【戦略】エクスポネンシャル・シンカーが進めるサステナビリティの課題への取り組み~下田屋毅氏の欧州CSR最新動向~

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 現在、「エクスポネンシャル・シンカー(Exponential Thinker)」と言われる人々がでてきている。この「エクスポネンシャル」とは、指数関数的に急成長させる/飛躍する」といいう意味だが、そのような思考を持った人々が、昨今技術を爆発的に進化させ、ビジネスを指数関数的に急成長させている。  筆者が、トリプルボトムラインを提唱したジョン・エルキントン氏に聞いたところによると、サステナビリティに関して、NGO、社会起業家は今後も同様に重要な役割を果たし続けるが、この「エクスポネンシャル・シンカー」が、今後サステナビリティに関しても重要なキーパーソンとなるという。  この「エクスポネンシャル・シンカー」とは、「スペースX」「テスラ・モーターズ」などを率いるイーロン・マスク氏の様な思考を持った人たちのことであり、また「ウーバー(Uber)」や「エアービーアンドピー(Airbnb)」などように短期間で飛躍した組織は、「エクスポネンシャル(飛躍型)企業(Exponential Organization)」と呼ばれている。このような人たちや企業が、進化のスピードが加速している飛躍的テクノロジーを使用して、指数関数的に急成長させ飛躍的にビジネスを展開することを行っている。  イーロン・マスク氏のような思考を持つエクスポネンシャル・シンカーたちは、世界的な視野に立った大きな問題解決行うことを話している。地球には多くの課題があるので、それを段階的に少しずつ変えるのではなく、考え方や発想を変えて達成できるようにする。例えば、イーロン・マスク氏の場合には、たくさんプロジェクトに関わっており、その中のテスラでは、かっこいい車を作って沢山儲けるというのではなく、抜本的に人間の移動方法を変えようとしており、化石燃料に依存しない移動方法を開発しようとしている。またマスク氏は根本的な考え方から改めて、化石燃料から電気へシフトしやすいようにし、インフラやソーラーファームなどを作り変えることを考え、さらに他のメーカーが後追いできるように、これらの情報をオープンソース化している。このように変化をスピードアップさせ、爆発的な変化を起こそうとしているのである。  この変化を後押しするものとして、人類のための根本的なブレークスルーをもたらすことを行っている「Xプライズ財団」を創設したピーター・ディアマンディス氏と、AI(人工知能)研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が、これらエクスポネンシャル・シンカーを育てる教育機関として「シンギュラリティ大学」を米国・シリコンバレーに創設している。シンギュラリティ大学は、最先端の指数関数的に飛躍するテクノロジーを活用し、地球上に暮らす全ての人々に影響を与える世界の最重要課題の解決を行い、より豊かな未来を構築することを目指し教育を行っている。  サステナビリティに関わる部分では、国連グローバル・コンパクトとジョン・エルキントン氏が関わる英国に拠点を置くVolans Venturesとのパートナシップで、「エクスポネンシャル・シンカー」や「飛躍型企業」のコンセプトを基本として、「プロジェクト・ブレークスルー」というプロジェクトを立ち上げている。そこでは今後5年から10年の間のサステナビリティのこれからの方向性を調査し、国連持続可能な開発目標にどのように貢献することができるのかについても考えている。持続可能な開発目標は、2030年に向けた非常に野心的な目標が設定されており、これらは国連のすべての加盟国が、世界の貧困を解消し、地球環境を保護し、すべての人々の尊厳と生活を確保するという、今後15年間の世界の最重要課題を解決するたもの目標である。  この「プロジェクト・ブレークスルー」では、企業や次世代のイノベーター、起業家の間で、変化と影響について指数関数的に急成長させ、スケールアップさせるコミットメントを示し、持続可能なイノベーションにおける最良の考え方と具体例を示している。また、持続可能なソリューションという次の波を推進する上で不可欠である革新的なビジネスモデルと破壊的テクノロジーの分析を行うことも特徴としている。  現時点において、企業はビジネスモデルを変革し、社会に貢献し、新しい市場を開拓するための行動を行ってはいるが、この「プロジェクト・ブレークスルー」では、ブレークスルーを起こすためにさらに多くのことを企業が実施していかなければならないとしている。  この「プロジェクト・ブレークスルー」の中で、「ブレークスルー」という用語は、次のビジネスのアジェンダの略語として使用されている。 段階的な変化を起こしていても、革新的なビジネスモデルと破壊的テクノロジーの視点から考えた場合に、もはや少しも十分ではないということを受け入れる 市場崩壊が起こっており、加速する可能性が高い その時代では、迅速かつ適切な方向に動くことができる人にとって、巨大な新しい機会を提供する 責任を持ってビジネスを行い、SDGsに関するイノベーションの機会を見つける企業は、将来のマーケット・リーダーになる  ジョン・エルキントン氏は、「現時点では、大企業をはじめとする多くの企業がCSR/サステナビリティに関して取り組みを行っているが、そこでの目標は例えば、二酸化炭素の削減を10%行うなど段階的にターゲットを決め実施していることが多い。しかしエクスポネンシャル・シンカーは、10%の削減など段階的に少しずつ行うのではなく、どのように行動すれば今年に10倍とか100倍とかというようにスピードアップができるか、どれだけサステナビリティのペースをあげることができるかを考えている。例えば何百万人という単位でなく、何百億人に影響を与えるにはどのように取り組みをすればよいか、どのような考え方が必要なのかということを考えている」と話す。今までのテクノロジーにおいても、10年前にイメージしたものやそれ以上のものが現時点で実現されている。このプロジェクト・ブレークスルーにおいては、国連持続可能な開発目標を達成するために、エクスポネンシャル・シンカーが、これら飛躍的テクノロジーをどのようにサステナビリティのために使用することができるか、どのように新しいビジネスモデルが考えられるか、サステナビリティについてスケールアップするにはどのようにしたら良いのかを考え始めているのである。  またジョン・エルキントン氏は、指数関数的に飛躍するサステナビリティを達成するために次の3つを挙げている。 マインドを変えもっと野心的に考える 破壊的テクノロジー、いろいろな分野の早いペースでのテクノロジーの変化の必要性 今までにない新しいビジネスモデルを作る  現時点では、国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、実現可能な目標かどうか懐疑的な話も聞こえてくる。しかし、ジョン・エルキントン氏は、このようなエクスポネンシャル・シンカーや指数関数的に飛躍する企業がサステナビリティに関わることにおいても出現することを期待しており、この状況を打破することができると楽観視している。急激に変化している現在の状況の中で、従来の数十倍のパフォーマンスを発揮できるのは、これらエクスポネンシャル・シンカーや指数関数的に飛躍する企業であり、また、このテクノロジーが爆発的に進化している現在の状況を見逃さず、取り組む企業が生き残っていく。いずれにしても悲観的にも思える現在の状況から救ってくれるのはこれらの飛躍的な概念を理解した企業である。日本からもこのグローバルコンパクトのプロジェクト・ブレークスルーに参加している企業もあり、またシンギュラリティ大学などのイベントも日本で開催されている。エクスポネンシャル思考を持った人々が日本においても育成され、現在のサステナビリティの課題を解決することができる指数関数的に飛躍する企業が出てくることを期待したい。

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【金融】英保険大手AVIVAの気候変動戦略 〜気候変動に対応したESG投資とリスク管理の先進事例〜

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 2015年12月のパリ協定合意以降、世界全体で急速に気候変動対応ムードが高まっています。2016年12月には、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が最終報告書案をまとめ、とりわけアセットオーナーや保険会社、銀行、運用会社など金融セクターに対しては、気候変動がもたらす種々のリスクにどう対応していくかについての戦略を打ち立てることを強いる機運が盛り上がってきました。  その中、英保険大手AVIVAは2016年11月4日、自社の基幹事業である保険事業と、機関投資家としての資産運用の双方において、気候変動に対応していくための戦略書「AVIVAの気候変動への戦略的対応(Aviva’s strategic response to climate change)」を改訂しました。同社は世界16ヶ国で事業を展開、保険加入者は世界全体で約3,300万人、総運用資産額は約3,000億ポンド(約44兆円)という世界有数の保険会社です。  「AVIVAの気候変動への戦略的対応」は2015年7月に初版を発行、今回が初めての改訂版となります。初版発表から1年数ヶ月の間に、パリ協定の合意、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)での検討開始、仏エネルギー転換法第173条で定められた気候変動関連情報の開示義務化等、大きな変化がありました。そのため、AVIVAは早速、同社の戦略書を改訂したのです。  AVIVAは、パリ協定で掲げる国際合意「2℃目標」の達成に向け、機関投資家として責任ある投資を実施していくことを宣言しています。今回の戦略書でも、パリ協定を大きく意識した構成となっています。同時に、2015年から2020年までのの5カ年計画の初年度となった前期(2015年7月1日から2016年6月30日まで)の状況もまとめられています。  今回は、このAVIVAの戦略書を紐解きながら、気候変動に対応する機関投資家・保険会社の先進事例を見ていきたいと思います。 AVIVAの気候変動ガバナンス体制  AVIVAは、気候変動がもたらすリスクを管理するためのガバナンスとして、取締役会に設置された2つの委員会が大きな役割を担っています。1つ目は「リスク委員会」。この委員会は、AVIVAグループにとって重大なリスクとなる事項を管理・監視しています。リスクは発生確率と影響度の二軸で分析され、「気候変動リスク」はここ数年重大なリスクとして扱われています。とりわけ気候変動がもたらす異常気象の増加は、グループ全体にとって著しく大きいリスク要因となるとみなされています。同委員会では、重大リスクについては、中長期の影響を考慮するため、通常の経営計画よりも長期スパンで評価することが決められています。  もう一つは「ガバナンス委員会」です。この委員会も取締役会に置かれており、グループ全体が社会的責任に沿った行動を取っているかを監督することが責務の一つとなっています。そのため、ガイダンスや顧客に対するポリシーの制定、CSRアジェンダの設定、取締役会と経営陣に対する助言などを担っています。同委員会も、2014年から気候変動は重要テーマだと位置づけており、「AVIVAの気候変動への戦略的対応」の制定の必要であると訴えもありました。そこで、2015年2月に「AVIVAの気候変動への戦略的対応」が同委員会で承認され、以後気候変動への対応状況を同委員会に報告することが決められています。 AVIVAが想定する気候変動リスク  AVIVAは、気候変動がもたらす事業関連リスクを、「保険リスク」「再保険リスク」「投資リスク」の3点と「事業機会」の視点から分析しています。 保険リスク  同社は、生命保険会社として、気象関連の死亡者数が増加していくことを大きなリスクと捉えています。そのため、(1)保険数理上の価格推定と見通しの有効性、(2)気象関連の死亡者数増加に対し保険支払を確実にするための保険カバー範囲の制限の必要性、(3)気象関連の死亡者数増加に伴う財務的影響に関する管理の脆弱性、の3点を、将来に渡る大きなリスク要因だとしています。 再保険リスク  気候変動は、同社が購入している再保険についてもリスクをもたらすとしています。同社は、大災害時の巨額の保険支払リスクをヘッジするために、再保険を購入しています。しかし、今後気候変動により大災害の発生リスクが高まるにつれ、現行の再保険購入レベルでは不足していないかをチェックし調整していく必要があるとしています。 投資リスク  巨額の資産を保有する機関投資家としての側面も持つ同社は、グループ内に運用会社AVIVA Investorsを有しています。AVIVA Investorsは、AVIVAグループと外部顧客の双方に対してアセットマネジメントサービスを提供しており、運用資産総額は3,180億ポンド(約44.6兆円)。AVIVAは、AVIVA Investors以外の外部運用会社でも一部運用をしていますが、AVIVAの保有資産の約85%はAVIVA Investorsで運用されています。運用アセットクラスは、債券65%、株式17%、不動産・インフラ12%、その他6%です。  この投資分野に関するリスクも分析されています。市場調査大手Economist Intelligence社が2015年に実施した調査によると、気候変動が投資、年金積立、長期貯蓄に与える影響をVaR計測したところ、世界全体の運用管理資産に与えるVaRは、現在価値で4.2兆米ドル。テールリスクは、6℃上昇シナリオの際には現在価値損失が民間セクターの割引率を用いて13.8兆米ドル、公共セクターの割引率を用いると43兆米ドルにも上ると試算。これらの問題は、ボラティリティリスクや一時的な価格変動といったものではなく、恒久的な障害や資本損失の問題だとしています。  また、低炭素経済に向けた転換は投資リスクとなるとしつつも、それ以上に低炭素経済に向けた転換に失敗することからくる投資リスクの方が重大だとし、2℃目標を達成できなかった場合の結果は深刻だと捉えています。 事業機会  一方で、新たな事業機会としては、省エネ促進や水害による損害保険を再設計することで二酸化炭素排出量の削減になることや、再生可能エネルギー分野での保険事業を拡大することを例として挙げています。  AVIVAは、上記の「保険リスク」「再保険リスク」「投資リスク」の3つを、気候変動の影響分野の観点から「物理的リスク」「エネルギー転換リスク」「訴訟リスク」の3つ観点から再編成し、さらに分析を進めます。 物理的リスク  物理的リスクとは、気候変動により企業や民間の物的資産に与える影響のことです。地球温暖化が進むと様々な被害が生じます。異常気象の頻度や被害が増加することによる不動産やインフラ施設の損失やサプライチェーンの破壊、降雨量の変化に寄る水不足、農業の収穫高低下や食糧不足や食料価格の高騰、生態系の破壊、労働生産性の低下、医療支出の増加などです。そのため、気候変動や気候変動への適応失敗は、株式、社債、国債、不動産、インフラなど多くの資産に影響を及ぼします。さらに、地球温暖化が進行すればするほど、これらのリスクは増大していくため、パリ協定の目標達成は非常に重要だとしています。 エネルギー転換リスク  エネルギー転換リスクは、さらに細かく「政策・規制リスク」「テクノロジーリスク」「需要供給の大きな変化リスク」の3つに分けられています。「政策・規制リスク」では、カーボンプライシング(炭素価格)の導入、化石燃料への補助金廃止、再生可能エネルギー割合目標の設定、汚染規制などの法規制が変化が挙げられています。エネルギー転換リスクは、従来のビジネスモデルや企業のコスト構造などを大きく変える可能性があり、資産価格や企業価値の大きく変化していくことがリスクだと捉えています。  同社は投資先のモニタリングにおいて、エネルギー転換リスクに大きくさらされる業界や個別企業のリスク分析を進めており、そのため、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が提唱しようとしている企業の気候変動リスク計測および開示の動きを支持しています。 訴訟リスク  訴訟リスクについては、契約による取締役や経営陣の免責や、年金受託者賠償責任保険により法的な訴訟リスクは小さいとしつつも、一部の国や地域で企業の気候変動情報開示の点で法規制課題を抱えており、最終的に投資している株式及び債券の価値変動から影響を受けることもあるとしています。また、訴訟リスクや罰則による影響は軽微としつつも、広い意味での社会からの期待や顧客の要求といった点では課題を抱える可能性があるとリスクを捉えています。 基本的なESG投資手法  AVIVAのESG投資は、「ESGインテグレーション」と「エンゲージメント・議決権行使」を基本としています。「ESGインテグレーション」は、ポートフォリオ検討の意思決定全般においてESG要素を組み込み、統合していく手法です。この手法を実施するために重要な役割を果たしているのが、同社がブルームバーグ端末上で独自に開発している「ESGヒートマップ」と呼ばれるツールです。  ESGヒートマップには、AVIVAがESG調査会社から獲得したデータと、同社が独自に収集、分析した情報が全て入力され、投資先または投資候補先企業のESG情報が一元的に管理できる仕組みになっています。社外から獲得するデータには、ブルームバークの他、ISS-Ethix、MSCI、VigeoEIRIS等があります。社内で収集する情報には、ファンドマネージャーやアナリストとの対話から得た情報や、同社の過去の議決権行使結果に基づくガバナンス分析情報などがあります。AVIVAのファンドマネージャーやアナリストは、ブルームバーグ端末を通じてESGヒートマップにアクセスができるようになっており、ポートフォリオの銘柄選定、エンゲージメント、議決権行使に役立てています。さらに、NGOからも企業のESG状況について積極的に情報収集を行っています。  外部運用会社を活用する際には、選定基準として、親会社、商品、投資哲学、投資プロセス、人、パフォーマンス、ポジションの「7P」が設定されており、全てのプロセスにおいてESG要素が考慮されます。2017年前半には、外部運用会社の取扱高上位2社に対し、踏み込んだ気候変動リスクのデューデリジェンスを実施する予定です。  エンゲージメント・議決権行使では、内部規定が整備されています。エンゲージメント方針は同社の「スチュワードシップ・コード声明」に、議決権行使方針は同社の「コーポレートガバナンスと企業責任議決権行使方針」の中に明記されています。  ESG投資の方針、アプローチ方法、パフォーマンスについては、AVIVA取締役会の「ガバナンス委員会」とAVIVA Investorsの取締役会で毎年審査され、進捗状況は対外的に「アニュアル責任投資レビュー」という報告書の形で公表されます。  これらの活動を通じ、AVIVAは国連責任投資原則(PRI)から"A+"の評価を得ています。 気候変動への対応戦略  前述のリスク分析を踏まえ、AVIVAは気候変動への対応戦略として5つの柱を制定しています。 第1の柱: 投資意思決定プロセスに気候変動リスクを統合  AVIVAは、投資意思決定のベースとなる経済予測の際に、ファンドマネージャーやアナリストとのセッションを通じて気候変動が経済に与える影響を検討。4半期単位で物理的リスクや政策・規制リスクの動向をアップデートしています。さらに、同社が、企業の二酸化炭素排出効率、現地の二酸化炭素排出規制、企業の二酸化炭素排出量マネジメント力から「カーボン・エクスポージャー」という指数を独自に算出し、カーボンプライシングやエネルギー転換リスクが企業に与える影響度合いを計算する際の変数として用いています。同様に、水利用効率、水資源の利用状況、企業の水資源マネジメント力から「ウォーター・ストレス・エクスポージャー」という指数を計算し、物理的リスクや水の供給ストップから来る操業停止リスクを計算する際の変数として活用しています。この2つのエクスポージャー数値は、前述のESGヒートマップ上で共有されており、銘柄分析や銘柄選定の過程でアナリストやファンドマネージャーに利用されています。  不動産アセットクラスでは、GRESBベンチマークを活用し、ポートフォリオやファンド全体の気候変動耐性等を判断しています。2016年には運用している9つのポートフォリオをGRESBベンチマークで測定し、そのうち5つは「グリーンスター」等級の判定を受けています。また、同社の保険事業が利用している洪水リスクマップを活用し、投資先不動産ファンドの洪水リスクも独自に算出しています。現在は、GRESBベンチマークをインフラアセットクラスでも活用できるようにするため、2016年9月から他の機関投資家7社と共同でツール「GRESBインフラストラクチャー」を開発中です。  投資ポートフォリオのカーボンフットプリントの算出にも積極的に取り組んでいます。2015年9月にはモントリール誓約に署名し、さらに同11月にはAVIVAが運用している株式ファンドのうち、運用額上位4つのファンドのカーボンフットプリントを算出、公表しました。4ファンドの合計運用資産額は130億ポンド(約1.8兆円)で、これは株式アセットクラス全体の3分の1、全アセットクラスの5%を占める規模です。ファンドのカーボンフットプリント算出に当っては、信用できるデータがない、物理的リスクに関する測定データがないなどの課題に直面し、推定によってデータを埋めることが行われました。それでも、今後この取組を継続し、精度を上げていくといいます。  次のステップでは、AVIVA Investorsの最大アセットクラスである債券分野でも気候変動の影響分析を行うという目標を設定。目下のところ、債券分野ではESG調査会社からもデータ提供を受けられない状況ですが、今年中にはデータの提供を受け、分析に活用していくということです。 第2の柱: 低炭素インフラへの投資  同社は2015年7月、年間5億ポンドを5年間、低炭素インフラに投資すると発表し、それと連動して年間10万tの二酸化炭素排出量削減目標を設定しました。この目標は、再生可能エネルギーや省エネ分野への必要投資額をもとに算出されています。結果、前年度は、風力、太陽光、バイオマス、省エネ分野に5.09億ポンド(約715億円)を投資し、目標を達成しました。  この低炭素インフラ投資からの二酸化炭素排出量削減効果の測定でもコンサルタントと共同でツールを開発しています。ツールの開発では、英国グリーン投資銀行(GIB)の「環境インパクト報告基準(Green Impact Reporting Criteria)」ガイダンスを採用しています。 第3の柱: 強力な気候変動政策を支持  政策提言分野では、G20や金融安定理事会(FSB)での議論に積極的に参加。同社のマーク・ウィルソンCEOは2015年11月、IISD(国際持続的発展研究所)が主導した「化石燃料補助金改革コミュニケ」にも署名。化石燃料への補助金が気候変動を悪化させる要因になっているとして、早期の廃止を訴えています。 第4の柱: 気候変動リスク分野での積極的なスチュワードシップ  投資家としての基本的な責任を果たすため、投資先企業に対し、気候変動リスクや情報開示、成果についての積極的なエンゲージメントや議決権行使を行っています。とりわけ二酸化炭素排出量が多いセクターとのエンゲージメントを重視し、前年度は同セクター51社に対し、踏み込んだエンゲージメントを実施しました。さらに、資源エネルギーセクターの企業の株主総会には積極的に参加しており、気候変動分野の株主決議を発議したり、審議される気候変動対応強化株主決議に対して賛成するアクションも取っています。  他の機関投資家との協働エンゲージメントも積極化しています。ヨーロッパ圏内での石油、ガス、鉱工業、電力会社、自動車産業における気候変動リスクへの対処ではIIGCC(気候変動に関する機関投資家グループ)での活動に参加。北極海での石油採掘、シェールガス、シェールオイル等の採取方法である水圧破砕、パーム油、水リスクに関しては国連責任投資原則(PRI)との連携を深めています。 第5の柱: 必要に応じた応じたダイベストメント  同社は2015年7月、30%以上の売上を一般炭採掘または石炭火力発電から得ている企業40社を特定。その40社に対し、ガバナンス、事業戦略、事業効率、責任ある気候変動・エネルギー政策提言に関してエンゲージメントを行っています。とりわけ、石炭火力発電設備能力の新設計画を持つ企業に対しては厳しいエンゲージメントを行いました。そのうちほとんどの企業はエンゲージメントに応じたものの、中国や韓国企業を中心に8社はエンゲージメントの呼びかけに応答せず。このまま応答しない場合は、2017年3月までにその8社と、同様に石炭火力発電申請計画を持つ2社からのダイベストメント(投資引揚げ)を決行するととしています。ダイベストメント実施のタイミングでは、対象企業名が公表される予定です。 【戦略書】Aviva’s strategic response to climate change, 2016 update

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【エネルギー】RE100と現在の加盟企業 〜再生可能エネルギー100%を目指す企業経営〜

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※2018年9月10日:記事更新  「RE100」という国際イニシアチブをご存知でしょうか。RE100とは、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブで、「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって「RE100」と命名されています。2014年に発足したRE100には、2018年1月28日時点で、世界全体で144社が加盟。この144社には、食品世界大手スイスのネスレ、家具世界大手スウェーデンのイケア、アパレル世界大手米NIKEなど、日本でもよく知られれている企業が数多く含まれています。  事業運営を100%再生可能エネルギーで行うなんて話は、日本では一笑に付されてしまうかもしれません。日本では、東京電力や関西電力など、電力事業者によって差はあるものの、大半の電力は天然ガスや石炭などの化石燃料を電源としています。化石燃料の削減のための方策として日本の産業界から話題に上がるのも、再生可能エネルギーより原子力。再生可能エネルギーを推進しようという勢いは、まだ経済界で強くはありません。 (出所)経済産業省データをもとに、ニューラル作成  この夢物語に聞こえそうな「100%再生可能エネルギーでの事業運営」を、実現に移そうとしているのがRE100です。電力を再生可能エネルギーに切り替えることで、二酸化炭素の排出量を削減し、低炭素社会への移行を実現することを目指しています。RE100の加盟企業には、「事業電力を100%再生可能エネルギーにする」というコミットメントが求められます。それでも、RE100に加盟する企業は増加し続けており、今日では欧米にとどまらず、中国やインドの企業にも広がりを見せています。その上、多くの加盟企業は、達成目標年も宣言しています。 RE100プロジェクトの経緯  RE100は、国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)が2014年に開始したイニシアチブです。The Climate Groupは2004年に、当時の英国ブレア首相の支援を受け、英国ロンドンに設立されました。The Climate Groupは今では、英国の他、米国、インド、中国、香港などの支部を置き、世界中から数多くの企業や州政府、市政府が参画しています。The Climate Groupが、国連総会の時期に合わせ毎年9月に開催している年次報告会が「Climate Week NYC」です。そして2014年の「Climate Week NYC」の中で、RE100プロジェクトが発足しました。Climate Week NYCの各イベントは、参加企業の代表がRE100プロジェクトへの新規参入を表明する場ともなっています。 RE100の参加条件  RE100プロジェクトには、現在144社が加盟しています。この数は年々増加しています。RE100プロジェクトに加盟するには以下の要件があります。 再生可能エネルギー100%に向けた宣言  RE100プロジェクトに加盟するには、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを宣言しなければなりません。多くの現加盟企業は、合わせて100%達成の年を同時に宣言しています。100%達成は、企業単位で達成することが要求され、世界各地に事業所等がある企業は、その全てで100%を達成しなければなりません。また、ここで定義される「再生可能エネルギー」は、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスを指し、原子力発電は含まれません。  100%達成に向けては2つのオプションがあります。 (1)自社施設内や他の施設で再生可能エネルギー電力を自ら発電する   自社の再生可能エネルギー発電所で発電された電力の消費は、電力系統に連系されたものでも、そうでないものでも構いません。 (2)市場で発電事業者または仲介供給者から再生可能エネルギー電力を購入する   再生可能エネルギー電力の購入は、再生可能エネルギー発電所との電力購入契約(PPA)、電力事業者とのグリーン電力商品契約、グリーン電力証書の購入のいずれの方法でも可です。 毎年の報告書提出  2つ目の要件は、報告書での進捗報告です。RE100の加盟企業は、毎年「CDP気候変動」の質問票のフォーマットで報告書を作成し、進捗状況をRE100事務局に提出しなければなりません。また、報告書に記載する再生可能エネルギー電力発電や消費の情報は、第三者監査を受けなければなりません。報告された情報は、RE100のホームページや年次報告書の中で公開されます。 現在の加盟企業一覧  RE100には、現在(2018年9月10日時点)下記144社が加盟しています。 製造業 21社 BMWグループ(ドイツ) GM(米国) タタ・モーターズ(インド) HP(米国) ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(米国) フィリップス(オランダ) Signify(旧フィリップスライティング)(オランダ) シュナイダーエレクトリック(フランス) ソニー(日本) リコー(日本) 富士通(日本) スチールケース(米国) キングスパン(アイルランド) DSM(オランダ) アクゾノーベル(オランダ) ダルミア・セメント(インド) テトラパック(スイス) Elopak(ノルウェー) ヴェスタス(デンマーク) レゴ(デンマーク) エンビプロ・ホールディングス(日本) 医薬品 4社 ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国) アストラゼネカ(英国) ノボノルディスク(デンマーク) バイオジェン(米国) 食品・消費財 22社 P&G(米国) ユニリーバ(英国・オランダ) レキットベンキーザー(英国) エスティローダー(米国) ロクシタン(フランス) ネスレ(スイス) ダノン(フランス) ケロッグ(米国) コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ(英国) ABインベブ(ベルギー) カールスバーグ(デンマーク) スターバックス(米国) ディアジオ(英国) マース(米国) ジボダン(スイス) IFF(米国) カリフィアファームズ(米国) Clif Bar(米国) Organic Valley(米国) Corbion(オランダ) Hatsun Agro Products(インド) TCI(大江生医)(台湾) アパレル 5社 NIKE(米国) バーバリー(英国) H&M(スウェーデン) VFコーポレーション(米国) インターフェース(米国) 小売 7社 ウォルマート(米国) マークス&スペンサー(英国) テスコ(英国) イケア(スウェーデン) Colruyt Group(ベルギー) イオン(日本) 丸井グループ(日本) 金融 33社 ゴールドマン・サックス(米国) モルガン・スタンレー(米国) バンク・オブ・アメリカ(米国) シティグループ(米国) JPモルガン・チェース(米国) ウェルズ・ファーゴ(米国) VISA(米国) HSBC(英国) ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)(英国) クレディ・アグリコル(フランス) UBS(スイス) ヘルヴェティア(スイス) INGグループ(オランダ) コメルツ銀行(ドイツ) トロント・ドミニオン銀行グループ(カナダ) DBS(シンガポール) ダンスケ銀行(デンマーク) DNB(ノルウェー) ノルデア銀行(スウェーデン) バンキア(スペイン) CaixaBank(スペイン) ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)(スペイン) Amalgamated Bank(米国) ボヤ・ファイナンシャル(米国) キャピタル・ワン・フィナンシャル(米国) フィフスサード銀行(米国) アクサ(フランス) プルーデンシャル(英国) AVIVA(英国) スイス再保険(スイス) シュローダー(英国) ジュピター・アセット・マネジメント(英国) 城南信用金庫(日本) 建設・不動産 10社 積水ハウス(日本) 大和ハウス工業(日本) WeWork(米国) British Land(英国) ランド・セキュリティーズ(英国) カナリー・ワーフ・グループ(英国) クラウン・エステート(英国) alstria(ドイツ) BROAD Group(遠大科技集団)(中国) Mace(英国) IT 19社 マイクロソフト(米国) アップル(米国) グーグル(米国) フェイスブック(米国) ブルームバーグ(米国) Adobe(米国) セールスフォース(米国) SAP(ドイツ) eBay(米国) Workday(米国) VMware(米国) Autodesk(米国) エクイニクス(米国) ラックスペース(米国) IHS Markit(米国) Etsy(米国) アイアン・マウンテン(米国) YOOX Group(イタリア) インフォシス(インド) 通信・メディア 9社 T-モバイル US(米国) ボーダフォン・グループ(英国) BT(ブリティッシュ・テレコム)(英国) Sky(英国) ピアソン(英国) 電通イージス・ネットワーク(英国) KPN(オランダ) プロキシマス(ベルギー) テレフォニカ(スペイン) ロジスティクス 6社 SAVE S.p.A. Group (イタリア) Swiss Post(スイス) La Poste(フランス) アスクル(日本) ロンドン・ヒースロー空港(英国) ロンドン・ガトウィック空港(英国) その他 8社 ワタミ(日本) マッキンゼー・アンド・カンパニー(米国) レレックス・グループ(英国) SGS(スイス) Vail Resorts(米国) Vaisala(フィンランド) Elion(中国) FIA Formula [...]

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【スイス】高級チョコレート大手バリーカレボー、サステナビリティ新戦略発表

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 スイスの高級チョコレートメーカー、バリーカレボーは11月28日、同社の持続可能性戦略「Forever Chocolate」を策定したことを発表。2025年までに原料100%で持続可能な調達を行うと宣言した。バリーカレボーはスイス証券取引所の上場企業で、日本では2007年から森永製菓と戦略的提携を結んでいる。  「Forever Chocolate」では、4つの目標を定めた。 サプライチェーンから児童労働を根絶 50万人以上のカカオ農家を貧困から救出 二酸化炭素の純排出量を減らし、森林を拡大 全ての製品において100%持続可能な材料を使用  同社は以前から、「持続可能なカカオ」を企業戦略の4つの柱のうちの一つに掲げ、農協との協力や農家からの直接買い付けるオペレーションを実施してきた。また、チョコレート業界のサステナビリティ推進機関である世界カカオ基金や国際カカオイニシアチブ(ICI)にも参画している。しかし、それでも原材料調達のうち持続可能な手法を実現できているのは全体のわずか23%。これを今後加速させ、2025年までに100%にまで持っていく。  同社の発表は、チョコレート産業の構造的な問題も指摘している。古い非効率な農法、痩せた土壌、高齢化したカカオの木による栽培等。結果、カカオ農家の生産性は低く、多くの農家が貧困状態にある。さらに教育投資もできないため、この状況が何世代にも渡ってしまう。バリーカレボーは、このままではチョコレート産業の未来は暗いと考え、持続可能なサプライチェーンに乗り出した。 【参照ページ】"Forever Chocolate": Barry Callebaut targets 100% sustainable chocolate by 2025

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【アメリカ】ペプシコ、2025年までのサステナビリティ長期目標発表。商品の砂糖含有量削減など

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 食品世界大手ペプシコは10月17日、2015年のサステナビリティレポートを発表する中で、2025年までに向けた長期サステナビリティ戦略「2025 Sustainability Agenda」を明らかにした。消費者の健康食志向が高まっていく消費者需要の変化を見越し、全社の商品内容を大きく見直していく。同時に環境や人権に配慮した世界の食品システムの構築を目指し、地域社会のウェルビーイングの向上も目指していく。  同社は2006年に「Performance with Purpose」というビジョンを発表、「ビジネスの成功を私達が共有する世界の持続可能性を不可分だ」とする信念を事業の中心に据えてきた。それ以降すでに数多くのサステナビリティ行動目標を設定し遂行してきたが、2025年に向けてさらに内容を発展させていく。新たな戦略では、国連持続可能な開発目標(SDGs)を考慮しつつ、(1)商品そのものの健康やウェルビーイングの向上、(2)地球保護、(3)世界中の人々のエンパワーメントの3点を柱として掲げた。同社は、これらの目標達成は、長期的な財務パフォーマンスや株主総利回りの向上につながるという考えを示した。  まず、製品分野では、消費者の健康志向やWHOが発表した声明などに基づき、商品に含む砂糖、飽和脂肪酸、ナトリウムの量を削減していく。2025年までの数値目標として、 飲料商品量の最低3分の2で、355ml当たりの付加砂糖量を100カロリー以下に下げる 食品商品量の最低4分の3で、100カロリー当たりの飽和脂肪酸含有量を1.1g以下に下げる 食品商品量の最低4分の3で、1カロリー当たりのナトリウム含有量を1.3mg以下に下げる 穀物、果物、野菜、乳製品、プロテイン、水分など同社が「日常食」と定義する商品の売上成長率を同社平均以上に上げる 貧困層に対し栄養食や栄養飲料を30億食以上提供する 【参考】WHO、加盟国政府に「砂糖税」導入による甘味食品・飲料の消費量減少を提言  環境の分野では、気候変動枠組み条約パリ協定を支援するとともに、新たな数値目標を発表した。 2025年までに水リスクが高い地域での農業の水消費効率を15%向上させる 2006年に設定した製造現場での水消費効率25%向上に加え、さらに2025年までに25%向上させる 2025年までに水リスクが高い地域で製造現場での水消費量100%を現地の水源に還元する 2006年に設定した水リスクが高い地域の住民2,500万人に安全な水を供給する取組を2025年まで継続する 2030年までに企業のサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を20%以上削減する 農作物原料調達分野で直接調達を2020年までに、間接調達を2030年までに100%持続可能な手法にする 2020年までにパーム油とさとうきびの調達100%を持続可能な手法にできるよう関連分野に投資する 2025年までに自社事業からの埋立廃棄物をゼロにする 2025年までに自社事業からの食品廃棄物を50%削減する 2025年までに商品パッケージを100%再利用またはリサイクル可能なものに変える  地域社会の分野では、国連のビジネスと人権に関する指導原則に言及しつつ、新たな数値目標を発表した。 2025年までに環境配慮、農業生産性向上、生産者生活改善、人権尊重を内容とする同社の持続可能な農業イニシアチブ(SFI)の対象を、同社の関係農地の4分の3に当たる700万エーカーに拡大する すでに同社内100%遵守となった同社のサステナビリティ調達基準を、全フランチャイズ企業と全合弁企業で遵守させる 2025年までにペプシコ財団と協力し、世界の女性1,250万人の支援のため1億米ドルを投じる 管理職の女性比率や男女の賃金平等化など地域状況を配慮した従業員ダイバーシティ活動を継続する  世界中で事業展開するペプシコは、今回の長期目標の発表の中でも、WHOの最新報告を引用するなど、世界の幅広い情報を常にキャッチアップし、事業内容に反映させている姿が伺える。砂糖の含有量などについては、コカ・コーラなどがNGOからの批判を浴び対応をするなどした例が過去にあるが、全社的に砂糖の含有量を減らしていく発表する企業は世界的にも珍しい。また、近年将来のリスクが大きくクローズアップされる水分野では、同社はすでに昨年までに事業で消費した水と同量の水を、同社や同社の財団を通じて社会で利用可能にするという目標を達成したことを発表していていが、今回早速、「2025年までに水リスクが高い地域で製造現場での水消費量100%を現地の水源に還元する」と現地での水循環を100%達成する目標を掲げたことは高く評価できる。 【参考】ペプシコ、水使用量削減で大きな成果。コスト削減効果は5年間で82億円 【参照ページ】PepsiCo Launches 2025 Sustainability Agenda Designed to Meet Changing Consumer and Societal Needs

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【戦略】フランス「エネルギー転換法」の内容 〜原発削減、気候変動情報開示、プラスチック製品・売れ残り食品廃棄禁止〜

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 今日、フランスが2015年7月22日に制定した「エネルギー転換法(Energy Transition for Green Growth Act)[日本ではエネルギー移行法とも呼称されています]」が世界から大きく注目されています。この法律には、フランスを低炭素国家に変えていくための内容が数多く規定されています。制定時にとりわけ大きく報道されたのが、原子力発電割合の大幅削減です。フランスは世界の原子力発電大国で、現在電力の75%を原子力発電で発電しています。エネルギー転換法ではこれを2025年までに50%にまで引き下げることを決定しました。原子力発電大国の急速なエネルギー政策転換は、ヨーロッパだけでなく、世界中から大きく注目されています。  エネルギー転換法が画期的であるのは、この原子力割合の削減だけに留まりません。食品廃棄物に関する内容、不動産の環境規制に関する内容、企業や金融機関の気候変動関連情報開示の義務化に関する内容など、法律の全文は8章215条に及び、エネルギーや資源に関する広範囲の内容を盛り込んでいます。この記事を執筆している2016年9月にも、フランス国会がファーストフード店などで常用されているプラスチック製の食器などを2020年までに禁止する法律を制定したことが報じられましたが、この規制もエネルギー転換法に書かれている内容のひとつです。  フランスは以前、ヨーロッパの中でも環境分野での遅れが指摘されていました。エネルギー政策でも原子力発電依存が続く中、再生可能エネルギーの分野では、ドイツ、オランダ、イギリス、デンマーク、スペインなどに大きな遅れを採っていました。これを一新したのが、現在のオランド大統領です。社会党出身の大統領として2012年5月に就任したオランド氏は、大統領選挙の中でも「原子力から再生可能エネルギーへ」をマニフェストに掲げ、原子力発電を50%に引き下げることを訴え当選。2015年7月にエネルギー転換法を制定させ、同年12月に開催された気候変動枠組条約パリ会議(COP21)では議長国として名乗りを挙げ、パリ協定という大きな成果を残しています。  もちろん、エネルギー転換法を制定するまでの道筋は平坦なものではありませんでした。オランド大統領は、着任後すぐの11月からまず国民の意見を広く徴収するため、2013年7月までの約9ヶ月をかけて「全国討論会」を開催、同7月に討論会の結果を総括した報告書をまとめます。その後、約1年間をかけ、セゴレーヌ・ロワイヤル環境・持続可能開発・エネルギー大臣がエネルギー転換法の法案をようやく閣議に提出できたのが2014年7月30日。そしてそこから国民議会(下院)と元老院(上院)での幾度の法案審議と修正案の審議を経て、両議会を通過したのが1年後の2015年7月22日です。さらに、フランスの立法手続きである憲法院に法案は回され、そこで食品廃棄物に関する条項が違憲だとの判断を受け削除された後、正式に成立したのが同年8月17日。全国討論会の開始から実に3年1ヶ月を経過していました。この間には、関連の業界団体や反対派議員からの激しい反発などがあったと言われていますが、オランダ大統領とロワイヤル大臣の強い結束により、最終的に法案成立に漕ぎ着けました。オランダ大統領とロワイヤル大臣は、元事実婚のパートナーという関係にあり、両氏の間には4人の子供がいます。両氏は、オランダ大統領が大統領選挙に出馬する前に事実婚関係を解消し、その後オランダ大統領は別の女性と事実婚関係にありますが、2007年に大統領候補となった力のある政治家であるロワイヤル大臣との政治的関係は非常に良好のようです。ちなみに、フランスでは事実婚は、1999年制定の市民連帯協定(PACS)によって誕生している合法的な関係であり、フランスにはこのような事実婚のカップルが非常に多くいます。  また、エネルギー転換法は、法律の構造としても非常に珍しい形態を取っています。エネルギー転換法に規定された89の新ルールには、すぐに効力を持つ条項"Immediately applicable provisions"と、改めてルール制定手続きをとった後に効力を持つものが混在しています。ルール制定手続きにも、行政当局の判断で制定できるものから、フランス行政裁判の最高裁判所である国務院での審議を経て制定できるもの、フランス国会での採決を経て制定できるものまで様々です。この背景には、国会での審議を一気に進めると反対派により骨抜きにされるのを避けるため、内閣で大きな絵を先に描いた上で既定路線としてしまい、必要な手続きを後回しに取っていくというオランド政権の知恵が伺えますが、そのため制定されたルールの詳細が理解しづらくなっています。環境・持続可能開発・エネルギー省も、今年8月18日、最新のルール制定状況を反映させた「エネルギー転換法ユーザーガイド第2弾」を発行し、最新状況の告知に努めています。さらに、EU加盟国であるフランスで正式に成立した法律は、欧州委員会から内容について再審議を要請する判断が出ることもあり、ますますエネルギー転換法においても最終的な確定ルールがわかりづらくなる要因となっています。では、このように長い過程で産み出されたフランスのエネルギー転換法の内容を見ていきましょう。 エネルギー転換法の内容 エネルギー分野  エネルギー政策における目標が、この「エネルギー転換法」全体の到達目標として位置づけられています。この中で、原子力比率を50%にまで下げ、替わりに再生可能エネルギー比率を大幅に引き上げていく大胆な政策が大きく注目されています。 ・最終エネルギー消費を2030年までに2012年比で20%削減、2050年までに50%削減 ・化石燃料消費を2030年までに2012年比で30%削減 ・温室効果ガス排出量を2030年までに2009年比で40%削減、2050年までに75%削減 ・電力に占める原子力発電割合を2025年までに50%に削減 ・電力に占める再生可能エネルギー割合を2030年までに40%に引き上げ ・最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を2020年までに23%、2030年までに32%に引き上げ ・炭素税の形でカーボン・プライシング制度(TICPE)を2020年までに導入(価格は炭素1トン当たり2020年時点で56ユーロ、2030年時点で100ユーロ) ・原子力発電分野における地域情報委員会(CLI)や原子力安全局の権限を強化。地域情報委員会は、少なくとも年1回公開の総会の開催、原発周辺地域への説明責任を電力事業者が果たすよう情報提供活動の内容を助言・監督 ・現在稼働中の原子力発電最大容量である63.2GWを超える原子力発電所の新規建設を禁止  (現在建設中の原子力発電所の稼働阻止を実質的に伴う規定) ・40年以上経過原子力発電の稼働ルールを厳格化 ・再生可能エネルギー推進の妨げとなる規制を緩和し、手続きも簡素化 不動産分野  フランスでは2012年時点で温室効果ガス排出量の44%が建物から排出されており、エネルギー転換法でもこの分野での対策を実施します。 ・2017年までに建物のエネルギー効率改善のための大規模改修を毎年50万物件実施 ・2050年までに新築物件は全て政府の定める低エネルギー建物(LEB)基準を義務化 ・個人所有物件のエネルギー効率改善のための大規模改修には3万ユーロまで融資を無利子化、さらに8,000ユーロ(カップルには16,000ユーロ)まで大規模改修費用の30%を減税 ・中央政府と地方政府はエネルギー効率改善のための大規模改修の妨げとなる法規制を撤廃 交通・輸送分野  フランスでは2011年時点で温室効果ガス排出量の27%が交通・輸送分野から排出されており、その削減を目指すとともに、大気汚染も減少してきます。 ・2030年までに再生可能エネルギー原料自動車比率を15%以上に引き上げ ・2030年までに電気自動車の充電スタンドを700万台以上設置 ・2015年4月施行の電気自動車への購入補助金(最高1万ユーロ)制度を増額し延長 ・2015年12月末まで個人が充電スタンドを設置する際に費用の30%を減税 ・地方政府は新規公用車購入時の電気自動車等割合を50%以上に、全体の電気自動車等割合を20%以上に移行 ・2025年以降、地方政府経営バス事業者では全バスを低エネルギーバスに移行 ・地方政府は大気汚染深刻地域での自動車進入禁止規制が可能に ・レンタカー会社やタクシー・バス会社は新車購入時の低エネルギー車割合を10%以上に サーキュラー・エコノミー  資源や食品の廃棄物を削減し、EUも推進する「サーキュラー・エコノミー」国家への移行を目指します。とりわけ、ビニール袋やプラスチック製食器の使用禁止を決めたことが耳目を集めています。ビニール袋の使用禁止は他国でも前例がありますが、今年7月にあらためて国会を通過し制定されたプラスチック製食器の使用禁止は世界初と言われています。また、国会通過時には、食品業界に売れ残り品の廃棄を禁じ、売場面積が400m2を超える小売店舗に対しては売れ残り品を寄付等に活用するための慈善団体との契約を義務付ける施策なども盛り込まれていましたが、これらの規定は憲法院での審議時に削除されています(詳細は後述)。 ・埋立廃棄物量を2025年までに50%削減 ・家庭ごみを2020年までに10%削減 ・2025年までに家庭ごみの食品廃棄物分別回収を地方政府が制度化 ・給食や配膳サービス企業に食品廃棄物削減を義務化する制度を立法化 ・建設廃棄物を2020年までに70%削減 ・無害廃棄物のリサイクル比率を2020年までに55%、2030年までに65%に引き上げ ・小売店等でのビニール袋の使用を2016年1月から禁止  (実際には欧州委員会から規定の明確化要請が入り、小売店等で一般的な薄型使い捨てビニール袋[厚さ0.05ミリ以下]のみを対象とし、2016年7月から施行開始。コンスターチやポテトスターチなど植物由来成分配合のビニール袋の使用は引き続き可能) ・野菜・果物・肉・魚包装用のビニール袋の使用を2017年1月から禁止 ・プラスチック製のコップ・食器・皿の使用を2020年1月から禁止  (2017年1月からの禁止を求める声もあったが、貧困層が家庭でプラスチック製食器を常用していることなどから、施行を2020年に先延ばし) ・紙のリサイクル割合を2017年1月から25%、2020年1月から40%に義務化 ・車修理企業に対し顧客にリサイクルパーツの使用を提案することを義務化 ・廃棄物の不法処理や不法海外輸出の取締を強化 企業及び金融機関の気候変動関連情報開示  ESG投資の分野では、エネルギー転換法が制定した気候変動関連情報の開示義務化が大きな期待を集めています。気候変動関連情報の開示に関しては、エネルギー転換法173条で定められています。173条では、上場企業、銀行、機関投資家に対して、気候変動リスクに関する情報を「Comply or explain」原則に基づきアニュアルレポートの中で開示することを義務化しました。このルールの適用は、2016年1月を含む会計年度のアニュアルレポート発行から開始され、2017年6月30日までに実施することが決まりました。総資産が5億ユーロ未満の小規模機関投資家は適用除外を受けることができ、173条で定める詳細開示項目ではなくESGファクターの考慮概要だけの報告が課されます。  この173条の条項は、今年5月に修正案としてエネルギー転換法に盛り込まれることが国会で決まったもので、法案審議の最終段階に内容が明らかとなりました。その後、エネルギー転換法が8月に成立したことで、フランスは気候変動関連情報の開示義務化を定めた世界初の国となりました。機関投資家に対する気候変動関連情報の開示義務化の詳細内容については、法成立した8月から12月まで関係各界との協議が重ねられ、12月31日に大統領および首相が行う行政命令である「デクレ(Décret)」の形で正式に詳細ルールが発せられました。デクレでは、年金基金、保険会社などアセットオーナーや運用会社に対する開示義務化の項目を定めていますが、実際には基準は解釈の余地を機関投資家に残す内容となっています。また、開示情報の第三者認証についての規定はなく、情報の信憑性についても機関投資家自身に委ねる内容となっています。フランス政府は2年後に実施状況レビューを行う予定です。デクレは発布翌日の2016年1月1日に発効しています。 ■エネルギー転換法で定められた主な内容 ※以下全て「Comply or explain」が適用」 ◯上場企業 ・アニュアルレポートの中での以下3点の開示を義務化 1. 気候変動に関する金融リスクの内容 2. リスク低減するための措置 3. 現行法で義務化されている事業や商品が及ぼす環境・社会影響への開示に加え、気候変動への影響 ◯銀行・信用提供機関 ・アニュアルレポートの中での以下2点の開示を義務化 1. 過剰レバレッジのリスク(気候変動に限定しない) 2. 気候変動シナリオを含む通常ストレステストによって明らかとなったリスク ◯機関投資家 ・アニュアルレポートの中での以下2点の開示を義務化 1. 投資判断において考慮されるESG基準の内容 2. 投資政策において国が推進するエネルギー転換戦略をどのように考慮しているか ■機関投資家向けにデクレで定められたアニュアルレポートでの開示義務化の主な内容(以下全て「Comply or explain」が適用」) ※以下全て「Comply or explain」が適用」 ◯ESGインテグレーョンに関する情報 ・投資判断やリスク管理においてESG情報をどのように考慮しているか ・運用会社に対しては、ESGインテグレーションを実施してるファンド名と運用残高(AUM)の割合 ・ESG分析の手法と理由付けの手法 ・分析と取組実施結果に関する情報 ◯気候変動関連リスクの考慮に関する情報 ・気候変動が直接的にもたらすリスクとエネルギー転換がもたらすリスク ・温暖化防止のための国際合意や「フランス低炭素戦略」での目標達成に向けた貢献へのアセスメント ※リスク分析においては、気候変動や異常気象がもたらす影響、天然資源価格が利用可能性の変化がもたらす影響、気候変動に関する政策変化がもたらす影響、エネルギー移行に貢献する資産への投資額、投資先企業が間接または直接的に排出する過去、現在、未来の温室効果ガス量などを考慮に入れるよう推奨 ◯国際または国内の脱炭素化目標に向けた自主的取組に関する情報 ・脱炭素化に向け自主的に定めた達成目標 ・自主的目標を達成するための投資ポリシーの変更、ダイベストメント、エンゲージメントなど具体的方策 ※セクター別の定量目標を定めることを推奨 食品廃棄物に関する規定  上述したように、食品廃棄物に関する義務化に関しては、憲法院での法案審議の過程で違憲判断を受け削除されました。あらためてその規定の内容とは、食品業界に売れ残り品の廃棄を禁じ、売場面積が400m2を超える小売店舗に対しては売れ残り品を寄付等に活用するための慈善団体との契約を義務付けるというもの。しかし、違憲判断の中身は、規定の内容に関するものではなく、立法手続に不備があったというものでした。食品廃棄物に関する義務化条項は、法案審議の過程で国会の第1読会に間に合わず第2読会の中で盛り込まれており、憲法院はこのことから十分に審議がなされないまま国会採決に至ったことを問題視、違憲の判断が下されました。また、違憲審議の裏でも、狙い撃ちをされた食品業界からは「家庭からのほうが食品廃棄物を多く出ているのに」と反発の声が上がっていました。  違憲判決を受けた政府は、すぐさま大手流通業者との協議を開始。法律制定に向けての努力を継続させていきます。早速、ロワイヤル環境・持続可能開発・エネルギー大臣は8月27日、フランス国内の大手小売企業を招集し会議を実施。参加した大手小売企業は全てその場で、エネルギー転換法に盛り込まれるはずであった規定を自主的に実施することを宣言しました。そして、国民議会と元老院はこの内容に関する法案を再審議し2月3日に元老院を通過、政府は最終的に法成立させることに成功しました。法律には、2016年7月末までに慈善団体との契約を締結を迫る期限が設けられるとともに、違反して食品を廃棄した企業には違反の度に最高3,750ユーロ(約48万円)の罰金が科せられることも盛り込まれました(※法案当初は罰金最高7万5,000ユーロもしくは2年以下の懲役であったがその後大幅に減刑)。これにより、フランスは小売店に売れ残り食品の廃棄を禁止する世界初の国となりました。フランスでは現在、毎年約2,200万トンの食料が廃棄されており、そのうち食べられるのに廃棄されている「食品ロス」が約710万トンあると言います。この710万トンのうち、67%が一般家庭、15%がレストラン、11%が小売店で廃棄されており、小売店からの約70万トンの食品ロスがゼロになることが期待されています。 気候変動対応に大きく舵を切ったフランス  COP21でパリ協定の国際合意を取り付けたフランス。議長国フランスが果たした役割は、単にCOP21の会場を提供しただけでなく、約1年前からの入念な各国への働きかけや、会期中に紛糾しかけた議論を必死に繋ぎ止めるという立ち回りがありました。その意気込みが国内で結実したのが、このエネルギー転換法だと言えます。原子力依存からの脱却や、気候変動情報開示の義務化やプラスチック製品や食品廃棄物削減といった世界初の取組。ドイツやイギリスに大きく差をつけられていたフランスが、ここに来て急速にヨーロッパの環境政策先進国へと飛躍を遂げてきています。 【法律】エネルギー転換法 【デクレ】Final Decree of the implementation of Art 173 of the French Law on the Energy Transition for Green Growth 【参考ページ】ENERGY TRANSITION FOR GREEN GROWTH ACT in Action 【参考ページ】Module de suivi de la loi de transition énergétique 【参考ページ】A ban on plastic bags distributed at cashiers in French shops came into force Friday, as the country makes the environmentally-friendly shift to recyclable and reusable biodegradable bags. 【参考ページ】EU thwarts French plastic bag ban — for now 【参考ページ】PRI "French Energy Transition Law" 【参考ページ】French Supermarkets Enter Voluntary Food Waste Agreement 【参考ページ】French law forbids food waste by supermarkets

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【アメリカ】ハーシー、2015年CSRレポート公表。気候変動、パーム油、動物愛護など目標発表

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 チョコレート米国最大手のハーシーは6月9日、2015年のCSRレポート「Shared Goodness」を公表した。同社は、2014年に続き2015年でも、サステナビリティ調達、食の安全、より健康的な原材料の利用などに取り組んだ。その中には国際的な関心が高まっている気候変動やパーム油の責任ある調達も含まれている。加えて2015年には各国の恵まれない子どもたちのために栄養教育を実施する「Nourishing Minds」プログラムも開始した。報告書の中では、2015年時点での目標達成について情報開示された。 サステナビリティ調達の主な内容 ・カカオ調達の半数以上でサステナビリティ認証を獲得  (2020年までに100%にする) ・カカオ農家8,000人に所得向上に向けた研修を実施  (2019年までに70,000人に実施する ・パーム油調達の10%で農園までのトラッキングを可能に  (2016年までに100%にする) ・動物愛護に関するポリシーを明文化  (2020年までに卵調達100%をケージフリー卵にする) ・森林破壊防止に向け紙・パルプに関するポリシーを明文化  (2017年までに紙・パルプ調達100%でサステナビリティ認証を獲得する) ・パッケージで重量単位で80%をリサイクル可能に 食の安全の主な内容 ・馴染みのある原材料利用へ転換 ・SmartLabel™というQRコードを用い食品成分の情報開示強化(全米初) 環境、安全衛生の主な内容 ・温室効果ガス排出量を2009年比23%削減  (2009年比50%削減する) ・米政府主導のAmerican Business Act on Climate Pledge(米ビジネス気候変動対応行動誓約)に署名 ・設備買収に伴い水使用量が4.5%増加  (2025年までに2009年比70%削減する) ・輸送・流通業務の温室効果ガスを2013年比8%削減  (2017年までに10%削減する) ・埋立所への廃棄物ゼロ施設を1ヶ所追加、合計11ヶ所に  (2025年までに全て施設で埋立所廃棄物ゼロにする) ・リサイクル率88%に  (2025年までに95%にする) 従業員エンゲージメントの主な内容 ・米国の従業員数女性比率45%、管理職女性比率27% 【参照ページ】Hershey Shares Progress On Social Responsibility Commitments 【報告書】SHARED GOODNESS 【企業サイト】ハーシー

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【イギリス】英政府、ソーシャルインベストメント分野の世界の中心を目指す戦略発表

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 英国政府は3月11日、同国をソーシャルインベストメントのグローバルハブ(拠点)とする計画に向けた戦略概要を公表した。国内戦略と海外戦略の二部構成で、国内戦略としては、投資家や地域社会がよりソーシャルインベストメントという機能を活用できるよう規制などを総点検していく。海外戦略としては年金基金等を引き寄せる中核地の位置づけを目指す。  ソーシャルインベストメントとは、財務的リターンだけでなく、社会的インパクトをもたらすことをミッションとし運営されている法人に対して資金を提供する活動のことを言う。英国では現在、社会的企業が中小企業の約20%を占めるにまで拡大。社会的企業は、社会課題に対してのサービスを提供したり、社会課題に立ち向かう新たな解決策を生み出したり、さらに経済活動そのものを活性化させることから、政府もこの分野の育成を重要な国家戦略のひとつとして位置づけている。そのため、社会的企業を成長させるためのソーシャルインベストメントに大きな関心を示している。  ソーシャルインベストメントをより活発にするための国内戦略として、今回の戦略概要の中では、過去5年間の社会的投資の総括と今後5年間の戦略が示された。過去5年間の成果としては、 政府の活動経由で社会的投資を受けた法人:485団体 社会的企業の法人数:741,000団体(58,000増) 社会的企業での雇用者数:230万人 Big Society Capital及び共同出資者からの資金提供金額:6億ポンド ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の発行件数:32件 (注)Big Society Capitalとは、政府が2012年に設立した機関。NPO中間支援団体に資金提供する基金の役割を果たしている。  そして次の5年間で注力するものとして、今回3点を掲げた。 公共セクターがSIB等のソーシャルインベストメントを活用できるよう促進 個人投資家や機関投資家がよりソーシャルインベストメントしやすくなる環境を整備 機関改善などを通じソーシャルインベストメントの市場インフラを強化  政府は、「マーケット・スチューワード」として、社会的投資に関連する法規制およびそれ以外の障壁を排除する方向で検討している。また英国内の大学と連携してリサーチセンターを設立し社会的投資を促進することや、今後12カ月間で中央政府の少なくとも3分の2の省庁で社会的投資を活用した新たなモデルを構築することも計画している。  一方、国際戦略は「社会的投資:グローバルハブとしての英国」というタイトルで、内閣府、ブリティッシュカウンシル、英国貿易投資総省、外務・英連邦省、英国国際開発省が共同で作成した。政府は自国をソーシャルインベストメントの世界的中心とするために次の4点を掲げた。 ソーシャルインベストメントを英国に呼び込む 社会的企業を英国に呼び込む 英国の社会的企業のサービスを海外輸出する 他国の市場で形成されたイノベーションやナレッジを英国に持ち込む  政府はとりわけ、国際戦略のための重要拠点として米国、カナダ、メキシコ、中国、韓国、インド、バングラデシュ、オーストラリア、ニュージーランド、フランスを挙げた。グローバル・ハブへの歩みを進める中、金融業界の規制機関である金融行為監督機構(FCA)も社会的投資分野への規制緩和を進めていく。また、英国の強みとして、税金の控除をはじめ、社会的投資を支持する法律・税務・経理等のエキスパートや金融仲介機関等、環境が整備されていることも挙げた。 【参照プレスリリース】Government publishes new plans to make the UK a global social investment hub 【報告書サイト】Social investment: a force for social change 2016 strategy 【報告書サイト】Social investment: UK as a global hub - international strategy 2016

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【戦略】中国の「第13次5カ年計画(2016〜2020年)」、設定された社会・環境の定量目標

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 2016年3月に中国で開催された「両会」。この場で第13次5カ年計画が正式に可決され、中国共産党および中国政府の公式政策となりました。しかしながら、日本や欧米とは大きく異なる政治制度を採っている中国の話は、なかなかピンと来るものではありません。中国は、世界最大の人口、世界第2位のGDP、国連安全保障理事会常任理事国、通貨人民元は国際通貨基金の準備通貨SDRに採用、二酸化炭素排出量世界一など国際的に大きな存在感を示す大国である一方、その国家統治機構が独特であるがゆえに、中国が取り組んでいることはあまり認知されていません。そのため、Sustainable Japanでは中国の情報を出来る限り多く伝えるようにしています。それは良くも悪くも世界全体のサステナビリティを考える上で中国は無視し得ない存在だからです。 中国の政治機構図  今や世界の常識となった立法・行政・司法の三権分立体制。西欧的国家統治の基本となっているこの考え方を中国は採用していません。中学校の教科書で学習する米国を代表とする大統領制や日本や英国が採用している議員内閣制についても、中国はどちらでもない体制を採用しています。さらに言うと中国は、中国共産党が国家の上に存在するというとても特異な統治構造を採用しています。このように中国は私たちが慣れ親しんでいる概念とは全く違う国家運営を行っています。そのため、日本の国会や内閣などの概念から一度離れ、あらためて統治構造を理解する必要があります。 (出所)ニューラル作成  中国の最高意思決定機関は、中国共産党全国代表大会です。これは議会ですが、いわゆる国会ではなく、共産党の会議体です。この議会の議員は2,000人以上おり全員が中国共産党の党員です。が、5年に1度しか開かれません。そのため日常的なことを検討することはできず、この議会の主な役割は、中国共産党の章程(最高法規)を改正すること、中国共産党の重大事項を決議すること、中国共産党中央委員会委員(中央委員)を選出すること、中国共産党中央紀律検査委員会委員を選出することです。中央委員会は、中共中央とも略され、1年に1回開催される会議体です。全国代表大会が開催されていない期間中、この会議体が党運営(すなわち国家運営)を担当します。議員数は中央委員205名、候補委員171名の合計376名、日本の衆議院議員と数のイメージが近づいてきましたね。この中央委員会はさらに中央委員会政治局委員約25名と中央委員会政治局常務委員7名を選出します。政治局委員会は月に1回、政治局常務委員会は週に1回開催され、中国共産党章程には「中央委員会の閉幕中は中央委員会政治局が職権を代行する」「中央委員会政治局の閉幕中は中央委員会政治局常務委員会が職権を代行する」と規定されています。結果、高い頻度で開催され最終的に政治を担うこととなる中央委員会政治局常務委員が中国の最高権力者となります。政治局常務委員の定数は現在7名であるため、チャイナ・セブンとも呼ばれています。  チャイナ・セブンには序列があります。序列1位は当然、習近平氏です。習近平氏は、中国共産党中央委員会から「中央委員会総書記」「党中央軍事委員会主席」に選出されており、さらに国会である全国人民代表大会から「国家主席」「国家中央軍事委員会主席」に選出されています。序列2位は李克強・国務院総理(国家行政府トップ)です。上の表で◯で囲まれた数字は、その他第7位の常務委員までの職責を表しています。このように、チャイナ・セブンのメンバーが各重要組織のトップを兼任し、7名全員が毎週常務委員会で顔を合わせて議論をすることで、中国の政治運営は行われているのです。  国家としての中国には、中国共産党の指導のもと、立法府、行政府、司法府などが設置されています。立法府は全国人民代表大会、通称「全人代」で毎年3月に開会されます。全人代の議員も約2,000名います。行政府と司法府は全人代の下に置かれており、行政府が「国務院」、司法府が「最高人民法院」と検察組織である「最高人民検察院」です。同じく全人代の下には「国家中央軍事委員会」が置かれています。また、全人代そのものの事務局を務める「全人代常務委員会」もあります。行政府である国務院のトップが国務院総理です。国務院内部の序列は、国務院総理、国務院常務副総理、国務院副総理、国務委員、そして各部・委員のトップ(大臣に相当)の順です。このように日本の大臣とは異なり、中国では大臣級の地位は高くはありません。国務院常務会議と呼ばれる最高閣議のメンバーは国務院総理、国務院常務副総理、国務院副総理、国務委員、秘書長(内閣官房長官に相当)までで、大臣級はメンバーではありません。副総理の中でもひとつ格上の常務副総理はチャイナセブンのメンバーが務め、「財政・金融・発展改革」分野の部・委員会(府省に相当)を職掌しています。今回のテーマである「5ヵ年計画」は、委員会の一つである「国家発展改革委員会」が起草を担当しています。  軍事部門についても触れておきましょう。中国の軍部統治は極めて複雑な体制をとっています。軍部の最高意思決定機関として、「党中央軍事委員会」と「国家中央軍事委員会」が並列で置かれています。ヘッドが2つに分かれているというのは、軍部の意思決定を統一できない可能性を持つという極めて脆弱な体制です。このような事態は中国の歴史的な経緯に原因があるのですが、現在は「党中央軍事委員会」と「国家中央軍事委員会」の委員に全く同一の人物を選ぶという人事運用を行っており、実質的に意思決定が分裂しないようにするという工夫がなされています。行政府である国防部の部長(防衛大臣に相当)は国務院副総理が兼任するとともに、党中央軍事委員会と国家中央軍委員会の委員にも就いています。  最後に一番理解の難しい「統一戦線組織」を見ていきましょう。この組織を理解するには、中国には実は中国共産党以外の政党が合法的に存在しているということを知っておく必要があります。中国には、中国国民党革命委員会、中国民主同盟、中国民主建国会など8つの合法政党(「民主党派」と呼ばれています)があります。これらの政党は中国共産党と歩を共にすることを決めている友党です。民主党派の存在は、1949年の中華人民共和国建国にまで遡ります。当時の中国は日本軍と戦うため様々な党の統一戦線組織が誕生しており、戦後も国民党と闘い新たな中国を立ち上げるために複数政党が集う会議体が必要とされていました。そこで創設されたのが「中国人民政治協商会議」で、その全国会議が「中国人民政治協商会議全国委員会(通称、全国政治協商会議)」です。全国政治協商会議には、政策や法律を決定する権限はなくただの諮問会議ですが、国会である全人代と常に同時に開催されます。そのため、全国協商会議と全人代は合わせて「両会」と呼ばれています。 第13次5カ年計画(2016〜2020年)の決定  中国は1949年の建国以来、5年おきに「5ヵ年計画」を定めて、経済・社会の政策目標としてきました。すなわち「5ヵ年計画」には、中国政治における5年間の国家戦略が記されています。2010年から2015年までが「第12次5ヵ年計画」、そして2016年から2020年までが「第13次5ヵ年計画」の期間です。中国では「第13次5ヵ年計画」は「十三五」と略されて表現されています。  「第13次5ヵ年計画」草案の起草は、2014年4月にスタートしました。起草を担当するのは、省庁のひとつである「国家発展改革委員会」です。国家発展改革委員会は、中国の内閣府、経済産業省、国土交通省などの多くの機能を併せ持つ巨大な官庁です。企業における経営企画部のような役割を担っており、内閣の様々な計画・企画を担当します。2015年の上期には国家発展改革委員会から上位組織の国務院に提出され、今度は国務院全体で揉まれます。揉まれた草案は今度は中国共産党中央委員会に持ち込まれます。2015年10月に開催された第18期中央委員会第5回全体会議(通称、「五中全会」)で「第13次5ヵ年計画」草案は承認され、方針骨子が確定します。そして最終的に具体的な数値目標にまで詰まったものが、2016年3月に開催された全人代と全国政治協商会議に持ち込まれて決議され、公式なものとなりました。冒頭で説明したとおり中国は複雑な分散統治構造を採っていますが、5ヵ年計画は、中央委員会の承認、全人代と全国政治協商会議の決議を得ているため、実質的に中国の最高戦略となることができるのです。 第13次5カ年計画(2016〜2020年)で決定した内容  「第13次5ヵ年計画」の中身は全80章で構成されておりかなりの長文です。また、中国の行政文書は、思想背景や原則など「お題目」を重視するのが特徴で、一般的な日本人が中国語の読解に挑もうとすると「中身がない」言葉が羅列されているように感じてしまいます。しかしながら、この手法は、長年の中国の文化が関係しているように思います。中国の為政者達は代々、大切なことをはっきりと断言せず、婉曲的に表現し、相手に「察する」ことを求めることで巨大国家の舵取りとリスク回避を成し遂げてきたからというのが私自身の私的な見解です。そのため、中国政府の政策を読み解くには、かなりの想像力を必要とし、多くの情報や背景知識を動員して、言わんとするところをとらえなければならない難しさがあります。西欧文化とは大きな違いですね。  そんな中国政府も近年は、積極的に具体的数値目標を立てるようになりました。数値目標を明確にする欧米流のマネジメントが受け入れられてきていると言うことができます。そして、「第13次5ヵ年計画」には、GDPから二酸化炭素排出量まで幅広い数値目標が設定されています。 (出所)新華社ネットをもとにニューラル作成 (注)目標性質の欄で「預期性」は将来ターゲット数値が変更する可能性のある目標、「約束性」は必達目標。    注目に値するのは、中国が対外的に懸念されている二酸化炭素排出量の削減率や大気の質、水質について数値目標を定めている点、そして持続可能な発展に絡む都市化問題についても扱っている点です。中国での「5ヵ年計画」は、日本や欧米の政府が掲げる政策目標よりも大きな拘束力があります。民主主義国家のもとでは政策の達成・未達成はメディア等で取り上げられますが、最終的に政権の成否を決めるのは選挙です。一方、中国政治においては選挙による評価はありません。政治家や官僚の成績は具体的な政策目標の達成状況で判断され、未達成の場合には左遷されることもあります。  もちろんそれに伴う課題もあります。拘束力が強い目標であるからこそ情報の隠蔽や捏造の温床ともなっており、政府は常に正しい情報収集を如何に行うかという根本的な問題に悩まされています。中国では、個別の課題解決もさることながら、データ計測や情報収集の面でもNGOなどの活躍が期待されていますが、やはり成績の良くない地方政府は隠蔽したい気持ちもあるため、どの当局の誰とコミュニケーションをとるかは慎重にならざるを得ません。  「第13次5ヵ年計画」が定める2016年から2020年は、今後のサステナビリティにとって重大な試金石となる期間です。2020年以降の新たな気候変動対策を取り決めたCOP21パリ協定。2016年から2030年までの世界的目標を定めた持続可能な開発目標(SDGs)。世界的に不安定化している経済。難民問題やテロが横行する政治環境。大国中国がどのように世界と関わるのか。また、体内的な動きも見せるのか。これからも中国の動向に注視していきます。

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【インタビュー】リーバイ・ストラウス Manuel Baigorri氏「持続可能なサプライチェーンとビジネスの統合」

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 リーバイス。アメリカファッションと力まないクールさを象徴するブランドだ。ジェイコブ・デイビスと創業者リーバイ・ストラウスが1873年にジーンズを発明して以来、リーバイスのジーンズは世界で最も知られるまでに成長、そのときどきの時代の人々を魅了し続けてきた。現在リーバイス・ストラウス社の商品は110以上の国で手に入れることができる。リーバイスジーンズの特許は以前に切れ、他社もデニムパンツを製品ラインナップに加えている一方、リーバイス自身のラインナップはいまだ進化を続けている。次に街でリーバイスのジーンズを見かけた時、ぜひ思い出して頂きたいことがある。そのジーンズは1873年に生まれた第1号ジーンズを脈々と受け継いでいる。あの年、先見の明のあったリーバイ・ストラウスとジェイコブ・デイビスという2人の移民がデニム生地から後に世界で最も人気を集める「ジーンズ」を創りだしたのだ。  非上場企業である同社(日本法人であるリーバイ・ストラウス・ジャパン株式会社は東証ジャスダックに上場)は、法定義務はないにもかかわらず、財務情報と非財務情報を掲載したアニューアルレポートを毎年発表している。サステナビリティを積極的に推進し、世界のアパレル業界をリードしている同社は、非常に高い評価を受けてもいる。農薬使用量を削減、現地の生産者の生活や人権に配慮した綿花栽培を促すNGO「ベター・コットン・イニシアチブ」。生産工程における水使用量の削減に取り組む製品カテゴリー「WATER<LESS™」。いずれもリーバイ・ストラウス社が積極的に取り組む活動のひとつだ。2005年からは同社ブランドの製品を生産するサプライヤー(認定工場)の名前と場所の公表にも踏み切った。ここまで透明性にこだわる企業は世界でも極めて稀だ。  実はリーバイ・ストラウス社はかつてニューヨーク証券取引所に上場していたことがある。1992年に創業家によるMBOを実施し自ら上場廃止の選択をしたが、当時は同社契約工場での劣悪労働問題も発覚していたタイミングでもあった。サステナビリティに対する理解が機関投資家界隈で乏しかった時節、サプライチェーンの体制改善に全勢力を傾け意思決定のシンプル化を図るため上場廃止を選択したと噂されている。「透明性」を企業DNAとして強く尊重する同社の背景には、そのような体験があったのかもしれない。  1月18日、リーバイ・ストラウス社でグローバル・サステナビリティ・オペレーション部長を務めるマニュエル・バイゴリ氏が、CSRアジア社主催のイベント「CSR ASIA 東京フォーラム」に出席のため来日、「サステナビリティをバリューチェンに統合する」というテーマで講演を行った。そこで私もインタビューをする機会を得た。マニュエル氏は、講演の中で、同社にとってサステナビリティとは、「リスクマネジメント」「コスト削減」「成長」「従業員エンゲージメント」の4つであると語り、日本でもお馴染みとなったCSVの考え方を披露してくれた。同社は、サプライヤーとの間で環境及び社会観点での厳しいビジネスパートナー契約条件(TOE)を設定することでも有名。すべての提携工場が基準を満たしている。また、サステナビリティ強化商品の販売数が全体の販売数の20%にまで到達している。何が巨大な老舗アパレルメーカーをこれほどまでに突き動かしているのか、インタビューで探ってみた。 リーバイ・ストラウス Manuel Baigorri氏 インタビュー サステナビリティ戦略構築は「サステナビリティ委員会」で運営 ー 経営陣の関与とCSRマネジメント体制は。  当社が関わるサステナビリティ戦略の構築や推進は「サステナビリティ委員会」で行われています。この委員会には、取締役会直下に置かれている委員会のひとつで、CEOを含む複数の取締会メンバーが参加します。議長は私の上司であるサステナビリティ担当副社長が務めます。戦略構築とレビューの意味で年1回の定例会があります。「トップライン(売上)」「ボトムライン(利益)」「リスクマネジメント」の3つをアジェンダとし、サステナビリティ観点がそれそれぞれ3つの点において貢献できるアイデアはないかという視点で議論がなされます。  トップラインにおいては何か収益に貢献できる成長分野はないか、ボトムラインではエネルギー削減や資源投下量削減などが議題になります。そして最終的にはグローバル本部の経営陣の諮問を受け(拠点長たちと話し合いの上)、具体的な年間数値目標が設定されます。その他、バングラデシュでのプロジェクト案件など複雑性の高いものについても、この委員会で案件のレビューを行います。プロジェクトチームがすでに計画している内容の確認だけでなく、計画から漏れている内容についての指示が積極的になされます。 サステナビリティ戦略には経営陣のリーダーシップが欠かせない ー 戦略策定プロセスに欠かせないものは。  サステナビリティ戦略は、私たちが所属するサステナビリティ部門が単独で作るものではなく、経営陣と一緒になって作っていきます。サステナビリティにとって良い戦略とガバナンスを築いていくためにはリーダーシップが欠かせません。    当社ではサステナビリティの側面において、多角的なリーダーシップアプローチを採用しています。軸としては「製品」「プロセス(バリューチェーン)」「消費者」の3つ、分野としては「リスクマネジメント」「コスト削減」「成長」「従業員エンゲージメント」の4つがあります。そしてこの3軸と4分野のマトリックス(掛け合わせ)でリーダーシップを発揮できるよう務めています。  3軸と4分野のマトリックスにおいてどの項目を重要視するかについては黄金率があるわけではありません。その都度、ビジネス分析、投資対効果(ROI)計算などを行い、案件ごとに最適な解を導き出しています。 現場部門との協力関係はこの10年間で大きく進化した ー サステナビリティ分野での現場との協力関係は。  当社自身も全体から見た場合のサプライチェーンの一部でありますので、かなり以前から調達という分野を改善していくことの重要性は私たちは認識してきました。そのため、調達の方法を様々な角度から改善しようと努めてきました。そしてこの10年間で調達に関するいくつかの問題を経験しました。同じサプライチェーングループ傘下のソーシング(生産委託・調達)部門とは、かなり以前から一体となって動いており、サステナビリティにおける彼らの貢献には感謝するところが大きいです。問題に直面することも時にはありましたが、ソーシング部門はサステナビリティを積極的に支持してきてくれました。今では私たちサステナビリティ部門よりも、ソーシング部門のほうがサステナビリティに関する達成基準を高く設定しようとするケースもあるぐらいです。  ソーシング部門が現地でのコンプライアンスなどで課題を抱えた時、私たちサステナビリティ部門に相談を寄せ、私たちがソリューションを検討するということも非常に頻繁にあります。例えば、委託先工場がサステナビリティ調達基準をなかなか改善できない場合、サステナビリティ部門とソーシング部門がともに委託先工場に出向いて調査・分析を行うこともあります。委託先工場のサステナビリティ評価は様々な観点から行うべきですから、(狭義の)サステナビリティに関わる問題点だけでなく、委託先工場のサステナビリティ運用能力を理解するのに役立つビジネスKPI、例えばリードタイム、製品品質なども調査対象に含めます。 委託先との長期的な関係構築が長期戦略を可能にする ー 委託先工場との関係性の変化は何か感じますか。  当社と委託先工場の関係は非常に密接になってきています。当社は2005年から委託先工場の数をおよそ半分に減らしました。それは、委託先の数を減らし、1社あたりの発注数を増やすことで、連携しながらビジネスの改善や問題への対処をより容易にできるからです。また私たちは数年後の生産・販売の状況を意識しています。そのため将来を見据え、「持続可能な開発目標 (SDGs)」を枠組みとし、委託先工場従業員の家族や地域社会を支援するプログラム「Workers Well-Being」を展開しています。  委託先工場のオーナーの立場に立つと、当社が発注数を10%増やすと言えば、当社との話し合いの場にのろうという意欲が湧きますし、さらに30%、40%という発注数増を期待してサステナビリティプログラムを積極的に導入しようとなります。こうして、当社と委託先工場との間で長期的で戦略的な関係構築が生まれてくるのです。 企業機密より透明性が重要視される時代が来る ー 透明性と企業機密をどのようにバランスを採っていますか。  企業機密より透明性が求められる時代が来ると考えています。情報開示の例として、2005年に当社が生産委託先工場の開示に踏み切った時、社内には懸念する声もありました。競合企業が当社の委託先工場の顔ぶれを知ってしまうことで、競合企業がその委託先工場にアプローチし、当社の発注を阻害しようとするかもしれないというものでした。開示後、そのようなことは実際には起こりませんでした。それは、アパレル業界においてはどの企業がどの委託先工場を使っているかは周知ですので、開示前からすでに当社の委託先工場がどこかということは知られていたからです。  同じことはアパレル業界の化学薬品についても言えます。世界トップ10に入るような大企業であれば、どの企業がどのような薬品を使っているか等の情報はすでに広く知られています。意思決定の過程で、ソーシング部門の視点からは、調達先の開示が競争力の低下につながる可能性があると懸念の声が上がりましたが、それ以上にメリットが大きいと判断し情報開示に至りました。それは協働を生み出し、困難な課題にともに立ち向かうということは、異なる分野の人々が集って初めて可能となるからです。コミュニティが求める情報の開示は、追跡が複雑なため、なおさら困難です。米国や英国では紛争鉱物規制など政府から情報開示を求める声も強まっています。  当社では透明性を重要視し、より消費者の方にわかりやすく伝えていくという方向で努力しています。例えば、「WATER<LESS™」テクノロジーによって削減できた水消費量や、ジーンズという製品がどれだけ水消費量を減らせるかということをわかりやすく消費者に伝えられるようになりました。透明性の時代が来ます。いつ来るのかはまだわかりませんが、いずれ来ると思っています。 委託先工場の開示には良い効果しかなかった ー 委託先工場開示の検討の際に社内でネガティブな意見はありませんでしたか。  委託先工場の開示には、NGOなどに課題を発見され追及されるというビジネスおよびステークホルダー上のリスクがある。そのような考え方にも理解はできます。当社でも当然、賛成派と反対派がありました。しかしながら、実際に当社が開示に踏み切ったことは良い結果だけを生みました。まず私たちはむしろNGOに発見して欲しいと思っていました。私たちが委託先工場の場所を示すことで、現地のNGOが積極的に当社委託先工場の水問題や従業員問題など様々な点に関心を示してくれました。そして、当社の経営資源が少ない地域においても、彼らNGOが積極的に自らの資源を使って状況の改善に努めてくれました。  委託工場の経営環境にとっても良い効果がありました。私たちが情報開示をすることで、どの工場が受託できているのかが公になります。すると、受託できていない企業が、サステナビリティの観点で私たちの公開リストに載っている企業を意識して比較を行い、当社の委託先工場になるためには自分たちはもっと努力しなくてはという競争意識が高まっていったのです。  昨今情報開示を進める企業が増えています。ですが情報開示は単に行えばいいというものではなく、その目的を明確にすることが大切だとも考えています。当社の委託先開示も目的をもって行いましたし、同様のことは中国の環境NGO、IPEの取組にも言えます。IPEでは政府から企業の環境情報の提供を受け、分析、情報公開を進めています。IPEでの当社のランキングは、アパレル業界において15位からついに昨年3位に、全体ランキングでは4位にまで上がりました。このようなIPEの活動は消費者に対して当社の状況をわかりやすく情報発信することに役立っています。 新規委託には厳しい条件を課す ー 新規委託先に対してはどのような基準があるか。  製品ラインナップの拡大や発注数の増加などビジネス上の都合のため、新たな委託先工場を探す場合には、新規委託先工場は、生産前に「ビジネスパートナー契約基準(TOE)を受け入れ、当社のサプライチェーン統括本部長によって認可される必要があります。 委託先工場には厳しい基準を課しつつも協働していく ー 基準を満たさない企業に対して契約打ち切りと改善要望のどちらで対応するか。  以前当社では、基準を満たさない工場への発注を即打ち切るというアプローチを採用していました。ですが、このアプローチはうまくいきませんでした。未達工場との取引がなくなり当社自身としてはリスクを回避できます。しかしながら、TOEはもともと委託先工場の従業員の待遇・労働環境の向上を目的としたはずが、発注を打ち切った結果彼らを失業させてしまう等、全くの逆効果となったのです。    今では、発注打ち切りに関しては限定的な運用を行っています。野球の「三振」のように何度かチャンスを与え、基本的には一緒に改善していくというアプローチを採っています。経験則としては、ワンストライクの段階でどの委託先工場も前向きに対処しています。委託先工場も当社から非常に厳しい基準を課されているという気持ちがありますので、協働することが大事なのです。 サブ・コントラクターにも同様の基準を課す ー 委託先工場の委託先もスコープに入れようとしていますか。  委託先工場の委託先、すなわちサブ・コントラクター(二次委託先工場)にも同様のビジネスパートナー契約条件」(TOE)アプローチを採っています。サブ・コントラクターも委託先工場の開示リストに含まれています。ですが、実際の運用には諸事情を考慮して様々なカスタマイズを行っています。例えば、イタリアの高級皮革職人の工場とバングラデシュの大規模工場とでは様々な事情が違います。適用するTOEは同じですが、どのように運用するかは今でも当社の課題事項です。  サブ・コントラクターのTOE遵守には一次委託先工場も責任を負います。例えば、一次委託先工場がサブ・コントラクター5社を活用しており、私たちのTOE監査において、一次委託先工場自身とサブ・コントラクター4社が合格、残りのサブ・コントラクター1社が不合格だったとします。その場合、私たちは最終的にその一次委託先企業に「要改善」の判定を下します。こうして、一次委託先工場にサブ・コントラクターの改善責任があるという意識を醸成しているのです。もちろんサブ・コントラクターの改善については、一次委託先工場だけでなく当社も協力して実施します。 他社に先駆けた取組の開始は大きな誇り ー 講演で紹介されたIFCとのプログラム内容の詳細は。  私たちは先陣を切って取組を開始することを誇りとし、他社がそれに続くことすら期待するということもあります。当社が1年前から国際金融公社(IFC)と実施している委託先工場へのインセンティブプログラム「IFC Trade Finance Programs」はその好事例です。このプログラムでは、当社が委託先工場のTOEの遵守状況を10段階で評価し、その評価に基づき、委託先工場はIFCから融資を受けることができるという制度です。高い評価を受ければ受けるほど、金利が安くなるということです。この制度は特に融資を受けにくい南アジアでうまく機能しています。他方、中国では銀行の融資条件が良いためあまり活用されてはいませんが。現在はTOEの遵守状況だけを評価対象としていますが、今後は例えば化学薬品管理や従業員の職場環境(「Workers Well-Being」プログラム)など他の要素も加えていきたいと考えています。  このIFCのプログラムは私たち自身がIFCに働きかけて創設されました。そのためこのプログラムを活用しているのは現在当社だけですが、他社にも参加して欲しいですし、積極的に招待したいとも思っています。 パートナーシップとネットワーキング ー 外部機関との連携の状況は。  これまでも外部のステークホルダーとのエンゲージメントを重要視してきました。また、数多くの企業が外部との連携プロジェクトなどを開始しています。が、一過性のもので終わってしまっては意味がありません。サステナビリティのためにやるのであれば、プロジェクトはやり続けるか、さらに上を目指すか、そのどちらかだと考えています。現在当社では、業界全体の事業運営をより良くしていくためのパートナーシップや、各分野のオペレーションをスムーズに遂行していくためのネットワーキングに力を入れています。長期的なパートナーシップやネットワーキングはとても重要です。これからの課題はプロジェクトアプローチから持続可能な影響を構築するための長期的なアプローチへと移行していくことです。  提携するNGOや参加するイニシアチブを当社内部で意思決定する際には、ポリシー・アドボカシー部門や広報部門などとともに部門横断のグループを形成して決定します。意思決定会議では、NGOやイニシアチブの中身、私たちが達成したい目標、活動を通じて与えられるインパクト、地域フォーカスかグローバル規模かなどの活動範囲などが考慮されます。 製品ラインナップ全体の改善が本当のサステナビリティ ー 講演で紹介された「サステナビリティ強化製品が販売数の20%に到達」の意味は。  昨年度、当社の製品販売数の20%が、サステナビリティ強化製品群の販売によるものとなりました。しかしその意味は、サステナビリティ強化製品群と通常製品群の二種類にラインナップを分けようとはしているということではありません。サステナビリティ強化製品群には、水使用量低減を実現した「WATER<LESS™」と生産者の生活改善を目指す「WELLTHREAD™」などが含まれます。私たち自身が知見を高めるために、まず例えば「WATER<LESS™」を小さくスタートさせましたが、すでに「WATER<LESS™」は全商品への拡大を考えています。それを目指さなければ、本当の意味でサステナビリティとは言えませんから。 サステナビリティだけでは消費者の心をつかめない ー エシカル消費というトレンドをどう見ているか。  消費者は私たちにとって常に中心に位置づけられており、当社に高い愛着を感じてくださる消費者のことを当社では「ファン」と呼んでいます。ファンを意識するということは、消費者の行動に影響を与えていくということです。例えば、帰宅後にどのようにジーンズを手入れしてくれるかということにも繋がってきます。消費者の行動に影響を与えるということは容易なことではありません。  これまで、消費者の行動変化を意識し様々なことに取り組んできました。「Care tag for our planet」というキャンペーンでは、ジーンズの環境にやさしい取り扱い方をアピールしましたし、インターネットメディアなどで盛んに行われるブランドランキングやソーシャルメディアにも積極的に参加してきました。そこで学んだことは、サステナビリティという側面だけでは消費者を獲得できないということです。ファンの獲得には様々な要素を組み合わせなければなりません。価格、フィット感、履き心地、そしてサステナビリティ。ですので、Levi's®のジーンズは、デザインやスタイル、耐久性なども重視し、同時にサステナビリティも追求しています。 サステナビリティ部門に求められる要素「楽観的」「勇敢」「コミュニケーション」 ー サステナビリティ業務を目指す人々へ何かメッセージを。  サステナビリティ部門の業務は難しい。ときには社内の流れに逆らうようなことをしなければいけません。だからこそ楽観的であることが大切です。そして、長年企業が培ってきた現状の打破にチャレンジしていくのですから勇敢であることも必要です。そしてコミュニケーション能力。サステナビリティでは、費用対効果分析だけでなく、人の心に寄り添うことも求められます。  サステナビリティの仕事に興味がある人は、例え自分自身が本当にやりたいことではなかったとしても、現場が求めるものから始めて見るとよいと思います。そこから見えてくるものは多いはずです。特に、雇用環境問題に触れられるソーシングやサプライチェーンに焦点を当てるのは良いスタートだと思います。従業員環境という課題に携わることができますし、この分野について専門性を高めることは、自身のキャリアにとって役立ちます。また、他部門を巻き込むより大きな仕事にも活かしていけるはずです。ときには、自分の能力以上の課題に直面して、落とし所に悩むこともあるかもしれませんが、まずは始めてみることです。 インタビュー後記  マニュエル氏の講演の中で印象に残っている一コマがあった。最後の質疑応答の中で、このような質問が出た。 「経営者にとって結果がよくわからないことを意思決定するのは難しいと思う。まだサステナビリティに関する取組をしたことがない経営者に、その意義を理解してもらうにはどうしたらいいか。」  マニュエル氏はやや困った顔をしてこう応じた。 「その質問に答えるのは当社にとって難しい。サステナビリティの価値を深く理解することは、そもそも当社のDNAになっているからです。当社ではサステナビリティに関して、試行錯誤を繰り返してきましたし、失敗も経験してきました。例えば、2006年に販売したエコジーンズは、想定より売れませんでした。しかし、だからと言ってサステナビリティに注力するのをやめようということにはなりません。むしろエコ製品の開発を通じて学んだことを活かし、翌2007年にライフサイクル・アセスメントを実施。このアセスメントが当社にとっての大きな転換点となりました。」  リーバイ・ストラウス社は、この転換点を機に、2009年に「ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)」に参加し、2011年に「WATER<LESS™」ラインを発売する。  企業DNAというものは企業の意思決定にとって大きな意味をもたらす。リーバイ・ストラウス社にとっての企業DNAであり企業理念であるサステナビリティや透明性は、経営陣や従業員にとって一貫した価値観として機能していると感じた。企業DNAとして、企業理念を本当に企業は大事にできているのか。自ら掲げたことに誠心誠意コミットするということの大切さを見せつけられた思いがした。 参考サイト Levis Strauss CSRアジア東京フォーラム2016 CSRアジア

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