により解析された風にあわせ、出力制御装置で急な風圧の変化や上限スピードに対し、発電機が損傷しないよう制限し、ヨー駆動装置で発電機の方向を風の向きを合わせます。ブレーキ装置は、安全のため強風の際や点検の際に装置を停止させます。様々な装置はナセルという収納部に収められています。全体の長い柱の部分をタワーとよび、発電機全体を支える部分を基礎と呼びます。風力発電機には運転監視装置が備わっており、発電機の停止や監視、発電状況の記録を行っています。 風力発電による出力は以下の数式で表されます。風力と電力の発電の関係は一般に次の式で表されることが知られています。 (P出力[W] ρ空気密度[kg/m3]、A風車の回転面積[m2]、v風速[m/s]、Cpパワー係数) パワー係数は、風車を通過する前と後の風速により決定される係数で、理論的な最大値が59.3%(ベッツの限界値)の係数です。これより理論的な最大の風力発電効率は約60%であることが分かります。またこの式から、プロペラ式の風力発電機により発電できる電力(P)は、プロペラが風を受ける回転面積(A)に比例、風速(v)の3乗に比例することが分かります。この結果から、風力からより多くの電力を発電するには、よりパワー係数効率が良い形状の、より大きいプロペラをもつ風力発電機を開発し、空気密度が高く、風速が速い領域に設置が適していることが分かります。一般的にこれらの条件に最適な立地に風力発電機が設置されます。風力発電機の発電量に直接関係する条件に加え、発電された電気を送電する際の損失や、プロペラ音による騒音が発電機周辺の住民に対する公害とならない配慮や、環境保護の観点からも問題が無いことが必要となります。 望まれる立地条件 まず、風速が速く、風量がなるべく一定な領域が好ましいです。上述の式から、風速が2倍になると風力エネルギーは2の3乗=8倍になります。絶対的な数値としてはより強い領域での風速の上昇が発電量の向上に直結します。急激に強い風が (加速度が高い突風) 吹く土地は、発電機を損傷する恐れがあるため向きません。 発電された電力の送電コストは送電距離に比例するため、なるべく利用されるエリアに近いほうが効率が良くなります。しかし近ければ近いほど良いかというと、そうでもありません。風力発電機は、プロペラが回転する際の騒音と、シャドーフリッカーと呼ばれる、プロペラが周期的に太陽光をさえぎることによって出来る影による人間への影響が大きい点が挙げられます。このため、ある程度は人里から離れている場所に設置される必要があります。一般的に現在の風力発電機の騒音は、数百メートル程離れれば、日常生活の雑音レベルまで下がるといわれています。上記の基準を全て満たす環境が風力発電機設置に望ましいといえます。上記基準を考慮すると、一般的には草原や海岸線、および海上に設置するのが望ましい、と考えられます。現に現在主に利用されている風力発電施設は海岸線上に設置されているものが多くあります。 歴史と発展 風をプロペラで受けて回転させることにより得られた力を利用する方法は、水車と同様に紀元前から既に利用されていました。紀元前では主に水の灌漑に利用されてました。風車はその後ペルシャで粉を轢く形式に改造されたり、オランダの風景で有名なように、干拓地の排水用などにも利用されるようになりました。現在のような発電機を風車につけた「風力発電機」はデンマークのP・ラクールであると言われています。彼は1891年に直径22.8mの風車をつくり、得られた電気を利用して電気分解を行いました。その後徐々に大型化が進み、それにサイズと技術力の向上に伴い発電量も向上しました。現在ではプロペラはジャンボジェット機のウィングスパン80mよりも約2倍大きい160mサイズとなっています。 ウィンドファーム ウィンドファーム(集合型風力発電所)は文字通りには風の牧場となります。風力発電に適している立地に、風力発電機を密集させて設置し、発電量を上げ、まとめて送電することで、電送ロスやメンテナンスコストを下げる方法です。陸上のウィンドファームは広大な土地が必要となるため、現在の主な陸上のウィンドファームはアメリカ合衆国に存在しています。風力発電機間の土地は牧場や農場としても利用されています。 ? 洋上風力 洋上風力発電は、風力発電施設を洋上に設置し、海の風力を利用して発電を行う風力発電形式です。 地上風力との主な技術的差異 洋上風力発電はその名のとおり、タービンを洋上に設置することにより、海上の風を受け、タービンを回し、発電するシステムです。 洋上風力発電の主なメリットは、風が強いため発電量が上がる点がまず挙げられます。先述の様に発電量は風力の3乗に比例することから、風が強いことは発電電力量に直結します。また、地上に比べ洋上の風、いわゆる海風は地上を吹く風よりも恒常性が高く、安定して風力を得られます。さらに、地上に比べ、人間が暮らしている領域から離れているため、騒音による被害が少なくなります。 対してデメリットは、まずコストが地上風力発電と比較して高くつく点が挙げられます。洋上風力発電では、多くの技術が地上風力発電と比較して必要であるのに加え、地上までの電送距離が伸びる点や、海水や海風による浸食、メンテナンスの困難などにより、開発費や設備費がかさむ傾向にあります。 図2:洋上風力発電機と周辺設備の接続図(NEDOエネルギー白書より) 歴史と発展 洋上風力発電は、再生可能エネルギーに分類される技術の中でも新しい技術として分類されます。世界初の洋上風力発電は1990年に初頭にスウェーデンやデンマークで施工され、2000年にデンマークで初めて商用として利用されたものが発祥です。徐々にサイズが大きい発電機や大型のウィンドファームの開発も始まり、各国のエネルギー計画で大量発電の計画が立てられるなど、今後の発展が期待されている発電形式です。 技術的分類 洋上風力の技術的な課題はタービン自体の構造と、発電機の設置方法、および送電システムに大別されます。 タービンの構造 図1にあるように、発電に関わる部分の主な差異は、遠隔整視センサと塩害対策用フィルタ、着船用設備です。遠隔整視センサは、直接監視が困難な洋上風力発電機を地上の監視施設などから監視し制御するものです。塩害対策用ファン(フィルタ)は、海水に混入している塩分により装置が故障しないよう設置されています。一般的に機械は塩分に弱いという特徴があります。これは構成に使用されている金属が、塩分により腐食することが主原因として挙げられます。船着設備は、発電設備のメンテナンスのために作業員が設備に到達するために必要となります。 基礎の構造 洋上風力発電は、現在まではシャフトを海底へ延長し30mから50mの浅瀬に設置する着床式のものが主流であり、これを中心に発展してきました。この着床式風力発電装置は主に5種類に分類されます。主に30m以下の浅瀬では、モノパイル式と呼ばれる地上風力発電機のシャフトを延長海面から海底へと延長したものを、海底を掘削し埋め込む形式や、より発電機を安定させるために、基礎となる土台を海底に設置するタイプが利用されます。 しかし30m以上の深さでは、高コストになる傾向と、安定性の問題から(シャフトが長い分不安定になるのは、長い筒ほど立たせるのは難しいことから容易に想像できるかと思います)、脚の数を増やし、カメラのスタンドのように3脚型にし、安定させる方法が取られています。それよりも深い海域では、水上に風力発電設備を浮かせて、ワイヤーで海底へ固定する浮遊式の方が経済的であると考えられています。 現在では全体を釣りの仕掛けの「浮き」のようにプロペラを浮かせる「スパー型」や半潜水状態にし安定させる「セミサブ型」が実装に向けて現実的な開発が進んでいます。 図3:着床式洋上風力基礎の主な形状(NEDOエネルギー白書より) 図4:浮遊式洋上風力基礎の主な形状(NEDOエネルギー白書より) 送電システム 洋上風力での故障はケーブルの故障、漏電であるケースがあり、強固なケーブルや設置場所の検討は重要課題となっています。現在主に利用されている金属系の常伝導体ケーブルのほかにも、超伝導体と呼ばれる、ある一定の温度以下では抵抗がゼロになる材料を利用することで、送電ロスを提言するケーブルの開発も進められています。 望まれる立地条件 突風やサイクロン、台風などが来る可能性が低いことが挙げられます。機械は急な変化に弱く、故障しやすいため、突風が吹かないことが望ましいです。年間を通して風量が比較的安定して多い領域が良いと考えられます。また、海上に設置するということは、見方によれば海を「侵す」ことになるので、漁業や環境保全団体への配慮も重要となります。 オフショアウィンドファーム オフショアウィンドファーム(洋上集合型風力発電所)は、文字通り洋上のウィンドファームです。陸上と比較し、洋上では風速が高く、利用効率も高くなり、さらに騒音も問題にならない等、多くの利点があるため、今後の開発に注目が集まっています。 洋上風力発電は現在ではヨーロッパで盛んに行われ、特に、地形が洋上風力発電設置に望ましいイギリスや、風力発電発祥の地であるデンマークでの発展が目立ちます。他の地域でもアメリカ・カナダでは五大湖や東海岸、西海岸などでの開発が検討されています。このほかにもアルゼンチン沖合いなどが有望であるとされています。 今後の課題 タービン技術の更なる向上とそれに伴う低コスト化 地上風力と比較して洋上風力はより多くの技術とメンテナンス費用がかかるため、一機あたりのコストが高くつく傾向にあります。このため低コスト化には一機あたりの発電量の向上が不可欠です。発電性能を向上させるためには、発電機の更なる大型化が必要となります。 メンテナンス費用低減のため、ダイレクトドライブ型(プロペラと主軸の間にギアを必要としないタイプの風車)の開発にも注目が集まっています。ギアは高速で回転しているため消耗が比較的激しくなります。ギアを組み込まない設計で風車の回転を直接発電機に接続することが出来れば、メンテナンスのコスト低減につながります。 発電機内部の構造の技術の向上も見込まれています。超伝導発電機は、プロペラ内の回転子に超伝導体を用いることで、効率を向上させる方法です。材料にもよりますが、超伝導体による発生磁界は銅線コイルや主に鉄を主成分とする永久磁石よりも数倍以上強いため、より小さいプロペラや低速の風でも高い効率の発電を期待できる方法です。 基礎構造、浮遊構造の向上 既に実装段階にある着床式では低コスト化が重要です。現段階では実践的な実装には至っていない浮遊式では、より大型の風力発電機にも対応できる安定性を持った浮遊式基礎構造の技術的な向上が、課題となっています。 稼動可能領域の更なる探索 技術開発が進むにつれ、風力発電機が設置可能な領域が拡大されることが予想されます。現在高度なスーパーコンピューターや高度な観測技術を用いて、地球上の風の強さや向きなどの状況を観測、計算予測しています。メキシコではスーパーコンピューターによる計算予測により風力発電機の設置場所が設定された例があります。技術開発により、より広い条件での利用状況を、より発展した観測技術、計算技術で探索することが必要となってきます。 日本における洋上風力発電の拡大の可能性 日本は環太平洋造山帯という火山地帯に立地しているため、浅瀬が少なく、洋上風力、特に浅瀬が必要な着床式発電機の設置には向いていないことが分かります。今後日本で洋上風力が発展していくには、全体的な技術的発展は勿論のこと、特に設置技術の向上が重要なのではないでしょうか。逆説的に、日本の技術力を駆使して日本のような洋上風力発電が不向きな土地へ、世界各国の今まで風力発電機が設置が不向きとされてきた領域への新規開拓が可能になっていく可能性を秘めています。現に日本でも、例えば福島復興などのプロジェクトと関連して、日本における洋上風力発電の開発は進んでいます。 尚、各技術の詳細や最適立地、今後の可能性については諸説あるため、詳細の内容については専門書をあたられることをお勧めいたします。 文:サステナビリティ研究所研究員 ケンブリッジ大学 篠原肇

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2014/11/25 体系的に学ぶ

【イギリス】電力量全体の約24%を風力発電が供給、新記録を達成

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イギリスでは、大規模なガス発電施設が火災に苛まれ、いくつかの原子力発電所が操業を止めていた10月下旬の週末、止むことなく吹き続けた強い風が国内の電力供給を支えた。イギリスの再生可能エネルギー推進NPO、RenewableUKによれば10月18日土曜日の正午には風力発電が30分以上に渡って最大発電量7,998 MWを記録したという。 この発電量はイギリスの10月の平均電力使用量を元にすると1,700万世帯分の電力量に相当し、EnAppSys社のNational Grid統計によると、過去最高の記録とのことだ。また、続く19日の日曜日にはイギリス全体の電力量の約24%を風力発電が供給し、この新記録は今年8月に更新されたばかりの22%を超えるものだったという。 10月18日、19日のイギリス国内における電力供給割合の内訳は、石炭火力が7,961MW(26.4%)、天然ガスが7,818MW(26.0%)、風力が7,105MW(23.6%)、原子力が4,321MW(14.3%)その他が2,916MW(9.7%)だった。 風力発電の今回の快挙の背景には、既存の発電の相次ぐ不具合がある。10月19日、100万世帯分の電力に相当する1,360MWの発電能力を持つDidcot B発電所が突発的な火災により停止したほか、同じ頃、4つの原子力発電所が計画外の供給停止と燃料補給のため操業を停止していた。4つの原子力発電所の合計発電能力は5,303MWだ。このように複数の要因が重なったことで、風力が元来持っている発電パフォーマンスの一貫した高さが、週末にかけて原子力発電所による発電量を上回ったのだという。 RenewableUKで渉外担当デイレクターを務めるJennifer Webber氏は「今年は風力発電が次々に新記録を達成した。このことで、火力や原子力など従来の発電方法が突然作動を停止した場合でも、風力発電が電力供給不足を十分に補う能力を持っていることが証明された」と語った。 また、同氏は「政敵や既得権益者により便利なスケープゴートとしてしばしば利用されることも多い風力発電だが、風力発電はイギリス各地で数百万の世帯に電力を黙々と供給しており、声高に風力発電を中傷する人々に対して確固とした態度で反論している」と語り、風力発電が持つ潜在能力を強調した。 【リリース原文】Wind power steps up when nuclear and gas go offline 【団体サイト】RenewableUK (※写真提供:Alastair Wallace / Shutterstock.com)

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【エネルギー】風力発電と低周波音問題 〜現状と対策〜

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低周波音という風力発電のデメリット 風力発電は再生可能エネルギーの中でも発電コストが低く、将来を有望視されるエネルギー源ですが、懸念材料がないわけではありません。風力発電の普及において、最大の懸案材料となりえるのが低周波音被害です。 (出所:環境省「よくわかる低周波音」) 低周波音とは、空気の振動によって発生するとても「低い」音です。人間の耳は、空気の振動を音として認識しており、振動の周期(周波数)が高いものを高音、周波数の低いものを低音として認識できるようになっています。今回取り上げる低周波音は、音の中でもかなり低い領域(概ね100Hz以下)のもので、人間の耳でとらえられる可聴音のものから、さらに低く人間は感知できないものまでを含んでいます。低周波そのものにも様々な種類があります。波が打ち寄せる海の音の様に癒やしの音もあれば、工事現場から発せられる音のように不快感や圧迫感を感じるものもあります。今回取り上げる風力発電は、風車という構造上どうしても、空気の動きに変化を与えます。そして、場合によってはそれが人に不快感を与えるタイプの低周波を発してしまうことがあります。それが問題となります。 円満解決が難しいトラブルの発生 日本で風力発電の低周波音問題がクローズアップされたのは、2007年のことです。愛知県で風力発電トラブルが発生した際です。同年1月に、愛知県豊田市と田原市には各1基の風力発電機が運転を開始。その後、田原市で2名、豊田市で26名が健康の不調を訴え、行政が乗り出す事態となりました。一般的に、低周波音の調査では、調査員が現地の低周波音を実際に耳で確認したり、測定器を使って低周波音の音域や音の強さ(デシベル)を計測します。法的紛争にまで発展した田原市と豊田市では、環境省も腰を上げて実測を行いましたが、結果はシロ。人体に悪影響を与える種類の低周波音は発生していないという結論となりました。しかし、これで問題が解決したわけではありません。それは、低周波音の種類と人体への影響については万人が納得する基準が未だ見出されておらず、科学者の間でも見解が一致していないためです。特に、環境省の調査報告で、10Hz以下の低周波音は観測されるが、10Hz以下の低周波音は耳が感知できる音域ではないため健康被害はない(これを感覚閾値論と言います)、としたことに対して、耳が感知できないものでも人体に悪影響を及ぼしうるとする反論が登場しています。 さらに紛争の収拾を難しくするのが、風力発電と低周波音の因果関係の立証です。そもそも低周波音は空気の振動であって、その空気の振動が何によってもたらされているかという因果関係は極めて計測が難しいものです。事件の現場にも、人間社会や自然環境から空気に対する影響はたくさんあり、低周波音があったからといって、それを風力発電機が原因となっていると特定することは難しいのです。健康被害を訴える方からすると、風力発電事業者が責任逃れを主張しているようにも聞こえますし、風力発電事業者からすると言い掛かりのような気持ちも芽生え、双方の気持ちのすれ違いが発生してしまいます。 予防原則と低周波音規制 このように環境・健康被害については、科学の見解の不一致により紛争解決がスムーズにいかなくなることが往々にしてあります。但し、それでは人々が安心して暮らせません。そこで、現在、環境法の分野が採用している考え方が「予防原則」です。予防原則とは、1990年代に欧米を中心に生まれてきた新しい概念で、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、事前に規制措置とっても良いという考え方のことです。一見、当たり前のように思えますが、これが登場した時は画期的な考え方でした。通常、何か事件があった場合、裁判では立証責任が課せられ、立証を果たせなかった場合は無罪となります。また、事件で相手に対して不当に不利益を与えた場合は有罪となります。例えば、環境省が因果関係が不明なままにある環境規制を発し、実際には悪影響がなかったことが判明すると、営業妨害として環境省が裁判で敗訴し賠償責任を負わせられる可能性もあります。予防原則では、このように因果関係が不明な状況でも、実際には発生しうるかもしれない悪影響を防止するために事前に規制を課すことは、その実際の因果関係に依らず正当である、という考え方なのです。 風力発電の低周波音に対する規制は、世界各国で対応が分かれています。日本では環境省が低周波音被害に対しての対応マニュアル「低周波音問題対応の手引書」を地方自治体に配布して、事件発生時の事後対応については整備してきていますが、予防原則に立脚した低周波音対象の規制法はいまだなく、騒音規制法、振動規制法という関連法で辛うじて対応をしている状況です。相次ぐ被害の訴えに対して、弁護士会からも環境省の規制未整備に対する不作為も指摘されています。 一方で、スウェーデンやポーランドなどでは、下図にあるように、予防原則に基づく事前規制が敷かれています。法規制では、各音域(Hz)ごとにデシベル基準を設定し、それ以下に低周波音の発生を抑える義務が課されています。同様の法案の必要性について、いま諸外国でも一斉に議論がスタートしています。 (出所:日本弁護士連合会「低周波音被害について医学的な調査・研究と十分な規制基準を求める意見書」) 事前規制強化に反対する人の意見は、不要な規制によって風力発電の設置数が伸び悩むということをあげています。諸外国の結果は、この主張にイエスともノーとも言えるものです。予防原則措置がヨーロッパ諸国に多く、またヨーロッパには風力発電立国が多いことから、予防原則を確立することで社会の不安を払拭し風力発電が容易に増やせるとも言えそうです。但し一方で、風力発電の数が急増し被害の訴えが増えた後に、ヨーロッパで法規制が強化され、今後は伸び悩むとも言えそうです。 低周波音問題とサステナビリティ活動 予防原則の有無について議論が世界で巻き起こっている中、真に大事なことは、いかにして風力発電を社会にとっても安全性の高いものにしていくかです。そのための方法は主に2つあります。1つ目は、低周波音発生防止技術のイノベーション。風力発電が発生させる低周波音被害を少なくできればできるほど社会にとっては望ましいということに反論する人はあまりいないでしょう。課題は、低周波音発生の対策コストです。事前に予防をすればするほど、予防器具を購入したり、予防技術を開発するコストがかかります。そのコストが減少すればするほど、社会的にも経済的にも低周波音対策を行うことに合理性が生まれます。もう1つの方法は、洋上風力発電の促進です。洋上風力発電の発展も低周波音問題の新たな解決方法となりえます。洋上風力発電は、そもそも風力発電機を人間社会から離れた洋上に設置されるため、低周波音が発生された場合でも、人間社会には届きづらいというメリットがあります。また、現在、日本などが取り組んでいる浮体式洋上風力はさらに沖合に風力発電機を設置する方式でもあり、低周波音被害はより少なくすることができます。 低周波音被害が発生した後に、被害者を救済することもCSR活動として讃えられるべき活動ですが、低周波音被害そのものをなくしていく取組も同じくサステナビリティアクションとして事業会社が誇れる内容です。風力発電の低周波音発生防止のための技術開発や洋上風力発電の開発は今後求められていく取組です。このような取組は、サステナビリティ報告書や統合報告書の中で、十分にアピールできます。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/07/23 体系的に学ぶ

【バミューダ諸島】世界最大のラム酒ブランド、Bacardi社のサステナビリティ

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今回ご紹介するのは、世界最大のラム酒ブランド「Bacardi(バカルディ)」で有名なBacardi & Company Limitedのサステナビリティへの取り組みだ。バカルディは、1862年にスペインからキューバへ移住してきたワイン商、ドン・ファクンド・バカルディ・マッソによって設立された非常に歴史ある企業だ。その後、同社はキューバ革命後の国有化政策を恐れて1960年にキューバから撤退し、本社をバミューダ諸島のハミルトンに移転。現在は蒸留所をプエルトリコ、バハマ、メキシコなどに置き、品質管理を行っている。バカルディのサステナビリティに対する取り組みは、創業者であるドン・ファクンド・バカルディ・マッソ氏にまで遡る。同氏は当時からモラセス(砂糖の精製時に発生する廃糖蜜)の削減やウイスキー樽のリサイクルなどに取り組んでおり、同社にとってサステナビリティとは会社のDNAそのものとなっている。同社のサステナビリティの特徴は、経営陣の強いコミットメントがあることだ。それは同社のHPに経営陣3名がそれぞれ自身の言葉で自社のサステナビリティに関するコミットメントインタビューを掲載していることからもはっきりと窺える。動画の中で同社CEOのEd Shirley氏が述べている”Our vision is to return to the environment at least at much as we take away.(少なくとも使ったぶんの資源は自然へとお返しする)”というゼロ・ネットインパクトビジョンが、同社のサステナビリティの柱だ。同社は2006年から、製品パッケージ重量を7%以上(23,000トン相当)削減し、エネルギー利用を25%、水の利用を54%以上も削減してきた。プエルトリコにおける風力発電、フィジーにおけるバリアリーフを保護するための持続可能なさとうきび農場のモデル開発など、同社の取り組みは幅広い。そして現在は、2017年までの目標として下記のように更に高い数値を掲げている。さとうきび製品の40%をサステナブル認証を受けた資源からの調達で賄う水の利用を55%削減する温室効果ガスを50%削減するパッケージ重量を10%削減するサステナビリティへの一貫した姿勢と高い実現力が、"Bacardi"ブランドと品質に対する消費者の信頼を底支えしている。【企業サイト】Bacardi & Company Limited 【CSRページ】Good spirited

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2014/02/12 最新ニュース

【アメリカ】IKEA・コンショホッケン店、2013年度ゴーグリーン賞に選出

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アメリカのIKEA・コンショホッケン店は、環境保護の取り組みを評価され、フィラデルフィア郡プリマス区よりゴーグリーン賞を贈られた。 IKEAは全米店舗の9割の屋根に太陽電池パネルを設置している方針を掲げている。その一環として、IKEA・コンショホッケン店は2012年7月に4760にも及ぶソーラーパネルを設置。年間1,366,310 kWhもの発電をしている。その量は、177家庭への電力供給量に匹敵する。このソーラーパネル設置により、942トンの二酸化炭素と185台分の車の排ガスが削減されたことになる。IKEAは2020年までに、世界中でソーラーパネル25万枚を設置するとともに、欧州で110台の風力発電設備を整備することを目標としている。そのため、2015年を通じて世界で18億ドルを再生可能エネルギーの分野に投ずる構えだ。 IKEAは、スウェーデン発祥の世界最大の家具販売店であり、兼ねてから環境へ最大限に配慮したビジネス展開を行ってきた。IKEAが掲げる"The Life Improvement Store"のもと、サステナビリティを企業戦略に結びつけ真剣に取り組んでいる。 【企業サイト】IKEA Conshohocken

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2014/01/14 最新ニュース

【アメリカ】GlobalDataが南北アメリカの再生可能エネルギーハンドブック発表

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世界のエネルギー・健康に関する情報を集めるシンクタンク GlobalDataは、南北アメリカ各国の再生可能エネルギー政策をまとめた最新ハンドブックを発表した。ハンドブックに収録されているのは南北アメリカの大国であるアメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンの詳細分析で世界最大級のレポート。各国の現在、そして未来の再生可能エネルギーの計画及びゴールが詳述されているだけでなく、各国の今後の再生可能エネルギー市場の見通し、及び技術にフォーカスした細かい政策適用までもが記されている。企業担当者には嬉しい、各国の再生可能エネルギー助成金・補助制度などももちろん詳しくまとめられている。?アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン5カ国の分析だけで394ページに及ぶレポートは圧巻だ。本レポートは購入するのに$3995もかかるので、研究者や具体的に投資を検討している商社やエネルギー企業、金融機関向けかもしれない。実際に調べたことがある方ならご理解頂けると思うが、各国および各州のエネルギー政策や助成金を調べるのは本当に骨が折れる。一冊で最新情報がすべてまとまっている同書は、情報収集する手間と人件費を考えたら、決して高過ぎることはないだろう。【ハンドブックの購入サイト】North and South America Renewable Energy Policy Handbook 2013

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2014/01/01 最新ニュース
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