【イギリス】政府イノベートUK、都市インフラ・創薬・デジタルのイノベーションに1400億円予算

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 英政府のイノベーション産業助成機関「イノベートUK」は10月23日、運営するデジタル、創薬、都市インフラ、交通システムの各イノベーションセンターに対し、総額2億1,500万ポンド(約310億円)の資金拠出を発表した。8月にフィリップ・ハモンド財務長官が今後5年間で10億ポンド(約1,400億円)をイノベーションセンターに拠出すると表明しており、今回の発表がその第1弾。  イノベートUKは、英政府のイノベーション推進機関「UKリサーチ・イノベーション(UKRI)」の部門の一つ。UKRIは、イノベートUKの他、7つの研究会議及びイングランド高等教育財政会議(HEFCE)の下にあったナレッジ交換の機能を統合し、2018年4月に設立された。イノベートUKは目下、「遺伝子セラピー」「複合半導体応用」「デジタル」「エネルギーシステム」「都市インフラ」「高価値製造業」「創薬」「洋上再生可能エネルギー」「衛星応用」「交通システム」の10のイノベーションセンターが設置されており、「Captapult(カタパルト)」という組織名が与えられている。カタパルトは、関連のイノベーション推進制度や予算を統括する役割を果たしている。  今回の発表では、まず「都市インフラ」と「交通システム」の2つのカタパルトを統合。今後予想される大規模な都市集中化に対応するため、AI、ビッグデータ、脱炭素エネルギー源等を組み合わせた新たな都市インフラのイノベーションを推進する。  デジタル・カタパルトは、AI、5G、AR、VR等のインベーションを推進し、今後15%以上の雇用拡大が期待されている。創薬カタパルトは、最近アストラゼネカとの協働事業を発表する等、英国での創薬の競争力を高めていく。 【参照ページ】£215 million additional investment for UK innovation centres

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【日本】SIIF、神戸と八王子のソーシャルインパクトボンドで中間指標達成。投資家に配当払い実施

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 一般財団法人社会的投資推進財団(SIIF)は10月24日、神戸市が2017年7月に導入した糖尿病性腎症等の重症化予防の「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」事業で、中間成果指標であるプログラム修了率および生活習慣改善率において目標を上回る成果を達成し、神戸市から初回の成果連動型支払いが実行されたと発表した。同じく10月26日、2017年5月1日に八王子市で導入された成果連動型の大腸がん検診受診率向上事業でも、2018年度の成果指標として設定した大腸がん検診受診率の目標を達成し、八王子市から事業受託者のキャンサースキャンに対し、さらにキャンサースキャンから投資家に対し、初回の成果連動型支払いが実行された。  神戸市の事業では、事業対象者109人のうち、疾病等により除外対象になった4人を除く105人全員が、6ヶ月にわたる保健指導プログラムを修了。プログラム修了率は目標値80%に対し実績100%だった。また、食事、運動、セルフモニタリング、服薬の4分野における生活習慣の改善を総合評価した生活習慣改善率は、目標値75%に対し実績95%だった。中間成果指標で目標を達成したことで、神戸市からDPPヘルスパートナーズへ委託料の初回の成果連動型支払いが予定通り行われ、SIBを購入した三井住友銀行および個人投資家に配当と償還が行われた。中間成果指標評価は未来工学研究所が担当した。2020年3月に予定されている最終成果評価では、腎機能低下抑制率を指標として評価し、その結果に応じて残りの委託料が支払われることになっている。  八王子市の事業では、新しい大腸がん検診受診率向上策として、受診率が特に低い層を対象に、AIを活用したオーダーメイドの受診勧奨を実施。2017年度12,162人への大腸がん検診受診勧奨を行った結果、大腸がん検診受診率は2015年度実績の9%から26.8%にまで向上。目標値として19%を大きく上回った。その結果、大腸がん検診受診率に応じた支払額について、八王子市よりキャンサースキャンに対し満額の2,441,000円が支払われた。キャンサースキャンには、ソーシャルインパクトボンドとして、SIIF、デジサーチ、デジサーチ代表の黒越誠治氏が投資。また、みずほ銀行もSIIFを通じて投資している。 【参照ページ】神戸市「ソーシャル・インパクト・ボンド」、中間成果評価で目標を上回る成果を達成初回の成果連動型支払いを実行 【参照ページ】八王子市の「ソーシャル・インパクト・ボンド」事業 早期がん発見者数増加に向け、中間成果目標を達成

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【国際】「企業スポンサーが公共医療の研究領域を誘導」シドニー大教授ら論文発表

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 豪シドニー大学のLisa Anne Bero教授らは9月25日、企業の経営戦略により、公共医療の議論・研究が歪められているとする論文を、学術論文誌「American Journal of Public Health(AJPH)」で発表した。研究分野に企業がスポンサーとして影響力を行使することで、公共医療に真に必要とされる分野よりも、企業の関心分野での研究が進む傾向にあるという。  Bero教授らは今回、医療論文データベースの「MEDLINE」「Scopus」「Embase」で発表された論文を調査。企業がスポンサーとなった論文が、学術会全体のアジェンダ設定にどのように影響を与えるかを分析した。その結果、商業化が可能な製品、プロセス、活動が優先的に論文テーマとなっていることが明らかとなった。  教授らは、論文の結論として、研究財源や利益相反に関する情報開示を深化させ、企業によるバイアスを修正するメカニズムが必要と主張した。 【論文】The Influence of Industry Sponsorship on the Research Agenda: A Scoping Review

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【国際】製薬世界大手4社、総額4300億円の租税回避を実施。NGOオックスファム調査

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 国際NGOオックスファム・インターナショナルは9月18日、製薬世界大手4社が16カ国で租税回避を行い、総額は年間で38億米ドル(約4,300億円)に上るととするレポートを発表した。調査対象となったのは、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アボット、メルク(MSD)。調査対象期間は2013年から2015年。  4社は、先進国では、オーストラリア、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、スペイン、英国、米国で、総額37億米ドルの租税回避を実施。そのうち米国だけで23億米ドルに及び、オックスファムは「100万人の低所得者層の子供の健康が救えた」と批判している。また、発展途上国では、タイ、インド、エクアドル、コロンビア、パキスタン、ペルー、チリで、総額1億1,200万米ドルの租税回避を実施した模様。  オックスファムは、検知された租税回避は決して違法ではないが、先進国での医療費問題や発展途上国での健康問題のため、適切な租税を実施することが重要よう促した。また、今後、発展途上国でも租税回避が進展すれば、現地の公共医療に大きな悪影響を及ぼすとした。 【参照ページ】Drug companies cheating countries out of billions in tax revenues

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【国際】ISO、漢方灸療法ISO20493を新たにリリース。中国国家標準化管理委員会が主導

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 国際標準化機構(ISO)は8月29日、新たに漢方薬(灸療法)規格「ISO20493」を制定した。灸療法の品質や安全性の最低基準を規定している。  ISO20493はともに、ISO/TC 249で策定。中国のSAC(国家標準化管理委員会)が事務局を務めた。 【参照ページ】New International Standard for traditional Chinese medicine just published

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【アメリカ】食品医薬品局、医療機器に「ISO13485」採用の方向 。医療機器品質マネジメントシステム規格

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 国際標準化機構(ISO)は8月27日、米食品医薬品局(FDA)が医療機器の品質マネジメントシステム規格「ISO13485」を医療機器規制に採用する方向で検討していると発表した。品質マネジメントシステム規格「ISO9001」が汎用性がある規格であるのに対し、ISO13485は高い安全基準が要求される医療機器に特化した品質マネジメントシステム規格。  ISO13485は、すでに欧州、カナダ、オーストラリアやアジアの国々で医療機器への基準として採用され得ている。日本の医薬品医療機器等法(薬機法)も、医療機器メーカーに準拠を義務付けるQMS省令がISO13485をもとに制定されており、実質的にISO13485を採用していると言える。  米国はこれまで、独自のシステム(GSR)を用いていたが、他国と同様、ISO13485を採用する方向で調整している。 【参照ページ】FDA plans to use ISO 13485 for medical devices regulation

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【アメリカ】ジョンソン・エンド・ジョンソン、Gender Fair認証取得。ジェンダー平等で高い評価

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 医薬品世界大手米ジョンソン・エンド・ジョンソンは8月22日、ジェンダーNGOのGender Fairより、ジェンダー平等レベルが高い企業に付与される認証「Gender Fair」を取得したと発表した。  Gender Fair認証は、企業リーダーシップ、従業員ポリシー、サプライヤーダイバーシティ、企業哲学、マーケティングの全てにおいて、高いジェンダー基準を満たす企業にのみ付与される。現在、フォーチュン500企業のうち16%しか同認証を取得できていない。その中で、ジョンソン・エンド・ジョンソンは上位7%に入ると評価され、認証を取得できた。  現在、Gender Fair認証を取得している企業は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの他に、イーライリリー、JPモルガン・チェース、マスターカード、マイクロソフト、P&Gの計6社。 【参照ページ】The X Factor: How Johnson & Johnson Has Helped Ignite the Power of Women Since 1886 【機関サイト】Gender Fair

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【日本】オフィス・飲食店内が原則禁煙となる改正健康増進法成立。小規模飲食店は例外措置

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 参議院は7月18日、改正健康増進法案を賛成176、反対60で可決し、同法が成立した。同法は、望まない受動喫煙を防止することを全面に掲げ、オフィスや飲食店等の多くの人が集まる施設内では原則禁煙とした。違反した喫煙者には最大30万円の罰金、飲食店の管理者に対しても最大50万円の罰金が科せられる。同法は段階的に施行され、東京オリンピック・パラリンピックの直前となる2020年4月1日に全面的に施行される。  今回のたばこ規制強化の動きには、2020年東京オリンピック・パラリンピックと世界保健機関(WHO)の評価が関係している。WHOは「たばこ規制枠組条約(FCTC)」を2003年に制定し、2005年に発効。2008年からはたばこ規制の進捗度を7項目にまとめた「MPOWER」に基づき、FCTC締約国の評価を実施している。日本政府は、発効前の2004年に同条約の締約国となった。  日本のMPOWER評価では、「受動喫煙の防止」「脱たばこ・メディアキャンペーン」「たばこの広告・販売・後援の禁止」の3項目で「最低」の評価をとりつづけてきた。日本政府は2013年に健康増進法を、2015年には労働安全衛生法を改正し、受動喫煙防止を強化したが、いずれも「努力義務」に留まっていた。  さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催地視察のため来日したアサモア・バーWHO事務局次長、ジュディス・マッカイWHO上級政策顧問、ダグラス・ベッチャーWHO生活習慣病予防部長から相次いで日本の受動喫煙への取組の不備を厳しく指摘され、五輪大会までに対策を講じるよう迫られていた。とりわけ、飲食店で普及している簡易な「煙流出防止措置」は、密閉の喫煙室とは同等の効果が見込めないとして、否定的な見方が出ていた。  それを受け、厚生労働省は2017年に全飲食店を原則禁煙とし違反者には罰金を科す法案を用意したが、自民党の厚生労働部会で大反発を受け、法案を国会に提出する閣議決定できない状況が続いていた。反発議員は、禁煙を飲食店に迫るのは経済的に悪影響とし、規制強化阻止や規制強化の場合は五輪会場となる東京だけに限るよう求める案、または禁煙の導入を飲食店の判断に委ねる案等も出ていた。その後1年を経て、ようやく2018年3月に閣議決定、厚生労働省の原案に小規模飲食店への例外措置を広く盛り込んだ形で今回の成立に漕ぎ着けた。  今回の法律により、学校や病院、児童福祉施設、行政機関、バス、航空機等は敷地内が全面禁煙となり、屋内に喫煙室を設けることもできない(屋外は可)。一方、鉄道、船舶、飲食店、オフィスについては、同様に禁煙となるが屋内に禁煙室を設けることは可能。但し、喫煙できる場所には20歳未満の客や従業員が立ち入ることはできなくなる。また、個人または出資総額5,000万円以下で客席面積100m2の飲食店(全国飲食店の55%程度)は、例外的に禁煙義務の対象外とし、別の法律で定めることとした。但し、喫煙可能な飲食店の場合はその旨の掲示義務が課され、20歳未満の客や従業員は店内に入れなくなる。店内に煙の流出防止措置を講じている場合は、非喫煙スペースには20歳未満の客や従業員は入ってもよい。  電子たばこ等の加熱式たばこも同様に規制の対象となる。加熱式たばこは原則屋内での喫煙が禁止となり、学校や病院、児童福祉施設、行政機関、バス、航空機等では、加熱式たばこの屋内喫煙室を設けることも同様に禁止。それ以外の場所では、喫煙室でのみ喫煙が可能となる。  旅館やホテル等の客室ではいずれの場合も喫煙は禁止されない。  同法の施行は、学校や病院、児童福祉施設、行政機関、バス、航空機等に関する部分は、2019年夏頃に前倒しで施行され、詳細は政令で定める。それ以外は2020年4月1日に施行される。  それとは別に、東京都では、受動喫煙防止条例が6月5日に成立し、改正健康増進法よりも厳しい対策が導入されることが決まっている。東京都の条例では、2020年4月1日以降、いかなる飲食店であっても、従業員を雇っていれば、大規模店舗と同じく原則禁煙となり、喫煙室がある場合のみ喫煙が可能となる。また、小中高校や保育所、幼稚園は、屋外の喫煙場所の設置も禁止され、敷地内全面禁煙が義務化される。さらに飲食店では、禁煙店舗でも禁煙を示すステッカー掲示が義務付けられる。後者の2つについては、2019年9月1日までに規則で定める日から施行される。 【WHOレポート】WHO report on the global tobacco epidemic 2017

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【国際】インパクト投資国際団体GIIN、金融インクルージョンと健康領域のインパクト測定ガイドライン発行

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 インパクト投資推進の国際イニシアチブGlobal Impact Investing Network(GIIN)は6月29日、金融インクルージョンと健康の2セクターについて、インパクト測定ガイドラインをリリースした。  GIINは、主要なインパクト投資領域でのインパクト測定ガイドラインを作成しており、すでに低所得者向け住宅、再生可能エネルギーへのアクセス、小規模農家の3分野でインパクト測定ガイドラインを発表。今回が新たに2つが加わり、合計5セクターとなった。  現在は、ジェンダー分野での測定ガイドライン策定にも着手しており、今後も需要の高いセクターでガイドラインを制定していく。 【参照ページ】INVESTING FOR IMPACT? QUIT GUESSING.

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【インタビュー】地域を救う新たな官民連携の形 〜神奈川県の医療ベンチャーキャピタルファンド〜

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 2018年3月、神奈川県の呼びかけで新しいヘルスケアベンチャーキャピタル投資ファンドが組成されました。ファンドの名前は「ヘルスケア・ニューフロンティア投資事業有限責任事業組合」。最先端の医療技術開発や、病気になる手前の「未病」への対処を行う医療サービスに取り組むベンチャー企業に投資するファンドです。このファンドには、すでに約12億円の出資が集まり、複数のベンチャー企業に投資されています。今、このファンドには、「投資分野」「ファンドの座組」「ファンド評価」の3つの観点で大きな注目が集まっています。  まず投資分野。一般的に日本のベンチャーキャピタルは、インターネットサービスやゲーム開発会社に多く投資されています。日本ベンチャーキャピタル協会が今年4月に発表した最新の統計でも、ベンチャーキャピタルの投資分野の約半数がIT関連。その後には「バイオ/医療/ヘルスケア」が約18%と続きますが、バイオ医療と呼ばれる創薬開発が中心で、高齢者医療という深刻な社会課題の解決にはあまり資金が動員されていません。一方、今回発足した「ヘルスケア・ニューフロンティア投資事業有限責任事業組合」は、再生・細胞医療研究等の最先端医療技術開発だけでなく、食や運動習慣等にも焦点を当てた未病の改善分野に大きな主眼を置いています。  次にファンドの座組。「ヘルスケア・ニューフロンティア投資事業有限責任事業組合」は神奈川県の企画として立ち上がったものの、神奈川県が運営しているわけではありません。無限責任組合員(GP)としてファンドを運営しているのは、公募で選定された株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ。老人ホーム経営や病院の経営支援を行うキャピタルメディカ・グループのコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)子会社で、ヘルスケア分野に特化した投資を行っています。一方、神奈川県は、有限責任組合員(LP)という出資者の立場で1億円を出資し、ファンドをサポートするとともにリスクもとっています。同ファンドのLPには他に、横浜銀行、神奈川銀行、鹿児島銀行、スルガ銀行等の地方銀行や、中小企業基盤整備機構、ココカラファイン、戸田建設、社会的投資推進財団(SIIF)等がいます。神奈川県にとって、ベンチャーキャピタルファンドに直接投資するのは今回が初めて。  最後にファンド評価の観点。ファンド設立後の2018年4月、神奈川県、キャピタルメディカ・ベンチャーズ、そしてLPでもある社会的投資推進財団の3者は、同ファンドに「社会的インパクト評価」を導入することで合意しました。社会的インパクト評価とは、ファンド投資が社会に与えたインパクトを定量的・定性的に測定していくという試み。今回3者は、社会的インパクト評価が、投資先ベンチャー企業の企業価値向上だけでなく、ファンドの財務的パフォーマンスも向上させることにもつながると考え導入を決断しました。ヘルスケア分野に特化したファンドで「社会的インパクト評価」を導入するのは今回が国内初です。  この異例づくしの「ヘルスケア・ニューフロンティア投資事業有限責任事業組合」がどのように誕生したのか。何を狙っているのか。神奈川県、キャピタルメディカ・ベンチャーズ、社会的投資推進財団のキーマンたちに話を伺いました。 (左) 大木健一    神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 ライフイノベーション担当課長 (中左)菅野文美    一般財団法人社会的投資推進財団(SIIF) 事業開発推進部 シニア・オフィサー (中右)青木武士    株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役 (右) 新澤駿    神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 最先端医療産業グループ 主事 ベンチャーキャピタルファンドを設立した経緯を教えてください 大木健一氏  神奈川県では、現在の黒岩祐治知事の下で、「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」を展開しています。この政策は、来る超高齢社会に対応できる新たな社会システムを構築するため、病気になる前の個々人での健康へのアクションとなる「未病の改善」と、新たな医療技術の追求の2つの視点で、新たな産業の創出と健康寿命日本一を実現していこうというものです。未病の改善の例では、運動習慣、医食農同源などがあります。また新技術開発では、再生・細胞医療研究やロボット医療機器が具体例として挙げられます。  しかしながら、最先端医療や未病に対し、神奈川県の予算だけでやるには限界があります。また、有望なベンチャー企業を目利きという視点でも、我々には十分な知見がありません。そこで、神奈川県も資金を出しつつ、民間の方々にも資金を入れていただくという発想に至りました。そして、そのファンドの運営も、ベンチャー企業の目利きのプロにやっていただくことになり、昨年度、今回の「ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンド」の設立に至りました。 青木武士氏  キャピタルメディカ・ベンチャーズは、病院の経営支援や介護施設の運営をしておりキャピタルメディカのグループ企業で、ヘルスケアに特化したベンチャーキャピタルです。神奈川県が、ヘルスケア部門での新たなファンドを立ち上げると聞き、公募に参加し、選定していただきました。  未病やヘルスケア分野でのベンチャー企業は、最近増えてきていると感じています。ですが、ベンチャー企業が成長に向け事業のPDCAをしっかり回していくための実証フィールドが極めて少ないという課題感があります。その背景には、ヘルスケア分野は命を預かる産業ですので、実証フェーズでは医療関係者の協力が必要となるとはいえ、新技術やサービスを簡単には実証できません。そのため、多くのヘルスケア領域ベンチャー企業はPDCAを回す困難さを抱えています。  その中で、キャピタルメディカ・グループは、経営支援先の病院や運営している介護施設において、2,000名以上の医療介護者、5,000名以上の患者をサポートしています。ですので、投資先のベンチャー企業に、製品やサービスの実証フィールドも同時に提供できるという強みがあります。 自治体のヘルスケア支援は助成金が一般的。なぜファンド出資の道を選んだのでしょうか? 大木氏  再生・細胞医療などの新しい分野が産業として確立するためには、新たな担い手となるベンチャー企業が生まれてこなければなりません。未病の分野も同じで、神奈川県では「未病産業」と呼んでいます。ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンドには、神奈川県も1億円を出資しましたが、神奈川県がファンドに直接出資をするのは今回が神奈川県政史上初めてです。これは、神奈川県が本気を出してベンチャー企業を育成したいという意志の表れです。  正直、1億円という出資額は決して大きな金額ではありません。これで、ヘルスケア領域の全ての社会課題が解決できるとも思っていません。しかし、神奈川県という自治体が、ヘルスケア領域でベンチャーファンドを立ち上げたというメッセージそのものに、大きな意味があると思っています。「神奈川県に行けばヘルスケアの新ビジネスができるかもしれない」「神奈川県に行けば支援が得られるかもしれない」。人々の間にこのような意識を醸成できれば、ヘルスケア領域で新産業を育てるという我々の目的の半分が達成できていると言えます。 投資先ベンチャー企業の発掘、選定はどのように実施していますか? 青木氏  投資先のソーシングには、3つのアプローチ方法があります。まず、毎日100から200のウェブサイトをクロールし、新たなサービスが出てきた際にすぐにコンタクトをとっています。次に、他のファンドや起業家からの紹介。当社は実証フィールドを提供できる強みがあるため、ヘルスケア案件では、他のベンチャーキャピタルや事業会社から共同出資の相談を受けることが頻繁にあります。最後に起業家創出。最近、医師等の医療関係者で起業を考える方が増えてきており、今回のファンド資金の12億円のうちいくらかは、ゼロからの起業支援の案件に投資したいと考えています。  今回のファンドは、神奈川県に事業所がない企業にも門戸を開いています。神奈川県の事業者と取引がある企業や、神奈川県の県民と関わりがある企業も投資の対象です。そのため、結果的にはほぼ全ての企業が対象となると考えています。 大木氏  神奈川県で起業した企業のみを投資対象に限定したら、パイが限られてしまいます。むしろいろいろな企業に集まってきてほしい。神奈川県で事業を拡大してみよう、神奈川県の事業者と何か取り組んでみよう。そうやって盛り上がっていかなければ意味がありません。例えば、東京で起業しても、神奈川県で事業を拡大してくれれば、神奈川県としては大きなプラスの効果が期待できます。どこで起業したかには、こだわっていません。 インパクト評価の意義についてはどのように考えていますか? 菅野文美氏  今年4月に、神奈川県、キャピタルメディカ・ベンチャーズ、SIIFの3者で、ファンドの社会的インパクトを評価するという覚書を交わしました。社会的インパクト評価とは、ファンドの投資先の事業を通じて提供される技術や商品、サービスにより社会に生まれる変化や効果を定量的・定性的に測定することです。SIIFは、社会的インパクトという概念を普及させていく財団として活動しています。今回も、社会的インパクト評価を支援するという狙いをもって、ファンドに出資しました。最終的には、ファンド全体のインパクトレポートを発表する予定です。 青木氏  SIIFと一緒に社会的インパクト評価を実施することにした理由は、当然ファンドに大きなメリットがあると考えたからです。ヘルスケア領域での事業は、ほぼ全てが社会に良いインパクトを与えられます。投資先企業が、社会的インパクト評価を通じて価値を定量化できるということは、企業が製品やサービスをマーケティング(企画・販売)していく上でプラスでしかありません。たとえ社会的インパクト評価をする工数が多少かかったとしても、企業価値を向上する上で、こんなありがたいことはありません。 大木氏  県政としては、予算対効果を議会や県民に報告する責任を負っているのですが、効果をわかりやすく示すことが課題となっていました。県としても、投資先ベンチャー企業の価値を高めるだけではなく、投資対効果を議会や県民の皆様に示していく上で、社会的インパクト評価は非常に有効だと考えています。社会的インパクト評価の話をSIIFから提案されたときには、助かると思ったのが正直な気持ちです。 地方銀行にLP参画していただく上で工夫をした点は? 青木氏  さきほどの話とは変わりますが、地方銀行を初めLP出資して頂いた投資家には、特に「インパクト投資」という言葉は用いていません。それは、当ファンドは、純粋に利益を追求しているファンドであり、とりわけヘルスケア領域では、利益の最大化が結果的にインパクトの最大化となると考えているからです。ですので、投資家の方々には、投資リターンを期待していただいていると思っています。  ヘルスケア領域のベンチャーファンドが今後発展していくためには、我々が成功する姿を示すしかないと思っています。実績を見せなければ、どれだけ美辞麗句を並べたとしても意味がありません。地方銀行も投資のプロですので、エモーショナルな面ではなく、純粋にファンドのパフォーマンスを評価いただくしかないと思っています。  神奈川県がバックにいるというところも、大きな信用力になっていることは間違いないです。 菅野氏  SIIFも、インパクト投資は必ずしもリターンを犠牲にするものではないと考えています。一方で、日本では主にソーシャルセクター(財団や社会的企業など)からインパクト投資の概念が広がったという経緯があり、インパクト投資はリターンが低いというイメージがあります。今回のファンドを通じて、このイメージを払拭していきたいと考えています。 ヘルスケア領域のファンドとしての魅力は何でしょうか? 青木氏  ヘルスケア領域は、IPOもさることながらバイアウトが実施しやすい領域だと見ています。昨今ヘルスケア領域は非常に大きな成長産業と認識されており、業界を問わず大手企業が参入を試みていたり、少なくとも興味を持っています。一方で、ヘルスケア領域は参入障壁が高い。大手企業にとって、ベンチャー企業のバイアウトは、業界参入のための極めて合理的な選択肢となるだろうと考えています。  さらに、繰り返しになりますが、当社は実証フィールドの場も提供できます。投資先企業は、実証フィールドを通じた製品・サービスの磨き込みが可能となるため、一定程度の成長までは自ずと確保できます。その後、オーガニック(自力)で成長できればそれでいいし、大手企業からのリソース(経営資源)が必要となれば、大手企業の傘下に入り、成長するという道を選ぶこともできます。  ヘルスケア領域のベンチャーキャピタルでは、米国西海岸にメイヨー・クリニック・ベンチャーズやカイザーパーマネンテ・ベンチャーズという成功事例があり、キャピタルメディカ・ベンチャーズも彼らをベンチマークしています。彼らも、スタンフォード大学の医療施設といった実証フィールドを提供できるベンチャーキャピタルとして成長してきています。自治体も彼らのファンドの積極的に出資しています。我々もいろいろ調査してきましたが、ヘルスケア領域では実証フィールドが得られたベンチャー企業が生き残っているという印象があります。 菅野氏  海外のインパクト投資ファンドと意見交換する中でも、日本のヘルスケア領域は大きく注目されています。世界の中でも高齢社会化が進む日本は、課題先進国として新たなソリューションを生み出していけると考えています。 特に注目している投資領域はありますか? 青木氏  在宅医療や在宅介護の領域には注目しています。現在の在宅医療制度である訪問医や訪問看護ステーションの体制はすでに限界がきており、在宅医や在宅看護士が今後急増することは人口構造上ありえません。そうした中、医師や看護師1人当たりの在宅患者数を増やすことが絶対的に不可欠となります。そのためには、何かしらのITデバイスを活用した遠隔診療体制を確立する以外にないのですが、まだ本格的なサービスは誕生していません。  また血圧等のバイタルデータの測定に関する技術にも着目しています。常時バイタルデータが把握できていれば、必要以上に投薬する必要がなくなり、薬漬けになるリスクも避けられるようになります。このような一人ひとりの状況にあったパーソナルヘルスケアも今後10年以内に実現していきたいです。 自治体としてファンドでのベンチャー育成に至るまでの苦労話はありますか? 大木氏  特定の産業に特化したベンチャー投資ファンドを自治体がつくるという話は、過去にほとんど前例がありません。また、複数の産業にまたがるファンドや企業再生ファンドを自治体が作った例はありますが、投資リターンが低く、成功しにくいという評判があるのも事実です。  こうした状況で、神奈川県としてヘルスケア領域に特化したファンドに向けた予算化を検討していったのですが、実は初年度は予算が通りませんでした。しかし、将来を見据え社会課題に挑むためにヘルスケア領域でのファンドが必要だということを粘り強く説明していき、結果1年半をかけて予算を承認して頂くことができました。  行政の役割は、社会システム全体を大きく変革させていくことにあると思っています。例えば、未病という概念を打ち出し、個々人の健康に対する自覚や意識を変えていこうとした場合、お題目だけでは浸透しません。そこには、ツールやサービスを展開する企業の役割が不可欠です。そうした事業者がたくさん生まれてくることで、社会システムの変革が成し遂げられるのだと思います。 インタビューを終えて  インタビューの中でも登場したインパクト投資という概念は、ESG投資とともに日本では比較的新しいものです。ESG投資が環境・社会・ガバナンスを考慮した投資であるのに対し、インパクト投資は、投資が生む社会や環境に対するインパクトを測定をすることに力点が置かれています。海外では両者の垣根はどんどん小さくなっており、またインパクト投資は非上場企業の領域で盛り上がってきているため、私はインパクト投資のことを「ESGベンチャーキャピタル」と呼んだりもしています。インパクト投資は様々なセクターでなされていますが、世界的に注目を集めているセクターの一つがヘルスケア領域です。  世界の中でも先陣を切って高齢社会へ突入する日本。これまで海外からいろいろな概念やサービスを「輸入」してきた日本ですが、この領域では自ら解決策を導き出していくしかありません。またその分、この分野で確固としたソリューションを構築できれば、海外への展開もしやすい領域だと言えます。  こうした観点から、ヘルスケア・ニューフロンティア・ファンドが「未病」に力を入れていることには大きな可能性を感じます。従来の日本の医療システムは、医療施設も保険も「健康」と「病気」の二元論を軸に構築されており、その中間の「未病」領域では既存の担い手がいない領域です。しかしながら、社会保障費を抑えつつ元気な高齢社会を迎えるには、この未病領域での担い手となる新たなプレーヤーが必要となってきます。この新たな担い手に、ファンドとその関係者が資金と実証フィールドを提供してくれることは、非常に大きな支援となります。

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