【アジア太平洋】アジア開銀、気候変動の社会影響予測報告書発表。10億人が移住を強制される可能性

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 アジア開発銀行(ADB)は7月14日、気候変動がアジア太平洋地域の社会に及ぼす影響を分析した報告書「A Region at Risk: The Human Dimensions of Climate Change in Asia and the Pacific」を発表した。独ポツダム気候影響研究所(PIK)との共同作成。今後の気候変動は、アジア太平洋地域の社会を破壊すると警鐘を鳴らした。発表イベントでは、PIKのHans Joachim Schellnhuber教授は2100年までに10億人が移住を迫られる可能性があると語った。  アジア開発銀行のバンバン・スサントノ知識管理・持続的開発担当担当副総裁は、「気候変動は人類にとって21世紀最大の試練になりうる」と強調。同報告書は、今のペースで地球温暖化が進むと、今世紀末までにアジア太平洋地域では気温が6度上昇すると予測。中でも、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、中国北西部では8度も上昇するという。これらの気温上昇は地域の気象を大きく変え、農業、漁業、陸上・海上の生物多様性、国内・国際安全保障、貿易、都市開発、移民、健康に多大なる影響を与えるという。このシナリオのまま進めば、アジア太平洋地域での持続可能でインクルーシブな発展の望みは潰えてしまうかもしれないとした。  温暖化が進むとアジア太平洋地域では台風やサイクロンの威力が増すと予測されている。また現状のまま進めば、年間降水量はアジア太平洋地域の多くで50%以上増加する一方、パキスタンやアフガニスタンでは20%から50%減少してしまう。沿岸部は高い確率で洪水リスクに晒されることになる。海面が1m上昇すると危機に瀕する世界25都市のうち19都市はアジア太平洋地域に位置している。国別ではフィリピンだけで7都市。最も洪水の被害が甚大になるのはインドネシアで590万人が洪水被害を受けると推計されている。  また洪水は経済損失ももたらし、損失額は2005年の60億米ドルから2050年までには520億米ドルにまで8倍以上も拡大。被害が大きくなる世界都市トップ20のうち、13はアジア太平洋地域で、日本の名古屋、中国の広州、深圳、天津、張江、廈門、インドのムンバイ、チェンナイ、スラート、コルカタ、ベトナムのホーチミン、インドネシアのジャカルタ、タイのバンコクが該当する。  気候変動は食糧価格の高騰にもつながる。このままいけば、2100年までに東南アジア諸国では米の生産高が50%以上も減少。気温が2度上昇に留まったとしても、ウズベキスタンではほぼ全ての穀物の生産高が2050年までに20%から50%も減少する。これにより南アジアでは700万人の児童が栄養不足に。食糧価格の高騰により、輸入コストは2050年までに現状の毎年20億米ドルから150億米ドルに7倍以上に増加すると発表した。  その他、気温が4度上昇すると、2100年までに太平洋西部のサンゴ礁は全て白化。1.5度上昇だとしても89%が白化する。これにより東南アジアの漁業や観光業は大きな被害を受ける。また、中国、インド、パキスタン、バングラデシュを筆頭に毎年330万人が大気汚染で死亡。2050年までに暑さで死亡する年間高齢者数も5万2,000人増加する。マラリアやデング熱などが猛威振るう可能性もある。同時に、水不足等により水力発電所の機能低下、冷却水が入手しにくくなることによる火力発電所の能力低下が予測され、化石燃料に依存することへの脆弱性が高まる。エネルギー危機になれば戦争にもなりうる。  同報告書は、今後の対策として、パリ協定の遵守を強調。そのために、アジア太平洋地域の経済の急速な低炭素化と、脆弱な人々を保護するための気候変動適応に取り組むことが重要だとした。また都市インフラや交通分野での再生可能エネルギーや技術革新を進めるべきだとした。そして、アジア太平洋地域の努力が、世界を持続可能な発展へと向かわせるか否かの明暗を分けると結論づけた。 【参照ページ】Unabated Climate Change Would Reverse the Hard-Earned Development Gains in Asia — New Report 【報告書】A Region at Risk: The Human Dimensions of Climate Change in Asia and the Pacific

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【国際】WRIと北京交通発展研究院、低排出ゾーンと渋滞税制度に関する研究報告書を発表

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 国際環境NGO世界資源研究所(WRI)は3月29日、北京市政府管轄の北京交通発展研究院(Beijing Transport Institute)と共同で、世界主要都市の低排出ゾーン(LEZ)と渋滞税制度(CC)に関する研究報告書「低排出ゾーンと渋滞税の国際慣行調査(Study on International Practices for Low Emission Zone and Congestion Charging)」を発表した。目下、中国では都市部の交通渋滞が深刻化しており、渋滞緩和や大気汚染対策が重要な政策課題となっている。報告書では、世界の動向をまとめた上で、中国政府に対する提案をまとめた。  低排出ゾーン(LEZ)とは、大気汚染物質を高濃度に排出する車両の進入を制限する区域を設定する制度。また渋滞税(CC)は、一定時間内に特定地域に侵入する際に事前に税金を納付することを義務化する制度。同報告書の中では、ロンドン、シンガポール、ストックホルムで導入されている低排出ゾーンと渋滞税制度の事例を研究。政策の準備段階、計画、導入テクノロジー、広報、監視・取締、効果、政策評価を包括的に分析している。中国では、北京、杭州、蘇州などで深刻な渋滞が発生しており、今回の研究は特に北京交通局の依頼のもとで行われた。  報告書調査では、ペーパーリサーチや実地観察だけでなく、ロンドン、シンガポール、ストックホルムの専門家へのインタビューも用いられた。質問事項には、興味深い切り口が設定された。 LEX/CC政策の導入における主な課題とは何か ステークホルダーが表明した主な懸念事項とは何か LEZ/CC制度を補うための補完策は施されたか 広報を通して、市民の理解はどのように向上できたか LEZ/CC制度の監視技術を選ぶに当たって、考慮すべき点は何か LEZ/CC制度の導入による効果は何か  また、中国の中央政府と地方政府に対する政策提言として、 中央政府は、国家交通戦略と地方のLEZ/CC制度の目的を明確でかつ一貫性のあるものにすべき。また、自治体レベルでの政策実行を促進するための立法、規制及び政策の確立すべき 地方政府は、LEZ/CC制度を導入する前に、明確で確固たる目的を設定すべき 地方政府は、渋滞税額や政策目標など詳細な導入手法を包括的に検討すべき 地方政府は、当制度からの収入を交通機関の改善に当てるべき。そのための収入配分プロセスを透明化すべき 地方政府は、現地の状況に適切なで実証済の技術を用いるべき 地方政府は、効率的かつ市民の意見を反映するとともに、市民の政策理解を向上させる広報戦略を採るべき 地方政府は、導入前に代替路など必要な補完策を整備すべき  とまとめた。 【参考ページ】Study on International Practices for Low Emission Zone and Congestion Charging 【報告書】Study on International Practices for Low Emission Zone and Congestion Charging

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【金融】世界と日本のESG投資 〜Global Sustainable Investment Review 2016まとめ〜

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 世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)。2年に一度、ESG投資の統計報告書「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」を発表しています。このGSIRは、ESG投資の実態を知る上で非常に貴重なデータで、ESG投資統計として世界中で参照されています。最新版となる2016年統計をまとめた「GSIR 2016」が3月27日に発表されました。  GSIAは、世界各地域のESG投資協会6団体が加盟しています。加盟団体は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、英国のUKSIF、オランダのVBDO、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAAです。その中で、英国のUKSIFとオランダのVBDOは、欧州全体をカバーするEurosifの加盟団体であるため、報告書「GSIR」の発行は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAAの4団体が共同で作成しています。またGSIRの作成に当っては、世界の幅広い地域を包括するため、国連責任投資原則(PRI)が日本以外のアジア地域のデータを、日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が日本のデータを提供しています。いずれの地域協会も、関連機関投資家に調査票を送り、回収する形で情報収集をしています。  また、南米では2013年にLatinSIFが組成されましたが、まだ地域統計を収集できるまでには成長できていません。中東アフリカ地域ではまだ地域協会が誕生していません。 ESG投資の種類  GSIAは、ESG投資を以下の7つに分類しています。前の6つが投資ポートフォリオを作るためのESG投資の戦略。最後の「エンゲージメント・議決権行使型」は、投資前後の投資(候補)先企業へのエンゲージメントや議決権行使を積極的に行う、いわゆる「アクティビスト(物言う株主)」型の戦略です。7つの戦略は重複しても用いられることも多く、特に前6つと「エンゲージメント・議決権行使型」は重複することが多くあります。 1. ネガティブスクリーニング(Negative/exclusionary screening)  1920年代に米国のキリスト教系財団から始まった最も歴史の古い手法。今では欧州でも広く普及しています。武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電、ポルノなど、倫理的でないと定義される特定の業界に属する企業を投資先から除外する戦略。 2. ポジティブスクリーニング(Positive/best-in-class screening)  1990年代に欧州で始まった手法。同種の業界の中でESG関連の評価が最も高い企業に投資する戦略。ESG考慮の高い企業は中長期的に業績が高くなるという発想に基づく。ポジティブスクリーニングをすると、投資ユニバース(投資先企業リスト)が非常に小さくなると言われることもあり(一説では30%から70%小さくなる)、下の規範に基づくスクリーニングを推奨する専門家も少なくない。 3. 規範に基づくスクリーニング(Norms-based screening)  2000年代に北欧で始まった比較的新しい手法。ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法。ポジティブスクリーニングに比べ投資ユニバースを大きくすることができると評価する専門家もいる。 4. ESGインテグレーション型(ESG integration)  最も広く普及しつつある手法。投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする戦略。特に年金基金など長期投資性向の強い資金を運用するファンドなどが、将来の事業リスクや競争力などを図る上で積極的に非財務情報(ESG情報)を活用し、アルファ(市場平均よりも大きなリターン)を目指すために用いられることが多い。 5. サステナビリティテーマ投資型(Sustainability-themed investing)  サステナビリティを全面に謳ったファンドへの投資。サステナビリティ関連企業やプロジェクト(特に再生可能エネルギー、持続可能な農業等)に対する投資が有名。太陽光発電事業への投資ファンド、グリーンボンドなどもこのカテゴリーに属する。 6. インパクト投資型(Impact/community investing)  社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業に対して行う投資。比較的小規模の非上場企業への投資が多いため、このタイプのファンドの運用はベンチャーキャピタルが行っていることも多い。最近では個人投資家からも資金提供を募ることも増えてきた。インパクト投資の中で、社会的弱者や支援の手が行き届いていないコミュニティに対するものは、コミュニティ投資と呼ばれる。 7. エンゲージメント・議決権行使型(Corporate engagement and shareholder action)  株主として企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法。株主総会での議決権行使、日常的な経営者へのエンゲージメント、情報開示要求などを通じて投資先企業に対してESGへの配慮を迫る。近年は、気候変動関連や役員報酬(SAY ON PAY)に対して声を上げることが多い。このタイプの手法をとる株主は「アクティビスト」「物言う株主」とも呼ばれる。 世界のESG投資額 (出所)GSIA "2016 Global Sustainable Investment Review"  2014年から2016年までの2年間で、世界全体のESG投資額は25.2%増加し、22兆8,900億米ドル(2,541兆円)となりました。年平均(CAGR)にすると11.9%成長しました。しかし、前回2012年から2014年までの2年間では61%増加しており、成長が鈍化しています。 ESG投資が全体に占める割合 (出所)GSIA "2016 Global Sustainable Investment Review"  今回の報告で目立つのは、日本の急成長です。2014年時にはアジア全体に包括されておりデータがありませんが、前々回の2012年時には0.2%だったがの、今回は3.4%にまで増加しました。金額でも2014年の70億米ドルから4,740米ドルへと約7倍弱となっています。その背景としては、私見ですが、やはりGPIFがPRIに署名し、日本でESG投資という言葉が広がり始めたことがあると言えるのではないでしょうか。  またオーストラリアとニュージーランドの成長も注目に値します。2014年には16.6%であったが割合が、2016年には半数超えの50.6%となりました。オーストラリアやニュージーランドでも年金基金を中心にESG投資の採用が進んでいます。  ESG投資が進まないと言われていた米国でも20%を超えるまでになりました。一方、世界のESG投資をリードしてきた欧州は58.8%から52.6%に下がっています。欧州のESG投資金額そのものは10.8兆米ドルから12.0兆米ドルに11%伸びているのに全体割合が下がったということは、投資市場全体がそれ以上に伸びているということです。ESG投資ではないどのような手法が増えているかについては、報告書の中では説明がありません。また、データ提供をしたEurosifの「SRI Study 2016」の中でも、全体割合が下がった旨の説明等はなく、今後関係者からの報告が待たれます。しかしながら、限られた調査票統計の形をとっていたり、GSIAはEurosifから得たデータを独自に分類・統計をしているため、計算上の誤差の可能性もあり、この点にあまり過敏に反応しないほうがよいでしょう。 各手法ごとのESG投資額 (出所)GSIA "2016 Global Sustainable Investment Review"  手法別の統計では、歴史のある「ネガティブスクリーニング」が最多。次いで急成長している「ESGインテグレーション」。そして組み合わせで行われることの多い「エンゲージメント・議決権行使型」が3番目です。 (出所)GSIA "2016 Global Sustainable Investment Review"  前回比では、いずれの手法も伸びていることがわかります。絶対額が小さいため存在感が小さく見えますが、「サステナビリティテーマ投資型」は2.4倍、「インパクト投資型」も2.5倍になりました。背景としては、こちらも私見ですが、グリーンボンド市場の活発化によりサステナビリティテーマ投資が増えてきたこと、また国連持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を意識したインパクト投資型が増えてきたことが影響しているでしょう。 【報告書】Global Sustainable Investment Review 2016 【機関サイト】GISA 【参考】【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線(2014年6月30日)

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【国際】コンシューマー・グッズ・フォーラム、「ヘルス&ウェルネス2017報告書」発表

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 主要食品・消費財メーカーや小売店が加盟する国際的な業界団体コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)は3月9日、加盟企業による2016年の取組成果をまとめた報告書「ヘルス&ウェルネス進捗報告書」を発表した。同報告書の発表は今年で4回目。CGFがミッションとして掲げる健康に配慮した製品含有物の変更(Product Reformulation)では、商品約18万の商品で含有物の変更が行われた。報告書の作成は、CGFと米コンサルティングのデロイトが協働で作成した。  CGFは、異なる3つの業界団体が統合する形で2009年に設立された世界的な団体。現在、70ヶ国から約400社が加盟。日本からも、食品メーカー、消費財メーカー、小売企業を中心に75社が加盟している。加盟企業全体の総売上は約420兆円、従業員数合計は約1,000万人。  CGFは、環境サステナビリティ、社会サステナビリティなど複数の注力分野を設定している、「ヘルス&ウェルネス」もその一つ。「ヘルス&ウェルネス」は2011年に開始。2014年には「ヘルス&ウェルネス・コミットメント」を宣言し、加盟企業は、2016年までに、栄養素や製品含有物に関するポリシーを公表すること、及び「従業員ヘルス&ウェルネス・プログラム」を実施することを定めた。また同じく2018年までに、消費者に製品含有物等の情報を伝えるための業界全体の表示ラベルを展開すること、また特定の栄養基準を満たさない製品を12歳未満の子供に宣伝をすることをやめることも決めた。  このコミットメントに触発される形で、スイス食品大手ネスレとオランダ小売大手アホールド・デレーズは、食品の健康に関する進捗を報告するためのタスクフォース「Health & Wellness Measurement and Reporting Taskforce」の発足を主導し、現在、CGF加盟企業のうち数十社がこのタスクフォースに参加している。「ヘルス・ウェルネス進捗報告書」作成も、このタスクフォースのもとで実施されており、今回は102社が回答した。回答した日本企業は、イオン、味の素、アサヒグループホールディングス、グリコ、ハラダ製茶、日立造船、伊藤園、日本生活協同組合連合会、花王、キッコーマン、キリンホールディングス、国分グループ本社、ローソン、ライオン、明治、三菱食品、森永製菓、森永乳業、日本酒類販売、ニチレイ、日世、日清食品、サッポロホールディングス、エスビー食品、センコー、サントリー、ヤマキ、山崎製パン、ヤマト運輸等。  食品や消費財の含有物の変更では、多くの企業が取り組んだのがナトリウムの減量。回答を寄せた企業の内67%が実施した。続いて、砂糖減量(61%)、飽和脂肪酸減量(50%)、トランス脂肪酸減量(47%)、全粒穀物増加(25%)、ビタミン増加(20%)、防腐剤に使用されるパラベン減量(16%)、オメガ3増加(6%)だった。このように含有物の変更が行われた製品が増えた一方、70%以上の企業は健康配慮のため含有量変更を行った製品は全体の20%以下だと回答するなど、企業の取組はまだ小規模に留まっていることもわかった。  4つのコミットメントの達成度合いでは、「2016年までに栄養素や製品含有物に関するポリシーを公表する」が27%、「2016年までに従業員ヘルス&ウェルネス・プログラムを実施する」が57%と、期限とした2016年中の100%達成からは程遠い結果となった。「2018年までに消費者に製品含有物等の情報を伝えるための業界全体の表示ラベルを展開すること」は35%、「2018年までに特定の栄養基準を満たさない製品を12歳未満の子供に宣伝をすることをやめること」は51%だった。 【参照ページ】New Report Shows Over 180,000 Consumer Goods products Reformulated 【報告書】Health & Wellness Progress Report 2017

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【アメリカ】長期志向企業は短期志向企業より業績が高い。マッキンゼー研究部門調査

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 コンサルティング世界大手マッキンゼーの研究部門マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(GMI)は2月8日、企業の短期志向と長期志向がもたらす企業業績に与える影響の違いを調査した報告書「Measuring the Economic Impact of Short-termism」を発表した。調査の結果、長期志向の企業は、短期志向の企業より売上、利益、経済利益(EVA)、時価総額の全ての面において上回ったことがわかった。  今回の調査では、米国に上場している大企業と中堅企業615社の2001年から2015年までの財務データが対象となった。短期志向企業と長期志向企業の選別作業では、(1)投資の長期的な安定性、(2)会計ベースではなくキャッシュフローベースの利益追求、(3)利益成長率の安定性、(4)四半期決算でのEPS必達度合いの低さ、(5)EPSより利益を重視、の5つの指標を慎重に用い、短期志向企業群と長期志向企業群の財務データを比較した。  まず、基本的な財務指標比較では、長期志向企業の方が、2001年から2014年までの累積売上が47%高く、売上変動幅も小さかった。同期間の累積利益でも、長期志向企業の方が36%高かった。経済利益(EVA)では長期志向企業の方が81%も高かった。  時価総額の面では、長期志向企業の方が同期間において、一社当たり70億米ドルも高く積み上げた。株主総利回りでも、長期志向企業は2014年までの間に上位10%や上位25%に入る確率が50%も高かった。2008年からの世界金融危機時には長期志向企業のほうが時価総額の下落が大きかったが、回復は速かった。  投資動向では、長期志向企業のほうが投資額が50%多かった。また、長期志向企業は、世界金融危機時にも投資額増加率は8.5%と安定いる一方、短期志向企業は同時期に3.7%の伸びに留まっていた。雇用の面でも、長期志向企業は2001年から2015年までの間に従業員増員数が、短期志向企業に比べ、1社平均で12,000人多かった。このことは、もし短期志向企業が同時期に長期志向経営を行っていたとしたら、全米で500万人の雇用増が生まれた計算となる。  一方、企業に対して行ったアンケート調査では、経営陣の87%が2年以内高い財務業績を挙げなければいけない心理的プレッシャーを感じており、65%が過去5年の間に短期志向プレッシャーが増加していると回答。さらに短期志向企業に選別された企業の経営陣のうち55%は、四半期業績を達成するために、例え価値創造を犠牲にしたとしても、新規プロジェクトのスケジュールを遅らせるだろうと語り、企業経営者は短期志向のプレッシャーを高く受けていることを伺わせた。  今回の調査は、企業経営の長期志向を推進するためにマッキンゼー等が進めているイニシアチブ「FCLT(Focusing Capital on the Long Term)Global」の活動の一環として行われた。FCLT Globalは、マッキンゼーとカナダ年金計画投資運用委員会が2013年に立ち上げた「FCLT」を前身とし、2016年7月にブラックロック、ダウ・ケミカル、タタ・サンズが加わり「FCLT Global」として新たに発足した。今日では、欧州最大の年金基金オランダのAPG、オランダ公的年金基金PGGM、デンマーク公的年金基金ATP、AT&T、BP、ケベック州投資信託銀行、Edelman、シンガポールの政府系ファンドGIC Private、中国のHillhouse Capital Group、欧州運用会社Kempen Capital Management、ニュージランド公的年金基金ニュージーランド・スーパーファンド、オンタリオ州教職員年金基金、インドのPiramal Group、米国ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、米国ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、米国Sullivan & Cromwell、ユニリーバ、ワシントン州投資運用委員会もメンバーとして参加している。 【参照ページ】Measuring the economic impact of short-termism 【報告書】Measuring the Economic Impact of Short-termism

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【国際】GRI、今後のサステナビリティ報告展望で企業グループ活動報告書を発表

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 サステナビリティ報告に関する国際ガイドラインのGRIとアカウンタビリティに関する国際基準発行の英国NGO、SustainAbilityは2月2日、未来のサステナビリティ報告の展望を示した報告書「Future Trends in Sustainability Reporting」を発表した。同報告書は、GRIのプログラム「企業リーダーシップ・グループ(CLG)」の活動の一つ「2025年の報告についての企業リーダーシップ・プログラム」が2016年までの2年間の活動内容報告書にもなっている。報告書の中では、今後サステナビリティ報告にとって重要となるテーマについて、国連持続可能な発展目標(SDGs)のうち、気候変動、人権、富の不平等、データ・テクノロジーの4つを挙げた。  GRIの「2025年の報告についての企業リーダーシップ・プログラム」に参加したのは、ペプシコ(米国)、モザイク(米国)、欧州投資銀行(EU)、ガメサ(スペイン)、テレフォニカ(スペイン)、フェレロ(イタリア)、テレコム・イタリア(イタリア)、セメックス(メキシコ)、JSWスチール(インド)、インドガス公社(インド)、CLPホールディングス(香港)、ITAIPU BINACIONAL(ブラジル・パラグアイ)、Nutresa(コロンビア)の13社。  同報告書は、重要テーマとされた気候変動、人権、富の不平等、データ・テクノロジーの4つの分野について、今後の展望を紹介。気候変動については、 企業が気候変動に取り組むべきかは自明で、問題は手法とスピードだという見解ではっきりとした一致が得られたと紹介。気候変動は他の社会課題にも悪影響を与える分野であり、企業はソリューションプロバイダーとして、野心的で科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てるべきだとした。とりわけ重要な関係者である国が設定する各国の削減目標(INDCs)に自社の活動をリンクさせるべきだとした。今後の報告優先事項としては、2020年以降を見据えた長期目標、気候変動が自社経営に与える脆弱性、同業界他社やサプライチェーンの先進事例やリスクの把握、現在と今後の事業運営手法の改善などが挙げられている。  人権においては、投資家や格付会社、規制当局が人権をますます重視してきており、ビジネス上の人権デューデリジェンスが必須となってきていることを確認。特に従業員の労働人権には大きな焦点が当たっているとした。人権状況の改善に向けては、他社をベンチマークすることやランキングを意識することを推奨した。今後の優先事項としては、国連ビジネスと人権に関する指導原則の採択、労働人権改善に向けての人事部との連携、サプライチェーンへの関与、人権インパクト評価の実施などが挙げられた。  富の不平等では、労働者や小規模事業者の富の相対的減少、ジェンダー差別、租税回避行動、政府の底辺への競争(Race to the bottom)政策が、課題を原因だと指摘。データ・テクノロジーでは、利用可能なデータの数が大きく増加していることを挙げ、データの利活用やオンライン報告など新たな可能性がある一方、自社データのプライバシー保護や機密保護、他社購入データの漏洩防止など新たな課題も生まれていることを取り上げた。  「2025年の報告についての企業リーダーシップ・プログラム」の活動は昨年で2年間の活動を終了。GRIの今年のCLG活動は、昨年に続き「統合報告」と今年から開始した「国連持続可能な開発目標(SDGs)報告のための企業アクショングループ(Corporate Action Group for Reporting on the SDGs)」の2分野で参加企業でのディスカッションを行う。 【参照ページ】Future Trends in Sustainability Reporting 【報告書】Future Trends in Sustainability Reporting

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【中国】再生可能エネルギー産業へ投資額が圧倒的な世界トップ。海外投資も積極化

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 エネルギーと経済・財務との関係を研究する米国のエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は1月6日、中国の再生可能エネルギー戦略に関する報告書「China’s Global Renewable Energy Expansion: How the World’s Second-Biggest Economy Is Positioned to Lead the World in Clean-Power Investment」を発表した。報告書によると、中国の2015年単年での国内再生可能エネルギー(大規模水力除く)投資額は、前年比17%増の1,020億9,000万米ドル(約11.7兆円)。同時に中国は海外での再生可能エネルギー開発にも投資をしており、2016年の海外投資額は、ブラジル、オーストラリア、チリ、パキスタン等で321億米ドル、前年を60%上回る規模となった。報告書は、中国が再生可能エネルギーへの投資を拡大しており、テクノロジー、投資、製造、雇用において当該分野のリーダーシップを発揮していると総括している。 (出所)IEEFA  中国の2015年の再生可能エネルギーへの投資額1,020億9,000万米ドルは、世界の再生可能エネルギー投資額の3分の1を超える規模で、第2位の米国の441億米ドルを遥かに凌駕している。大部分は国内での投資だが、中国企業や機関は、再生可能エネルギーの進展の機会を海外に求める傾向が強まっている。同時に雇用の分野でも、全世界の再生可能エネルギー分野で雇用されている810万人のうち、中国での雇用が350万人。米国の79万9,000を大きく上回っている。  例えば、風力発電では、中国企業のゴールドウィンドがデンマークのヴェスタスを抜き、世界最大の風力タービンメーカーとなった。国内向けの風力発電を主な市場としているユナイテッドパワー、明陽風電(Ming Yang)、遠景能源(Envision)、CSICを含め、中国は世界トップ10の風力タービンメーカーのうち5社を占めている。また、太陽光発電でも、2016年の世界最大の太陽光モジュール製造工場6カ所の内、5カ所が中国にある。    バッテリー分野でも存在感を示している。中国の四川天斉リチウム社は、2012年にタリソンリチウムを、2015年には江蘇省にあるギャラクシー社の加工工場を買収し、世界最大のリチウムイオン製造業者となった。中国は国内でのレアアース採掘によってリチウムバッテリー業界をコントロールできる地位にあり、世界のレアアース採掘の90%、レアアース加工の72%は中国企業が担っている。  海外展開においては、中国政府の掲げる「一帯一路」や「シルクロード基金」等の「Going Global(走出去)」政策において、中国ーパキスタン経済回廊、バングラデシュー中国ーインドーミャンマー(BCIM)経済回廊の再生可能エネルギー分野に投資をしており、同地域は中国にとっての戦略的地域となっている。  今回のリポートには、国内外で再生可能なクリーンエネルギーのフットプリントを拡大している中国企業30社のケーススタディも掲載されている。一方、米国がトランプ新政権のもとで石炭等化石燃料推進、再生可能エネルギー後退の政策へとシフトする場合、米国での再生可能エネルギー産業は競争力を確実に低下させることになると警鐘を鳴らしている。  新たな政権がトランプ氏の主張通り、石炭等、従来のエネルギー資源に拘り、再生可能エネルギーへの転換を遅らせる場合、活気づいているこの分野での経済的な競争力をほぼ確実に低下させるだろうと予測している。 【参照ページ】IEEFA Report: China Set to Dominate U.S. in Global Renewables Boom; $32 Billion in Overseas Investments in 2016 Alone 【報告書】China’s Global Renewable Energy Expansion

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【国際】持続可能なインフラ分野への投資が急務。経済と気候変動分野の国際イニシアチブ報告書

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 気候変動と経済に関する国際イニシアティブのThe Global Commission on the Economy and Climate(経済と気候変動に関するグローバル委員会)は10月6日、持続可能なインフラの分野への投資を呼びかける新たなレポート「The Sustainable Infrastructure Imperative: Financing for Better Growth and Development(急務な持続可能インフラ:より大きな成長と発展のためのファイナンス)」を発表した。レポートによると、持続可能な発展や世界的な経済成長のためには、インフラ分野への投資が急を要しており、今後2、3年間の投資選択により、今後数十年の方向性が、環境や社会と配慮した成長に向けたものとなるか、高炭素、非効率、持続不可能なものとなるか、道筋が分かれるという。  この委員会は、2013年9月に、当時の政府首脳や国際機関トップらが立ち上げたイニシアチブ。設立時から現在まで、委員長はフェリペ・カルデロン前メキシコ大統領が務めている。委員には、Nicholas Sternロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授兼英国学士院会長、中尾武彦アジア開発銀行(ADB)総裁、Suma Chakrabarti欧州復興開発銀行(EBRD)総裁、Helen Clark前ニュージーランド首相、Stuart Gulliver HSBCグループCEO、Angel Gurría OECD事務総長、Chad O. Hollidayシェル会長、ポール・ポールマン・ユニリーバCEO、Sri Mulyani Indrawatiインドネシア財相、Sharan Burrow国際労働組合総連合(ITUC)事務局長らが就いている。  レポートでは、今後15年間で、世界全体の現インフラ資産より多い、総額90兆米ドル相当の投資がインフラ部門に必要となるという。今後、先進国の古いインフラを修繕し、新興国や途上国で高度な経済成長と構造的変化を実現していくのにこれだけの金額が必要となる。グローバル・サウスにおけるエネルギーおよび輸送分野が必要な投資のおおよそ3分の2に相当する。このためには、現在の投資額である年間3.4兆米ドルから年間6兆米ドルへと大幅な増額が求められる。レポートの中では各業種や各地域ごとに必要となる分野や金額がまとめられている。全体の投資需要のうち3分の2は、南半球の発展途上国の交通、エネルギーインフラ分野だ。  同時にレポートはパリ協定による投資影響にも言及。パリ協定で各国がコミットした目標(INDCs)を達成するためにエネルギーや費用が節約することで、この分野への投資財源の多くは確保できるとの楽観的な見通しを示した。投資を実現させるためには、官民両面からの投資が必要で、とりわけ公的機関の投資は、民間資金をうまく引き込めるよう戦略的な使い方が必要だと提言した。持続可能な大規模インフラプロジェクトには、単体でも複数金融機関からの投資を受けるプロジェクト型となることがほとんどで、完成までに10数年を要する。プロジェクト準備期間だけでも、総投資額の2.5%から5%ほどのコストがかかり、民間投資を引き出すためには、リスクを低減させるための公的投資が不可欠となる。同委員会委員のCaio Koch-Weser元ドイツ銀行副総裁は、投資促進のためには、グリーン投資の定義と透明性の確保が握ると話す。  これらを受け、同委員会は、行動指針として4項目をまとめた。 化石燃料への助成金引き下げとカーボンプライシングを導入し、インフラの分野の基本的な価格の歪みを是正する 適切なプロジェクトと投資を実現するため、政策フレームワーク及び組織の計画能力とガバナンスを強化する グリーンボンドやグリーン融資とともに、企業の気候変動リスク情報開示を含め既存の投資手法をグリーン化する 再生可能エネルギー分野に投資し、持続可能なインフラを実現するためのコストを引き下げる 【参照サイト】Transform the financial system to deliver sustainable infrastructure and reignite growth, says Global Commission

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【イギリス】政府報告書「英国現代奴隷法の執行に大きな課題」。英国大手企業の情報開示もわずか27%

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 英国で昨年「現代奴隷法(Modern Slavery Act)」が制定されるに伴い、英国内務省内に新たに設置・任命されたケビン・ハイランド独立現代奴隷コミッショナーは10月12日、初年度の活動と実績をまとめた報告書「Annual Report 2015-16」を発表した。報告書は、現代奴隷法の制定後の成果はまだ見られないとの厳しい現実を明らかにした。現代奴隷法の制定は日本の産業界でも大きな話題を呼んだが、現代奴隷法に関するサプライチェーン上の情報開示を大企業に義務化されたことについて、報告書からは英国政府が熱心に義務不履行企業を取り締まるという気配は見られない。  ハイランド・コミッショナーは就任時に、「現代奴隷法」で掲げた現代奴隷課題の解決に向け5つの優先取組テーマを挙げていた。「犠牲者の発見と保護」「法執行と刑事司法アプローチの促進」「良い協働事例の促進」「サプライチェーンの透明性を高めと労働搾取をなくすための民間セクターエンゲージメント」「国際的な協働」だ。特にハイランド・コミッショーナーは、実際に現代奴隷状態にある人々を救済するために、警察、検察、入国管理官などのナレッジ向上と体制強化に奔走してきたことが報告書からは伺える。  しかし、これまでの成果は芳しくない。同法制定以降、英国政府には、National Referral Mechanism(NRM)と呼ばれる現代奴隷被害者情報管理制度が構築され、すでにに3,359もの被害案件が登録されている。ところが、ロイター通信によると、そのうち、警察が実際調査に当たった数は956、さらに有罪判決または召喚まで至った数は127に過ぎないという。ハイランド・コミッショナーは、その理由として、警察内部において適切にNRMシステムを用いた捜査を行う体制ができていないことや、現代奴隷犯罪に立ち向かう各イニシアチブを統率するリーダーが不在であること挙げ、現状を強く非難している。さらにハイドランド・コミッショーナーは、そもそも現代奴隷に立ち向かうための捜査官の数が足りていないことや、政府間や国内行政機関の連携が取れいていないという現状認識も示している。(上記のロイター通信が報道した各統計は、今回発表の報告書に記載されていると述べられているが、現在公開されている報告書からは各数字は削除されている。)  現代奴隷防止のための民間セクターへの働きかけに関する現時点での成果は、より少ない。報告書の中ではこれまでの成果として、英国政府自身の政府調達において、現代奴隷に関する調達基準を盛り込むことに成功したことを報告。それ以外にも、英国の代表的な企業のCEOや業界団体と複数に渡って会合を持ち、現代奴隷防止に関しての理解促進に努めていることをアピールした。具体的な各企業に対する働きかけについては、中東メディアのアル・ジャジーラが英国都市ケントでボルボと起亜自動車のサプライチェーン上で車の洗浄作業に奴隷労働が用いられていることを報道した件で、ハイランド・コミッショーナーから両企業に対していかなる措置を取ったかを確認するための手紙を書いたことや、紅茶メーカーに対しインドのアッサム地方の茶農園で労働搾取があるという件について協議をしたのみが報告書には書かれている。現代奴隷法には、一定の大企業に対してサプライチェーン上で現代奴隷に関与していないことを確認しホームページなどで状況を公表することを義務化する規定があり、ハイランド・コミッショナーもその点に触れているが、今回の報告書には、この内容に関する現状の報告や今後の政策については何も記載がない。  では、英国の大企業の情報開示状況の実態はどうか。ロンドンに本部を置く国際人権NGOのビジネス・人権資料センター(Business & Human Rights Resource Centre)は今月上旬、ロンドン証券取引所の代表的指数であるFTSE100採用銘柄100社の情報開示状況を発表した。100社のうち、現代奴隷法で定められているホームページなどでの情報開示を行っているのはたったの27社。そのうち、13社は法定の開示条件を正しく満たしていないという。同センターが高く評価したのは、そのうち英国小売大手マークス・アンド・スペンサーと、ビール世界大手SABミラー(同社は10月10日に同世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブの子会社となった)の2社のみで、この2社は現代奴隷と立ち向かう強い姿勢を謳っているという。しかし、この2社でも同センターの格付では上から3番目で、トップ格付と2位格付の取得企業はなかった。それ以外のほとんどの情報公開済み企業については、リスク評価やデューデリジェンスが甘いという厳しい評価となった。  英国のメイ首相は今年7月、現代奴隷の発生源である発展途上国での事態改善のために、3,350万ポンド(約43億円)を途上国支援に投じることを発表し、政府間タスクフォースも立ち上げた。特に、NRMシステムに通報された英国内での現代奴隷の出身地は、アルバニア、ベトナム、ナイジェリア、ルーマニアの4ヶ国が多いという。  現代奴隷に立ち向かうために設立された財団、ウォーク・フリー・ファンデーション(Walk Free Foundation)によると、現代の奴隷の数は世界で4,600万人、イギリス国内でも11,700人に上る。2015年に英国で現代奴隷法が制定されたことは、人権活動家などから高く評価されたが、犯罪グループが現代奴隷慣行から稼ぐとされる額は年間1,500億ドル、それに対しこれまでに世界で調査が及んだ額は100億ドルでしかなく、国際社会の更なる連携が求められるのは言うまでもない。英国政府も英国を現代奴隷対策を行う世界初の国となるべく奮闘しているが、現状はまだは道は始まったばかりという状況だ。 【報告書】Independent Anti-Slavery Commissioner: annual report 2015 to 2016 【参考ページ】Police failures undermine UK slavery fight, says commissioner 【参考ページ】Press release: First analysis of FTSE 100 statements for UK Modern Slavery Act: a gulf opens up in company performance 【情報公開格付】At the Starting Line: FTSE 100 & the UK Modern Slavery Act

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【国際】鉄鋼業界の気候変動対応は大きな遅れ、日系大手3社にも厳しい評価。CDP報告書

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 機関投資家らによる国際イニシアチブで、企業に気候変動の情報開示を求めるCDPは10月6日、気候変動を巡る環境変化が鉄鋼業界に与える影響を分析した新たな報告書「Nerves of Steel」を発表、鉄鋼メーカーは今後、炭素価格(カーボン・プライス)制度の導入と脱炭素技術の開発の遅れにより苦境に立たされるであろうとまとめた。  同報告書は、時価総額総計1,210億米ドルを誇る世界の鉄鋼業界は、パリ協定の目標達成に向けて2050年までに製鉄1t当たりの二酸化炭素排出量を70%以上削減しなければならないと試算。ところが、低炭素技術の研究開発は初期段階から進展していないにもかかわらず、業界の利益率が低迷する中、研究開発費は近年14%も削減されているという。そのため、今日に至っても、排出量削減目標を達成するための商業ベースで利用可能な技術はいまだ現れていない。今後、世界の鉄鋼生産量のうち70%以上が2017年末までに各国で導入されていくと予想される炭素価格(カーボンプライシング)制度の影響を受けるとの見通しを示し、今後気候変動に絡む政策リスクへの対応は鉄鋼業界にとっての喫緊の課題となるだろうと分析した。  報告書では、業界全体でこの10年間に排出量の改善とエネルギー効率の向上が進んでいないとも指摘。製鉄メーカー世界大手14社を分析したところ、鉄鋼業界は世界の排出量全体の6%から7%を占めているが、鉄鋼業界全体の排出量の40%を占める6社は、来年以降の排出量削減目標を発表していないという。  報告書は、CDPが各企業から得たアンケート回答を基に、製鉄世界大手14社の気候変動対応ランキングも発表した。 POSCO(韓国) SSAB(スウェーデン) ティッセンクルップ(ドイツ) 現代製鉄(韓国) アルセロール・ミタル(ルクセンブルグ) 新日鐡住金(日本) 中国製鉄(台湾) JFEホールディングス(日本) 神戸製鋼所(日本) JSWスチール(インド) エブラズ(英国) ナシオナル製鉄(ブラジル) タタ・スチール(インド) USスチール(米国)  ランキングでは韓国企業の上位入りが目立つ。また中国は世界の鉄鋼生産量の50%を占めているが、炭素に関する情報公開を行っていない。ランキング評価では、「温室効果ガス排出量とエネルギーマネジメント」「排出量削減目標」「炭素価格変化がもたらす経営への影響度」「低炭素技術開発」「水資源に対する経営強靭度」「気候変動ガバナンス」の5つ柱だが、新日鐵住金、JFEホールディングス、神戸製鋼は「低炭素技術開発」ではいずれもBランクを取得。新日鉄住金はその他「温室効果ガス排出量とエネルギーマネジメント」「排出量削減目標」でもBを取得したが、それ以外はCまたはE評価。JFEホールディングス、神戸製鋼もその他の項目でC以下だった。一方、韓国のPOSCOや現代製鉄はそれぞれ3項目で最高位のAランクを取得した。また14社以外の製鉄世界大手である武漢鋼鉄(中国)、ニューコア(米国)、ノヴォリペツク製鉄(ロシア)、インド鉄鋼公社(インド)、包頭鋼鉄(中国)、セヴェルスターリ(ロシア)はCDPからのアンケートに回答をしなかったため、今回の調査やランキングから除外されている。  同報告書によると、14社の製鉄所のうち20%は、2030年までに気候変動がもたらす海水位上昇リスクの高い地区に位置しており、さらに8%については海水位上昇リスクが極めて高いという。世界の鉄鋼業界は目下、中国からの鉄鋼過剰供給が世界全体の鉄鋼価格を下落させており深刻な問題となっている。その一方で、気候変動という足元の製鉄生産環境を及ぼす事業リスクや、炭素価格制度によりさらに利益率を押し下げる財務リスクも増してきている。気候変動は長期的な取組課題であるため、企業にも従来より長期を視野に入れた経営計画や目標設定、そしてその長期経営計画から派生する先行投資への英断が求められている。 【参照ページ】Press release: Steel Companies Need Tech Transformation As World Gets Tough On Emissions  【レポート】Nerves of steel

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