【日本】厚労省、DNA切断のゲノム編集技術は「組換えDNA技術」に該当せず安全審査不要と判断

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 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の下に設置された遺伝子組換え食品等調査会は12月5日、遺伝子を改変する「ゲノム編集技術」の中でも、目的の遺伝子だけを壊す方法を用いる手法は、食品衛生法により義務化されている安全審査の対象外とする方針を了承した。当該手法は、食品衛生法を基に厚生労働省が制定した規格基準における「組換えDNA技術」に該当しないと判断した。人工的に遺伝子を組み換えた食品への安全性を懸念する団体は、激しく反発している。  話題の対象になっている「ゲノム編集技術」は遺伝子組換えの中でも新しい技術。1960年頃から開発された遺伝子組換え技術は、主に細胞の外型で人工的に遺伝子を創り出し、細胞内に組み込み遺伝子を改変させる技術。他種の植物や微生物の遺伝子を組み込むことが多く、遺伝子を「創造」し、不自然な作用が起こる可能性があるとして忌避されることも多い。それに対しゲノム編集は、1990年以降に誕生した新たな技術。細胞内で編集したい遺伝子に作用する分子を人工的に送り込み、DNA配列を結合したり、切断したりしながら遺伝子を書き換える技術。従来型の遺伝子組み換え技術よりも、速く、低コスト、狙い通りに書き換えを行うことができるため、近年大きく注目されている。すでにマッシュルームやとうもろこし等でゲノム編集作物が生まれている。  厚生労働省の規格基準(昭和三十四年十二月厚生省告示第三百七十号、平成十二年五月厚生省告示第二百三十二号)では、 食品が組換えDNA技術(酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。以下同じ。)によって得られた生物の全部若しくは一部であり、又は当該生物の全部若しくは一部を含む場合は、当該生物は、厚生大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表がなされたものでなければならない。  と定めており、「酵素等を用いて切断や再結合をしDNAをつなぎ合わせたもの」を「組換えDNA技術」と定義し、当該技術を用いた食品には安全性審査の義務を課している。一方、この規定は2000年に制定されてから改正されていない。  今回の調査会では、人工制限酵素による遺伝子の切断のみを行うものが、上記の適格基準の「組換えDNA技術」に相当するかが審議された。結果、その場合は、1個から数個の遺伝子塩基の変異を引き起こしたとしても、上記の定義には合致せず、「組換えDNA技術」ではないと判断された。それにより、食品衛生法に基づく安全性審査も不要と判断した。  厚生労働省で、ゲノム編集についての審議が急に進んだ背景には、6月15日に政府が閣議決定した「統合イノベーション戦略」の中で、「ゲノム編集技術を代表するCRISPR/Cas9のCRISPRのDNA配列はかつて我が国が発見したものであるが、こうした革新的な基盤技術につながる成果を持っていても、技術の確立まで至ったものが少なかったこと」と振り返り、国策として推進する姿勢を見たことにある。これにより、人体への安全性で厚生労働省が、生態系への影響で環境省が、ゲノム編集についての見解をまとめることとなった。環境省はすぐさま中央環境審議会遺伝子組換え生物等専門委員会にカルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会を設置し、8月30日、人工制限酵素を用いた遺伝子の切断によるものは、遺伝子組換え生物等に該当しないため、カルタヘナ法の規制対象外とすることをまとめている。  今回の厚生労働省調査会の判断を受け、環境省と厚生労働省の双方がゲノム編集にゴーサインを出したこととなる。厚生労働省は今後、パブリックコメント等を実施した上で、2018年度内に方針を確定させる方針。その後、消費者庁が食品表示のあり方を検討する。  一方、EUでは、欧州司法裁判所(ECJ)が7月25日、種が元来持つ特定の遺伝子を科学的に改変させる「ゲノム編集」により開発した作物も、従来の遺伝子組換え作物(GMO)と同様に規制の対象とすべきと判断。日本とは異なり、従来の遺伝子組換え食品と同等に扱うことになっている。米国では農務省がゲノム編集作物にはGMO規制を適用しないとの考えを表明している。 【参考】【EU】欧州司法裁、ゲノム編集作物にもGMO規制適用と判断。農業関連企業は対応必須(2018年7月29日) 【厚生労働省調査会】薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 新開発食品調査部会 遺伝子組換え食品等調査会資料 【資料】薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会 遺伝子組換え食品等調査会報告書(案) 【厚生労働省規格基準】組換え食品安全性審査:規格基準告示 【環境省検討会】遺伝子組換え生物等専門委員会 【資料】ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について 【内閣】統合イノベーション戦略

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【EU】欧州司法裁、ゲノム編集作物にもGMO規制適用と判断。農業関連企業は対応必須

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 欧州司法裁判所(ECJ)は7月25日、種が元来持つ特定の遺伝子を科学的に改変させる「ゲノム編集(Gene Editting)」により開発した作物も、従来の遺伝子組換え作物(GMO)と同様に規制の対象とすべきとの判断を下した。ゲノム編集を、遺伝子組換え技術と同様に規制すべきではないとの声もあるが、欧州司法裁判所は厳しい見方を示した。  1960年頃から開発された遺伝子組換え技術は、主に細胞の外型で人工的に遺伝子を創り出し、細胞内に組み込み遺伝子を改変させる技術。他種の植物や微生物の遺伝子を組み込むことが多く、遺伝子を「創造」し、不自然な作用が起こる可能性があるとして忌避されることも多い。それに対しゲノム編集は、1990年以降に誕生した新たな技術。細胞内で編集したい遺伝子に作用する分子を人工的に送り込み、DNA配列を結合したり、切断したりしながら遺伝子を書き換える技術。従来型の遺伝子組み換え技術よりも、速く、低コスト、狙い通りに書き換えを行うことができるため、近年大きく注目されている。すでにマッシュルームやとうもろこし等でゲノム編集作物が生まれている。  EUのGMO規制では、欧州食品安全機関(EFSA)や各加盟国の当局が、遺伝子組換え食品や飼料の安全性を審査し、合格したもののみが栽培、流通できる。また、一度合格したものの一定期間ごとに再審査を受けることが義務付けられている。商品化された遺伝子組換え作物は、流通記録の5年間保持と表示義務が課せられている。2015年からは改正環境放出指令が施行され、EUの安全性審査を通過した遺伝子組換え作物でも各加盟国が個別に栽培を禁止することができるルールが導入され、規制が厳しくなった。  今回の裁判は、仏農業団体がゲノム編集作物にGMO規制が適用されるか否かの司法判断を求め開始された。ECJがGMO規制が適用されるとの判断を下したことで、農業関連企業には規制対応が求められることになる。  一方、米国では農務省がゲノム編集作物にはGMO規制を適用しないとの考えを表明しており、米国とEUで対応が分かれた。 【判決】C‑528/16

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【国際】遺伝子組換え生物の越境損害に関する「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が発効

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 生物多様性条約事務局は3月5日、「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書(略称:名古屋・クアラルンプール補足議定書)」が発効したと発表した。同議定書は2010年10月15日に名古屋で採択され、発効に必要な40ヶ国の批准が集まり発効した。日本政府は2017年12月5日に批准した。  同補足議定書は,遺伝子組換え生物(LMO)等の国境を越える移動から生ずる損害について、責任及び救済に関する国際的な規則及び手続を定めたもの。損害発生時に、生物多様性の復元等の対応措置をとること等を締約国に義務化している。遺伝子組換え生物の越境損害については、2000年に採択されたカルタヘナ議定書において事前の防止は決まったが、事後損害対応については意見がまとまらず先送りされていた。今回、補足議定書が発効したことで、事前から事後までの一連のルールが整った。  日本国内では、同補足議定書に基づくカルタヘナ法改正が2017年4月に実施済。関連省令及び告示の改正も同12月に完了している。改正カルタヘナ法では、環境大臣は、違法に遺伝子組換え生物等の使用等がなされた結果、生物多様性を損なう等の影響が生じたと認める場合、当該使用者等に対し損害回復措置を取るよう命ずることができる。さらに、命令違反の場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑罰を科すことができる。 【参照ページ】Nagoya-Kuala Lumpur Supplementary Protocol on Liability and Redress comes into force 【参照ページ】バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について

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【ドイツ】バイエル、BASFに遺伝子組換え種子と除草剤事業を売却。モンサント買収成功が条件

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 化学世界大手独BASFは10月13日、同業独バイエルから除草剤グルホシネートアンモニウム事業と種子事業の一部を59億ユーロ(約7,800億円)で買収すると発表した。バイエルは、2016年9月に米モンサントを企業買収することで合意しているが、欧州委員会によるEU競争法上の承認取得が難航している。バイエルは今回、モンサント買収が成功することを条件にBASFに一部事業を売却することで、独占への懸念を緩和する考え。  バイエルのモンサント買収が成功すると、モンサントの主力除草剤ラウンドアップと、ラウンドアップに耐性を持つ遺伝子組換え作物を手に入れることができる。モンサントの除草剤・種子事業売上は約146億米ドルで、遺伝子組換え種子では世界最大。バイエルも除草剤・種子事業で世界3位となる99億ユーロを誇っており、自社開発の遺伝子組換え種子も持つ。両社が統合すれば、遺伝子組換え種子で大きなシェアを握ることになる。  今回BASFが買収予定の事業の売上は、約13億ユーロで、バイエルの除草剤・種子事業売上の約13%に上る。まず、アミノ酸系除草剤グルホシネートアンモニウム塩(対象地域は全世界)。製品名「リバティー」「バスタ」「フィナーレ」で知られる。そして種子事業の一部。一つ目は、バイエルが開発した遺伝子組換え作物「リバティリンク」の形質と商標。次に「リバティリンク」技術を使用した遺伝子組換え菜種油「InVigor」で、除草剤「リバティー」に耐性を持つ。欧州での菜種、欧州と南北米大陸での綿花、南北米大陸での大豆も買収対象となる。関連研究所、生産工場、育成技術も買収対象。関連研究開発部門等、米国、ドイツ、ブラジル、カナダ、ベルギーを始めとする社員1,800人もバイエルからBASFに移る。 【参照ページ】BASF signs agreement to acquire significant parts of Bayer’s seed and non-selective herbicide businesses 【参照ページ】Bayer signs agreement to sell selected Crop Science businesses to BASF for EUR 5.9 billion

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【国際】BASFとKaiima Bio-Agritech、非遺伝子組換え型の除草剤耐性品種の開発で協働

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 化学世界大手独BASFとイスラエルの遺伝子技術開発Kaiima Bio-Agritechは7月17日、遺伝子組換えを伴わない(Non-GMO)除草剤耐性品種の研究分野でのコラボレーションを発表した。今後数年かけて開発を目指す。  農業生産性の向上は世界の人類増加の前に欠かせないと言われている。従来は、除草剤と遺伝子組換えを伴う除草剤耐品種の組み合わせが、農業生産性の主流となっていたが、一方で遺伝子組換え品種に対するリスクを懸念する声も社会から出始めている。今回BASFとKaiima Bio-Agritechは、遺伝子組換えを伴わない除草剤耐品種の開発に乗り出す点が画期的。  同コラボレーションは、Kaiima Bio-Agritechが独自に開発した非遺伝子組換え育種法/倍数生育種技術「EPTMテクノロジー」を基盤とする。EPTMテクノロジーは、従来の突然変異を誘発するアプローチでは達成不可能であった遺伝子重複や遺伝子転座といった遺伝子の変異を可能にする技術で、主要な穀物や植物で利用可能。Kaiima Bio-Agritechはこの技術を用いて、除草剤耐性という新たな形質を得るために必要な遺伝子の変異を発見する。  一方BASFは、農薬の主要メーカーとして、除草剤の応用研究や処方、精査に関する知見を提供していく。 【参照ページ】BASF and Kaiima announce collaboration to identify novel herbicide resistance traits using the EP™ technology platform

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【日本】Fair Finance Guide Japan、国内大手金融グループの遺伝子組換え関連企業への投融資実態を調査報告

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 日本のNGOらが構成するプロジェクト「Fair Finance Guide Japan」は11月24日、大手邦銀の遺伝子組換え関連企業への投融資実態を調査した報告書「食卓を脅かす投融資~遺伝子組み換え関連産業への投融資実態~」を公表した。報告書では、遺伝子組換え(GMO)作物の技術や安全性を最初に解説し、その後に投融資状況を独自に調査した結果がまとめられている。今回の調査報告の活動資金は、スウェーデン国際開発協力庁(Sida)が提供している。  調査では、遺伝子組換え(GMO)作物に深く関与する世界な企業として、スイスのシンジェンタ、米国のデュポン、米国のモンサント、ドイツのバイエル、日本の住友化学の5社を選定。この5社に対して、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、りそなホールディングス、三井住友トラスト・ホールディングス、農林中央金庫、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の7機関の投融資金額を発表した。調査では、企業の投融資額はProfundoのデータが、GPIFについては同法人発表の資料データ「運用状況(2016年3月末日付)」が用いられている。  調査の結果では、2012年から2016年10月までの間に今回調査衣裳の7機関から1.8兆円の資金が遺伝子組換え(GMO)関連企業に投じられていることがわかった。中でも、バイエル社への融資が多い3大メガバンクの投融資額が突出して多いと報じられた。  Fair Finance Guide Japanは、金融機関に対し、遺伝子組換え(GMO)作物への資金提供をストップさせることを求めた「No More GMO 融資」キャンペーンを実施している。 【参照ページ】No More GMO 融資!銀行から遺伝子組み換え関連企業に流れる1.8兆円を止めよう 【報告書】食卓を脅かす投融資~遺伝子組み換え関連産業への投融資実態~

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【アメリカ】農務省諮問機関、オーガニック食品から遺伝子組換え食品を除外するよう勧告

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 米国農務省(USDA)のオーガニック食品分野の諮問機関である、全米オーガニック基準委員会(NOSB)は11月18日、遺伝子組換え(GMO)食品を、農務省傘下の全米オーガニックプログラム(NOP)が認定しているオーガニック食品認証(USDAオーガニック)の対象から外すことを勧告する意見を全会一致で採択し、農務省に送った。NOSBは、オーガニック食品生産法によって定められた機関で、オーガニック食品分野の関係者15名で構成されている。  勧告意見書では、オーガニック食品関係者の多くからGMO食品に関する懸念が出ている状況を踏まえ、農務省に対してGMO食品に対する規制を明確にすることを強く求めている。とりわけ、GMO「汚染」に対する責任を明確にするための政策を定めること、バイオ技術を活用した種子、花粉、農作物を用いない農法のベストプラクティスを強化すること、オーガニック食品や非遺伝子組換え食品の閾値検査の研究やデータ収集を支援することをなどを求めた。  国際環境NGOのFriends of the Earth(FOE)によると、今回NOSBが除外を求めるGMOには、合成生物学という新たな手法も含まれるという。合成生物学とは、DNA(遺伝子)を人為的に操作し、通常は存在し得ない有機体を生成、もしくは既存の特性を出現できないようにする手法。合成生物学を用いて生成された成分は食品や消費製品に含有されるものの、適切な表示が行われない。これらの成分に対し適切な監督は少なく、消費者が含有を認識できないものが多いという。  また、合成生物学に基づく栽培については、環境被害の可能性も指摘されている。合成生物は生態系に対し、長期間に渡る予測不可能な影響を与える可能性があるという。また、既存の農家に対する影響も指摘されており、例えば合成バニラ香料が誕生したことにより、従来のバニラ香料が淘汰され、発展途上国に多いバニラ香料生産者の生活を脅かしているという。合成生物学に基づく成分はすでに化粧品や日用品にも使用されており、例えばアミリ・バイオテクノロジー社が製造する合成生物スクワランは、およぼ300の化粧品製品に使われているという。  食品や化粧品メーカーからは、すでに合成生物学を用いた素材を使用しないことを宣言するとろこも出てきている。ベン・アンド・ジェリーズ、ゼネラル・ミルズ、ネスレなどは、合成生物学に基づくバニラ香料を用いないと宣言。ヌティビアやドクターブロナーズは、全ての合成生物成分の使用しないことをことを宣言している。 【参照ページ】National Organic Standards Board Materials/GMO Subcommittee Proposal Report to the USDA Secretary on Progress to Prevent GMO Incursion into Organic 【参照ページ】Organic standards will exclude next generation of GMOs 【参照ページ】New GMOs Kicked Out of U.S. Organics Guidelines 【機関サイト】NOSB

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【アメリカ】GMO表示法が成立。「抜け穴」法だと各界から大きな非難

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 米国で遺伝子組換え(GMO)食品のラベル表示義務化法案「GMO Labeling Bill(GMO表示法案)」が成立した。「連邦食品・医薬品・化粧品法」で食品と定義される幅広い品目について、遺伝子組換え食品を含有する商品全てに対して、遺伝子組換え食品であることをわかる表記を記すことを義務化する内容。7月7日に63対30で上院を通過、7月14日に306対117で下院を通過し、7月29日にオバマ大統領が署名、法案が成立した。遺伝子組換え食品への抑制が趣旨のように見える今回のGMO表示法だが、現在遺伝子組換え食品に反対を唱える関係者から今回の法律に対して大きな批判の声が上がっている。  GMO表示法で決まった内容は主に3つ。まず、農務省に対して、全米統一基準の表示ルールを制定することを命じた。今後、農務省は、遺伝子組換え食品と認定される遺伝子組換え品の含有量など詳細ルールを決定する。そして、食品メーカーに対しては、遺伝子組換え商品のパッケージに、(1)農務省が定める「遺伝子組換え食品」マークを表示する、(2)遺伝子組換え食品であることを示す文言を表示する、(3)遺伝子組換え食品であることを示すウェブページへのリンクを示すQRコードを表示する、の3つの選択肢のうちいずれかを選択しなければならない。中小企業に対しては、遺伝子組換え食品であるこを示すURLや問い合わせ窓口の電話番号のみの表示でも可とするオプションを用意した。そして、全米各州や他の行政当局に対しては、独自にGMO表示ルールを定めることを禁止し、現行の各州のルールも無効化させた。この中で大きな批判が集まっているのが、QRコードの表示でも構わないとした点にある。  QRコードは、スマートフォンなどを通じて、コードを読み取り、リンクへ遷移した後に初めてその内容がわかる。そのためQRコードを見ただけでは、そのコードが何を意味しているかわからず、まして遺伝子組換え食品を示すものであることには気づかない。このような「大きな抜け穴」が盛り込まれている法律に対し、複数の民主党員は大きな反発を示し、消費者の立場に反する法案だとしている。また、反対派からは、今回の法案が「アメリカ人の知る権利を否定する法律」であるとして強く非難している。一方で、複数の共和党員らは、遺伝子組換え食品は安全であると主張する科学の勝利だと今回の法律を歓迎している。  米政府当局からも今回の法律に対し否定的な声が上がっている。連邦保健福祉省の下部組織、米食品医薬品局は、高度精製食用油であるキャノ―ル油や高果糖のコーンシロップ等は製造過程を経ることで遺伝子操作された原材料について表示を課す現行法が無効化されることで、大きな後退となってしまうと危惧を露わにしている。米食品医薬品局は、GMO表示法案の審議中にも、明確さを欠く表示ルールであると異議を唱えていた。バーモント、コネティカット、メーン、アラスカの4州が現在設定している遺伝子組換え食品ラベル州法も同様に無効化された。  現在、キャンベル、ゼネラル・ミルズ、マーズ、ケロッグ等の大手食品企業は、遺伝子組換え食品の自主的表示ルールを実行しているが、今回のGMO表示法をどのように解釈し、どのような対応を取るのか。各企業の対応に焦点が集まっている。 【参考ページ】Bill to Create Federal GMO Labeling Standard Sails Through House 【参考ページ】Food and Drug Administration Strongly Criticizes Stabenow/Robert Draft GMO Labelling Bill 【参考ページ】FDA Denies Petition for GMO Labeling 【法案】GMO Labeling Bill

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【国際】ノーベル賞受賞者110名、「遺伝子組換え食品」反対運動を非難

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 過去にノーベル賞を受賞した科学者110人は6月30日、国際環境NGO団体グリーンピースが中心となって展開されている「遺伝子組換え(GMO)食品」、とりわけ「ゴールデンライス」という品種に対する反対活動を、科学的根拠がないと非難する署名を共同で発表した。今回共同署名を行った科学者は、過去にノーベル物理学賞、ノーベル化学賞、ノーベル生理学・医学賞、ノーベル経済学賞、ノーベル平和賞、ノーベル文学賞のいずれかを受賞した110名。現在、存命中のノーベル賞受賞者は296人しかおらず、そのうち3分の1以上が署名するという大規模なメッセージとなった。  今回連名署名を行った科学者らは、遺伝子組換え食品が、安全、環境に優しい、農家所得を向上させるという主張を行い、遺伝子組換え食品を推進するウェブサイト上に実名で支持を表明した。彼らの共同声明の中では、「遺伝子組換え食品の摂取によって、人体や他の生命体の健康を害する結果となった事例は今までたったの一度もない」「遺伝子組換え技法が環境に対する悪影響も従来の交配手法より小さく、むしろ生物多様性にとっては有益だ」とした。また、ビタミンAを多く含むように品種改良されたゴールデンライスについては、「アフリカや東南アジアの貧困層で発生しているビタミンA欠乏症(VAD)による死亡者数や疾病患者数を大量に減らすことができる」と、グリーンピースの反ゴールデンライス運動を強く非難した。共同声明文はさらに、反遺伝子組換え食品運動は、科学的根拠の無い感情的な反応にすぎず、各国政府に対してグリーンピースの呼びかけに耳を貸してはいけないと強く要求した。  これに対しグリーンピースは6月30日に反論を発表、ゴールデンライスがビタミンA欠乏症の解決策として有効だという実際の結果は出ていないとし、ビタミンA欠乏症には貧困層も多様な食材を摂取できるようにしていくことが重要であり、遺伝子組換え技術開発に多額の投資を行うことは無駄だと述べた。また、グリーンピースは従来からの遺伝子組換え食品反対運動の根拠として、遺伝子組換えは自然の摂理からの生ずるものではないことが問題であり、自然の摂理由来ではない品種が交配を通じて蔓延していくことはよくないとしてきている。今回の反論声明の中では、グリーンピースは、遺伝子組換え食品が健康や環境に害を与えるという反証は行っていない。  遺伝子組換えに関する「科学」を巡る議論は今に始まったものではない。遺伝子組換え技術が幅広く商業利用され始めた1990年代には、すでに遺伝子組換え技術と法規制の問題がEUでは始まっており、今に至るまで論争が続いている。この背景には、事実には科学的根拠が必要であるという一般的な社会通念と、科学的立証は万能ではないという社会通念の2つが衝突することにある。科学的立証が一種の過失を犯した例としては、BSE(牛海綿状脳症)の例が有名だ。BSEについては、当初は科学的には立証がなされず安全とされていたものが、後の発見によって人体に有害であるという見解に変わった。このように人体被害を当初は見落とされた例としては、日本でも薬害エイズ問題があり、最近では子宮頸がんワクチンがまさに論争の最中にある。このような2つの通念の衝突に対して、EUは「事前警戒原則」という立場を取っており、科学的根拠がなくても社会的に「リスクがある」という懸念がなされる場合、法規制が正当化される。一方で米国では、「健全な科学」という立場を取り、法規制には科学的な立証が基本的に要求される。    遺伝子組換えに反対を表明する論者の中には、その根拠として、経済的な側面を上げる人もいる。遺伝子組換え食品の品種は、開発した人や企業に知的所有権が発生しており、品種利用者はその特許料などを支払わなければならない。遺伝子組換え品種が社会に広く利用されると、貧困国の農家にとってはこの特許料がさらなる負担となり、先進国による経済的支配が強くなるという懸念だ。  今回のノーベル賞受賞者の共同声明は、科学者の立場から、遺伝子組換え食品が「安全である」という現段階の立場を強く表したものだ。しかしながら、このことが「安全である」ことが未来永劫示されたわけではない。だが、科学的な根拠なく法規制を続けて良いのかという主張にも正統性が認められる。複雑な問題であるからこそ、議論する者には、議論のポイントをはっきりさせることが求められる。例えば、安全性の問題と経済的支配の話を混ぜて話をしてしまうと、すぐに議論は成立しなくなる。遺伝子組換え食品を使用する企業も、忌避する企業も、このように不確実な「科学」にどう向き合うのかという姿勢と消費者へのコミュニケーションが要求されていくことになりそうだ。 【参照ページ】107 Nobel laureates sign letter blasting Greenpeace over GMOs 【共同声明文】Laureates Letter Supporting Precision Agriculture (GMOs) 【署名ノーベル賞受賞者】110 Laureates Supporting Precision Agriculture (GMOs)

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