【環境】COP21パリ会議の論点 〜気候変動枠組み条約の経緯と現状〜

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 今年の12月にパリで開催される予定の第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)。先進国だけでなく、これまで開発途上国とされてきた国々にも温室効果ガス排出量削減を求めるため、京都議定書に取って代わる新たな枠組みとなると、世界中の注目を集めています。この会議の結果次第で世界が将来的にどの程度気候変動を防ぐことができ、また既存の気候変動の影響を軽減できるかが決まるとまで言われています。  1994年に気候変動枠組み条約が発効されて以降、毎年締約国会議(COP)が開催されており、今年で21回目となる気候変動枠組み条約締約国会議。これまでどのようなことが決められてきたのか、そして今回は何がテーマ・論点となるのかご存知でしょうか。今回は気候変動枠組み条約締約国会議のこれまでの変遷、そしてCOP21の位置づけとは何かをご紹介します。 ※COP21の論点のみご覧になりたい方はこちらからジャンプできます。 「気候変動枠組み条約」とは?  まずはそもそも気候変動枠組み条約とは何かについてご説明します。155カ国の署名の下に採択され、1994年に発効となった気候変動枠組み条約は、「地球温暖化防止に向けて大気中の温室効果ガスの濃度を安定させる」ことを目的としており、また2000年までに温室効果ガス排出量を1990年の水準に戻すことを目標(努力目標)として掲げました。  同条約の締約国は 附属書I国(先進国および経済移行国) 附属書II国(先進国) 開発途上国 に分類され、先進国たる日本は附属書I国および附属書II国に該当しています。この附属書締約国に対しては以下の3つの義務が課せられました。 温暖化防止のための政策措置 排出量等に関する報告 開発途上国への資金供与および技術移転  また同条約においては飽くまで「2000年までの目標」を掲げるに留め、2000年以降の目標については翌年以降の通常会合に託されました。気候変動枠組み条約の条文において「締約国会議の通常会合は、締約国会議が別段の決定を行わない限り、毎年開催する」と明言されており、この通常会合が締約国会議(COP)なのです。 気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の変遷および各会合の論点  それでは実際に各会合においてどのようなことが話し合われてきたのかを説明していきます。 COP1 (ベルリン会議) -1995年-  気候変動枠組み条約締約の翌年に開催された第1回締約国会議では、各国が気候変動枠組条約だけでは気候変動問題の解決には不十分であるという認識で一致し、2000年以降の排出量について目標を立てていくことが合意されました。  そして以下の2点 第3回締約国会議(COP3)までに先進国の目標や具体的な取り組みについて取りまとめること 開発途上国には新たな約束を課さないが条約上の既存の約束を再確認し、その履行を促すことが「ベルリン・マンデート」として決定されました。 COP2 (ジュネーブ会議) -1996年-  同会議では、排出量目標の各国一律化や、目標達成に必要な措置などについて話し合われたものの目立った合意には至らず、各国の取組み状況やベルリン・マンデートの進捗確認に留まりました。 COP3 (京都会議) -1997年-  この第3回会議こそが言わずとしれた「京都議定書」が採択された会議です。京都議定書では先進国に対して具体的な温室効果ガス削減目標が定められると共に、開発途上国に対しても活動形態が定められました。また、2008〜2012年を第一約束期間とし、先進国全体の温室効果ガスの合計排出量を1990年比で5%削減することを目標としました。これ以降2004年のCOP10まで京都議定書の詳細に関する議論が続きます。 COP4 (ブエノスアイレス) -1998年-  続く第4回会議では数値目標を達成するための手法として「京都メカニズム」などの運用ルールがCOP6までの決定事項とされ、「ブエノスアイレス行動計画」として採択されました。 COP5 (ボン会議) -1999年-  前回採択されたブエノスアイレス行動計画が翌年2000年に向けたものであるため、同計画に基づき京都メカニズムや遵守問題の詳細について話し合われました。 COP6 (ハーグ会議) -2000年-  COP4にて採択されCOP5でも話し合われきたブエノスアイレス行動計画に則り、本会議での京都メカニズム等に関する運用ルールの決定が目指されましたが、アメリカ・日本などのグループと英国・途上国などの意見対立により会議は中断となってしまいました。 COP6.5 (ボン会議) -2001年7月-  COP6.5以前の同年3月に、自国経済への影響が大きいとしてアメリカが京都議定書からの離脱を表明したため、最大排出国であるアメリカと中国を欠いた形になってしまいます。この後7月に開催されたCOP6.5においてEUなどの歩み寄りによって、アメリカや中国を除きながらも京都メカニズムや森林吸収源、途上国問題について合意(ボン合意)に至ります。 COP7 (マラケシュ会議) -2001年10月-  COP6の三ヶ月後にモロッコのマラケシュにて開かれたCOP7では、マラケシュ合意 が為され、京都メカニズムなど京都議定書の詳細な運用ルールが採択されます。 COP8 (デリー会議) -2002年-  京都議定書に向けたさらなる働きかけが為されました。 COP9 (ミラノ会議) -2003年-  CDMなど京都議定書の積み残しルールについての決定が為されました。 COP10 (ブエノスアイレス会議) -2004年12月-  COP10より1ヶ月前2004年11月にロシアが京都議定書に批准し、京都議定書の発効条件であった 55か国以上の締結 締結した附属書I国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全附属書I国の合計の排出量の55%以上 の両方をついに満たし、翌年2月より京都メカニズムが実質的に動き出すことが決定しました。そんな歓迎ムードの中で開催されたCOP10では、途上国の適応策やポスト京都(京都議定書第一約束期間以降)など次の段階に関する話し合いが持たれました。 COP11&CMP1 (モントリオール会議) -2005年-  前述の通り同年2月より京都議定書が発効したことを受けて、COP(気候変動枠組条約締約国会議)と共にCMP(京都議定書締約国会議)が開催されました。COP11&CMP1では、ポスト京都枠組が第一約束期間後(2013年以降)も切れ目なく続くよう、今後期限を設けずに検討を続けることを合意しました。また気候変動枠組み条約には批准しつつも京都議定書からは離脱しているアメリカとの対話も開始されました。 COP12&CMP2 (ナイロビ会議) -2006年-  COP12ではポスト京都に関する公式交渉を2007年から始めることを決定しました。さらにCMP2では、いかなる国の義務にも繋がらないことを明示した上で2008年に京都議定書の見直しを実施することを決定しました。 COP13&CMP3 (バリ会議) -2007年-  COP13およびCMP3では「バリ・アクションプラン」としてアメリカ、中国、インドなどを含む全ての主要排出国が2013年以降の枠組みの構築作業に参加することが合意されました。また、ポスト京都の枠組みについては2009年の合意に向けて議論されました。 COP14&CMP4 (ポズナニ会議) -2008年-  COP13に引き続き、2009年末の合意に向けた議論が進められました。 COP15&CMP5 (コペンハーゲン会議) -2009年-  第一約束期間に批准していなかったアメリカ、中国、インド含む主要国も2013年以降のポスト京都に参加するとし、各国が自主的に目標を設定・登録して、その達成状況を国際的に相互検証する枠組みの合意に向けて議論が進められましたが、全ての国のコンセンサスを得ることができず、この「コペンハーゲン合意」は留意という形なりました。 COP16&CMP6 (カンクン会議) -2010年-  COP16では世界の平均気温の上昇幅を産業革命前比で2℃未満に抑えるという長期目標を置く「カンクン合意」がアメリカや中国を含む形で正式合意されました。これにより各国が掲げる自主目標がそれぞれの2020年までの行動を規定するようになります。下の図からもアメリカと中国の温室効果ガス排出量が世界の排出総量に占める割合が非常に大きい(2009年時点)ことがわかり、これら大国を含めた合意は着実な前進と言えるでしょう。 (the guardian World carbon dioxide emissions data by country: China speeds ahead of the restより抜粋)  ところが、当初目標とされていたポスト京都の新たな枠組みについての合意はなされず、飽くまでCOP17への繋ぎとしての役割という見方もあります。 COP17&CMP7 (ダーバン会議) -2011年-  COP17では「ダーバン合意」として、気候変動に対し2020年以降全ての国に適用される法的枠組みの構築に向けた道筋をつけ、その枠組みが構築される2020年までの取り組みの基礎となるカンクン合意を実施するための仕組みの整備が為されました。  また、京都議定書の第二約束期間の設定方針などについても合意されましたが、日本、カナダ、ロシアは第二約束期間に参加しないことを表明しました。これにより、日本は第一約束期間である2012年までは京都議定書に則って行動するものの、2013年以降はカンクン合意で掲げた自主目標を基に行動することとなります。 COP18&CMP8 (ドーハ会議) -2012年-  COP18を以って、京都議定書第一約束期間が終了したため、気候変動枠組み条約について成果を上げるためにポスト京都の枠組みに関する議論や検討をしてきた「長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」もその役割を終えました。  また、クリーン開発メカニズム(CDM)については、京都議定書の第二約束期間に参加しない国であっても2013年以降のCERを原始取得することが可能となりましたが、共同実施や国際排出量取引によるクレジットの国際的な獲得・ 移転は、第二約束期間参加国のみに認められることとなりました。 COP19&CMP9 (ワルシャワ会議) -2013年-  COP19では、「全ての締約国が参加する公平で実効性のある新たな法的枠組」を2015年末のCOP21で採択し、2020年に発効させること、そしてそのために可能であれば2015年3月末までにそれぞれの国が掲げた自主削減目標や計画を提示することが「ワルシャワ合意」として決定しました。  ところが現状これら各国が掲げる自主削減目標の総和は、COP16のカンクン合意において示された「世界の平均気温の上昇幅を産業革命前比で2℃未満に抑える」のに充分とは言えません。そこで削減目標の基準年や達成の時期、算出や評価の方法など詳細は、COP20までの決定事項となりました。  その他、開発途上国の目標達成のための資金支援についても定められ、先進国は2014年早期に資金を支援することが取り決められました。 COP20&CMP10 (リマ会議) -2014年-  COP20は2020年以降の新たな国際枠組みを、2015年のCOP21で採択するため、基本事項を決めることを目的としていましたが、各国の目標提出時期や温暖化の影響を軽減する対策などは明らかにされず、曖昧な表現となりました。  また、先進国が隔年報告書に記載する支援についての情報を増やすことや、緑の気候基金(GCF) への初期動員(100億USドル)を歓迎する等が採択されました。 気候変動枠組条約締約国会議におけるパリ会議(COP21)の立ち位置と論点  ここまで見てきた気候変動枠組条約とその締約国会議で話し合われた削減目標を基準年別にまとめると次のようになります。 気候変動枠組み条約      :2000年までの目標 COP1〜2           :2000年以降の目標 COP3〜10 (京都議定書)    :2008〜2012年の目標 COP11〜16 (ポスト京都[1]) :2013〜2020年の目標 COP17〜21 (ポスト京都[2])  :2020年以降の目標  今年12月にパリで開催されるCOP21は当然ポスト京都(2020年以降)における削減目標の達成に向けた話し合いになるわけですが、既に先進各国が離脱した京都議定書はほとんど存在感を失っており、今回主題となるのは先のCOP17において「COP21で採択する」と決めた「全ての締約国が参加する公平で実効性のある新たな法的枠組」についてです。  COP21では各国から提出された自主削減目標に基づき2020年以降の枠組みが確立します。つまり、各国がどの程度前衛的な削減目標を掲げるか次第で世界の将来的な気候変動防止・影響軽減の度合いが決定するというわけです。  そんな今回のパリ会議で主な論点として挙げられるのは次の6つです。 これまで「先進国」と「途上国」といったグルーピングはどうあるべきか 自主目標であってもいかに実効性を担保するか 温暖化の影響を軽減する対策を目標に含めるかどうか 資金支援は誰が誰におこなうか、また資金支援目標額どのように扱われるべきか 「透明性」(報告、評価)の仕組み 排出量削減目標の法的形式  継続成長を保ちたい開発途上国の論理と自国経済のみへの負担を避けたい先進国の論理がぶつかり、大きなうねりを生んでいます。12月のCOP21に向けて各国がどのような削減目標を打ちたて会議に臨むのかに注目が集まります。

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2015/08/07 体系的に学ぶ

private 【食品・消費財】組織変革に寄与するサステナビリティ 〜ユニリーバに学ぶ長期成長戦略とは〜

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 オランダのマーガリンメーカーのマーガリン・ユニ社とイギリスの石鹸メーカーのリーバ・ブラザーズ社が経営統合し、設立されたユニリーバ社。現在は業界だけでなく世界を代表する企業の一社となるまで成長し、ブランド力はもちろんのこと、サステナビリティの観点でも世界をリードする企業となっています。今回はそんな同社がサステナビリティ活動を核とした経営の実施にいたった背景や、実際の活動内容、そしてその効果に迫ります。 サステナビリティに仇なす存在と考えられていた過去  現在はサステナビリティ先進企業と言われるユニリーバ社ですが、以前は社会起業家に仇なす存在だと考えられていました。事実、2000年にアイスクリームブランドのベン&ジェリーズを買収した際には、社会起業家の築き上げた「社会性」を浸食する存在として非難されたほどです。  ベン&ジェリーズは買収される以前より、業界のパイオニアとしてダブルボトムライン(経済性および社会性)を追求し、社会的価値を追求する姿勢が高く評価されていました。ところがその後ベン&ジェリーズは社会性こそ革新的であるものの、経済性すなわち収益が思うように上がらず、株価もピーク時の半分にまで低下するなど経営が逼迫していきます。経営状態は悪かったもののベン&ジェリーズの潜在的収益性に目を付ける企業は少なくなく、いくつかの企業が買収に乗り出しました。その際に最高値を入札し買収を成功させた企業がユニリーバ社でした。  かくしてベン&ジェリーズは子会社化されたもの、ユニリーバ社の管理下に置かれるのは飽くまで財務・オペレーションであり、本社とは独立した取締役会の下で創業者らの掲げてきたソーシャルミッションに基づき運営されることが約束されました。実際、ユニリーバ社はベン&ジェリーズ基金への寄付、従業員へのボーナス、マイノリティの経営する中小企業や資金不足の企業への支援にそれぞれ500万ドルずつ提供しています。それにも関わらず、創業者にとって「不本意な売却」というイメージが広く流布してしまい、社会起業家を落胆させることとなってしまったのです。 長期業績不振に喘ぐグローバルカンパニー  その後はユニリーバ社自体も業績低迷に喘ぎます。グローバル展開を進めつつも、国ごとに幅広く商品展開した結果、全社レベルでの製品ポートフォリオが複雑になり合理性を欠くようになったため、製造における規模の経済も機能しなくなってしまいました。  そこで2005年に「ワン・ユニリーバ (One Unilever)」という方針を打ちたて、保有ブランドのグローバルでの統一化と製造工程における生産性向上を図ります。結果、純利益を大きく伸ばすことに成功しました。しかしこの方策はコスト体質の改善にこそ寄与したものの、売上そのものを大きく伸ばすには至りませんでした。 (2000〜2008年アニュアルレポートに基づきニューラル作成)  このように長期わたる業績停滞は株主からの強いプレッシャーを招き、同社は当時ITシステムや社員教育といった長期的に競争力をもたらすであろう分野への投資を諦め、短期的な業績向上を追求せざるをえない状況にありました。 サステナビリティを核とした長期成長戦略の標榜  長きにわたる業績停滞に加え、さらにリーマン・ショックで業績は落ち込みます。不景気に喘ぐユニリーバでしたが、Paul Polman氏のCEO就任を機に風向きが変わり始め、現在ではサステナビリティと収益向上を両立し世界からの賞賛を浴びています。それではその長期成長戦略の全容および10年間の財務分析結果からはじき出される同社のサステナビリティ活動の有用性、さらにはこの戦略がいかに日本企業にも適しているかについて見ていきましょう。  まずPaul氏は2009年の就任と共に (more…)

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2015/07/29 事例を見る

【ランキング】BrandZ「最も価値のあるグローバルブランド トップ100」に学ぶ業界別の代表的サステナビリティ

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 市場において競争に勝ち抜いていくための競争。マーケティングの権威と言われるマイケル・ポーター・ハーバードビジネススクール教授は、競争戦略の基本として、コストリーダーシップと差別化を提唱し、その概念は今や広くビジネス界に浸透しています。差別化とは、提供する財・サービスを他社のそれとにはない「付加価値」をつけるということ。企業が多種多様な「付加価値」を提供することで競争力を獲得しようとしています。この「付加価値」のあり方は様々です。価格や製品・サービス特性という付加価値もあれば、温室効果ガス排出量が少ないなどといった環境配慮型の経営方針も、一つの付加価値と言えます。  サステナビリティと付加価値。植林活動などがサステナビリティの代表事例だと思われていた時代には、両者は無関係だと思われていましたが、今やこの二つは密接に結びついてきています。事実、サステナビリティ戦略の目的を「付加価値の獲得」としている企業は多く、その戦略の策定に「クライアント・消費者」が最も影響を及ぼしていると認識されていることが、EY新日本サステナビリティ社とGreenzbiz社の合同調査によって明らかにされています。  「消費者」からの視点から、世界のブランドをランキングした代表的なものに、Millward Brown社が発表している“BrandZ Top100 Most Valuable Global Brands (最も価値のあるグローバルブランド トップ100)”があります。世界中の企業のブランド力を定量化しランキングにしたものであるため、マーケティング専門家の間では広く認知されています。今回はこのランキングで上位に入った企業がどのようにサステナビリティ戦略と「付加価値」を結びつけようとしているのか、その実態に迫ります。 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成) BrandZ 業界別上位企業とその対応 アパレル 自動車 ラグジュアリー トイレタリー 小売 ビール ファストフード ソフトドリンク 金融(銀行・保険) 石油・ガス テクノロジー 通信 アパレル (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  消費者にとって情報を得るチャネルは、店舗だけでなくオンライン検索にまで拡大しました。消費者は、かつてないほどの膨大な情報を収集し、数ある商品の中から自分が最も価値を感じるものを選ぶようになってきています。上位を獲得した企業は、自らが選ばれるための付加価値のひとつとして、サステナビリティの分野でも凌ぎを削っています。  アパレル業界の主なサステナビリティ戦略は大きく分けて2つです。 サプライチェーンの改善 衣服に使われる資源のサステナビリティ向上  例えば、サプライチェーン改善のために、ナイキはサステナビリティの分野への関心が高く、長期的良好関係を築けるサプライヤーに調達先を限定しています。また、H&MはILO(国際労働機関)の定める国際労働基準および国連児童権利条約に基づいてCode of Conductを作成し、日々サプライヤー工場を訪問し、親密な関係を構築しています。(※1)さらに、これら2社だけでなくユニクロブランドを持つファーストリテイリングも2020年までに自社製品の製造工程すべてにおいて有害化科学物質を全廃することを約束しており、サプライチェーン改善に取り組んでいます。(※2)  資源のサステナビリティ向上の分野では、H&MはBetter Cotton Initiative(コットンのサステナビリティ向上に取り組む国際NPO)の活動に積極的に取り組んでいます。同社は2010年時点でオーガニックコットンを世界で最も多く利用した企業となり、2020年までに持続可能なコットンの調達を100%にするという目標を掲げています。2013年時点での進捗は15.8%で、毎年着実に比率を高めています。  ナイキのCSO(最高サステナビリティ責任者)・H&M担当社へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【アメリカ】ナイキが語る「サステナビリティ」と「イノベーション」 【スウェーデン】H&Mの考えるサステナビリティとファッション 自動車 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  自動車の売上高は、米国や中国では好調なものの、ヨーロッパの経済低迷が尾を引き、不況前の水準には戻っていません。また、各自動車の製品クオリティは全体的に向上している一方、ブランドとしての差別化は徐々に難しくなってきています。  自動車業界の主なサステナビリティ活動は大きく分けて2つです。 製品性能の改善 サプライチェーンの改善  現在、自動車メーカー各社は、エンジンの性能の向上に努めており、稼働効率や温室効果ガス排出量ともに以前と比べ改善されてきています。しかしながら、排ガス規制や燃費向上に関する規制は年々厳しくなっており、製造工程も含めたサプライチェーン全体での取組が求められるなど、社会からの要求レベルは上がっています。実際、気候変動対策の情報開示を求める機関投資家らによる国際イニシアチブのCDPが発表している報告書では、(1)自動車の走行中の温室効果ガス排出量、(2)次世代車両技術への取り組み、(3)製造時の温室効果ガス排出量 の3つの基準で各社が評価付けされています。(※3)  また、自動車メーカーにおけるサプライチェーン改善には、製造工程で発生する温室効果ガスの削減だけでなく、サプライチェーン上の人権問題も関わります。例えば、トヨタやフォードはガイドライン(The Automotive Industry Guiding Principles to Enhance Sustainability in the Supply Chain)を策定しています。同ガイドラインはサプライチェーン全体を通じて、社会、環境面の改善に取り組み、持続可能な形で成長を実現していくという高い基準のコミットメントを明確に示しており、特に倫理・環境・人権・労働に焦点が当てられています。(※4)  自動車業界各社が上記のような活動を行う中、特にBMWはBrandZの自動車業界で2位にランクインするだけでなく、ダボス会議で発表されている「世界で最も持続可能性のある企業100」でも総合6位を獲得するなど、サステナビリティの分野においても先進的企業だといえます。活動内容としては前述のものに加えて、ドイツのハンブルグ市の交通インフラに関するサステナビリティ向上プロジェクト(※5)や、アルミニウムのバリューチェーン全体におけるサステナビリティ向上を目的とする国際イニシアチブなどに参画しており(※6)、自社の事業に関わるサステナビリティ分野で広くリーダーシップを発揮していることが伺えます。 ラグジュアリー (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  ラグジュアリー業界は中国やブラジル、ロシアなどの景気停滞を受けて、ほとんどのブランドがブランド価値を下げる結果となりました。特に中国の影響は大きく、売上の1/3をアジア・パシフィック地域が占めているプラダなどは前年比で大きく収益やブランド価値を下げています。  さらに、ミレニアル世代はラグジュアリーブランドを「高い」と感じており、謙虚でサステナブルな生活を望む彼らのニーズに合致しづらくもなっています。MSL Groupの調査結果によると、ミレニアル世代の多くは、企業に対し消費者が社会的な課題に関われるようにしてくれることを望んでいることがわかっています。  ラグジュアリーブランドが全ての客層をターゲットにしているわけではないとはいえ、ミレニアル世代の経済圏は決して無視できるものではなく、サステナビリティ活動が新たな活路になることも考えられます。  そのようなラグジュアリー業界において、中心となっているサステナビリティ活動はサプライチェーンの改善です。例えば、グッチを抱えるファッション・コングロマリットのケリングは、自社およびグループ全体のサプライチェーンにおける環境への影響を計測し、金銭的な価値に置き換える自然資本会計を導入しています。(※7)それにより事業活動に対する理解を深め、環境負荷を減らすだけでなく原材料の調達リスクを含めたサプライチェーンの変化に対応することを可能にしています。  他にもジュエリーを取り扱うティファニーは、CSO(最高サステナビリティ責任者)を設置するだけでなく(※8)、ダイヤモンド産出国への積極的な投資によりサプライチェーンの健全性を維持する傍らで現地雇用の創出、スキルトレーニングなどを通じて地域経済にも貢献しています。同社はジュエリー業界の中でも珍しくダイヤモンドや貴金属を供給する鉱山の多くと直接取引を行っており、2013年には100%のダイヤモンド原石の調達を自社の目が行き届く採掘場所から行うことを実現しました。(※9)  一方で、ルイヴィトンをはじめ数多くのラグジュアリーブランドを抱えるLVMHグループやエルメスは、大手アパレル企業がサプライチェーン上で講じている有害物質除去・水質汚染対策の取り組み状況を評価した、グリーンピース・イースト・アジア公表のオンラインプラットフォーム「Detox Catwalk」で、コミットメント不足という評価をされてしまっています。(※10) トイレタリー (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  トイレタリー業界のグローバル大手は、製品性能そのものだけでなく、消費者および従業員の幸福といったサステナビリティ活動に本格的に取り組み始めています。  この理由は消費者の目が成熟してきていること、ミレニアル世代の存在、ソーシャルメディアの影響力の高まり等様々ですが、より崇高なビジョンを掲げることが製品の差別化に繋がっていると言えるでしょう。  そのためブランド各社、これまで理想像とされてきた美ではなく、健康やナチュラルさ、内なる美などを強調するようにもなってきています。消費者の選択性が強くなっていることや中国・ブラジルの成長鈍化などを受け、業界全体のブランド価値は昨年比2%しか伸びていませんが、消費者の目が成熟していることはサステナビリティ展開の追い風となると言えるでしょう。  トイレタリー業界は市場ニーズも相まってサステナビリティ活動が多岐にわたっています。 サプライチェーン改善 ダイバーシティの尊重 再生可能な原料の利用 再生可能エネルギーの利用 温室効果ガス削減 サーキュラーエコノミーの推進(廃棄物ゼロ&リサイクル) コミュニティ支援  例えば、ロレアルはSharing beauty with allというプロジェクトを実施し、全サプライヤーを社会・環境面での実績で評価することを宣言。結果として2014年末には2004年比で57%ものCO2削減に成功しています。また同プロジェクトでは再生可能エネルギーにも取り組んでおり、2020年の目標達成に向けて邁進しています。(※11)また、障がい者採用も積極的に行っており、社会に対して新たな機会を創出しています。(※12)CSR担当者向けITツールも積極導入しサステナビリティレポート作成に取り組んでいます。(※13)  「ダブ」ブランドの商品を持つユニリーバは、サステナビリティ戦略を積極展開していることで世界的に有名です。2010年にUnilever Sustainable Living Planというプロジェクトを開始、2020年までにビジネス規模を2倍にしながら環境負荷を減らし、社会にポジティブインパクトをもたらすことを目指しています。その達成に向けて同社は、サプライヤーやコミュニティの支援、貧困の撲滅に取り組むべくNGOと協力し気候変動への対応を呼びかけるキャンペーンや、リサイクル促進のために消費者家族に向けたキャンペーンを展開しています。  2015年現在、ユニリーバが調達する農作物原材料の55%以上は持続可能な形で調達されており、2020年までに100%持続可能な調達を実現するという目標を半分以上到達しています。さらに、同社は工場ネットワーク全体で非有害廃棄物の埋め立てをゼロにするという目標を達成したほか、2008年と比較して製造時にエネルギーから生まれるCO2排出量と水消費量をそれぞれ1トンあたり37%、32%削減することにも成功しています。(※14)  こうした試みもあって、サステナビリティ分野のアドボカシーNPOのセリーズが5月に発表した大手食品会社らの水リスク対応力を評価したランキングでユニリーバは1位を獲得したほか(※15)、国際NGOのオックスファムが3月に公表した大手食品・飲料企業10社の食糧課題・サステナビリティへの取り組み状況を評価したランキングにおいても1位、サステナビリティ分野のコンサルティング企業のSustainly社に公表した「ソーシャルメディア・サステナビリティ・インデックス」でも1位を獲得しています。(※16)  ユニリーバが全業界的に先進的であるために、同業者でサステナビリティ活動に遅れをとっている企業は何から始めればいいかを戸惑うかもしれません。そういった場合、まずはサプライチェーンの改善から取り組むべきだと言えます。サプライチェーンの見直しは、リスク管理になるだけでなく業務効率の向上も期待できるため、部門を超えて理解が得やすく、また数値的な効果も比較的見えやすいからです。  ユニリーバCEO、副社長そして、「ニベア」ブランドを持つバイヤスドルフ社のCorporate Communications & Sustainabilityを統括する副社長へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【イギリス】ユニリーバのCEOが語るサステナビリティへのコミットメント 【イギリス】サステナビリティ目標の達成に向けてユニリーバが導入した新たな仕組みとは? 【ドイツ】世界を代表するスキンケアブランド「NIVEA(ニベア)」を支えるサステナビリティ戦略 小売 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  Alibabaの登場により、業界全体のブランド価値が急成長しているのが小売業界です。興味深いことに業界トップを走る二社はどちらもeコマースであり、実店舗を持っている企業ではありません。以前は価格、選択の幅、利便性のそれぞれがトレードオフであったものの、現在はこれらのeコマースを通し全ての便益を享受できるようになりました。来る高齢社会に向けてeコマースの存在は必要不可欠なものとなっていくでしょう。  小売業界の主なサステナビリティ活動は次の3つです。 再生可能エネルギーの利用 再生可能な材料の利用 サプライチェーン改善  たとえば、アマゾンは国際NGOのGreenpeaceによる抗議活動を受けて、昨年11月にクラウドサービス部門、AWS(Amazon Web Service:アマゾン・ウェブ・サービス)に使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達するという誓約を発表し、大きな一歩を踏み出しました。(※17)しかし、その透明性については疑問視されており、風力発電によって生み出された100メガワットの電力を購入する計画を発表したものの、AWSがいまだ再生可能エネルギー比率が2%しかなく、これからの取組みに期待が寄せられます。(※18)  他にも、サステナビリティ先進企業として知られるIKEAは、自社および自社製品のサステナビリティ向上を通じて消費者の毎日の生活をより持続可能なものにするというビジョンの下、再生可能エネルギー投資を加速しており、その具現化が進んでいます。(※19) また同社は、LED技術を活用した省エネの追求やリサイクル可能な材料を利用することで、自社製品のサステナビリティを担保しつつ、手頃な価格を維持しています。(※20)  同じく実店舗を保有するウォルマートも、サプライヤーと協働によりサステナブル素材でできた商品の開発をしています。(※21)それだけにとどまらず、3月にサステナブルな商品だけを集めたオンラインショップを開設し、より一層の意気込みを見せています。(※22) ウォルマート会長へのインタビューの詳細は以下をご覧ください 【アメリカ】「消費者はサステナビリティのためにより多くを支払うか?」に対するウォルマート会長の答え ビール (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  中国と南米の消費量の増大により、消費者からのブランド価値が向上しています。ミレニアル世代はビールの味において、間違いのないものよりも新感覚を欲しており、ビールメーカー各社はブランド内の商品ラインナップの拡充や、他社買収・ブランド開発による新ブランドの確立などの対応を迫られています。  それぞれのビールブランドには固有のアイデンティティーがありますが、時折クラフトビールの方がメジャーブランド以上に巧みなストーリーテリングでアイデンティティーの確立に成功しています。  そういったストーリーテリングとしての役割をも果たすのがサステナビリティ活動です。ビール業界が主に展開しているのは次の2つです。 サプライチェーンの改善 水の利用効率の改善  例えばハイネケンはストーリーテリングを通して同社のサステナビリティに対する取り組みをより多くの消費者に知ってもらおうと、ソーシャルメディアなどを活用したユニークなデジタルキャンペーンを展開しています。同社は2020年までに主要な原材料の50%を持続可能な調達にすることを宣言しているほか、新興国の水のサステナビリティに向けてUNIDO(国連工業開発機関)と協働で解決に取り組んでいます。(※23) 実際にハイネケンが行っているストーリーテリングの詳細は以下をご覧ください 【オランダ】ハイネケンが仕掛けるユニークなデジタル・サステナビリティ・ストーリーテリング ファストフード (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  マクドナルドの事件を受け、食の安全への関心が一層の高まりを見せています。ヘルシーかどうか、サプライチェーンは倫理的か、環境への責任を考えているか、そういった関心ある消費者にとってファストフードは不充分だと感じられてきています。  消費者の期待に応えるため、ファストフード企業各社も材料の調達からメニュー、店舗での経験価値を検討し直しています。ファストフード業界の主なサステナビリティ活動は次の3つです。 サプライチェーンの改善 コミュニティ支援 ダイバーシティ  例えば、食の安全性に関する事件に揺れたマクドナルドは、今年3月に抗生物質を使用していない鶏肉のみの調達、rbSTと呼ばれる人工成長ホルモンが投与されていない牛の低脂肪ホワイトミルクと無脂肪チョコレートミルクを提供など、原材調達に関する新たな方針を発表しています。(※24)  他にもスターバックスは、CSRを単独の行動ではなく企業のDNAそのものとしており、水不足に対処するため水の供給源をカリフォルニア州からペンシルヴァニア州に変更するなど節水に取り組んでいます。(※25)また恵まれない若者を対象に就業プログラムを提供するなど地域コミュニティにも貢献しています。  ダイバーシティに関しても退役軍人を採用するだけでなく、アメリカ国内で白人警官による黒人射殺事件が発生した際には、顧客に手渡すカップに “Race Together”というメッセージを書き、消費者間における人種問題についての会話を促すキャンペーンも実施しています。(※26)  さらに、対内的には従業員の学位取得プログラムの学費の全額をスターバックス社が負担するなど従業員にも細やかな対応が見られます。(※27) ソフトドリンク (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  消費者が人工甘味料を避けるようになり、ダイエットコークやエナジードリンクの消費量はあまり増えていません。長きにわたりコーラが人気であった中国やインド、メキシコ市場にも健康や肥満への問題認識が高まってきています。市場ニーズに応え、メジャーブランドは商品ラインナップの拡充や製品工場の見直し、生産工程におけるカーボンニュートラルなどに取り組み始めています。  ソフトドリンク業界が主に行っているサステナビリティ活動は次の2つです。 水の利用効率の改善 コミュニティ支援  たとえば最大手のコカ・コーラは2020年までの水資源保護目標を掲げ、進捗状況を公開しています。(※28)同社は世界自然保護基金(WWF)とパートナーシップを締結し、この水資源保護にグローバルに取り組んでいます。(※29)  また同社の持つロジスティクスを活かし、「100万人の就学児童に安全な飲料水を届ける」というプロジェクトも展開。(※30)それだけでなく医療インフラが整っていない地域に住む人々に対して、自社の物流やサプライチェーンを活用して医薬品や医療用品を届ける「ラストマイル・プロジェクト」をも展開し地域コミュニティの支援にも貢献しています。  さらに技術革新により世界初の100%植物性由来のペットボトルを開発することにも成功し、環境・社会面への正の影響の向上、食品の安全性に対する悪影響の回避というコカ・コーラの基本原則の下、強固なブランドを築き上げています。(※31)  コカ・コーラの地域コミュニティ支援の詳細は以下をご覧ください 【アフリカ】コカ・コーラ、アフリカで医薬品を供給する「ラストマイル・プロジェクト」を10ヶ国へ拡大 【アラブ首長国連邦】1ヶ月で200万人が視聴。コカコーラが始めた新キャンペーン”Hello Happiness” 金融(銀行・保険) (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  グローバルに展開する銀行は、世界を不況に陥れたことが明らかになり、依然として社会から厳しい目で見られています。他方、ローカルに展開する銀行は、世界的な金融危機の際に、悪事に加担していないとみられたことからグローバルバンクと比べて社会的信用力が高いとされており、現在業界全体での成長性はローカル銀行の方が高くなっています。  また、保険業界は、提供するサービスのコモディティ化を避ける取り組みを展開しています。また、中国では生命保険は急成長している業態で、中国の保険会社らが牽引し業界全体での成長率は高くなっています。  金融業界が長期的な視点に基づく投資として主に取り組んでいるサステナビリティ活動は以下の3つです。 ESG投資 グリーンボンド リスク管理  ESG投資としてはUNPRI(国連投資原則)に署名し、今まで特殊な資産運形態とみなされていたESGを、通常のアセット運用でもリスク管理のひとつに加えていく動きが加速しています。また、気候変動の原因となる温室効果ガスの主たる排出元セクターに対する投資を長期的な観点からリスクと認識し、再生可能エネルギーファンドへの出資も大きなトレンドです。  グリーンボンドの発行分野では、例えば、モルガン・スタンレーは昨年10億円規模のグリーンボンド案件に関わるなどで貢献しています。(※32)  またリスク管理としては、ERP(統合リスク管理)やバーゼルⅢで検討されている銀行の資産健全性の強化などが挙げられます。  ESG投資に関する詳細は以下をご覧ください。 【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線 石油・ガス (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  アメリカのシェールガス革命や中国の景気の減速を受けて原油価格が低下したため、上流ビジネスである石油の採掘は控えられるようになっています。このような事態を受けて業界各社は、比較的利益率の低い下流ビジネスの製油所やガソリンスタンドの見直しに注力する結果となりました。  資源が直接収益に繋がる石油・ガス業界が主に取り組んでいるサステナビリティ活動は温室効果ガス排出量の削減です。  たとえば英国エネルギー大手のBPは4月の年次総会で低炭素経済の実現に向けた事業の変革を促すための株主提案であるResolution 25を可決しました。この決議案の中には、温室効果ガス排出削減マネジメントによりCDPのパフォーマンスバンドでA評価を獲得することや、ポスト2035シナリオに向けたアセットポートフォリオのレジリエンス強化、低炭素エネルギーのR&Dや投資戦略策定などが含まれています。(※33) テクノロジー(消費者・法人向け) (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  テクノロジー業界は、競争と移り変わりが激しく、それぞれのブランドにとって消費者を安心させロイヤリティを高めることがより重要となってきます。BrandZ総合ランキングのトップ4は全てテクノロジー企業が占めており、その影響力の高さが伺えます。  テクノロジー業界はそれぞれの企業の提供しているサービスが多岐にわたりそれぞれの企業が強みを活かしたサステナビリティ活動を展開していますが、主なものは次の3つです。 サプライチェーン改善 再生可能エネルギー ビッグデータを活用したサステナビリティ活動のサポート  例えば、アップルはサプライヤー19カ国633施設での監査及び3万人の従業員に電話インタビューを実施し、サプライヤー規範に則したサプライヤーのみと契約を継続しています。実際2014年時点で規範に違反する18社との契約を解除しています。(※34)それだけでなく、同社は初めて有害物質のポリ塩化ビニル(PVC)と臭素化難燃剤(BFRs)を外部ケーブルも含む全製品から取り除いた企業でもあります。(※35)  また、同社は国際NGOのGreenpeaceの抗議活動を受けて再生可能エネルギーへの投資も行っており、太陽光発電所や再生可能エネルギー100%のデータセンターの建設などが進められています。(※36)アップルに並び業界を代表するグーグルも風力発電ファンドを組成し、再生可能エネルギーへの投資を進めており、グリーンインターネット化が推進されています。(※37)  SAPはToyota Info Technology Center USA、VeriFoneと共同でドライバーのガソリンスタンド探しをシンプルにするプロジェクトを推進し、無駄なエネルギー消費の削減に取り組んでいます。これら3社はそれぞれの技術を活かし、車両の位置やルート、燃料レベルなどの情報収集、POSソリューション、テレマティックスデータを統合しソリューションを提供しています。(※38)  IBMは食品大手のMarsと提携しグローバルサプライチェーンにおける食の安全の確保に取り組んでいます。(※39)同じく食に関わるものとしては農業のサステナビリティ向上のためにビッグデータ解析ソリューションを提供もしています。(※40)さらには、市民一人一人から寄付されたコンピュータの空き容量を集め、仮想スーパーコンピュータを創りだし、科学者に気候変動関連オープンデータ分析のために無料で提供するといったプロジェクトのコーディネートも行っており、自社の強みをサステナビリティに活かす好事例といえるでしょう。(※41)  これらテクノロジー企業を代表するアップルの環境イニシアチブ担当副社長、SAPのサステナビリティ責任者へのインタビューおよびオラクルのサステナビリティ戦略に興味のある方は以下をご覧ください。 【アメリカ】アップルはどのようにサステナビリティ先進企業になったのか? 【アメリカ】SAPのサステナビリティ責任者が語る、統合報告とサステナビリティ戦略 【アメリカ】オラクルのサステナビリティ戦略 通信 (Millward Brown社の発表を元にニューラル作成)  中国やインドでのスマートフォン利用者の拡大を受けて、通信業界では巨大市場を押さえるためのM&A等が進んでいます。またIoTへのインフラ投資といった将来への投資機会にも恵まれています。一方でインターネット・プロバイダーがネット回線での通話を可能にするなど新たな競合の参入という事態にも直面しています。  そのような通信業界が主に取り組んでいるサステナビリティ活動はエネルギー利用効率の改善です。  たとえばAT&Tはエネルギー効率化や省エネを目指しIoTを推進しています。しかし一方でIoTの進展は、電子廃棄物の増加という新たな問題を生むことを危惧されてもいるのも事実です。(※42)また同社は、ダイバーシティの促進に積極的なことでも知られ、ダイバーシティがビジネスにもたらす利益について周知することを目的とする組織DiversityIncからも、ダイバーシティへの取り組みに積極的な上位50社に選ばれ、見事トップ10入りを果たしています。(※43)  他にもVerizonはアメリカ国内において教育水準の低い24の地域の教師に対し、モバイル通信記述を活用した教育メソッドを提供し、地域コミュニティに貢献しています。(※44) 総論  今回のBrandZのランキングは中国の景気減速を示しつつも、中国企業の台頭を明確に示すものとなりました。市場のグローバル化に伴い、新興国企業がグローバル市場での新たなプレーヤーとして登場するなど、今後製品性能や価格戦略による差別化はますます厳しさを増していきます。  その中、BrandZに選定されている企業の投資パフォーマンスは2006年からの10年間で102.6%上昇しています。これはS&P 500の63%、MSCIの30.3%よりはるかに高く、消費者視点でのブランドがいかに企業にとって重要なものかを物語っています。  そのBrandZにランクインする各業界トップ企業のサステナビリティ戦略を参考にすることで、より現実的な路線でそれぞれの企業が自社の事業領域の中でどのように責任を負い、またその責任を全うするためにどのような行動をしていくべきかが見えてくるでしょう。

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2015/06/18 体系的に学ぶ

【国際】エネルギー大手32社で世界の温室効果ガスの31%を排出。トムソン・ロイター調査

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 米情報提供大手のトムソン・ロイターは5月20日、世界のエネルギー業界の温室効果ガス排出量に関する調査報告書、"Global 500 Greenhouse Gas Report: The Fossil Fuel Energy Sector"を公表し、世界の大手エネルギー会社32社の温室効果ガス排出量が、世界全体の排出量の31%を占めていることを明らかにした。  同報告書は、サステナビリティコンサルティング会社のBSDコンサルティング社と共同で作成したもので、昨年12月に公開された世界大手500社の温室効果ガス排出状況についてまとめた報告書"Global 500 Greenhouse Gases Performance 2010-2013: 2014 Report"の続編となる。前回の報告書の内容に加えて、今回の新しい報告書では消費者の製品使用段階におけるスコープ3の排出量データも含まれている。  報告書によると、2010年から2013年にかけて上記のエネルギー会社32社の温室効果ガス排出量は1.3%増えているという。これは、2014年のUNEP Emissions Gap Reportの中で提言された、地球の温度上昇を2℃以下に抑えるためには同期間に4.2%の温室効果ガス排出削減が必要という目標とは正反対の結果となっている。  同報告書の共著者で、トムソン・ロイターでサステナビリティ担当役員を務めるTim Nixon氏は「前回の報告書の発表以降、エネルギー価格は劇的に下がり、経済を取り巻く状況は改善し、消費者の動向にも変化はなかった。それにも関わらず、温室効果ガスの排出を抑えるためにはさらなる努力が必要だと言える。エネルギー会社が温室効果ガスの排出を減らす主導的な役割を果たす義務がある一方で、消費者や規制を行う側も温室効果ガスの排出削減のために重要な役割を担わなければならない」と語る。  また、同じく同報告書の共著者でBSDコンサルティングの事業部長を務めるJohn Moorhead氏は「我々が、必要とするエネルギーと、環境に与える悪影響やそれによって生み出される結果のバランスを保つためには、エネルギーの生産者と消費者が同じように化石燃料の使用を減らすことや、年間1.4%の温室効果ガス排出削減目標の達成が必要不可欠な課題だ」と語っている。  なお、同レポートのデータはCDPおよびCAI(Climate Accountability Institute)からのデータ提供に加え、エネルギー業界各社が自身で報告している排出量データが集められ、トムソン・ロイターのESGデータプロバイダー、トムソン・ロイター・アセット4の推定値と結合して作成されたものだ。  世界の大手エネルギー会社32社で全体の排出量の3分の1を占めているという事実は、エネルギー業界の化石燃料からの脱却、再生可能エネルギーの推進が世界の気候変動対策を前進させるうえでどれだけ重要となるかをはっきりと示している。 【レポートダウンロード】Global 500 Greenhouse Gas Report: The Fossil Fuel Energy Sector 【参照リリース】Thomson Reuters Releases Greenhouse Gas Emissions Data on Global Energy Providers 【団体サイト】Thomson Reuters

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【ビジネス・サービス】マイクライメイトジャパン社インタビュー「カーボン・オフセットを通じた企業価値向上」

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 経済活動だけでなく日常生活を行う上でも避けることのできないCO2の排出。気候変動リスク緩和のために動き出している企業が増えてきています。しかしながら、削減コストなどの観点から企業内で削減できる温室効果ガスには限界があるため、海外など自社外での活動への投資を通して温室効果ガス削減に貢献するカーボン・オフセットという考え方が広まってきています。  カーボン・オフセットを行いたい先進国企業・自治体・個人と、CO2を削減・吸収できる途上国・地方のマッチングを行い、世界の温室効果ガス排出量削減に貢献している企業、それがマイクライメイトです。今回はマイクライメイトの日本におけるメンバーファーム、マイクライメイトジャパン代表取締役社長の服部倫康氏にお話を伺ってきました。 服部倫康(はっとり・ともみち) マイクライメイトジャパン代表取締役社長 名古屋大学卒業。アクセンチュア、リクルートエージェントを経て、株式会社エコノス(現マイクライメイトジャパン株式会社)に入社。2013年より同社代表取締役社長に就任。 マイクライメイトジャパンが提供するサービス  スイス連邦工科大学(ETH)の事業からスピンアウトしたNPOを源流とするマイクライメイトジャパンはグローバル・ネットワークを活かして得た最新のノウハウおよび国内のクレジット創出支援の経験を基に体系化した知識を活用して、温暖化対策を実施している様々な規模の企業、自治体、政府機関、個人に対し、クレジット創出から活用までCO2に関わる業務を一気通貫して対応しています。 (ニューラル作成) ゴールドスタンダードの認証を受けたクレジット創出  マイクライメイトはカーボン・オフセットで預かった代金のうち、80%以上の資金を地域に還元することをポリシーに、カーボン・オフセットの取り組みを通じて各プレイヤーがベネフィットを得られる仕組みを構築しており、創出されるカーボン・オフセットクレジットは現地貢献性の高いゴールドスタンダードを中心としています。  ゴールドスタンダードとは、 CDM (クリーン開発メカニズム)や JI (共同実施)プロジェクトの「質」の高さを保証する認証基準です。 この認証は京都議定書の中で導入されたCDMの目的である温室効果ガス削減に寄与すること ホスト国の持続可能な発展に貢献することの2つが確実に達成され本当の意味で環境保全上の利益を生み出すことを支援するために作られています。  ゴールドスタンダードの認証を得るためには、通常のPDD(プロジェクト・デザイン・ドキュメント)に加えて、ゴールド・スタンダード・パスポートという文書を提出し、それを基にした運営機関(OE)による有効性等の審査に通る必要があります。  つまり、マイクライメイトはCDMの目的である「温室効果ガス削減」や「ホスト国の持続可能な発展に貢献する」を達成するプロジェクトの企画立案、もしくは途上国現地から要請されたプロジェクトの事業性を精査し、質の高いクレジットを創出した上でオフセットを行いたい先進国企業とのマッチングができるということです。 プロジェクト運用にかけるコスト 途上国現地でのプロジェクトの開発・運用に関してはマイクライメイトが受け持つため、カーボン・オフセットを行うにあたり、先進国企業側が多く人員を割かなければならないといったような事態にはなりません。 排出権取引ではなくカーボン・オフセットをメインに マイクライメイトジャパンは中国国外の企業として初めて、中国の排出権取引サービス提供の認可がおりた企業でもあります。そのため中国においては排出権取引サービスも提供しているものの、主軸としてはカーボン・オフセット事業に置いているといいます。 カーボン・オフセットの動向  CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の広がりにより、機関投資家からの温室効果ガス排出量や環境戦略の公表要求を受け、企業側もカーボン・オフセットへの関心を高めてきています。また日本においても、カーボン・オフセットを通じた商品PRにより収益が上がることもわかってきており、企業が身を削るような社会貢献的観点ではなくマーケティング的な観点での機能が実証されつつあるといいます。現状、カーボン・オフセット自体の認知度が高くないことが課題であるものの、将来的な市場性に期待が寄せられます。 【企業サイト】マイクライメイトジャパン

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2015/05/27 事例を見る

【環境】排出権市場におけるカーボン・オフセットの在り方とは

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 世界の機関投資家らが集まり、企業に対して気候変動に関する情報開示を求めている国際団体のCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が影響力を強めており、それに呼応し企業側も対応を迫られています。そういった中、自社の温室効果ガス排出量の削減方法として注目を集めているのがカーボン・オフセットです。 カーボン・オフセットの仕組みについて  自社における温室効果ガス排出量を特定し、その削減に努めても、閾値を超える削減は企業にとってコスト面で大きな負担となってしまいます。そこで「自社内で削減しきれない温室効果ガス」の埋め合わせとして、自社外プロジェクトに取り組み、同量の温室効果ガス削減を達成するのがカーボン・オフセットです。概念イメージを図示すると以下のようになります。 (ニューラル作成)  まず、自社により排出されている温室効果ガス量を算定します。次に自社内で削減できる温室効果ガスについては削減に努めます。その上で、依然自社内での努力だけでは削減が難しい量に関して社外プロジェクトによる埋め合わせを行います。  その際に重要なのが、認証機関から認められたプロジェクトを適切に履行することです。たとえ社外で温室効果ガスを削減しても、その効果が実証されなければ本質的な意味はありません。そのため、プロジェクトの有用性を検証・認証する機関が存在し、それらの機関が定める方法論に則ってプロジェクトを行うことで初めて、「温室効果ガスを削減した」という事実が認められます。 カーボン・オフセットと排出権取引の違い  京都メカニズムで有名になったため排出権取引をご存知の方は少なくありませんが、カーボン・オフセットとは似て非なるものだと理解しなければなりません。なぜならこれらは、そもそも目的が違っているからです。  排出権取引とは、排出権を「金融資産として売買すること」を目的とした市場取引を指します。排出権は世界各国の経済状況や気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の決定等により価格が変動します。  一方、カーボン・オフセットは前述の通り自社内で削減できない排出量を「埋め合わせる」ために行うものです。つまり、自社外のプロジェクト実施により削減・吸収された温室効果ガスは自社の排出量削減のためにのみ使われ、他社に売買することはできません。つまり、カーボン・オフセットとはoffset=相殺の意の通り、自社内の超過排出量と自社外プロジェクトの削減量を相殺する行為であり、相殺した時点で排出権としての権利は失効します。  失効というとネガティブな印象があるかもしれませんが、ここにおける失効とはカーボン・オフセットによりあるプロジェクトの排出権を無効化させ、その分の温室効果ガスを削減完了したものだとみなすことを指します。 様々なクレジット  プロジェクトを通し、削減された温室効果の排出削減・吸収量を「クレジット」と呼びます。そして、そのクレジットは大きく分けて ・京都クレジット ・VER の2種類存在し、検証・認証機関および方法論も違います。 (ニューラル作成) 京都クレジット  京都クレジットは、京都メカニズムで認められた国際排出権取引に利用可能なクレジットです。 ・AAU (各国への排出権の初期割当量) ・RMU (先進国の森林拡大等による吸収量) ・ERU (先進国同士の共同プロジェクトによる削減量) ・CER (途上国におけるCDMプロジェクトによる削減量) の4つがありますが、企業がカーボン・オフセットという手法を取る理由に、「コスト面からの自社内温室効果ガス削減の厳しさ」があることもあり、途上国でのプロジェクト実施により取得できるCERが主に用いられています。  京都メカニズム第二約束期間に参加していない日本は、CERを国際取引市場で売買することはできませんが、上述の通りカーボン・オフセットのために取得したクレジットは自社の排出権の埋め合わせに使われ無効化されるため、CERを取得することはできます。 VER  VERは、国連等の枠組み以外(各国政府や民間)で認められたクレジットの総称です。VERの中にはVCSやVER+等といった海外認証機関により発行されるクレジットと、JPAやJ-VER等日本の認証機関により発行されるクレジットがあります。これらは京都メカニズムで認められたものではないため、京都議定書目標に使うことはできませんが、国内で定められた温対法や低炭素社会実行計画などに利用することができます。 クレジットの購入方法  排出量を削減したい企業が、同量の削減を行うプロジェクトにより発行されたクレジットを購入する方法には相対取引とオフセット・プロバイダーを介した取引の2種類あります。 (ニューラル作成)  取引の大まかな流れは上の図のようになります。相対取引の場合、クレジットの購入を希望する企業(自社の温室効果ガスを削減したい企業)が温室効果ガス削減のプロジェクトを行う現地事業に直接連絡をとり、売買を行います。他方、オフセット・プロバイダーに代行依頼する場合、排出削減プロジェクトの提携先を探すところから代行してもらうことも可能です。  温室効果ガス削減プロジェクトにより認証されたクレジットは、プロジェクト提携先の途上国事業の口座から移転という形での受け取りとなります。そのため、移転させるためにはクレジット管理用の口座を開設する必要があります。開設した口座にクレジットを移転し、それをさらに排出権無効化用の口座へ移転させることで排出権は無効化され、カーボン・オフセットが完了します。この口座開設やクレジットの移転に関してもオフセット・プロバイダーに代行依頼することが可能です。 (ニューラル作成) 仕組みが複雑さを増す排出権市場  京都メカニズム第二次約束期間に入り、カンクン合意が並走するなど足並みの揃わない排出権市場。各国・各地域で基準が異なるクレジットなど、その制度は複雑さを増しています。しかし一方でCDPは影響力をより強めているため、企業側も目を背けることはできません。  現状、カーボン・オフセット自体の認知度が高くないことが課題であるものの、カーボン・オフセットを通じた商品PRにより収益が上がる等、マーケティング的な観点での機能が実証されつつあり、将来的な市場性に期待が寄せられています。国際的な制度変更による排出権の取引価格への影響など様々な投機的リスクを避けるためにも、金融資産としての取引目的ではなく排出権無効化を目的とするカーボン・オフセットは改めて見つめ直されるべき手法なのかもしれません。

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2015/05/26 体系的に学ぶ

【国際】世界で広がるグリーンビルディングのLEED認証、環境負荷削減に高い効果

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 環境に配慮した建物の評価・認証システム、LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)の開発・運営を行っている米国の非営利組織、USGBC(U.S. Green Building Council)は2月23日、世界のグリーンビルディングの現状に関する調査結果を公表した。  調査結果によると、米国では2015年中に建設が予定されている非住居用の建築物のうち約40~48%が環境に配慮したグリーンビルディングで、その規模は1,200億米ドルから1,450億米ドルに相当すると予測されている。また、戸建建築を手がける企業の62%が、現在建設中の建物の15%以上がグリーンビルディングであると報告しており、その割合は2018年までに84%に増加すると見込まれているとのことだ。  非住宅用建築物については、2005年に着工した建築物のうちグリーンビルディングが占める割合は5%だったのに対し、2012年には41%まで上昇し、2015年1月現在、床面積3.4億㎡に相当する建物がLEED認証を受けているとのことだ。現在米国内の建築プロジェクトの71%はLEED規格に沿って行われており、総額は5000万米ドルを超える。2014年にLEED認証を受けた不動産の総床面積は約6,280万㎡で、2013年比で13.2%増加しており、1年間で認証を受けた床面積は過去最高となった。  さらに、グリーンビルディングの取り組みは世界へと広まっている。LEEDは現在世界で最も認知度の高いグリーンビルディング認証システムとなっており、2015年1月現在、世界150以上の国や地域において69,000件以上のLEED認証建設プロジェクトが存在しており、既にLEED認証取得を目指しているプロジェクトの総床面積のうち41%が米国外となっている。米国外でLEED登録・認証の多い国トップ10は下記の通りだ。北米を除くとアジア勢が上位を占めている。 1位:カナダ 2位:中国 3位:インド 4位:韓国 5位:台湾 6位:ドイツ 7位:ブラジル 8位:シンガポール 9位:アラブ首長国連邦 10位:フィンランド  USGBCはLEED認証がもたらす環境へのインパクトについても報告している。エネルギーの節約については、LEEDゴールド認証を取得した建物は一般的な使用環境において25%の省エネ、水使用量が11%低減、メンテナンスコストが19%低減、入居者の満足度が27%向上、温室効果ガス排出量が34%低減という効果が見られたという。実際に2011年にLEED認証を取得した建物は米国内のCO2総排出量を0.35%低減し、2030年には低減率が4.92%まで上ると予測されているとのことだ。  また、LEEDは建材の削減にも効果的だ。現在、世界で使用されている原材料の40%が建物に使用されており、その総量は年間30億トンにも上る。米国環境保護庁(以下、EPA)の調査によれば、2003年の建築物の建設および解体作業から生まれた瓦礫は1.7億トンに上ると推定されており、そのうち61%が非住居用で39%が住居用建築物だという。LEED認証を目指すプロジェクトは8,000トンの廃棄物を減らすことにつながり、2030年には廃棄物の削減量が5.4億トンにまで増加すると予測されている。  そして、グリーンビルディングの取り組みの裾野は新築だけではなく既存の建築物の改築、改修市場にも広がっている。現在、米国内の建設プロジェクトの約61%は改築プロジェクトとなっており、既存の建物のグリーン化に対する投資は2015年から2023年までの間に9,600億ドルに上る見込みで、世界経済の状況や公共政策によっては更に上昇する見込みだ。改築、改修により建物のグリーン化を完成させた企業には、1年間で9%、5年間で13%の運営コスト削減、建物の所有者が期待する資産評価額が4%上昇という成果が見られるという。また、投資額の回収にかかる年数は7年とのことだ。  USGBCは、下記3つの産業分野においては特にグリーンビルディングの浸透率が高いとしている。 教育 ヘルスケア 商業/オフィス  また、グリーンビルディング市場の拡大を促進する要素として、下記7つを挙げている。 市場からの強い需要 事業者および納税者の大きな節約になる グリーンビルディングから得られる公衆衛生 大型商業施設または企業ビルのグリーンプロジェクトの安定的な増加 連邦政府、州、地方自治体からの義務化や政策 資産価値の上昇 LEED認証済み賃貸物件の低い空き部屋率  今や環境に配慮した建築は当然のこととなりつつある。環境に配慮した建築物は運営コストや不動産の資産価値の観点からも優位性があり、今後も世界中でますます普及が見込まれる。日本はまだLEED認証取得件数では他国に遅れをとっている状況だったが、2013年に一般社団法人グリーンビルディングジャパンが設立され、LEED認証の申請、取得件数は急激に増えつつある。今後の更なる普及に期待したい。 【報告ページ】Green Building Facts 【参考サイト】LEED 【団体サイト】USGBC 【団体サイト】Green Building Japan

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【アメリカ】企業の気候変動に向けた取り組みを後押しする投資信託が増加

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世界のサステナビリティ業界を代表するアドボカシーNGOのCeresは11月13日、米国の投資信託企業らが自身のポートフォリオに内在する気候変動リスクに対処するために、企業に対してより積極的な株主行動を示すようになってきているとの調査結果を発表した。 Ceresの調査結果によると、この11年間で投資信託らによる企業の気候変動対策に関する株主決議を支持する動きが年々活発化しており、Morgan Stanleyを筆頭に GMO、John Hancock、Delaware、Oppenheimerなど11の投資信託で昨年より顕著な伸びを示しているという。また、米国の42の投資信託のうち13が50%以上、うち6つは80%以上の気候変動関連の株主決議を支持しており、昨年に引き続き2014年も100%の決議を支持しているDeutsche Asset Management(DWS Funds)が業界の動きをリードしている。 一方で、Vanguardを含む8つの投資会社が気候変動リスクに関する決議を支持していないという点も指摘されており、2兆4000億ドル以上の巨額資産を運用しているVanguardがこの流れに加われば、他の大型投資信託にも影響を及ぼし、未だに化石燃料と深い関わりを持っている企業に対しても気候変動リスク対応に向けた強いメッセージを発信することができるとしている。 Ceresで投資家担当ディレクターを務めるRob Berridge氏は「自社のポートフォリオを気候変動のインパクトから守る上で明らかかつ簡単な最初の一歩は、株主決議により企業に対して気候変動のリスクを開示、軽減するように求めることだ。未だいくつかの例外はあるものの、投資信託業界全体がその方向に向かっているのは喜ばしいことだ」と語る。 またCeresの代表を務めるMindy Lubber氏は「気候変動は今や世界経済への最大の脅威の一つであり、他の問題より最優先で議論しないといけない」と警鐘を鳴らす。同じく本調査に加わったFond VotesのJackie Cook氏は「これらの株主決議の増加は、温室効果ガスが企業にもたらすコストに対する投資家の懸念が高まっていることを示している。現時点では有価証券情報には温室効果ガスの削減量や削減目標に関する数的情報はほとんど又は全く含まれておらず、削減に関する規制や気候変動の物理的なインパクトがどの程度将来のビジネスに影響をもたらすかも不透明ではあるものの、投資信託は将来リスクに備えて決議をしていく」と語る。 なお、Ceresによると、温室効果ガス排出量削減に向けた投資信託からの企業に対する情報開示要求事項としては主に下記の3つが挙げられるという。 温室効果ガス削減の数値目標を含むサステナビリティレポートを用意すること。 メタン排出削減の数値目標の設定、開示、測定に向けたアクションと計画、方針を評価したレポートを用意すること。 温室効果ガス排出量の削減に向けた具体的な数値目標を導入すること。 米国では投資家からの圧力によって企業はますます気候変動に対する積極的な情報開示とリスク管理が求められるようになりつつある。 【リリース原文】Analysis Shows Growing Support from U.S. Mutual Funds for Action on Climate Change Risks 【団体サイト】Ceres

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【アメリカ】TerraPass、誰でも簡単に利用可能なオンライン・カーボン・フットプリント計算ツールを発表

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米国サンフランシスコに本拠を置くカーボン・オフセット・プロバイダーのTerraPassは10月15日、個人や企業が容易にカーボン・フットプリントを管理・算出できる革新的なオンライン・カーボン・フットプリント計算ツール、TerraPass Carbon Calculatorを発表した。 同ツールは、カーボン・フットプリントの複雑な計算プロセスがとてもシンプルで使いやすい画面に落とし込まれており、個人や企業などそのタイプや規模に関わらず誰もが数項目を入力・選択するだけで簡単に自身のカーボン・フットプリントを把握できるようになっている。 TerraPassの副社長を務めるChristopher Duzich氏は、「我々は、人々を教育することでサステナビリティ意識を向上させていくことに全力を捧げている。そのために、我々は操作が容易なツールを提供し、個人や企業自身がより良い未来を創造する手助けをしている。この新しい計算ツールは知識と機会の両面で助けになるだろう。ぜひこの新しいツールを利用して、環境へのインパクト削減に向けて日々の意思決定によりカーボン・フットプリントを管理してほしい」と語った。 今回TerraPassが発表したカーボン・フットプリント計算ツールは、カーボン・フットプリントの算出にあたり、EPA(Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)、Fueleconomy.gov、Department of Energy(米国エネルギー省)などの専門機関から情報ソースを収集しているほか、現在世界で最も広く利用されている国際的なカーボン・フットプリント計算ツールのThe Greenhouse Gas Protocol (GHGプロトコル)から入手可能な最新のカーボン密度係数とも紐づいている。 TerraPassはこれらの情報源を基にして緻密な計算結果を提供しているものの、ツール自体はとてもユーザーフレンドリーになっており、誰が見ても分かりやすい画面となっている。同ツールの主なターゲットは個人、企業(中小・大企業問わず)をはじめ、会議やイベント(企業・個人問わず)とのことだ。ツールの主な特徴は下記の通り。 簡単な入力操作で包括的なカーボン・フットプリントが分かるシンプルなナビゲーション 家庭エネルギー、自動車、公共機関、航空、または、事業活動やイベントに紐づく排出など、対象を全てまたは一部に絞り込んで算出可能 米国平均と自身のカーボン・フットプリントを比較可能 一回払い、月額オフセットに向けた様々な支払オプションが利用可能。 同ツールを自社ウェブサイトに埋め込むことで、自社顧客へのツール提供が可能 自身のカーボン・フットプリントを把握することは個人・企業に限らず環境への取り組みを前進させる上で重要な最初の一歩となる。しかし、実際の計算には専門的な知識と算出方法が必要だ。TeraPassのツールは、そうしたカーボン・フットプリント計算の壁を取り払い、誰もが簡単に利用・理解できる優れたユーザー体験を提供している。興味がある方はぜひ一度利用してみてほしい。 【ツール】TerraPass Carbon Calculator 【企業サイト】TerraPass

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【アメリカ】Green Builder Media、2014年のエコ・リーダー9社を発表

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グリーンビルディング・サステナビリティ分野の専門メディアGreen Builder Mediaは8月19日、2014年度の「エコ・リーダー」9社を発表した。同誌は環境面において特に優れた取り組みを行っている企業を毎年エコ・リーダーとして選出している。 選出された9社はいずれも高い目標を掲げて資源保全や廃棄物削減、温室効果ガス排出量削減などに積極的に取り組んでおり、環境保全や社会のサステナビリティに貢献する革新的な製品を開発している企業ばかりだ。 Green Builderの編集長Matt Power氏は「エネルギーや水の利用効率を高め、廃棄物を資源に変える方法を見つけることは、結果として高い利益率をもたらす。しかし我々は、いくつかの企業は、単にボトムラインや投資家からの要望に応えるために今日の深刻な環境課題に対応しているのではなく、自らの強い責任感から問題解決に取り組んでいる」と語り、優れた企業ほど能動的にサステナビリティ活動に取り組んでいることを強調した。 Green Builder Mediaがエコ・リーダーとして選出した企業は以下の通り。 GE(ゼネラル・エレクトリック) 他の電動ユニットより6割以上もエネルギー効率が良いハイブリッド・ウォーター・ヒーターを開発。また、2020年までに、CO2排出量を2004年と比較して40%削減、水利用を2006年と比較してほぼ半減させることを約束。 SolarCity(ソーラー・シティ) 2014年春以来、10億キロワットのクリーンエネルギーを生産。2018年までに100万戸の屋根にソーラーパネルを設置予定。一般市民が手頃な価格で太陽光発電をできるように「ソーラー・リーシング」モデルを開発。 Owens Corning(オーウェンス・コーニング) 住宅用繊維ガラス断熱材製品の全ラインを非ホルムアルデヒドの「Eco Touch(エコ・タッチ)」へ転換。2015年には主要製品全ての透明性を確保。 Kohler(コーラー) 2035年までに温室効果ガス排出量ネットゼロにする目標。いくつかの施設において水リサイクルにより水の使用量を90%削減することに成功したことが評価され、2013年にはEPA Water Sustained Excellence賞を受賞。 Panasonic(パナソニック) 2018年までに温室効果ガス排出量を50%削減させるという目標。電子廃棄物の収集・リサイクルのためのインフラ構築を実施。トヨタと共同でプリウスとテスラSのバッテリーをアップグレード予定。 Dupont(デュポン) 環境に直接的かつ計量可能な利益をもたらすR&Dプログラムに対する投資を現在の倍の6.4億ドルまで拡大。カーペットや衣類、自動車マットなどに使用される植物由来の繊維Soronaの販売開始。生産量および売上が増加したにも関わらず、2012年までに2015年のサステナビリティ目標を達成。 Bosch(ボッシュ) 2014年度中に310のサプライヤーの環境・社会面における監査を完了する。R&D予算の約半分を投資して環境関連事業ポートフォリオを拡大。25?40%の電力使用量削減が期待できる住宅用燃料セルの実地試験を展開。 Uponor(ウポノール) 従業員は1500時間以上を投じてウィスコンシン州リバーフォールズにおける慈善活動Habitat for Humanity Eco Villageに貢献。生活排水の再利用を可能にする製品、絶縁配管という二つの新しいサステナブル製品を開発。 Patagonia(パダゴニア) 2015年までに使用する繊維をブルーサイン認証済のものに限定することを約束。売上の1%を環境保全団体に寄付するプログラム「1% for the planet」を展開。Responsible Economy Initiativeを発足。 これらの企業の共通点としては、環境保全に貢献する革新的な製品を生み出すだけではなくそれらを新たな収益獲得機会につなげており、サステナビリティの推進はビジネスの観点から考えても合理的であるということを自らの事業を通じて証明している点だ。各企業の取り組みについてより詳しく知りたい方は、下記ページを参考にして頂きたい。 【参考サイト】Green Builder's Annual Eco-Leaders 【企業サイト】Green Builder Media

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