【国際】食品ロス測定・報告に関する基準「FLW Protocol」が制定、3GF

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 グローバル・グリーン・グロース・フォーラム(Global Green Growth Forum:3GF)は6月6日、7日、デンマーク・コペンハーゲンで2016年サミットを開催、世界初となる「食品損失と廃棄に関する測定および報告に関する基準」(Food Loss and Waste Accounting and Reporting Standard: FLW Standard)のプロトコル「Food Loss+Waste Protocol(FLW Protocol)」を採択した。3GFは、2011年にデンマーク、韓国、メキシコの3ヶ国政府が立ち上げ、その後中国、ケニア、カタール、エチオピアが加盟、現在は7ヵ国政府で構成。加盟機関には政府だけでなく、OECD、IFC、WRI、UNGC(国連グローバルコンパクト)など国際機関やNGO、シーメンス、ヴェスタス、サムソン、現代自動車、ABB、マッキンゼーなどの企業も名を連ねている。今回採択されたプロトコルは、WRIが2013年に召集して開始し、今回、食品の損失と廃棄に関する測定、報告、管理の手法を明確化した。加盟国政府の数は7カ国と多くはないが、WRIが参加していることもあり、国際的な基準に発展する可能性がある。  現在、世界中で約3分の1の食品が生産から消費までの過程に損失や廃棄されており、全世界で9,400億米ドルにまで相当すると見積られている。その一方で8億人以上の人々が栄養不足の状態にある。現状では、食品の損失と廃棄は温室効果ガスの8%を発生させ、それを一国家の排出量と見なした場合には、中国、米国に次ぐ3番目の量になるという。食品の損失と廃棄への対処は、「国連持続可能な開発目標(SDGs)」の達成目標にも掲げられており、天然資源の減少・枯渇の問題を緩和することにも繋がる。近年、当問題に対処する気運が国際的に高まっているが、廃棄量の把握や発生場所の特定に課題があった。とりわけ、食品の損失や廃棄について、定義も多様であり、一貫性のある議論をすることすら困難であった。  今回採択されたFLW基準に沿った測定、報告、管理を実践することは、食品の損失と廃棄を削減するのに効果的な戦略そして進化をモニターする上で非常に重要な基盤となる。さらにそのことが政府や企業が気候変動パリ会議やSDGs等、国際的に合意されたコミットメントを推進することにも繋がる。特にSDGs 12.3では、2030年までに食料の損失と廃棄を50%削減することを呼びかけている。世界70カ国の最大手の製造業者と小売業者400以上の集合であるConsumer Goods Forumは、会員企業が業務を通して2025年までに50%の食品の損失・廃棄を削減することを目指しており、今回の基準を支持。ネスレ、テスコなど大企業はすでに測定と報告を開始しているという。 「FLW Standard」として制定された基準 1. FLW Standardを基にした説明と報告 2. 食料の損失と廃棄に関する測定と報告 3. FLWリストに沿った仕分けと報告  a. 食品生産時から消費後の処理時までの時系列的な流れ  b. 損失と廃棄の測定において食用、非食用、両用を区別  c. 廃棄物の最終的な処理方法や用途(動物の餌、生物材料、嫌気性消化処理、コンポスト等)  d. 損失と廃棄が発生する食品の種類、場所や状況、地理的条件、取扱業者等  e. 関連事項として、包装物等、食料の損失と廃棄以外のものについては対象外とする 4. 測定方法についての説明(既存のデータを使用の場合には出典と範囲を特定) 5. データサンプリングやデータ単位変換を行った際にはその説明 6. 不確実性(不確実な側面)に関する質的、量的な評価の説明 7. 他者によるFLWリストの内容確認についての説明(関係者との相互評価、検証等) 8. FLW量の監視や減量目標値の設定等に関する説明(基準年や対象範囲等) 【参照ページ】First-Ever Global Standard to Measure Food Loss and Waste Introduced by International Partnership 【プロトコル】Food Loss+Waste Protocol

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private 【レポーティング】サステナビリティ(CSR)報告ガイドラインを主導するグローバル機関

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(図)サステナビリティ報告ガイドライン カオスマップ。Sustainable Japan作成。 複雑化するサステナビリティ(CSR)ガイドライン  サステナビリティ報告やCSR報告を担当する方々からよく受ける質問があります。「一体、どのガイドラインを参照すれば良いのか」。実はこの種類の問いは非常に回答に窮します。もちろん、有名なガイドラインはあります。例えばGRI、サステナビリティ報告についての包括的なガイドラインと言っても過言ではなく、先進国・新興国問わず世界中で参照されています。しかしながら、当サイトSustainable Japanでは日々GRI以外の多の多くのガイドラインについてもご紹介をしています。ISOが定めたISO26001、温室効果ガス算出方法で有名なガイドラインのCDP、紛争鉱物報告ガイドラインを制定しているcfsi、財務情報と非財務情報の統合を試みる<IR>などなど。これらのガイドラインを全体として公式に統括する機関は今のところ存在していません。それぞれの機関はお互いに連携をしつつも、独立した動きを見せ発展してきています。こうした体系的に整理されずにルールやガイドラインが増殖していく動きは、中央政府の省庁が一元的にルールを管理する傾向の強い日本にはあまり馴染みのない状態です。整理されないルール増殖というのは悲観すべきなのかもしれませんが、それだけ今サステナビリティ報告や非財務情報報告の領域は急速に発展してきていることの証左でもあります。産業革命やIT革命の際に数多の技術が一度に勃興してきたように、サステナビリティや企業情報開示の分野も今まさに革命期にあると言うことができるでしょう。正直、この領域の専門家でない限り、全ての動きに日々目を向けていくのは非現実的です。ですので、今回は、いまこうしてますます複雑化していくサステナビリティ報告ガイドラインの状況を俯瞰的にまとめてお伝えしていきます。 GRI 〜サステナビリティ報告ガイドラインの中心的存在〜  GRIとは (more…)

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2015/04/28 体系的に学ぶ

【戦略】急速に進展する中国企業のサステナビリティ・CSR報告

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経済力を急速に高める中国。今やGDPの国別ランキングで世界第2位になっただけでなく、証券取引所の時価総額合計でもアメリカに次ぐ世界2位の規模を誇っています。その中国経済を担う中国企業に対する関心は世界中で高まっています。世界有数の石油企業であるペトロチャイナ、時価総額で世界の金融機関のトップを争う中国工商銀行、昨年ニューヨーク証券取引所に上場して話題を集めたアリババは、いずれも時価総額が20兆円を超え、日本企業で時価総額トップのトヨタ自動車を上回る評価を得ています。 中国企業にも、この10年で欧米を初め世界中に浸透してきたコーポレート・サステナビリティの波は押し寄せています。先日ご紹介した「【ランキング】2015年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」にも、初めて中国大陸の企業としてレノボ・グループがランクインしました。急速にキャッチアップする中国企業のサステナビリティへの取組、今回はその姿をご紹介していきます。 国連グローバルコンパクトの加入数は中国が逆転 (出所)UNGCホームページよりニューラル作成。加入数は進展報告書を提出していない企業・団体も含む2014年12月末までの数値。 こちらは、国連グローバルコンパクトに加入している日本と中国の企業・団体数の推移を示した図です。両者はほとんど同じ数ずつ増加してきましたが、2012年以降日本が増加スピードが減退したのに対し、中国は引き続き毎年大きく増加しており、グローバルコンパクトへの関心の高さが伺えます。もちろん、加入企業・団体の全てが年次の進展報告書を提出している企業というわけではありません。未提出の企業数は日本で24社(全体の10.5%)、中国で43社(同15.6%)ありますが、提出した企業だけに絞っても加入数は、日本が204社、中国が233社で、中国が上回っています。意外かもしれませんが、このように中国企業の環境や社会に対する関心は年々高まってきています。 中国企業のサステナビリティ報告書発行企業数は大きく増加 国務院(内閣に相当)が管轄する研究機関である中国社会科学院の企業社会責任研究センターが、2015年1月に発表した「2014年版中国企業社会責任報告」によると、中国企業のサステナビリティ発行企業数は2014年で1,526社にのぼります。 (出所)中国社会科学院ホームページ 同報告書が詳細分析をした1,007社のレポートのうち、大都市圏である北京・上海・広州地域の企業が全体の40.1%を占めており、大都市の企業がサステナビリティ報告書の発行により積極的であることがわかります。一方で、発行企業のうち60.4%が国有企業、75.3%が上場企業であり、発行企業の業態にはまだまだ偏りがあります。 最も参照されているガイドラインはGRI (出所)中国社会科学院ホームページ 同報告書が分析対象とした1,007社のサステナビリティ報告書のうち、参照したガイドラインを明記しているものは681社(67.6%)あります。そのうち、456社は複数のガイドラインを参照しています。最も参照されているガイドラインはGRI。GRIは欧米や日本でもサステナビリティ報告書で多数参照されており、この傾向は中国でも同じだということがわかります。その他、証券取引所や政府機関が推奨しているガイドラインも用いられています。一方、日本では参照されることが多い、ISO26000や国連グローバルコンパクトの参照は低位に留まっています。 コンテンツは社会貢献とガバナンスが中心 (出所)中国社会科学院ホームページ サステナビリティ報告書に記載されている内容については、70%を超える報告書が「社会貢献」と「ガバナンス」を盛り込んでおり、この2つが中心と言えます。それ以外にも、腐敗防止や従業員対策など社会的な内容がメインとなっており、環境を中心に発展してきた日本の報告書とは大きく異なっています。一方で、最近中国で深刻な課題となっている大気汚染や水汚染に対する政府の関心も高まっており、今後環境に関する報告は増えていきそうです。 定量データの情報開示が進んできている (出所)中国社会科学院ホームページ 中国企業のサステナビリティ報告書で大きく進展してきているのが定量情報の開示です。定量情報の開示によって、当該企業がどのぐらいサステナビリティ分野で改善しているのかがより見えやすくなりました。定量情報の開示には、他の企業に比べて自社がどのぐらい努力しているのかを示す「同業他社比較」と、自社の前年の実績に対して今年の改善度合いを示す「対前年比較」があります。中国企業では、特に外資企業と国有企業で「対前年比較」の定量情報開示が進んでいます。 ネガティブ情報の開示もある程度進んでいる (出所)中国社会科学院ホームページ 従来、サステナビリティ報告書・CSR報告書というと、「企業の良い活動をアピールするレポート」という見方も強くありましたが、中国では社会的責任を果たし、サステナビリティ度合いを向上するための将来課題ともなる、ネガティブ情報の定量開示がある程度進んでいます。特に国有企業では、70%近くの企業が報告書の中で定量的なネガティブ情報を開示しています。 サステナビリティ報告の国際化への意識も高い 中国企業はサステナビリティ報告書において、国際化を意識している動きも見せています。例えば、多言語発行。複数の企業が母国語である中国語の報告書だけでなく、英語を始めたとした多言語で報告書を発行しています。また、海外に事業拠点を置く企業では、報告書の読者を意識し、現地国での状況や影響を意識した話題選びを行っています。中国企業の海外展開が予想される中、このように国際化を意識した報告書の発行は今後急速に増えていく見込みです。 第7回中国企業社会責任サミットで優良企業が表彰 中国社会科学院の企業社会責任研究センターは、「2014年版中国企業社会責任報告」の発行と同時に、北京で「第7回中国企業社会責任サミット」を開催し、優良企業に対して表彰が行われました。受賞企業には、中国を代表する国有企業の他にも、外資企業が数多く選出されました。 ◯特別貢献賞: 中国銀行(Bank of China) ◯特別成就賞: 北汽集団(BAIC Group) ◯ベストグリーン環境保全賞: 倍杰特(Bestter)・豊田中国(Toyota China) ◯ベスト社会貢献模範賞: 三星電子(Samsung Electronics)・海爾(Haier)・默沙東(MSD)・碧生源 ◯ベスト信用力賞: 中国農業銀行(Agricultural Bank of China) ◯ベスト影響力賞: 中国建設銀行(China Construction Bank) ◯ベスト科学技術イノベーション賞: 美的(Midea)・長虹(Changhong) ◯ベスト社会発信賞: 輝瑞(Pfizer)・飛利浦(Philips) ◯ベスト社会貢献創造賞: 宜信(CreditEase)・蘇寧雲商(Suning) ◯2014年中国企業社会責任傑出企業賞:松下(Panasonic)・広州汽車豊田(Toyota)等24社 総括 コーポレート・サステナビリティでは欧米の企業が特に注目されますが、一方でアジア企業も着実に力をつけてきています。なかでも経済大国となった中国では、経済力だけでなくサステナビリティの側面でも中国内外から中国企業に対する大きな期待が向けられています。 イギリスやアメリカ、さらに日本よりもサステナビリティの浸透が後発であった中国では、まだサステナビリティの分野で「リーダー的なポジション」にいるとは言えません。しかしながら、Gダボス会議のGlobal 100で中国大陸から初めてレノボ・グループがランクインしたように、年々存在感は増しています。日本企業にとっても大きな市場である中国。今回優良企業として表彰された企業のリストには、日本のトヨタ自動車やパナソニックも名を連らねました。ますますコーポレート・サステナビリティの側面でも競争が激しくなる中国、日本企業にはさらなる努力が必要となりそうです。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2015/02/03 体系的に学ぶ

【戦略】欧米CSRの最前線 〜Sustainable Brands 2014参加レポート〜

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世界の先進企業のCSR・サステナビリティマネジメント事例が共有されるカンファンレンス、Sustainable Brands。毎年、世界約10都市で開催されており、私も今年10月に開催されたアメリカ・ボストン、11月に開催されたイギリス・ロンドンの会に参加してきました。カンファレンスは通常、2日間にわたる各企業のプレゼンテーションと、別日程1日で催される少人数のワークショップで構成。30社ほどの企業がプレゼンテーションを行い、会場にはコーポレート・サステナビリティ分野の関係者300人ほどが集います。欧米では今、何がホットな話題となっているのか。ボストン、ロンドンの2回分のイベントをダイジェストでご紹介します。 Sustainable Brands New Metrics '14 in Boston Sustainable Brands New Metricsは、サステナビリティ分野の中でも「測定」「データ管理」「定量マネジメント」「レポーティング」というMetrics(尺度・測定)にスポットを当てた特別イベント。今年からマサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン経営大学院のサポートを得てパワーアップしました。 環境・社会分野のデータ収集 欧米先進企業の特徴は、環境・社会に対するアウトプットを本業の成果指標の中に組み込んできているということです。データ収集の点でも様々な進化を遂げてきています。従来、データ計測が進んできた環境分野に対し、遅れが指摘されてきたのがソーシャル分野。ここにきて、NPOやIT企業が中心となりソーシャル分野のデータ測定インフラが整備されつつあります。 フェアトレード認証の民間団体Fair Trade USAは、フェアトレードの実施状況に関する情報を、一次産品の製造現場に従事する生産者自身から収集する体制を構築。フェアトレードの履行を確実にするとともに、生産者の生活の改善度合いを測定する手法を実現しました。オーガニック茶ブランドで全米一の売上を誇るHonest Tea社は、Fair Trade USAからの認証を獲得することで、自社製品のブランドを確実にするとともに、社会に対する正のインパクトをKPIとして測る運用を開始しています。 米国のITスタートアップであるSourceMap社は、製品のサプライチェーンを可視化して把握できるウェブツールをリリース、紛争鉱物などサプライチェーン上の課題に対する状況把握が進むことが期待されています。 オランダと米国に本拠地を置くサステナビリティ・コンサルティング企業大手のPRè Sustainability社は、商品開発の分野で社会問題へのインパクトを測定していくためのガイドライン、"Handbook for Product Social Impact Assessment"を最近リリース。すでに欧米を代表する企業であるAkzoNobel, BASF, BMW, L'Oréal, Marks&Spencer, Philips等が同社のコンサルティングのもとでガイドラインを本業の事業管理に取り入れています。 一方、環境分野のデータ測定も高度化しています。IT世界大手のHP社は、生物多様性の分野で存在感を発揮する国際NGOのConservation Internationalと提携し、ビッグデータマネジメントを環境測定分野に応用するプロジェクトをスタート。プロジェクトでは、世界17ヶ所の熱帯雨林で275種の生物を常時モニタリングするデータ測定インフラを構築し、190万枚の画像や400万種類の環境データを含む合計3テラバイトの常時データ測定を実現。実社会の複雑なデータを統合して分析・予測できるツールとしては世界に類をみない規模と精度だと言います。このプロジェクトはHPが掲げる環境への貢献だけでなく、HP社自身のR&Dとしても価値を発揮しているとのことです。 データの報告 データ報告の分野での注目は、やはり統合報告<IR>、そして米国で浸透しつつあるSASBの動きです。<IR>に関する企業報告では、<IR>ガイドライン作成にも加わったNovo NordiskやSAPがプレゼンテーションを担当し、同社においてはすでに<IR>がCXOレベルの経営サイクルの中心に据えられており、これなしでは経営管理の議論が成立し得ない次元まで来ているという共有がありました。一方、多くの企業が抱える課題、<IR>が曖昧なガイドラインでしかなく何を作ればいいのかわからない、については、「曖昧なものになってしまったことには、議論に参加していた我々にも責任があり、申し訳ないと感じてる。他社への範を示すためにも、弊社内で統合報告のあり方を進化させ、産業界をリードしていく責任を果たしたい。」と反省と抱負を吐露していました。また、財務・環境・社会という膨大なデータをグループ各社から収集するという難題をどう克服しているのかについては、「環境・社会に関するデータは、従来各部署から予算データを報告してもらっていたフローをそのまま踏襲している。報告ツールは、ある部門からはエクセルだったり、ある部門からはERPだったりと、柔軟に対応している。社会・環境の社内報告のために特別なツールを導入してはいない。」という回答でした。 SASBについては、企業だけでなく、金融業界からの参加者からも注目が集まっていました(SASBについては「【レポーティング】SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)を徹底解説」で詳しく紹介しています)。 投資家からの発表セッションもありました。UBSやBloombergからのプレゼンテーションでは、投資家内でESG格付の重要性が年々増加していること、ESG考慮が企業の中長期的な成長と密接にリンクしているという内容が強調されていました。また、ESG格付が様々な団体によって設立されている中、業界全体を束ねる団体であるGISRからは、ESG格付自身の認証制度を整備しているという報告がありました。業界のネットワーク組織であるGISRには、金融業界からはUBS、ドイツ証券、モルガン・スタンレー、アセットマネジメント世界大手のBlackrock、情報大手のBloomberg、コンサルティング業界からは大手のCeresやSustainAbility、デロイト・トーマツ、事業会社からはP&G、マクドナルド、ボッシュ、民間団体からはGRI、SASB、CDP、BSR、Oxfamなどが参加しており、業界を牽引する知が結集しています。 事業へのデータ活用 収集してきたデータを、どのように商品開発に活かすのか。この問いに対する事例も紹介されていました。会場から大きな喝采を集めたのは、ホテル予約の世界大手TripAdvisor社。ホテル業界に対するグリーンホテル化(環境に配慮したホテル経営)への啓蒙という事例です。耳目を集めたポイントは「グリーンホテル化の取組は、当初は大きな事業になるとは考えもしなかった」というプロジェクト開始時点での内部事情です。社内からは「本当に宿泊客はグリーンホテルに泊まりたいと思っているのか?」と懐疑的な見方が噴出、さらに肝心のホテル業界自身からは「我々の経験上、グリーンホテル化は宿泊客増加に寄与しない。無駄な試みだ。」と大反対を受けたと言います。そんな逆風の中、TripAdvisorは、自分たちの企業理念の遂行のため、とりあえずスタートさせてみようという姿勢で、画面上のホテル検索をする際にグリーンホテル度合いで絞り込める機能を搭載します。結果として得られたのは、想定以上にこの絞り込み機能を使う人が多かったというデータ。このデータを武器に、TripAdvisorはホテルに対しグリーンホテルに関する情報開示を要求していきます。今やグリーンホテルの情報開示を渋るホテルから「御社のグリーンホテルへの取組のせいで自社の集客力が減ってきている。どうしてくれるのか?」という非難も浴びる程までに。そのような非難について同社は「だからグリーンホテル化が大事だと言っているのです。情報を開示してください。」と強気を貫いています。このグリーンホテル化を呼びかけられる力強さの背景には、TripAdvisor社の事業モデル自体が関係しているようです。TripAdvisor社のホテル予約サービスは、直接ホテルと契約しているのではなく、ExpediaやHotels.com等ホテル予約サイトのメタ価格比較サイトという形式をとっており、ホテルとは直接の利害関係はありません。ホテルはどの予約サイトを選ぼうとも、結果的にTripAdvisorの影響を受けることとなります。TripAdvisorはこのような自社の「立ち位置」を理解した上で、ホテル業界への強気の啓蒙を推進しているのです。 Sustainable Brands 2014 London CSR経営で注目を集めるイギリス。Sustainable Brandsは西欧地域でのカンファレンス実施国として以前からロンドンを会場とし、参加者はフランス、ドイツなどヨーロッパ各地から集まるイベントになっています。 サステナビリティと事業経営の一体化 ロンドン会場で目立ったのは、サステナビリティやCSRを「ついでにやるもの」ではなく、事業経営そのものに統合している企業事例の報告でした。前回のボストン会場でも報告を行った化学業界世界最大手の独BASFは、環境・社会ファクターをもとに事業や製品のポートフォリオの組換えまでを実施している事例を紹介していました。同社では、自社が定める環境・社会目標に対し製品の到達度を測り、Accelerator, Performer, Transitioner, Challengedの4段階に分類、Acceleratorの割合を増やして、Challengedの割合を減らすことに経営資源を集中させています。環境・社会を経営の中心に据えるBASFの考えの背景には、「社会・環境に寄与する商品ほど顧客に支持されていくはずだ」という根本的な思想があります。経済界の需要を先取りし、自社のブランドとポジショニングを際立たせる尺度として、社会・環境要素を大々的に取り入れているのです。 アルコール飲料世界大手のHeinekenは、同社のセンセーショナルなテレビCMを紹介していました。内容は、ダンスクラブを舞台とした実験について。いまいちなDJのもとではダンスクラブの客が盛り上がらず気晴らしにビールの購入数が増えるのに対し、優秀なDJの日には客がダンスに集中しビールの購入数が少なくて済む。この"Dance more, Drink less"というキャンペーンは、Heinekenにとってどんなメリットがあるのでしょうか。 一見、Heinekenの売上を傷つけかねないこのキャンペーン。なぜHeinekenの上級経営ボードは承認したのでしょうか。プレゼンターの説明は、「このキャンペーンにより短期的に売上は落ちるかもしれない。だが、長期的な視点に立つと、人々の幸福を最重要と考える同社の姿勢を顧客に示すことで、強い企業ブランドを構築できる」というものでした。会場からも"Heinekenはそこまでやるのか"という驚きの眼差しが集まっていました。 サーキュラーエコノミー ロンドンではサーキュラーエコノミーに対する取組事例も豊富に紹介されました。サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、日本語にすると循環型経済。一見すると非営利団体の活動のように見えますが、企業自身の取組です。自社製品の素材の有効活用を進めていこうという経営戦略のことを指し、今年に入り、マッキンゼー・アンド・カンパニー社からも"Moving toward a circular economy"という提唱があり、製造業を中心に注目されている概念です。 サーキュラーエコノミーの推進については、複数の企業から発表がありました。アルミニウム総合メーカー世界大手のNovelisは、同社製品を顧客から回収し再利用していく比率を2015年までに80%に高めることを経営目標として掲げ、顧客からの資源回収及び再利用を活用した製造方式へ転換するための設備投資へと大きく舵を切っているとのこと。また、電子部品大手のPhilipsは、製品の「修理・商品の再利用・素材の再利用」を高めていくだけでなく、さらにサーキュラーエコノミーを徹底するために事業モデルを「製品販売からサービス提供へ」とシフトさせていると言います。具体的な事例としては、ニューヨークの駐車場のケースがあり、電球を売るのではなく、「灯り」というサービスを提供する契約を駐車場と交わすことで、より耐久性が高く廃棄が少ない電球を開発するインセンティブを同社内でも高めているとのことです。 社外からの圧力 サステナビリティ経営が推進される要因には、企業の自助努力だけではなく、社外からの圧力もあります。Greenpeaceは、近年「IT企業のクリーンエネルギー促進」をターゲットとし、FacebookやAmazonなどの電力消費量や再生可能エネルギーによる電力シフトを独自調査し、成績の悪いAmazonに対しネガティブキャンペーンを張っているという報告がありました。同団体は、ネガティブキャンペーンとして動画やパンフレットなどをインターネット上で拡散させ、さらにCEOに対してレターを送って直接改善を迫るということまで手がけています。 気候変動に対する警鐘とガイドライン作成で有名なCDPは、最近は水問題に大きな関心を寄せているようです。CDPは、水汚染によって工場が活動停止に追い込まれた事例などを取り上げ、企業のサプライチェーンにとって水問題が死活問題となっていると断言していました。 今後のSustainable Brands開催 次回以降のSustainable Brandsの開催予定は、来年3月にタイ・バンコク、4月にスペイン・バルセロナ、5月にトルコ・イスタンブール、6月にアメリカ・サンディエゴ、8月にブラジル・リオデジャネイロ、9月にアルゼンチン・ブエノスアイレス、10月にアメリカ・ボストン、12月にマレーシア・イスタンブールが計画されています。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/11/13 体系的に学ぶ

【エネルギー】再生可能エネルギー政策は失敗したのか? 会計検査院報告を読み解く

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会計検査院が過去5年間の再エネ公共事業の成果を監査 10月8日に、会計検査院が「再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について」という報告書を発表しました。これを受け、読売新聞が「故障・苦情…国補助金の再生エネ41設備が休止」というニュース記事をリリース。再生可能エネルギーに懐疑的な人々からは、ツイッターやブロクなどで「言わんこっちゃない。」「もうやめようよ。税金ををドブに捨てるようなもの。」などの声が上がっています。一体何が、書かれていたのか。今回は、会計検査院の報告書の中身をご紹介したいと思います。 ちなみに、会計検査院とは、政府の税金の使い方に関する監査を行う機関。企業に例えるなら監査役による会計監査と似ています。会計検査院の監査は税務調査のように選択式で実施されており、今回は最近注目されている再生可能エネルギー案件も対象となりました。但し、今回の報告において、東日本大震災で被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県は対象外となっています。 読売新聞の記事で設備の休止がクローズアップされたことで、政府による再生可能エネルギー事業そのものが失敗だと非難する声が上がっていますが、本当にそうなのでしょうか。一般的にプロジェクトの成否を判断するには判断軸が必要です。政府による事業にも同様に成否を測る尺度が必要。では、再生可能エネルギー事業における成否の尺度とは何でしょうか。本来的には、政策目標である再生可能エネルギー比率の向上にどれだけ貢献しているか、さらにその政策目標をいかに低コストで実現できたのかが尺度と言えそうです。しかしながら、今回の会計検査院の報告にはこれらのデータは示されていません。替わりに用いられている主要なデータは、?各補助金の金額、?補助金によって建設された再エネ設備の数、計画エネルギー量と実績エネルギー量です。これらからは、補助金の投資効率はわからないものの、補助金によって何が生み出されたのかがわかるようになっています。 国庫投入と固定価格買取制度 国が行っている再生可能エネルギー推進事業には大きく分けて2つあります。1つ目は、補助金を投じて再生可能エネルギー設備そのものを直接的に増やそうというもの。もう一つは、電力会社に再生可能エネルギーによる電力を強制的に固定価格で買い取らせることで、市場原理を用いて再生可能エネルギー設備を増やそうというもの。巷で話題の固定価格買取制度は当然後者です。ちなみに、読売新聞が報じた41設備云々という話は、前者の補助金事業によるものの話であり、固定価格買取制度によって進んだ民間の大規模再生可能エネルギー施設等は全く関係ないということは先にお伝えしておきます。 2009年度から2013年度までの過去5年間で投入された国庫の額を報告書から計算しました。 過去5年間で総額4,763億円が投じられています。また国庫のほとんどは、地方政府による中規模の再生可能エネルギー設備と、住宅用の太陽光発電設備(経済産業省が太陽光発電協会を通じて補助金を給付している事業)に投じられています。また、この国庫によって建設された又は建設が補助された設備は合計約110万。住宅用の太陽光発電普及のための助成を除いた国と地方政府双方によるものだけでも7,836設備あります。 次に容量の内訳を見ていきましょう。発電設備の合計は629万kW、発熱容量は115MJ/hです。629万kWと言われてもピンとこないかもしれません。ちなみに、福島第一原子力発電所の1号機から6号機までの合計が約470万kWですので、福島第一原子力発電所の1.3個分に相当するということです。住宅用を除いた国・地方政府の合計は154万kWで、関西電力の美浜原子力発電所の容量が167万kWですので、これより若干下回る程度です。エネルギー関連にお詳しい方であれば、発電設備容量がそのまま実際の推定発電可能量を表すことではないということはご存知かと思います。例えば、常時容量いっぱい稼働可能な原子力発電所に比べ、風がないと風力発電は発電できませんし、雨天では太陽光発電は発電できません。そこで続いて、発電量の計画値と実績値を見ていきましょう。 (※データは2013年度の数値) 上記は地方政府が国庫を活用して導入した6,628設備のうち、年間計画発電量が設定され、かつ発電実績が把握できる4,407設備の2013年度のデータです。まず、注目すべきは、再生可能発電全体において計画値に対して発電実績が96.4%と悪くない数値であるという点です。何かと槍玉にあげられる太陽光発電においては計画値に対して112.6%とかなり好調です。もうひとつの注目すべき点は発電量が絶対量としてどのぐらい高いのかという点です。地方政府の導入設備の年間発電量は合計約26億kWh。これを6,628設備全体に換算し直すと約41億kWh。震災前の2010年度の福島第一原子力発電所の年間発電量が約330億kWhですので、およそ8分の1の発電量を地方政府が導入した再生可能エネルギー発電で賄っている計算になります(美浜原子力発電所の2010年度年間発電量121億kWhを基点とすると約3分の1です)。この福島第一原子力発電所の1/8という数値のインパクトは捉え方により意見が異なりますが、5年間で地方政府だけで大型原子力発電所の1/8の電力を賄うの発電所を設置したというのは、決して少ない数字ではないと思います。 さらに、上図で示した地方政府の設備設置場所を見てみると興味深いことがわかります。まず、設備のうち太陽光発電が占める割合が極めて高く(95.5%)、中でも、学校、庁舎、ごみ処理施設、上下水道施設、その他の公共施設という既存の政府関連施設の太陽光発電だけで全体の80%を占めています。新たに用地を確保することなく、既存施設のスペース活用だけで、福島第一原子力発電所の1/8を賄えているということはとても優秀だと言えます。 41設備が休止の意味 さて冒頭が示した41設備が休止の意味を見ていきましょう。会計検査院の報告書では、国・地方政府により設置された7,836設備を対象とした調査で、現在41設備が休止していることを明らかにしています。 ここでの注目点は、?7,836設備のうち活動休止はわずか41設備で、7,795設備は稼働している(稼働率99.5%)、?休止41設備のうち故障原因解明中や修理中のものが21と半数を占める、?再稼働予定のない設備はゼロ、ということです。故障や修理については他の発電設備でも避けられないことであり、地方政府導入の設備は基本的に高い稼働率を誇っていると言えます。会計検査院は報告書の中で、休止中の設備について、中央政府から地方政府に対して再稼働か廃止かを迫るよう求めているのも事実ですが、それは一般的な話であり、何も会計検査院が再生可能エネルギー設備に対して烙印を押しているわけではありません。 また、報告書の中では、すでに7設備が廃止されたことも明らかにしていますが、そのうち、やむを得ない故障が2件、事故が2件、建物売却が1件、事業中止が1件、経営破綻が1件であり、事業者の過失や都合による4件については国庫補助金が返金されています。(事業中止の1件については、文部科学省の補助金事業であり、こちらについては返金規定が未整備で返金されないようです。) 固定価格買取制度は国庫とは無関係 ここまで、政府の補助金による直接的な再生可能エネルギーの拡大事業をみてきましたが、では固定価格買取制度についてはどうでしょうか。まず、繰り返しになりますが、固定価格買取制度においては、国庫の負担はありません。電力会社が発電事業者から電力を固定価格で買い取る財源については、電力消費者から賦課金という形で徴集されているからです。 固定価格買取制度については、政府から対象設備として認定を受けた件数(認定件数)に対して、実際に運転を開始した件数(導入件数)が著しく低いということが、以前からメディアなどでも指摘されてきました。 この状況に対して、会計検査院報告書では、 経済産業省は、特段の理由なく認定設備の運転を開始しない事業者がいるとして、24年度中に認定を受けた運転開始前の400kW以上の太陽光発電設備計4,699件(これに係る認定出力1331万kW)について、認定基準等を踏まえて当該設備を設置する場所及び当該設備の仕様がそれぞれ土地の取得若しくは賃貸借又は発注により決定しているかなどについて再エネ法の報告規定に基づき調査し、26年2月にその結果を公表している(図表2-8参照)。この調査結果によれば、設置場所又は仕様のいずれかが未決定のもの、いずれも未決定のもの及び調査に対し未回答等のものがあり、その認定件数は計1,643件(4,699件の34.9%)、これらに係る認定出力は737万kW(1331万kWの55.3%)となっていた。そして、経済産業省によれば、これら1,643件の再エネ発電設備について、順次、行政手続法(平成5年法律第88号)に基づく聴聞を開始し、聴聞においても当該設備の設置場所及び仕様が未決定と認められた場合には、当該設備の認定を取り消すこととしている。 と経済産業省が対策に乗り出すことを明らかにしています。 また、国庫が投入されていないと言えども、国民から賦課金という形で強制的に徴集をしている政策でもあり、無駄のないお金の流れについて注意するよう会計検査院も報告書の中で呼びかけています。 再生可能エネルギーの国庫補助金事業は失敗とは言えない 再生可能エネルギー事業に5年間で投下された4,763億円。この税金投入は意味があった、事業が成功したというためには、税金投入の資金効率性や再生可能エネルギー比率の向上、ひいては国民のエネルギー予算全体の削減への寄与、CO2排出量の削減への寄与など、最終的なアウトカムに関するデータ収集がまだまだ必要です。しかしながら、今回の会計検査院の報告を見る限りにおいては、再生可能エネルギーに対する国庫補助金は無駄遣いであったとか、再生可能エネルギーそのものが失敗しているとは言えないのではないかと思います。特に税金を投下した事業では、主に既存施設のスペースを活用するだけで、大規模原子力発電所の数分の一の規模の発電をすでに実現していますし、さらに住宅用の太陽光発電も急速に増加してきているからです。41設備の休止というのも全体のわずか0.5%であり、全てが再稼働を予定していることを考えると、地方政府の補助金申請過程で審査がある程度はしっかりと機能していた言うことができます。 日本にとってしばらく重要な課題であり続けるエネルギー問題。重要であるからこそ、方向性についての見極めが非常に大切です。すでに取り組まれている予算投下プロジェクトは、謂わば判断の上での試金石。今回は会計検査院の報告書を細かく紹介してきましたが、試金石の判断においては感情的な判断や決め付けは結果の意味を取り違える危険性が大いにあります。大事な問題だからこそ、しっかりとした分析と議論が必要なのではないかと考えています。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/10/19 体系的に学ぶ
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