【ドイツ】独のマテリアル情報開示ガイドライン「SD-KPI 2016-2021」公表。SASBの成果織り込む

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 ドイツの投資コンサルティング企業SD-M(Sustainable Development Management)は9月23日、第2版となる「SD-KPI(Sustainable Development Key Performance Indicators)STANDARD 2016-2021」を発表した。SD-KPIは、業種ごとに投資家視点でマテリアルとなる項目を特定したガイドライン。GRIがG4で企業にとって重大な影響を与える(これをマテリアルと言う)情報を特定し開示するよう企業に求めているが、SD-Mは2009年に当時のドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現在のドイツ連邦環境・自然保護・建物・原子炉安全省)と協働して、企業が開示すべき情報を特定した自主的なガイドライン「SD-KPI STANDARD 2010-2025」を2009年に作成した。言わばドイツ政府公認の非財務情報開示ガイドラインだ。それから5年が経過し、今回第2版が発表された。現在は英語版のみだが、今年中には中国語版と日本語版も発表される予定。  「SD-KPI STANDARD 2016-2021」でのポイントは、米国で同様の取組をしてきたSASBが共同作成メンバーとして加わった点にある。SASBは、今年3月に10分野79業種で情報開示すべきマテリアルな項目の特定を完了。「SD-KPI STANDARD 2016-2021」は、SD-M、ドイツ連邦環境・自然保護・建物・原子炉安全省、SASBの3者が検討主体となり、初版の「SD-KPI STANDARD 2010-2015」の要素50%、SASBが作成した「サステナビリティ会計基準」の要素50%を織り込んだものとなった。「SD-KPI STANDARD 2016-2021」は、10分野68業種でそれぞれ概ね3つのマテリアル項目を特定し、さらに項目ごとのウェイトも示されている。SASBが1業種あたり5から10のマテリアリティ項目を特定しているのに対し、SD-KPIは3項目と大きく絞っているのが特徴。  SD-Mは、「SD-KPI STANDARD」をより実務に使いやすくするための仕組みも整備している。まず、ESG調査・分析企業でボストンに本社を置くサステナリティクス(Sustainalytics)と協働で世界4,300以上の企業を「SD-KPI STANDARD」に照らして評価した結果を、同社のSD-KPInventory®サービスを通じて、アセットオーナー、運用会社など機関投資家や、格付機関などに提供している。また、スイス・チューリッヒに本社を置くインデックス開発大手STOXX社と共同で「EURO iSTOXX 50 SD-KPI」「iSTOXX Europe 50 SD-KPI」の2つの株価指数を2013年9月に、「iSTOXX Europe 600 SD-KPI」を2016年4月にリリースし(総称「iSTOXX® SD-KPIndex® family」)、すでに運用会社などに提供している。例えば、「EURO iSTOXX 50 SD-KPI」は2013年9月から今年9月までの3年間のパフォーマンスで、ユニバースである「EURO iSTOXX 50」指数より9ベーシスポイント(0.09%)上回っていた。  2014年に非財務情報の開示を義務化したEUも、目下、同様の業種ごとの情報開示ガイドラインを作成中で、今年12月6日までに発表することが決まっている。注目されるのはやはりSASBの勢いだ。本来は米国国内市場向けにガイドラインを作成してきたSASBは、投資家にフォーカスしたことが功を奏し世界中の機関投資家から注目されている。ドイツで作成された今回の「SD-KPI STANDARD」にもSASBの要素が色濃く反映された。ドイツはEUに対して大きな影響力を持つとも言われており、間もなく公表されるEUの業種別情報開示ガイドラインにもSASBの成果が反映されそうだ。 【参照ページ】SD-KPIs 【ガイドライン】SD-KPI STANDARD 2016–2021 【インデックス】EURO ISTOXX® 50 SD-KPI INDEX

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【6/18 大阪・セミナー】CSRの最新動向と統合報告<IR>の基礎

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 株式会社シータス&ゼネラルプレスは、2015年6月18日(木)に天満橋ドーンセンター(大阪市中央区)にてセミナー「CSRの最新動向と統合報告<IR>の基礎」を開催いたします。  CSRの基本はステークホルダーの声に耳を傾けることであり、その声は社会環境とともに変化を続けています。企業はステークホルダーに開示すべき情報を常にアップデートする必要があります。  企業報告の潮流としていま注目されているのが、統合報告<IR>への関心の高まりです。しかし、統合報告<IR>は単に財務情報と非財務情報を断片的に組み合わせたものではない「統合思考」が重要であるにも関わらず、用語が独り歩きをしている状況が見受けられます。  そこで、企業でCSRレポートや、統合報告書などのコミュニケーションツールの制作に携わっておられるご担当者を対象として、「CSRの最新動向と統合報告<IR>の基礎」をテーマに、セミナーを開催いたします。  当セミナーを通じて企業報告の最新動向への理解を深め、御社のCSRとIRの推進・コミュニケーションのご参考にしていただければ幸いです。 開催概要 日時:2015年6月18日(木) 14:00~16:15(受付13:40~) 会場:天満橋ドーンセンター 5階セミナー室2    京阪「天満橋」駅、地下鉄谷町線「天満橋」駅より約350m 参加費:無料 定員:40名程度 プログラム 14:00 プレゼンテーション1「CSRの基礎知識と最新動向」     講師:シータス&ゼネラルプレスCSR革新室 CSRコミュニケート編集長 渡邉ゆかり 15:10 プレゼンテーション2「改めて知りたい統合報告<IR>の基礎」     講師:同 コミュニケーション・コンサルタント 斉藤肇 16:15 終了 お申込み お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。

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【5/27 東京・緊急開催セミナー】「非財務情報の保証とは – CDPを含めた外部評価」

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 株式会社シータス&ゼネラルプレスは、2015年5月27日(水)に本社(東京都文京区)にてセミナー「非財務情報の保証とは - CDPを含めた外部評価」を開催いたします。  海外では社会・環境情報に第三者保証が付与されるケースが多くみられますが、日本において保証が付与されるのは限定的です。非財務情報の信頼性を担保する保証について、日本企業はどのように対応すべきでしょうか。  さらに、CDP質問書の回答期限が6月末に迫っています。質問への返答情報はグローバルにスコアリングされ公開されます。  以上のような状況を踏まえてこの度、サステナビリティ・統合報告の保証について最新動向をお伝えするセミナーを開催します。  まず、非財務情報の保証とその評価の関係について、青山学院大学大学院の牟禮氏からお話をいただきます。次に、CDPのパートナーでもある認証機関LRQA、SGSから、評価機関に影響をあたえる情報の効果的な作成方法・対応の仕方についてご紹介いただきます。後半のディスカッションでは、監査法人による保証と認証機関による保証の相違点や、保証のあり方について議論を深めていきます。  本セミナーを通して、サステナビリティ情報の保証と外部評価の関係性や具体的な対応について理解を深めていただき、目前に迫るCDP返答についてスコアアップにご活用いただければ幸いです。 開催概要 日時: 2015年5月27日(水) 15:00~18:00 (受付14:30~) 会場:株式会社シータス&ゼネラルプレス本社 5階会議室(地図) 東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」3番出口より徒歩約3分 春日通り沿い バス停「小日向四丁目」前 参加費:無料 定員:50名 プログラム 15:10 基調講演「統合報告における保証の状況」 青山学院大学大学院 准教授 牟禮 恵美子氏 15:40 プレゼンテーション1「グローバルに保証が求められる背景:マテリアリティ特定、ESG情報の開示要望の高まり」 ロイドレジスター クオリティアシュアランス 事業開発部門長 冨田 秀実氏 16:10 プレゼンテーション2「CDP2014 気候変動質問書ジャパン結果報告の概要」 SGSジャパン 認証サービス事業部 マネジメントシステム認証部 プロダクトマネージャー 西 利道氏 休憩 16:50 ディスカッション「認証機関における第三者認証の機能と役割」 パネリスト:牟禮 恵美子氏、冨田 秀美氏、西 利道氏 モデレーター:シータス&ゼネラルプレス 山吹 善彦 18:00 終了 お申込み お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。

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【ドイツ】SAP、2014年度の統合報告書を公表。財務と非財務の関係性を定量化

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 ソフトウェア大手のSAPは3月20日、2014年度の統合報告書を発表した。今回の統合報告書の特徴は、初めて従業員エンゲージメントおよび従業員の健康指標の変化が営業利益に与える影響について具体的な数値で示した点だ。  SAPが独自に構築したモデルに基づくと、同社では、従業員エンゲージメント指数が1%上がると営業利益は3500~4500万ユーロ増加し、ビジネスヘルスカルチャー指数が1%上がると、営業利益は6500~7500万ユーロ増加するという結果を示すという。統合報告の中には新たにこの2つの指数が加わり、定量化された財務への影響を表すKPIは既存の「従業員定着率」と「CO2排出量」の2つから4つに増えた。  SAPはこれらのモデルに毎年微調整を加えているが、同社によれば従業員定着率の1%の変化は営業利益に4000~5000万ユーロの影響をもたらし、CO2排出量が1%削減されると400万ユーロのコスト削減が実現できるという。  SAPが利用している社内モデルでは、特に間接的な影響を考慮している点が特徴的だ。例えば、従業員エンゲージメント指数の高さによる財務への影響は、献身的な従業員はより革新的で休暇日数が少なく、彼らは売上を逃すこともなく、定着率が高さから変動費の高さの要因となる研修・採用コストの抑制にもつながるという事実に基づいている。また、同社は、それぞれのKPIは互いに密接に関連し、影響を及ぼし合っているため、これらの多様な定量化を単純に加えることはできないとしている。なお、統合報告書ではこうした非財務要素の改善に必要な投資に関する分析は含まれていない。  同報告書の主なポイントは下記の通りだ。 SAPの従業員の福利厚生と労働条件、リーダーシップ文化といった要素を分析した「ビジネスヘルスカルチャー」指数は前年比3%上昇の70%となり、19500~22500万ユーロに相当する営業利益増加につながった。同指数の上昇は、従業員が無料で健康診断を受けられる「従業員健康サポートプログラム」や、より強力なリーダーシップ開発への取り組みによるものだとSAPは解説している。 SAPの従業員定着率は横ばいで93.5%に留まっている。SAPはある程度の離職はイノベーションに必要だという考えから、100%を目標にしていない。 SAPの2014年度の温室効果ガス排出量は50万トンで、前年比で4.5万トン減少した。2014年前半からSAPの全てのデータセンターと施設が100%再生可能エネルギーで稼動していることがこの減少の主な理由だ。  SAPでCFO(最高財務責任者)を務めるLuka Mucic氏は「社会・環境面のパフォーマンスと営業利益の関係に期待することと、その関係を定量化することには大きな違いがある。誰もが献身的な従業員がいる会社はもっと成功できるとわかっているが、2014年は従業員エンゲージメント指数が2%増加したことで7000~9000万ユーロの営業利益増加につながったというデータがあれば、従業員エンゲージメントをより優先するべきだと上司を説得するのがとても容易になる。」と語った。  SAPのように、従業員エンゲージメントや健康、企業文化といった非財務情報を数値化し、財務との関係性を定量化しようという試みは真の統合思考の実践だと言える。具体的な数値を基にして非財務パフォーマンスの改善が財務状況の改善につながることを示すことができれば、環境、社会といった非財務への投資は大きく促進されるはずだ。また、同社の場合はCFOのMucic氏がその重要性を認識している点も強みだと言えるだろう。同社の統合報告の詳細について知りたい方はぜひ下記を参考にしてほしい。 【レポートダウンロード】Integrated Report 2014 【リリース原文】2014 Integrated Report: SAP Quantifies Its Social and Environmental Performance 【企業サイト】SAP (※写真提供:Gil C / Shutterstock.com)

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【ヨーロッパ】GRI、非財務情報開示に関する新EU指令とG4との関連性を公表

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サステナビリティ報告に関する国際イニシアチブのGRIは2月3日、昨年に欧州連合理事会が承認した企業の非財務情報および多様性の開示に関するEU指令への対応を支援するために、新EU指令とG4との関連性について示した新たなガイドブック”Making headway in Europe” を刊行した。 同ガイドブックは、EU指令を遵守するために対象企業がどのようにG4を活用することができるかについて解説しており、GRIはガイドブックの中でG4は新EU指令の要求に完全に対応可能なフレームワークとなっているとしたうえで、両者の共通点、関係性について説明している。 新EU指令のもとでは、対象企業は下記7つの要素についての情報開示が求められている。 General Disclosure(一般的な情報開示:ビジネスモデル、サステナビリティ方針がない場合または特定の情報を公開しない場合の説明、外部保証の利用) Diversity(多様性) Environmental matters(環境) Social matters(社会) Employee matters(従業員) Human Rights matters(人権) Anti-corruption and brivery matters(汚職・贈賄の防止) 上記の新EU指令に対し、GRIはほとんどのケースにおいてG4の定める戦略および分析の開示、組織のプロフィール、マネジメント手法の開示、指標の4つの情報をそのまま活用できるとしている。 また、GRIは上記1の「一般的な情報開示」については、情報開示の免責・除外および外部保証について新EU指令とG4との間に強い共通点があるとしている。G4では特定の情報については企業に対して情報開示をしない余地が与えられているが、同様に新EU指令のもとでも各国政府は企業に対して差し迫った開発や交渉中の事案については情報開示をしないことを認めるという選択肢を持っており、サステナビリティ方針を持たない企業に対しては"Report or Explain(報告せよ、さもなければ説明せよ)"というアプローチを適用している。 さらに、外部保証の柔軟性についても両者は共通しており、GRIは外部保証を強く推奨してはいるものの要件の中には含めていないが、新EU指令も独立した外部保証を義務づけるかどうかについては各国政府に決定権を委ねている。 上記1~7の要素とG4の関連性についてはレポート内に対照表がまとめられているので、ぜひそちらを参考にしていただきたい。 GRIの副最高責任者を務めるTeresa Fogelberg氏は「このガイドブックは、EU指令の対象となる組織がG4を活用するべき理由、そしてどのように活用できるかを示している。また、同書はEU内外における持続可能でインクルーシブな成長に加え、企業の透明性を推進するというGRIのコミットメントの一端でもある」と語った。 EUでは、企業の非財務情報および多様性の開示に関する指令が昨年9月に欧州連合理事会に承認された後、12月から施行されている。同指令によりEU域内の約6,000社に環境、社会、労働、腐敗防止、贈賄、人権など幅広い非財務情報の公開が義務づけられた。また、報告書の中ではこれらの分野に関する自社の方針、成果、リスクについても記載する必要がある。(※参考記事:【EU】欧州連合理事会、大企業の透明性向上に向け、非財務情報開示義務指令を承認) GRIのBastian Buck氏は「G4は企業に対して包括的なガイダンスを提供している。これにより、企業はEU指令で定められている透明性を担保することができる」と語った。今回GRIにより新たなEU指令とG4との関連性について明記されたことで、新たにサステナビリティ報告書を作成する担当者にとっては大きな助けとなりそうだ。ガイドブックは下記からダウンロード可能。 【レポートダウンロード】Making headway in Europe 【団体サイト】GRI

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【レポーティング】統合報告による企業情報開示の変革 〜武田薬品工業社の成功事例〜

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統合報告時代の到来企業の財務的利益とCSRの関係が新たな時代を迎えようとしています。これまで企業戦略構築において、脇役的な存在に追いやられていたサステナビリティ・CSRの重要性が大きく増しています。この新しいうねりを作り出しているキーワードは「統合報告」です。統合報告とは何か。その説明に入る前に、今まで語られてきた財務的利益とCSRの関係を少し振り返ってみましょう。CSRという言葉が普及し始めたのは20世紀後半。このときCSRは慈善活動として開花しました。事業活動を通じ財務的利益を得、その富を社会や環境に還元していくことがCSRである、こう語られてきました。このCSR第一世代の考え方は、「CSR=ボランティア、慈善活動、寄付、植林、途上国への学校建設」というものでした。今日の日本で一般的に認知されているCSRも、この第一世代の考え方と言えます。20世紀末に入ると、欧米では企業不祥事や途上国での劣悪な労働環境など、以前から問題視されていた事象が国際社会から指摘を受け始めます。対応に迫られた企業は、新たな時代に突入します。これがCSR第二世代です。第二世代では、トリプルボトムラインという概念が強調されました。企業は財務的利益だけでなく、社会や環境をも考慮に入れた経営を行う必要性がある。このように叫ばれ、従来の財務報告書の作成だけでなく、社会・環境への配慮を示した「CSR報告書」「サステナビリティ報告書」を作成し始めました。この流れは欧米からアジアにも普及します。中国や韓国では国を上げてCSR報告書の作成を推進、CSR報告書の作成企業数は今まさに激増しています。欧米企業の考え方の変化を受け、日本でも多くの東証一部上場企業はこの第二世代のトレンドをキャッチアップ、「CSR報告書」という概念が浸透していきました。そして今、さらに進化した"CSR第三世代"が到来しています。それが、事業を通じて社会課題の解決にあたるShared Valueの時代であり、それを開示の側面から推し進める動きが「統合報告(Integrated Reporting)」です。統合報告の時代は、企業経営のあり方に激変をもらしていくと言われています。第二世代までは、財務は財務、社会は社会、環境は環境と3つのものをそれぞれ単独のものとして配慮していればよかったのですが、統合報告の時代には、全てを統合させた上で企業の長期戦略を構築することが求められます。このとき、社会・環境要素は、経営の脇役的要素や配慮要素ではなく、経営戦略立案のためのコア概念のひとつとして扱われることになります。従来の概念に馴染む方々には、社会や環境が経営の中心として語られるなど空想主義だ、欺瞞だと思う方もいると思います。しかしながら、すでに世界のグローバル企業を中心とした500社が第三世代へと移行しているのも事実です。このように、財務・非財務を統合して開示するプロセスが「統合報告」、事業と社会の関連性を包括的に捉える考え方が「統合思考」と呼ばれるようになってきています。IIRCが推進する統合報告この統合報告という概念、普及し始めたのはつい最近です。火付け役はIIRC(国際統合報告委員会)という国際的なプロジェクトです。IIRCは2010年8月に、英国チャールズ皇太子が持続可能な社会の構築に向けて主催した会議で設立が決定。この会議に参加したメンバーは錚々たるものでした。まず、チャールズ皇太子自身が2004年に立ち上げたA4S(The Prince’s Accounting for Sustainability Project)、そしてサステナビリティ報告書のガイドラインを作成しているGRI、国連グローバル・コンパクト(UNGC)を管轄する国連機関、世界の会計士協会の総本山である国際会計士連盟(IFRS)、そして投資家、企業など。この会議の場で、国際的に合意された統合報告フレームワークを構築するための機関、IIRCが誕生。従来、各企業や各機関が散発的に検討してきた統合報告の流れが、一気に加速していきます。IIRCはすでに無視できないほど存在感を大きくしています。同組織のトップは、GRI名誉会長のMervyn E. King氏が議長に、A4S元会長のPaul Druckman氏がCEOに就任。IIRCが統合報告スタンダードの確立に向けて覚書を締結した機関は、設立時の会議に参加していたGRI、国際会計士連盟、国連貿易開発会議(UNCTAD)、さらには米国でサステナビリティ報告のあり方を検討してきたサステナビリティ会計基準評議会(SASB)、国際的な気候変動情報開示ルールの策定のために世界経済フォーラムで設立されたCDSB、企業二酸化炭素排出量に関する世界的な格付け機関であるCDP、知的資本の情報開示スタンダードの設立を目指す世界知的資本イニシアティブ(WICI)、企業の環境マネジメントシステムスタンダードを構築するために国連地球サミットで設立された持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)等。また、証券監督者国際機関(IOSCO)、国際会計基準審議会(IASB)、米国財務会計基準審議会(FASB)、主要証券取引所も会議に参加。企業情報を「統合」されるための舞台がここに整いました。2011年、IIRCは統合報告のフレームワークを検討するためのパイロットプログラムを開始します。パイロットプログラムには企業規模を問わず統合報告に関心の高い事業会社100社以上、さらには国連責任投資原則(UNPRI)との連携のもと投資家機関や投資銀行30社以上も参加、日本からは武田薬品工業、昭和電機、フロイント産業、新日本監査法人が事業会社チーム(Business Network)に、ニッセイアセットマネジメントとバリュークリエイトが投資家チーム(Investor Network)に参画しました。そして、パイロットプログラム内での数々の議論を経て、2013年12月、「国際統合報告フレームワーク」が完成しました。統合報告が求めているものIIRCが策定した「国際統合報告フレームワーク」は英語が原文ですが、日本語を含めた8カ国で公式訳本が出ています。そして、このフレームワークに基づく統合報告を示すときには、"<IR>"という記号が使われています。では、<IR>によって今後、何が変わるのでしょうか。<IR>で定められている報告フレームワークは、膨大な報告書を追加で作成しなさいということではありません。むしろ、<IR>は、簡潔な戦略報告を求めています。報告書に書く内容としては、財務資本、社会資本、知的資本、人的資本、環境資本など全てを考慮した上で、?組織概要と外部環境、?ガバナンス、?機会とリスク、?戦略と資源配分、?ビジネスモデル、?実績、?将来の見通しの7項目を明記するというものです(詳細については、「国際統合報告フレームワーク」を御覧ください)。繰り返しになりますが、<IR>は上記の7項目だけを記した報告書を新たに新規で発行しなさいということではありません。従来のように、財務情報は財務報告書、社会・環境情報はサステナビリティ報告書と分断していたものを、統合報告書としてストーリーが結合された情報開示・報告を作成しなさいとだけ言っています。統合報告をどのように進めるのか 〜武田薬品工業の事例〜財務情報と非財務情報を統合した戦略報告を簡潔に行う。<IR>が求めている考え方は非常にシンプルです。しかしながら、企業が<IR>の概念を導入することには様々な困難が伴います。2006年から統合報告書を作成し、IIRCのパイロットプログラムにも参画している武田薬品工業の金田晃一コーポレート・コミュニケーション部シニアマネジャーは同社の統合報告書の変遷について「長年の試行錯誤を経て、現在のような統合報告書に至ることができた」と述懐します。同社が財務情報と非財務情報の統合に乗り出したのは2006年、日本企業の中でも統合報告書作成の先駆けでした。「2006年時点のものは、実際には統合報告書と呼べるものではありませんでした。前年まで発行してきた財務報告書とCSR報告書を単に一冊にまとめようというもので、統合報告書というより、"合冊"報告書に近いものでした。その後、財務情報と非財務情報をより統合的に記述していこうという課題意識を持ち、現在の統合報告書に至っています。」金田氏はこう語ります。IIRCの実際の議論の中でも、何を統合と呼ぶかについて議論が行われました。その際にも、財務報告書と非財務報告書を一冊にまとめただけのものは「合冊報告書(Combined Report)」であり、「統合報告書(Integrated Report)」ではないと明確に区別されました。金田氏は「統合報告を行い、統合報告書を制作する上で重要な点は『統合思考』を理解することです。人口動態や気候の変化などが経営に大きな影響を与える製薬業界は、『企業は社会の一部であり、両者は相互に影響しあう関係にある』という考え方を体感し易い面があり、弊社にも、もともと統合思考の土壌がありました。」と言います。<IR>では「統合思考」という用語を、「組織が、その事業単位及び機能単位と組織が利用し影響を与える資本との関係について、能動的に考えることである。」と定義しています。財務情報、社会情報、環境情報、人的資本情報が企業内で機能的に分断処理されている中、いかにしてこれを統合、分析し、全体の戦略設定を行うか。これが統合報告を進める上での最大のポイントです。武田薬品工業はこのハードルをどのように克服したのでしょうか。「弊社はある種ラッキーな状況にありました。弊社ではもともとコーポレート・コミュニケーション部の下に、社外広報を担当するPRチーム、株主・投資家との関係構築を担当するIRチーム、社内広報を担当するERチーム、市民社会との関係構築を図りCSR活動を統括するCSRチームが集結しており、チーム間のコミュニケーションが取りやすい状況にあります。現在進行中の2014年の統合報告書の制作過程でも、デスクを横に並べる各チームが常時議論をしながら全体のストーリーや方向性を検討しています。」金田氏は同社で比較的スムーズに統合報告書の制作が進んだ理由をこのように分析しています。統合報告書の制作を進める上で欠かせない部門間の壁の打破。財務報告書とサステナビリティ報告書の担当部門が違う企業では、関連部門で構成された検討ボードを設置するなど、さらなる工夫が必要となります。武田薬品工業の統合報告書には、<IR>に関する同社の解釈や統合報告書の変遷などが記載されています。統合報告書をこれから制作しようと考えている企業にとって参考になるかもしれません。金田氏へのインタビュー後、武田薬品工業の2014年版統合報告書がリリースされました。将来の同社の企業価値の創造と保全に向けた簡潔な「戦略レポート」といった様相を呈しています。統合報告<IR>の行方統合報告<IR>の動きは始まったばかり。今年は国際統合報告フォーマットの発表後の統合報告<IR>元年です。日本国内でも法定報告書と統合報告の関係もまだ整理されていませんので、一部の先進的企業でアニューアルレポートの中に<IR>の要素を織り込んでいくという流れはあるものの、今年は様子見としている日本企業も少なくはないようです。今後の行方を占う上で注目は、各国の会計基準や証券取引所規則などにどのように<IR>が浸透していくかです。IIRCには、投資家向け情報開示ルールや会計基準の重要決定プレーヤーが結集しており、2013年12月の国際統合報告フレームワークの完成を受け、IIRC参加機関自身でも<IR>をどのように位置づけていくのかの議論がすでにスタートしています。このようなグローバル規模での大きな流れの変化の中、日本企業は国内情勢だけでなく、グローバル規模でのルール作りの動きにも関心を寄せていくことが求められ始めています。文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/08/13 体系的に学ぶ
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