【環境】COP21パリ会議の論点 〜気候変動枠組み条約の経緯と現状〜

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 今年の12月にパリで開催される予定の第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)。先進国だけでなく、これまで開発途上国とされてきた国々にも温室効果ガス排出量削減を求めるため、京都議定書に取って代わる新たな枠組みとなると、世界中の注目を集めています。この会議の結果次第で世界が将来的にどの程度気候変動を防ぐことができ、また既存の気候変動の影響を軽減できるかが決まるとまで言われています。  1994年に気候変動枠組み条約が発効されて以降、毎年締約国会議(COP)が開催されており、今年で21回目となる気候変動枠組み条約締約国会議。これまでどのようなことが決められてきたのか、そして今回は何がテーマ・論点となるのかご存知でしょうか。今回は気候変動枠組み条約締約国会議のこれまでの変遷、そしてCOP21の位置づけとは何かをご紹介します。 ※COP21の論点のみご覧になりたい方はこちらからジャンプできます。 「気候変動枠組み条約」とは?  まずはそもそも気候変動枠組み条約とは何かについてご説明します。155カ国の署名の下に採択され、1994年に発効となった気候変動枠組み条約は、「地球温暖化防止に向けて大気中の温室効果ガスの濃度を安定させる」ことを目的としており、また2000年までに温室効果ガス排出量を1990年の水準に戻すことを目標(努力目標)として掲げました。  同条約の締約国は 附属書I国(先進国および経済移行国) 附属書II国(先進国) 開発途上国 に分類され、先進国たる日本は附属書I国および附属書II国に該当しています。この附属書締約国に対しては以下の3つの義務が課せられました。 温暖化防止のための政策措置 排出量等に関する報告 開発途上国への資金供与および技術移転  また同条約においては飽くまで「2000年までの目標」を掲げるに留め、2000年以降の目標については翌年以降の通常会合に託されました。気候変動枠組み条約の条文において「締約国会議の通常会合は、締約国会議が別段の決定を行わない限り、毎年開催する」と明言されており、この通常会合が締約国会議(COP)なのです。 気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の変遷および各会合の論点  それでは実際に各会合においてどのようなことが話し合われてきたのかを説明していきます。 COP1 (ベルリン会議) -1995年-  気候変動枠組み条約締約の翌年に開催された第1回締約国会議では、各国が気候変動枠組条約だけでは気候変動問題の解決には不十分であるという認識で一致し、2000年以降の排出量について目標を立てていくことが合意されました。  そして以下の2点 第3回締約国会議(COP3)までに先進国の目標や具体的な取り組みについて取りまとめること 開発途上国には新たな約束を課さないが条約上の既存の約束を再確認し、その履行を促すことが「ベルリン・マンデート」として決定されました。 COP2 (ジュネーブ会議) -1996年-  同会議では、排出量目標の各国一律化や、目標達成に必要な措置などについて話し合われたものの目立った合意には至らず、各国の取組み状況やベルリン・マンデートの進捗確認に留まりました。 COP3 (京都会議) -1997年-  この第3回会議こそが言わずとしれた「京都議定書」が採択された会議です。京都議定書では先進国に対して具体的な温室効果ガス削減目標が定められると共に、開発途上国に対しても活動形態が定められました。また、2008〜2012年を第一約束期間とし、先進国全体の温室効果ガスの合計排出量を1990年比で5%削減することを目標としました。これ以降2004年のCOP10まで京都議定書の詳細に関する議論が続きます。 COP4 (ブエノスアイレス) -1998年-  続く第4回会議では数値目標を達成するための手法として「京都メカニズム」などの運用ルールがCOP6までの決定事項とされ、「ブエノスアイレス行動計画」として採択されました。 COP5 (ボン会議) -1999年-  前回採択されたブエノスアイレス行動計画が翌年2000年に向けたものであるため、同計画に基づき京都メカニズムや遵守問題の詳細について話し合われました。 COP6 (ハーグ会議) -2000年-  COP4にて採択されCOP5でも話し合われきたブエノスアイレス行動計画に則り、本会議での京都メカニズム等に関する運用ルールの決定が目指されましたが、アメリカ・日本などのグループと英国・途上国などの意見対立により会議は中断となってしまいました。 COP6.5 (ボン会議) -2001年7月-  COP6.5以前の同年3月に、自国経済への影響が大きいとしてアメリカが京都議定書からの離脱を表明したため、最大排出国であるアメリカと中国を欠いた形になってしまいます。この後7月に開催されたCOP6.5においてEUなどの歩み寄りによって、アメリカや中国を除きながらも京都メカニズムや森林吸収源、途上国問題について合意(ボン合意)に至ります。 COP7 (マラケシュ会議) -2001年10月-  COP6の三ヶ月後にモロッコのマラケシュにて開かれたCOP7では、マラケシュ合意 が為され、京都メカニズムなど京都議定書の詳細な運用ルールが採択されます。 COP8 (デリー会議) -2002年-  京都議定書に向けたさらなる働きかけが為されました。 COP9 (ミラノ会議) -2003年-  CDMなど京都議定書の積み残しルールについての決定が為されました。 COP10 (ブエノスアイレス会議) -2004年12月-  COP10より1ヶ月前2004年11月にロシアが京都議定書に批准し、京都議定書の発効条件であった 55か国以上の締結 締結した附属書I国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全附属書I国の合計の排出量の55%以上 の両方をついに満たし、翌年2月より京都メカニズムが実質的に動き出すことが決定しました。そんな歓迎ムードの中で開催されたCOP10では、途上国の適応策やポスト京都(京都議定書第一約束期間以降)など次の段階に関する話し合いが持たれました。 COP11&CMP1 (モントリオール会議) -2005年-  前述の通り同年2月より京都議定書が発効したことを受けて、COP(気候変動枠組条約締約国会議)と共にCMP(京都議定書締約国会議)が開催されました。COP11&CMP1では、ポスト京都枠組が第一約束期間後(2013年以降)も切れ目なく続くよう、今後期限を設けずに検討を続けることを合意しました。また気候変動枠組み条約には批准しつつも京都議定書からは離脱しているアメリカとの対話も開始されました。 COP12&CMP2 (ナイロビ会議) -2006年-  COP12ではポスト京都に関する公式交渉を2007年から始めることを決定しました。さらにCMP2では、いかなる国の義務にも繋がらないことを明示した上で2008年に京都議定書の見直しを実施することを決定しました。 COP13&CMP3 (バリ会議) -2007年-  COP13およびCMP3では「バリ・アクションプラン」としてアメリカ、中国、インドなどを含む全ての主要排出国が2013年以降の枠組みの構築作業に参加することが合意されました。また、ポスト京都の枠組みについては2009年の合意に向けて議論されました。 COP14&CMP4 (ポズナニ会議) -2008年-  COP13に引き続き、2009年末の合意に向けた議論が進められました。 COP15&CMP5 (コペンハーゲン会議) -2009年-  第一約束期間に批准していなかったアメリカ、中国、インド含む主要国も2013年以降のポスト京都に参加するとし、各国が自主的に目標を設定・登録して、その達成状況を国際的に相互検証する枠組みの合意に向けて議論が進められましたが、全ての国のコンセンサスを得ることができず、この「コペンハーゲン合意」は留意という形なりました。 COP16&CMP6 (カンクン会議) -2010年-  COP16では世界の平均気温の上昇幅を産業革命前比で2℃未満に抑えるという長期目標を置く「カンクン合意」がアメリカや中国を含む形で正式合意されました。これにより各国が掲げる自主目標がそれぞれの2020年までの行動を規定するようになります。下の図からもアメリカと中国の温室効果ガス排出量が世界の排出総量に占める割合が非常に大きい(2009年時点)ことがわかり、これら大国を含めた合意は着実な前進と言えるでしょう。 (the guardian World carbon dioxide emissions data by country: China speeds ahead of the restより抜粋)  ところが、当初目標とされていたポスト京都の新たな枠組みについての合意はなされず、飽くまでCOP17への繋ぎとしての役割という見方もあります。 COP17&CMP7 (ダーバン会議) -2011年-  COP17では「ダーバン合意」として、気候変動に対し2020年以降全ての国に適用される法的枠組みの構築に向けた道筋をつけ、その枠組みが構築される2020年までの取り組みの基礎となるカンクン合意を実施するための仕組みの整備が為されました。  また、京都議定書の第二約束期間の設定方針などについても合意されましたが、日本、カナダ、ロシアは第二約束期間に参加しないことを表明しました。これにより、日本は第一約束期間である2012年までは京都議定書に則って行動するものの、2013年以降はカンクン合意で掲げた自主目標を基に行動することとなります。 COP18&CMP8 (ドーハ会議) -2012年-  COP18を以って、京都議定書第一約束期間が終了したため、気候変動枠組み条約について成果を上げるためにポスト京都の枠組みに関する議論や検討をしてきた「長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」もその役割を終えました。  また、クリーン開発メカニズム(CDM)については、京都議定書の第二約束期間に参加しない国であっても2013年以降のCERを原始取得することが可能となりましたが、共同実施や国際排出量取引によるクレジットの国際的な獲得・ 移転は、第二約束期間参加国のみに認められることとなりました。 COP19&CMP9 (ワルシャワ会議) -2013年-  COP19では、「全ての締約国が参加する公平で実効性のある新たな法的枠組」を2015年末のCOP21で採択し、2020年に発効させること、そしてそのために可能であれば2015年3月末までにそれぞれの国が掲げた自主削減目標や計画を提示することが「ワルシャワ合意」として決定しました。  ところが現状これら各国が掲げる自主削減目標の総和は、COP16のカンクン合意において示された「世界の平均気温の上昇幅を産業革命前比で2℃未満に抑える」のに充分とは言えません。そこで削減目標の基準年や達成の時期、算出や評価の方法など詳細は、COP20までの決定事項となりました。  その他、開発途上国の目標達成のための資金支援についても定められ、先進国は2014年早期に資金を支援することが取り決められました。 COP20&CMP10 (リマ会議) -2014年-  COP20は2020年以降の新たな国際枠組みを、2015年のCOP21で採択するため、基本事項を決めることを目的としていましたが、各国の目標提出時期や温暖化の影響を軽減する対策などは明らかにされず、曖昧な表現となりました。  また、先進国が隔年報告書に記載する支援についての情報を増やすことや、緑の気候基金(GCF) への初期動員(100億USドル)を歓迎する等が採択されました。 気候変動枠組条約締約国会議におけるパリ会議(COP21)の立ち位置と論点  ここまで見てきた気候変動枠組条約とその締約国会議で話し合われた削減目標を基準年別にまとめると次のようになります。 気候変動枠組み条約      :2000年までの目標 COP1〜2           :2000年以降の目標 COP3〜10 (京都議定書)    :2008〜2012年の目標 COP11〜16 (ポスト京都[1]) :2013〜2020年の目標 COP17〜21 (ポスト京都[2])  :2020年以降の目標  今年12月にパリで開催されるCOP21は当然ポスト京都(2020年以降)における削減目標の達成に向けた話し合いになるわけですが、既に先進各国が離脱した京都議定書はほとんど存在感を失っており、今回主題となるのは先のCOP17において「COP21で採択する」と決めた「全ての締約国が参加する公平で実効性のある新たな法的枠組」についてです。  COP21では各国から提出された自主削減目標に基づき2020年以降の枠組みが確立します。つまり、各国がどの程度前衛的な削減目標を掲げるか次第で世界の将来的な気候変動防止・影響軽減の度合いが決定するというわけです。  そんな今回のパリ会議で主な論点として挙げられるのは次の6つです。 これまで「先進国」と「途上国」といったグルーピングはどうあるべきか 自主目標であってもいかに実効性を担保するか 温暖化の影響を軽減する対策を目標に含めるかどうか 資金支援は誰が誰におこなうか、また資金支援目標額どのように扱われるべきか 「透明性」(報告、評価)の仕組み 排出量削減目標の法的形式  継続成長を保ちたい開発途上国の論理と自国経済のみへの負担を避けたい先進国の論理がぶつかり、大きなうねりを生んでいます。12月のCOP21に向けて各国がどのような削減目標を打ちたて会議に臨むのかに注目が集まります。

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2015/08/07 体系的に学ぶ

【ビジネス・サービス】マイクライメイトジャパン社インタビュー「カーボン・オフセットを通じた企業価値向上」

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 経済活動だけでなく日常生活を行う上でも避けることのできないCO2の排出。気候変動リスク緩和のために動き出している企業が増えてきています。しかしながら、削減コストなどの観点から企業内で削減できる温室効果ガスには限界があるため、海外など自社外での活動への投資を通して温室効果ガス削減に貢献するカーボン・オフセットという考え方が広まってきています。  カーボン・オフセットを行いたい先進国企業・自治体・個人と、CO2を削減・吸収できる途上国・地方のマッチングを行い、世界の温室効果ガス排出量削減に貢献している企業、それがマイクライメイトです。今回はマイクライメイトの日本におけるメンバーファーム、マイクライメイトジャパン代表取締役社長の服部倫康氏にお話を伺ってきました。 服部倫康(はっとり・ともみち) マイクライメイトジャパン代表取締役社長 名古屋大学卒業。アクセンチュア、リクルートエージェントを経て、株式会社エコノス(現マイクライメイトジャパン株式会社)に入社。2013年より同社代表取締役社長に就任。 マイクライメイトジャパンが提供するサービス  スイス連邦工科大学(ETH)の事業からスピンアウトしたNPOを源流とするマイクライメイトジャパンはグローバル・ネットワークを活かして得た最新のノウハウおよび国内のクレジット創出支援の経験を基に体系化した知識を活用して、温暖化対策を実施している様々な規模の企業、自治体、政府機関、個人に対し、クレジット創出から活用までCO2に関わる業務を一気通貫して対応しています。 (ニューラル作成) ゴールドスタンダードの認証を受けたクレジット創出  マイクライメイトはカーボン・オフセットで預かった代金のうち、80%以上の資金を地域に還元することをポリシーに、カーボン・オフセットの取り組みを通じて各プレイヤーがベネフィットを得られる仕組みを構築しており、創出されるカーボン・オフセットクレジットは現地貢献性の高いゴールドスタンダードを中心としています。  ゴールドスタンダードとは、 CDM (クリーン開発メカニズム)や JI (共同実施)プロジェクトの「質」の高さを保証する認証基準です。 この認証は京都議定書の中で導入されたCDMの目的である温室効果ガス削減に寄与すること ホスト国の持続可能な発展に貢献することの2つが確実に達成され本当の意味で環境保全上の利益を生み出すことを支援するために作られています。  ゴールドスタンダードの認証を得るためには、通常のPDD(プロジェクト・デザイン・ドキュメント)に加えて、ゴールド・スタンダード・パスポートという文書を提出し、それを基にした運営機関(OE)による有効性等の審査に通る必要があります。  つまり、マイクライメイトはCDMの目的である「温室効果ガス削減」や「ホスト国の持続可能な発展に貢献する」を達成するプロジェクトの企画立案、もしくは途上国現地から要請されたプロジェクトの事業性を精査し、質の高いクレジットを創出した上でオフセットを行いたい先進国企業とのマッチングができるということです。 プロジェクト運用にかけるコスト 途上国現地でのプロジェクトの開発・運用に関してはマイクライメイトが受け持つため、カーボン・オフセットを行うにあたり、先進国企業側が多く人員を割かなければならないといったような事態にはなりません。 排出権取引ではなくカーボン・オフセットをメインに マイクライメイトジャパンは中国国外の企業として初めて、中国の排出権取引サービス提供の認可がおりた企業でもあります。そのため中国においては排出権取引サービスも提供しているものの、主軸としてはカーボン・オフセット事業に置いているといいます。 カーボン・オフセットの動向  CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の広がりにより、機関投資家からの温室効果ガス排出量や環境戦略の公表要求を受け、企業側もカーボン・オフセットへの関心を高めてきています。また日本においても、カーボン・オフセットを通じた商品PRにより収益が上がることもわかってきており、企業が身を削るような社会貢献的観点ではなくマーケティング的な観点での機能が実証されつつあるといいます。現状、カーボン・オフセット自体の認知度が高くないことが課題であるものの、将来的な市場性に期待が寄せられます。 【企業サイト】マイクライメイトジャパン

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2015/05/27 事例を見る

【環境】排出権市場におけるカーボン・オフセットの在り方とは

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 世界の機関投資家らが集まり、企業に対して気候変動に関する情報開示を求めている国際団体のCDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が影響力を強めており、それに呼応し企業側も対応を迫られています。そういった中、自社の温室効果ガス排出量の削減方法として注目を集めているのがカーボン・オフセットです。 カーボン・オフセットの仕組みについて  自社における温室効果ガス排出量を特定し、その削減に努めても、閾値を超える削減は企業にとってコスト面で大きな負担となってしまいます。そこで「自社内で削減しきれない温室効果ガス」の埋め合わせとして、自社外プロジェクトに取り組み、同量の温室効果ガス削減を達成するのがカーボン・オフセットです。概念イメージを図示すると以下のようになります。 (ニューラル作成)  まず、自社により排出されている温室効果ガス量を算定します。次に自社内で削減できる温室効果ガスについては削減に努めます。その上で、依然自社内での努力だけでは削減が難しい量に関して社外プロジェクトによる埋め合わせを行います。  その際に重要なのが、認証機関から認められたプロジェクトを適切に履行することです。たとえ社外で温室効果ガスを削減しても、その効果が実証されなければ本質的な意味はありません。そのため、プロジェクトの有用性を検証・認証する機関が存在し、それらの機関が定める方法論に則ってプロジェクトを行うことで初めて、「温室効果ガスを削減した」という事実が認められます。 カーボン・オフセットと排出権取引の違い  京都メカニズムで有名になったため排出権取引をご存知の方は少なくありませんが、カーボン・オフセットとは似て非なるものだと理解しなければなりません。なぜならこれらは、そもそも目的が違っているからです。  排出権取引とは、排出権を「金融資産として売買すること」を目的とした市場取引を指します。排出権は世界各国の経済状況や気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の決定等により価格が変動します。  一方、カーボン・オフセットは前述の通り自社内で削減できない排出量を「埋め合わせる」ために行うものです。つまり、自社外のプロジェクト実施により削減・吸収された温室効果ガスは自社の排出量削減のためにのみ使われ、他社に売買することはできません。つまり、カーボン・オフセットとはoffset=相殺の意の通り、自社内の超過排出量と自社外プロジェクトの削減量を相殺する行為であり、相殺した時点で排出権としての権利は失効します。  失効というとネガティブな印象があるかもしれませんが、ここにおける失効とはカーボン・オフセットによりあるプロジェクトの排出権を無効化させ、その分の温室効果ガスを削減完了したものだとみなすことを指します。 様々なクレジット  プロジェクトを通し、削減された温室効果の排出削減・吸収量を「クレジット」と呼びます。そして、そのクレジットは大きく分けて ・京都クレジット ・VER の2種類存在し、検証・認証機関および方法論も違います。 (ニューラル作成) 京都クレジット  京都クレジットは、京都メカニズムで認められた国際排出権取引に利用可能なクレジットです。 ・AAU (各国への排出権の初期割当量) ・RMU (先進国の森林拡大等による吸収量) ・ERU (先進国同士の共同プロジェクトによる削減量) ・CER (途上国におけるCDMプロジェクトによる削減量) の4つがありますが、企業がカーボン・オフセットという手法を取る理由に、「コスト面からの自社内温室効果ガス削減の厳しさ」があることもあり、途上国でのプロジェクト実施により取得できるCERが主に用いられています。  京都メカニズム第二約束期間に参加していない日本は、CERを国際取引市場で売買することはできませんが、上述の通りカーボン・オフセットのために取得したクレジットは自社の排出権の埋め合わせに使われ無効化されるため、CERを取得することはできます。 VER  VERは、国連等の枠組み以外(各国政府や民間)で認められたクレジットの総称です。VERの中にはVCSやVER+等といった海外認証機関により発行されるクレジットと、JPAやJ-VER等日本の認証機関により発行されるクレジットがあります。これらは京都メカニズムで認められたものではないため、京都議定書目標に使うことはできませんが、国内で定められた温対法や低炭素社会実行計画などに利用することができます。 クレジットの購入方法  排出量を削減したい企業が、同量の削減を行うプロジェクトにより発行されたクレジットを購入する方法には相対取引とオフセット・プロバイダーを介した取引の2種類あります。 (ニューラル作成)  取引の大まかな流れは上の図のようになります。相対取引の場合、クレジットの購入を希望する企業(自社の温室効果ガスを削減したい企業)が温室効果ガス削減のプロジェクトを行う現地事業に直接連絡をとり、売買を行います。他方、オフセット・プロバイダーに代行依頼する場合、排出削減プロジェクトの提携先を探すところから代行してもらうことも可能です。  温室効果ガス削減プロジェクトにより認証されたクレジットは、プロジェクト提携先の途上国事業の口座から移転という形での受け取りとなります。そのため、移転させるためにはクレジット管理用の口座を開設する必要があります。開設した口座にクレジットを移転し、それをさらに排出権無効化用の口座へ移転させることで排出権は無効化され、カーボン・オフセットが完了します。この口座開設やクレジットの移転に関してもオフセット・プロバイダーに代行依頼することが可能です。 (ニューラル作成) 仕組みが複雑さを増す排出権市場  京都メカニズム第二次約束期間に入り、カンクン合意が並走するなど足並みの揃わない排出権市場。各国・各地域で基準が異なるクレジットなど、その制度は複雑さを増しています。しかし一方でCDPは影響力をより強めているため、企業側も目を背けることはできません。  現状、カーボン・オフセット自体の認知度が高くないことが課題であるものの、カーボン・オフセットを通じた商品PRにより収益が上がる等、マーケティング的な観点での機能が実証されつつあり、将来的な市場性に期待が寄せられています。国際的な制度変更による排出権の取引価格への影響など様々な投機的リスクを避けるためにも、金融資産としての取引目的ではなく排出権無効化を目的とするカーボン・オフセットは改めて見つめ直されるべき手法なのかもしれません。

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2015/05/26 体系的に学ぶ

【TED】マイケル・サンデル対マイケル・ポーター 〜社会正義とCSVとは〜

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 今回ご紹介するのは、ハーバード大学の教授で著書『これからの正義の話をしよう』でおなじみのマイケル・サンデル氏と、ハーバード・ビジネス・スクールの教授で、CSVの提唱や著書『競争の戦略』で有名なマイケル・ポーター氏の討論動画だ。  それぞれの主張は同日に開催されたTED「Why we shouldn’t trust markets with our civic life」(マイケル・サンデル氏) およびTED「Why business can be good at solving social problems」(マイケル・ポーター氏) で明らかになっており、世界を代表するマイケル同士の対談とあって注目を集めた。 両者の基本的な立場はこうである。 マイケル・サンデル氏  市場原理がいたるところに登場した結果、現代社会はもはや「市場社会」と化してしまっており、日常に現れる全てのものに値段が付く現状を憂慮すべきだという。  現在たとえば、それが裁判の公聴の整理券獲得のためであれ、テーマパークの順番待ちであれ、お金を払うことで自ら順番を待つ必要はなくなっている。刑務所ですらお金を払うことで部屋をアップグレードできるのだ。  そのような市場社会に我々が不安を感じる理由は以下の2つだとしている。 1.資産の有無による不平等が発生するから 2.市場原理を導入することで物事の本質が失われるから  まず(1)について、お金で手に入るものが贅沢品に限られれば不平等はさして問題でないものの、市場社会においてそれは保険や教育など豊かな生活に不可欠なものにまで顕在化してきている。すべてが自由市場化することは、文字通りお金がモノを言う社会を指し、市民生活に不安感を与えているという。  そして(2)とは、すべてのものに値段がつくことで、それぞれの事柄が持つ意味合いを変えかねないということである。具体的には、成績を向上させることを意図して、子供に「本を一冊読んだら$2」といったモチベーションを与えた場合、目的は成績向上ではなくお金になってしまい、本を読むという行為を完遂するために薄い本を読み出し、結果的に成績は伸びないという。つまり、このようにお金が介在することにより本来的な意味が失われてしまうということが日常生活に現れることを危惧しているというわけだ。 マイケル・ポーター氏  一方、ポーター氏はNGOや慈善活動が社会に与えることのできる規模の小ささに焦点を当て、資本を基に大規模改善を図ることのできる経済主体としての企業の在り方を提唱している。  現在、我々は温暖化や大気汚染など様々な社会問題を抱えている。それに対してNGOらが取り組んでいるが資本規模的に大きな成果を出せずにいるという。そこで同氏が着目したのが、企業の事業活動を通した社会問題解決である。今まで社会問題への取り組みというのは企業にとってコストであり、利益とトレード・オフの関係になる慈善活動としての位置づけに甘んじてきた。しかし、実はこれはトレード・オフでないだけでなく、社会問題に真剣に向き合うことで利益に繋がることがわかってきているという。たとえば労働環境を整え事故発生率を抑えるためにかけたコストは事故による補償や悪評といったコストより低く、これにより「劣悪な労働環境」という問題を解決するといった例がこれに当てはまる。  同氏はこれをCSVと呼び身を切る社会貢献とは別物として紹介している。 (詳細は『【戦略】CSRからCSVへ? 〜CSV、CSR、サステナビリティ、CR、SRの違い〜』へ) 経済的・社会的価値の創造主体としての“ビジネス”を打ちたて、NGOや政府と協力することこそ、これからの社会問題に対峙に必要だという。 両者の問題認識  市場経済の浸食を危惧するサンデル氏と、市場の可能性を標榜するポーター氏。一見すると両者は対立するように見えるが、実はそうではない。  本動画でサンデル氏が言明しているように、同氏が危惧しているのは市場原理が日常生活にまで入り込み、自由市場の下にすべての事柄に値段がつけられる社会であり、市場経済そのものはむしろ【ツール】として利用するべきだとしている。これはポーターが提唱するビジネスによる経済的・社会的価値創造を否定しているわけではない。  もちろんポーター氏が主張する“ビジネス”による社会問題解決とは、市場経済を利用したものであるため、それが市場社会にまで及んでいる場合はサンデル氏に非難されるべき対象になるといえよう。しかし、今回ポーター氏が提唱したCSVとは「日常のすべてのものに値段が付けられた社会」を条件に行われることではなく、社会問題を解決する【ツール】として企業活動という市場経済を利用しているに過ぎない。例えば、サンデル氏は、文化的・精神的なものにまで市場経済という得体のしれないものが一方的に「価格付け」することを大きく危惧している様子があるが、ポーター氏のCSVのもとでは、価格付けとはむしろステークホルダーとの関係性を通じて形成され、その中には社会的価値や環境的価値が含まれていくだけでなく、市民・地域社会の価値観もその中に包摂されていく。企業活動がモチベーションとするコストメリットとは、そのような多様な価値観の中で形成された「価格」によって行われていくため、サンデル氏の懸念は、ポーター氏のアイデアによってむしろ解消していくとも言える。  今回、両者の対談を経て、行き過ぎた市場経済は市民生活を苦しめ得るが、市場経済は上手く使うことで現代社会が抱える問題の解決に寄与し、市民生活の豊かさにも貢献することが改めて明らかになった。「正義とは何か」で著名なサンデル氏との対話によって、CSVの哲学もより磨き上げられたのはないだろうか。

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2015/03/18 事例を見る

【アメリカ】企業の気候変動に向けた取り組みを後押しする投資信託が増加

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世界のサステナビリティ業界を代表するアドボカシーNGOのCeresは11月13日、米国の投資信託企業らが自身のポートフォリオに内在する気候変動リスクに対処するために、企業に対してより積極的な株主行動を示すようになってきているとの調査結果を発表した。 Ceresの調査結果によると、この11年間で投資信託らによる企業の気候変動対策に関する株主決議を支持する動きが年々活発化しており、Morgan Stanleyを筆頭に GMO、John Hancock、Delaware、Oppenheimerなど11の投資信託で昨年より顕著な伸びを示しているという。また、米国の42の投資信託のうち13が50%以上、うち6つは80%以上の気候変動関連の株主決議を支持しており、昨年に引き続き2014年も100%の決議を支持しているDeutsche Asset Management(DWS Funds)が業界の動きをリードしている。 一方で、Vanguardを含む8つの投資会社が気候変動リスクに関する決議を支持していないという点も指摘されており、2兆4000億ドル以上の巨額資産を運用しているVanguardがこの流れに加われば、他の大型投資信託にも影響を及ぼし、未だに化石燃料と深い関わりを持っている企業に対しても気候変動リスク対応に向けた強いメッセージを発信することができるとしている。 Ceresで投資家担当ディレクターを務めるRob Berridge氏は「自社のポートフォリオを気候変動のインパクトから守る上で明らかかつ簡単な最初の一歩は、株主決議により企業に対して気候変動のリスクを開示、軽減するように求めることだ。未だいくつかの例外はあるものの、投資信託業界全体がその方向に向かっているのは喜ばしいことだ」と語る。 またCeresの代表を務めるMindy Lubber氏は「気候変動は今や世界経済への最大の脅威の一つであり、他の問題より最優先で議論しないといけない」と警鐘を鳴らす。同じく本調査に加わったFond VotesのJackie Cook氏は「これらの株主決議の増加は、温室効果ガスが企業にもたらすコストに対する投資家の懸念が高まっていることを示している。現時点では有価証券情報には温室効果ガスの削減量や削減目標に関する数的情報はほとんど又は全く含まれておらず、削減に関する規制や気候変動の物理的なインパクトがどの程度将来のビジネスに影響をもたらすかも不透明ではあるものの、投資信託は将来リスクに備えて決議をしていく」と語る。 なお、Ceresによると、温室効果ガス排出量削減に向けた投資信託からの企業に対する情報開示要求事項としては主に下記の3つが挙げられるという。 温室効果ガス削減の数値目標を含むサステナビリティレポートを用意すること。 メタン排出削減の数値目標の設定、開示、測定に向けたアクションと計画、方針を評価したレポートを用意すること。 温室効果ガス排出量の削減に向けた具体的な数値目標を導入すること。 米国では投資家からの圧力によって企業はますます気候変動に対する積極的な情報開示とリスク管理が求められるようになりつつある。 【リリース原文】Analysis Shows Growing Support from U.S. Mutual Funds for Action on Climate Change Risks 【団体サイト】Ceres

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【アメリカ】米国環境保護庁、発電所からの大規模な温室効果ガス排出削減計画を発表

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EPA(米国環境保護庁)は6月2日、既存の化石燃料発電所から生じる二酸化炭素排出量の大幅な削減を目的とする気候変動対策案"Clean Power Plan"を公表した。 化石燃料発電所から排出される温室効果ガスは米国における排出量全体の約3分の1を占めており、国内最大の二酸化炭素排出源となっている。現状、ヒ素や水銀、二酸化硫黄、窒素酸化物など一部の大気汚染物質には既に排出規制が設けられているが、二酸化炭素の排出量に関する国としての規制は存在しておらず、発電所の二酸化炭素の削減を目的とする計画は今回が初めてとなる。 EPA長官のGina MaCarthy氏は、「二酸化炭素排出による気候変動は我々の健康や経済、生活スタイルにとって大きなリスクとなっている。EPAは、米国における発電所からの排出量削減を目指す"Clean Power Plan"の提案により、オバマ大統領が掲げる"Climate Action Plan"の重要な一核を担うことになる。」と述べた。 同氏はまた、「クリーンエネルギーの推進とエネルギー消費の削減を通じて、この計画は空気を綺麗にし、気候変動ペースを緩和し、次世代に安全で健康な将来を残すことができるだろう。我々は健全な経済と健全な環境を二者択一する必要はない。我々の行動は米国に競争力ををもたらし、イノベーションを促進し、新たな雇用を作り出すことになる。」と付け加えた。 今回の"Clean Power Plan"はオバマ大統領が昨年夏に発表した"Climate Action Plan"の中で定められている段階的な目標に従っており、EPAによれば、具体的には2030年までの目標として下記を定めている。 2005年と比較して化石燃料発電所からの二酸化炭素排出量を30%削減する。これは米国内における1年間の家庭用電力から出る二酸化炭素排出量の半分以上に相当する。 窒素酸化物および二酸化硫黄を25%以上削減する。 930億ドルを気候変動対策、公衆衛生に投じ、若年死亡者数を6,600人、小児喘息数を150,000人、失業者および失学者数を490,000人減らす。 エネルギー効率を高め、電力システム需要を抑制することで、電力料金を約8%下げる。 このCean Power Planは各州と連邦政府の協力のもと進められる予定で、提供されたガイドラインに沿ってそれぞれの州が二酸化炭素排出量削減に向けた具体的な目標を定めることになる。今回の計画の特徴は、各州に対して個別の事情に応じて柔軟に計画を策定する裁量権が与えられている点だ。 再生可能エネルギーなどの電力源の構成比率、エネルギーの効率化、電力需要の抑制、キャップ・アンド・トレードプログラムなどを含めて各州が自身のニーズに応じて最適な計画を策定することが可能で、一つの州が単独で計画を策定することも、複数の州が協力して共同で計画を策定することも認められている。 また、今回の計画は各州が計画をEPAに提出するまでのタイムラインにも柔軟性が設けられており、2016年6月が提出の期限となっているが、計画策定により多くの時間が必要な場合、最終計画の提出までに2段階のプロセスを踏むオプションも用意されている。 米国では現在のところ、47の州が電力需要に応じてエネルギー効率性を高める設備を有しており、38の州が再生可能エネルギーに関する基準や目標を持っている。更に10の州は温室効果ガスに関する排出権取引プログラムを有しているが、今回の計画により今後これらの数字がどのように変化していくのかも見どころだ。 一方で、今回のEPAの発表により、今後米国内で規制がもたらす経済面への悪影響も含めて様々な議論が巻き起こることも予想される。特に化石燃料発電事業者や業界団体、発電所を多数保有する州の政治家など、今回の規制による経済コストの増加を懸念する人々からの反発により、州によっては予定通りに計画策定が進まないところも出てきそうだ。 【参考サイト】US Environmental Protection Agency

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【アメリカ】Adobe、環境負荷を軽減する世界一のテクノロジー企業に選出

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アメリカの大手アプリケーション開発メーカーAdobeは、企業の環境インパクトを分析するリサーチ企業Trucostが選出するNatural Efficiency Capital Leaderに選ばれた。Natural Efficiency Capital Leaderとは、Trucostが4600以上の上場企業を評価し、19業種の中から環境負荷の軽減を推進している34企業を選定するもの。地球の自然資源の利用量を削減しながら、収益を成長させることに成功している企業を選出している。TrucostがNatural Efficiency Capital Leaderを発表する目的は、作成したNatural Capital Leaders Indexが、事業経営と環境負荷削減を両立できているかどうかを測る標準尺度として活用されるようにすること。AdobeはすでにNatural Capital Leaders Indexの質を認めている。選出された34社の中には、Xerox, Ford, Verizonなどアメリカ企業が多数を占めている。日本からは塩野義製薬、NTT都市開発、りそなホールディングスの3社が選ばれた。インド、インドネシア、トルコなど新興国の会社も含まれている。【企業サイト】Adobe【表彰サイト】Natural Efficiency Capital Leader

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2014/03/25 最新ニュース
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