【国際】RepRisk、移民労働に関するリスクレポート発表。食品、建設、運輸業界で問題多発

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 ESGリスク情報提供世界大手スイスRepRiskは8月30日、移民労働者に関する特別リスクレポートを発表した。特に、食品、建設、運輸業界で発生した過去2年間のできごとに焦点を当てた。RepRiskは欧米の機関投資家にクライアントが多い。  今回の調査では、人工知能(AI)と人による分析の双方を活用し、16言語のビッグデータを収集。分析を実施した。国連機関の国際移住機関(IOM)は7月13日、「安全で秩序ある正規移民のためのグローバルコンパクト(Global Compact on Refugees and a Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration)」を発行。その中で、移民労働者の採用や虐待や搾取からの保護について規定している。RepRiskは、2015年以降、移民労働者問題を重要なESGリスクの一つとして取り上げている。  国際労働機関(ILO)の2013年の調査によると、世界の移民労働者の数は約1億5,000万人。最も移民労働と関連している国は、米国、ロシア、タイ、ブラジル、カタールの順。最も移民労働と関連している企業・団体は、国際サッカー連盟(FIFA)、ウォルマート、Thammakaset Farm(タイ)、Sarbanand Farms(米国)、Betagro Group、Industria de Diseno Textil、マークス&スペンサー。FIFAは、ワールドカップ会場建設に移民労働者が大きく関わっている。ここに名前が出ている国や企業は、移民労働と関わりがあるというだけで、問題に関わっているということではない。  米国やブラジルでは過去2年間、精肉加工企業での移民労働者の違法労働や搾取が摘発された。タイでも食品加工企業での移民労働者虐待が問題となった。イタリアでも農場で10万人以上が奴隷労働を強いられていると報告されている。FIFAロシア大会では、会場建設現場で移民労働者の事故死が多発し、21人が死亡。米サイパンでは、ホテル建設会社で、移民労働者に裏で賃金返還を要求する慣行が発生していた。運輸業界では、移民労働者によるトラック運転手での劣悪労働問題が複数国で報じられた。 【参照ページ】RepRisk Special Report Migrant Labor

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【国際】マイクロソフト、PoA型イーサリウムのブロックチェーン・ツールをAzureに搭載

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 IT世界大手米マイクロソフトは8月7日、同社のクラウド・プラットフォーム「Azure」に、「Proof-of-Authority(PoA)」型のブロックチェーン・ツール「Ethereum Proof-of-Authority on Azure」を追加すると発表した。「Proof-of-Authority」は「権威による証明」と呼ばれ、ブロックチチェーンの特徴的な概念の一つであるマイニングを必要としない。ブロックチェーン信奉者の間では、Proof-of-Authorityは「まがいもの」として忌避する向きもあるが、スマートコントラクトとして活用したい大企業にはProof-of-Authorityは普及すると考えられる。  マイクロソフトはすでにAzure上に、不特定多数の匿名の参加者がマイニングにより合意形成を行うパブリック型の「Proof-of-Work(PoW)」(仕事量による証明)型のイーサリウム・ツールを提供している。マイニングを行う手法は仮想通貨でもお馴染みで、中央集権によるコントロールを不要にする仕組みが脚光を浴びてきた。一方、Proof-of-Authorityはマイニングを必要とせず、中央集権的な管理者が参加者を管理し、信頼された参加者のみがブロックを形成できるプライベートなもの。これを用いることで、分散型ではないが、ブロックチェーンのもう一つの特徴である透明性の高いシステムを可能にする。  スマートコントラクトとしてブロックチェーンを活用する取組は、物流サプライチェーン管理や既存の金融決済の中で進んできている。多くのものは、管理者を明確にしたままプライベートなブロックチェーンを実現しようというもので、必ずしもマイニングという考え方がフィットしていない。今回、Proof-of-Authority型のイーサリウムがAzure上に登場したことで、サプライチェーン管理等でのブロックチェーン活用が大きく進みそうだ。 【参照ページ】Ethereum Proof-of-Authority on Azure

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【台湾】三井物産、洋上風力発電所の権益獲得。設備容量1044MW。2025年の商業運転開始目指す

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 三井物産は8月3日、台湾で洋上風力発電所「海龍洋上風力発電所」を開発中のYushan Energy Taiwanの株式50%を、Enterprize Energyグループ傘下のシンガポールYushan Energyから取得することで合意したと発表した。8月2日に出資を完了した。  Yushan Energy TaiwanはカナダのNorthland Powerと共同で海龍洋上風力発電所を開発中で、同発電所の権益40%を保有している。三井物産はYushan Energy Taiwanの株式50%を取得したことで、同案件の権益20%を保有することになる。海龍洋上風力発電所は、台湾沖30kmから50kmの海域で設備容量合計1,044MW。2021年以降に予定している最終投資判断を経て、2025年までに商業運転を開始し、発電電力は全量、20年間台湾電力公司に売電する。総事業費規模は45億から50億米ドル程度と見られている。  台湾政府は、2025年までに再生可能エネルギーによる発電割合を20%に引き上げることを目指しており、2024年までに3.8GW、2025年以降に追加で1.7GW、計5.5GWの洋上風力発電を導入する計画。Yushan Energy TaiwanとNorthland Powerは4月に台湾政府から設備容量300MWの洋上風力発電shの開発権を得たが、その後6月さらに232MWと512MWの2つのプロジェクトの開発権も入札で獲得。3つを一体化させ、海龍洋上風力発電所を建設する。 【参考】【台湾】台湾最大の320MW太陽光発電所が運転開始。2025年までに太陽光で20GW目指す(2018年7月21日)  三井物産の発電事業における再生可能エネルギーの比率を高まると表明している。 【参照ページ】台湾で洋上風力発電事業開発を行うYushan Energy Taiwan社への出資

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【アメリカ】UPS、EVトラック・ベンチャーThor Trucksと中型トラックの走行実験を共同実施

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 輸送世界大手米UPSは7月31日、ロサンゼルスのEVトラック・スタートアップ企業Thor Trucksと協働し、クラス6(8,846–11,793kg)のEVトラックの開発と走行実験を行うと発表した。今年後半には実運用される予定。  Thor TrucksのEVトラックは、一回の充電で約160km走行可能。同社が設計・開発したバッテリーは軽量で耐久性が高く、長距離の運転が可能。UPSとThor Trurkcは、6ヶ月をかけ、路上走行、耐久試験、バッテリー容量試験等様々な項目をテストする。  UPSは、持続可能な事業運営を目指し、代替燃料車や先進技術を用いた自動車を積極的に採用しようとしており、特に電気自動車に注力している。これまでにも、ARRIVAL、ダイムラー、テスラ、Workhorse等のEV関連企業と「Rolling Laboratory」アプローチで協業し、9,300台もの低排出自動車を走らせてきた。Thor Trucksにとって、UPSが初のパートナーとなる。 【参照ページ】UPS To Test New Electric Vehicle

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【国際】IEEFA、丸紅の石炭火力発電事業は「有害」と指摘。事業の将来性に大きな疑問符

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 米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は7月30日、丸紅の石炭火力発電事業の将来性に警鐘を鳴らす報告書を英語で発表した。丸紅が建設を進める石炭火力発電プロジェクトが世界的なトレンドの変化に大きな影響を受ける一方、同社の再生可能エネルギー事業については高く評価した。国際的なエネルギー研究機関が丸紅1社をターゲットとしたレポートを書くのは珍しく、同社への関心が非常に高いことが伺える。  同報告書によると、現在丸紅が計画中の石炭火力発電所新設プロジェクトは設備容量が合計13.6GW。事業者として世界第11位の規模。一方、日本の大手他社では住友共同電力7.5GW、電源開発(J-Power)4.6GW、東京電力4.6GW、中国電力4.2GW、三菱商事1GW、三井物産ほぼゼロで、丸紅が突出して多いことがわかる。現在丸紅は、日本、モンゴル、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシア、エジプト、南アフリカでプロジェクトを進めており、ミャンマー、ボツワナは計画中止に追い込まれた。  IEEFAは、丸紅が現在および潜在的な投資家から大きな評判リスクに直面していると指摘。地元NGOからも強い反発に遭っていると言及した。EEFAのアナリストであるサイモン・ニコラス氏は、「この流れに逆行することは、愚かであるだけでなく、投資家、市民社会、政府の目にはますます有害でもある」と警鐘を鳴らした。  一方、丸紅の再生可能エネルギー市場での実績については高く評価。同社が欧州市場で築いた経験は、台湾や日本の洋上風力発電市場でも活かせると強調。同社が地盤を築きつつある中東での太陽光発電事業も可能性が大きいとした。  丸紅に石炭火力発電事業はますます逆風にさらされつつある。 【参照ページ】IEEFA report: Marubeni’s coal commitments are creating ‘needless reputational and financial risk’ 【レポート】Marubeni’s Coal Problem

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【アメリカ】アメリカン航空、プラスチック製ストローとマドラー使用を今年中に廃止

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 アメリカン航空は7月10日、機内と空港ラウンジで提供するストロー等をプラスチック製から環境に配慮した素材に切り替える方針を発表した。  まず7月頃から、空港ラウンジで提供するストローを生分解可能素材に、マドラーも木製や竹製のものに切り替える。さらにラウンジで使用する食器類も環境に配慮した素材に今後切り替える予定。  11月からは、機内でのストローやマドラーの転換を開始する。これらの取り組みにより、アメリカン航空は年間32tのプラスチックごみを削減できると試算する。  アメリカン航空が機内の環境問題に取り組み始めたのは1989年。機内でのリサイクルプログラムを航空業界でいち早く開始。アルミニウムをリサイクルした収益を添乗員の相互補助を目的とするチャリティー団体「The Wings Foundation」に寄付した。また、2015年には機内のプラスチックコップを紙コップに切り替えた。 【参照ページ】American Airlines Lays Down the Straw

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【国際】ICAO理事会、国際線の二酸化炭素排出量算出・報告ルールを決定。2019年から導入

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 国際民間航空機関(ICAO)は6月27日、第214回理事会を開催し、国際民間航空条約(シカゴ条約)第16附属書第4巻の初版を採択したと発表した。2019年1月から民間の国際便からの二酸化炭素排出量情報を収集するための測定、報告、検証(MRV)について、詳細フレームワークに関する内容が規定された。  国際便からの二酸化炭素排出量測定は、どの国に排出量を配分するかの考え方が未整備だったため、国際的に排出量が大いにもかかわらず、これまで各国の排出量算出から例外的に除外扱いされてきた。ICAOは2016年の総会で、国際線のカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)のための国際基準を策定することで、ICAO加盟192ヶ国が歴史的な合意を締結。民間国際線分野の二酸化炭素排出量算出、報告が国際的に決まった。それから2年未満で、今回フレームワーク策定に漕ぎ着けた。 【参考】【国際】ICAO総会、国際線への温室効果ガス排出削減制度で画期的な合意。排出権購入を義務化(2016年10月24日)  今回の理事会では同時に、小規模航空会社向けに、二酸化炭素排出量の予測と報告を簡易に行えるツール「CERT」の2018年改訂版も承認。また、ICAOでの二酸化炭素排出量の報告管理簿となる「CORSIA Central Registry(CCR)」の詳細仕様に関しても合意に至った。これにより、航空会社による国際線からの二酸化炭素排出量算出・報告手法が基本的に固まったことになる。同フレームワークの実効性は、ドイツ政府他7カ国と航空会社10社が参加する形ですでに検証済だという。  ICAOは今後、カーボンオフセット市場制度の設計を本格化する。ICAOの基本フレームワークは、ベースラインからプロジェクト等による各航空会社の二酸化炭素排出削減分をカーボンオフセットで販売できるようにするというもの。この削減分は「Emission Units」と呼ばれている。今後ICAO理事会は、このEmission Units認定の適格性基準の策定、航空燃料のうちどの燃料種が適格性を持つとするかの定義決定、カーボンオフセット市場の運営ルール等の検討を進めていく。 【参照ページ】ICAO Council reaches landmark decision on aviation emissions offsetting

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【オランダ】公的年金ABP、韓国総合商社大手ポスコ大宇からの投資引揚げ決定。パーム油森林破壊

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 オランダ公務員年金基金ABPは6月22日、韓国総合商社大手ポスコ大宇の保有全株式を売却したと発表した。同社子会社がパーム油生産のため森林伐採を進めていたため。ABPは2018年3月末時点でポスコ大宇株式を約30万ユーロ(約3,900万円)分保有していた。  ポスコ大宇は、旧社名が大宇インターナショナル。ポスコ大宇は2017年、同社子会社を通じてインドネシア領ニューギニア島で森林破壊に関与し、さらに土地所有者との間でもトラブルがあったことが報じられており、ABPはそれ以降、同社とのエンゲージメントを実施してきた。しかし、ABPの提案に対し、同社が迅速な対応を示す気配を見せなかったため、投資引揚げを決定した。 【参照ページ】ABP verkoopt aandelen palmoliebedrijf

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【日本】三菱商事、ペルーの銅鉱山権益を追加獲得。豪石炭炭鉱権益は売却。資源転換進む

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 三菱商事は6月15日、アングロアメリカン(AA)と推進するペルーのケジャベコ銅鉱山の権益を同社から21.9%追加取得することで合意した。これにより三菱商事の持ち分は40%に上がる。銅はバッテリーの原材料として活用される物質の一つで、今後需要が増えると言われる資源。三菱商事は銅を中核資源の一つと位置付けている。  今回取得するケジャベコ銅鉱山は約750万tの埋蔵量が見込まれる世界最大級の未開発鉱山。三菱商事は2012年にケジャベコ銅鉱山新規開発プロジェクトを推進するアングロアメリカンケジャベコ(AAQSA)の株式18.1%を取得。今回追加で21.9%を5億米ドルで取得する。生産開始は2022を予定。年産量は約30万t。鉱山としての寿命は30年と試算されている。  一方で三菱商事は炭鉱権益の売却を進めている。3月7日には、同社完全子会社の三菱デベロップメントが保有する豪ニューサウスウェールズ州ワークワース炭鉱の権益28.9%を、豪石炭生産大手ヤンコール・オーストラリアに売却完了。5月4日には、三菱デベロップメントが保有する豪ニューサウスウェールズ州ハンターバレーオペレーションズ炭鉱の権益32.4%を、資源大手グレンコアに売却完了。5月30日には、三菱デベロップメントが保有する豪クイーンズランド州BMA原料炭事業グレゴリー・クライナム炭鉱の権益50%を、1億豪ドル(約82億円)で双日に売却することで合意した。同鉱山は現在操業を停止しており、残りの権益を保有するBHPも持ち分を売却する。 【参照ページ】ペルー共和国ケジャベコ銅鉱山の権益追加取得について 【参照ページ】豪州ニューサウスウェールズ州ワークワース炭鉱の売却完了 【参照ページ】豪州ニューサウスウェールズ州ハンターバレーオペレーションズ炭鉱の売却完了 【参照ページ】豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業グレゴリー・クライナム炭鉱の売却

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【インタビュー】日本郵船、海運業界世界初のグリーンボンド発行事例 〜苦労と気づき〜

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 2018年もグリーンボンド市場は大きな成長が予想される中、グリーンボンド発行で世界初となる新たな事例が日本から生まれようとしています。海運国内最大手の日本郵船は4月17日、償還期間5年のグリーンボンドを100億円発行すると発表しました。海運事業者のグリーンボンド発行はまだ世界に例がなく、成立すれば海運業界として世界初となります。主幹事は三菱UFJモルガン・スタンレー証券と野村證券。グリーンボンド・ストラクチャリング・エージェントは三菱UFJモルガン・スタンレー証券。資金使途は、日本郵船が策定した環境対応船の技術ロードマップで予定する4案件の投資。環境省も、同グリーンボンドを一般事業会社として初のグリーンボンド発行モデル創出事業に係るモデル発行事例に選定しており、グリーンボンドの可能性を大きく広げると注目されています。  これまで、海運事業者からグリーンボンドが発行されなかった理由の一つは、海運分野のグリーンボンド調達資金使途の適格要件が確立されていなかったことと言われています。実際、各業界での適格要件のデファクトスタンダードを策定している気候債券イニシアチブ(CBI)も海運業界に関する基準は未策定。このような難しい状況の中で、日本郵船はどのように発行に漕ぎつけつつあるのか。同社の財務グループの白根佑一氏、赤木倫子氏に話を伺いました。 (左)白根佑一 財務グループ統轄チーム課長代理 (右)赤木倫子 財務グループ統轄チーム員 最初に今回のグリーンボンドの概要を教えて下さい 白根佑一氏  当社は、毎年200億円から300億円の社債を起債していますが、そのうち100億円をグリーンボンドとして発行することとしました。グリーンボンドの使途は、当社が策定した環境対応船の技術ロードマップで予定する投資です。技術ロードマップでは、2030年に2008年比で二酸化炭素排出量を69%削減できるコンセプトシップ「NYK SUPER ECO SHIP 2030」を掲げ、燃料転換、環境負荷低減、船型改造、ビックデータ等を活用した運航最適化、自然エネルギー利用、空気潤滑法導入等の様々な面で新たな技術開発を行うとしています。 (出所)日本郵船資料 グリーンボンド発行を検討するに当たって経緯を教えて下さい 白根氏  当社は今年3月、新たな 5カ年の中期経営計画”Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、その中で「デジタライゼーション」と「グリーン」の2つを大きな柱として位置づけました。また、環境規制の強化や低炭素社会へのシフトが求められる今、社長の内藤から1月の商事始め式において、グリーンビジネスを実現していくという強いトップメッセージがありました。  そのした中、財務グループとして何ができるか考えた際、グリーンボンド発行というアイデアが出てきました。 グリーンボンド発行の資金使途を詳しくお聞かせ下さい 白根氏  資金使途は、LNG燃料船、LNG燃料供給船、バラスト水処理装置、スクラバー装置の4案件を予定しています。まず、LNG船ですが、燃料を重油からLNGに変えることで、大気汚染物質である硫黄酸化物(SOx)を約100%、PMを100%、窒素化合物(NOx)を最大86%削減できます。また気候変動の原因物質である二酸化炭素も30%削減できます。船舶は概ね15年から20年を耐用年数として建造されますので、環境負荷削減効果は長期間にわたり大きなインパクトがあります。現在、世界の船舶全体に占めるLNG燃料船の割合は0.1%しかありませんが、当社は2015年に国内初のLNG燃料タグボートを竣工。2016年9月には世界初のLNG燃料自動車専用船が竣工し、現在まで2隻が竣工しております。  2017年2月には、世界初のLNG燃料供給船「ENGIE ZEEBRUGGE」が竣工しました。LNG燃料供給船がなければ、岸壁でLNGをLNG燃料船に供給しなくはいけませんが、燃料供給船があれば沿岸部でも供給が可能となります。LNG燃料供給船はLNG燃料船そのものの普及を大きく左右する要素と言えます。  バラスト水処理装置(船舶がバランスを保持する海水であり、通常荷揚港で船底のタンクに注水し、荷積港で排出されるバラスト水とともに運ばれた海洋生物を処理し、排水による生態系破壊を防止するシステム)は、国際的な規制もあり一層注目されています。スクラバーは、SOxを含むエンジンから排出されるガスに海水を噴霧し、硫黄分を除去する装置で、大気汚染を防止できます。  当社は中期経営計画の中で、海上輸送での輸送単位(重量t×運航km)当たりの原単位二酸化炭素排出量の削減について、2030年度までに2015年比で30%減、2050年度までに50%減という目標を掲げ、サプライチェーン全体への波及効果としても原単位排出量を2030年度までに40%減、2050年度までに70%減を掲げています。 環境分野に大きな投資をしていくことを財務グループとしてどのように受け止めましたか? 白根氏  当社には以前から環境保全に対する高い意識があります。海運は多量の燃料を消費する事業ですので、環境問題を避けて通ることができません。技術部門・営業部門はもちろん、全社を挙げて日々環境負荷を低減するための取り組みを積極的に実施しています。 赤木氏  確かに通常の船舶を建造するより環境対応船を建造するほうがコストはかかります。しかし、グリーンボンド発行を通じて、当社の環境への取り組みを顧客をはじめとする幅広い方々に知って頂くことで、社会的に必要なコストをみなで負担していこうという意識を醸成する一助になるのではと、財務グループの中から意見もありました。 白根氏  幅広いステークホルダーの方々の期待に応えていくためには、環境に向き合い続けなければならないと思っています。 資金調達をグリーンボンド発行で行う狙いは何でしょうか? 白根氏  狙いは大きく3点あります。まず、投資家層の拡大。グリーンボンドという形で起債することで、これまで当社に関心がなかった投資家のみなさまにも注目いただけるのではと考えました。次に、当社の環境への取り組みを幅広いステークホルダーの方々に認知して頂くということ。そして、やや大きな目標ではありますが、海運業界での牽引役となるという点。海運業界初のグリーンボンド発行を実現し、業界全体をリードしたいと考えました。 今回の発行に当たり苦労した点は? 赤木氏  海運業界での初めてのグリーンボンド発行でしたので、当社の状況を理解して頂くことに苦労しました。グリーンボンドでは、再生可能エネルギーに焦点が当たることが多い中で、LNGの位置づけを理解頂くことに努めました。 白根氏  グリーンボンドでは、先に述べたように再生可能エネルギーに焦点が当たることが多いですが、再生可能エネルギーだけで巨大な船舶を動かすことはまだ不可能です。そこで、現段階でのベストソリューションであるLNG燃料への転換を、関係者に丁寧に説明していきました。最終的には世界的に知名度の高いVigeoEirisにセカンドオピニオンを引き受けて頂くことができました(現時点はセカンドオピニオン発表待ちの状態)。  VigeoEirisのセカンドオピニオンは、使途のプロジェクトだけでなく、発行体全体の状況をレビューするところに特徴があると思います。その点、当社の様々な情報をインプットさせて頂けたことも良かったと思います。 グリーンボンドとクーポン(利率)の観点ではどうお考えですか? 白根氏  グリーンボンドは投資家の間でも関心が高いと聞いており、価格にも反映される可能性はあるのではと考えています。他社の事例では、一般社債(SB)とグリーンボンドをほぼ同時期に発行した際、グリーンボンドの方の注文が多かったというケースもあったと聞きました。但し、最終的に利回りは今後のマーケティングプロセスにより市場実勢にて決定されると考えます。 発行後の使途報告についてお考えのところはありますか? 白根氏  船舶建造では様々な守秘義務があり制約が多い一方、曖昧な報告では投資家から理解を得られにくいとも考えています。まさに今、どのような報告をしていくかを議論しているところです。一案ですが、第三者の評価機関に対し詳細開示を行い、適切にグリーンボンド調達資金の管理をしていることを確認して頂き、第三者から保証を得ている旨を一般の方々にも開示する手法についても検討を進めているところです。  社内での報告オペレーションをスムーズに進めることも重要だと考えています。負荷の高いオペレーションとなると継続性に問題が出てくるため、その点も重要なポイントになると思います。 CBIの海運業界の基準策定ワーキンググループに参加するという発表もありました 白根氏  今回の起債を機に、海運業界での環境投資の促進や、グリーンボンド発行の牽引役を目指すという大きな目標を掲げています。CBIで海運業界の基準がないままでは、グローバルの海運業界でのグリーンボンド起債が進まないのではないか、そして、当社が第1号となり、基準策定にも加わることで、門戸を開きたいと考えています。 発行準備を通じて何か気づきはありましたか? 赤木氏  グリーンボンドの発行は、社内の本当に多くの部署の方々の協力なしには成し遂げられませんでした。特に技術部門や環境グループからは多くの支援を得ました。心から感謝しています。 白根氏  本当にそうだと思います。主幹事証券の皆様も含め大きなチームとなって目標に向かっていく一体感があったと思います。今回私たちの間では、手間暇惜しまずやれることは全部やろうという意気込みで臨みました。ただ発行するだけでなく、より多くの方から評価していただけるよう環境省のモデル事業に応募する、CBIの基準策定にも参加するという話になりました。  また今回の発行準備を通じて、ESG投資のうねりが大きくなっていることを身をもって体験しました。このような大きな動きをいち早く発行体側が感じ取り、調達にもグリーンという観点を入れていくことが重要となるのではないでしょうか。最初は確かに手間がかかりますが、その分のメリットも大きいと今は確信しています。 インタビューを終えて  金融商品の世界で日本から世界初が出るということは、そんなに多いことではありません。そんな中、今回のグリーンボンドは、難易度も容易ではない海運業界から生まれた世界初。この点だけでも海運業界全体を引っ張っていくのだという日本郵船の意義込みが感じ取れます。さらに驚いたことは、CBIでの基準策定に参加するのだという意気込み。日本企業は国際基準に積極的に参加することは多くはないと感じていますが、英国NGOの会議に日本郵船が船出していく姿が非常に頼もしく見えます。  また海運業界では、国際海事機関(IMO)が4月13日、2050年までに業界全体の二酸化炭素排出量を総量で2008年比50%以上削減するという長期目標を採択。それに向け、海運業務当たりの原単位二酸化炭素排出量を2030年までに2008年比40%以上削減し、2050年までに70%削減できるよう努めるとしました。世界の国際物流の多くは海運が担っています。この海運業界で二酸化炭素排出量の大幅な削減が実現できれば、気候変動の緩和に大きく貢献することになります。日本郵船が先陣を切る技術開発が、企業競争力と環境負荷低減の双方に大きく寄与していってほしいと思います。

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