【国際】加速する培養肉栽培の研究開発。水消費量や二酸化炭素排出量削減への期待の一方懸念も

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 食肉の生産に向けて、大学や企業の研究所等で家畜および家禽類の幹細胞を採取し、培養する研究開発が加速している。米サンフランシスコに本拠地とするメンフィス・ミーツやジャスト、イスラエルのフューチャー・ミート・テクノロジーズが先導。ジャストはこれまでに約250億円以上の資金を調達し、肉類に加え海産物の培養を進め、培地となる独自の血清「植物ベースのカクテル」を開発したという。英紙ガーディアンは、タイソン・フーズ、カーギル等の食品大手に加え、ビル・ゲイツ、リチャード・ブランソン等の資産家による培養肉への投資を報じている。  「培養肉」は、英語ではcultured meat、lab-grown meat、in vitro meat、clean meat等の用語が使われ、日本語でも「クリーン・ミート」と表現される場合もある。米国農務省(USDA)の報告書によると、2018年に平均的な米国人は、100kg以上、1人1日平均約274gの肉類を消費すると推計されている。近年は食材の多様化やベジタリアンの増加等により食肉以外からタンパク質を摂取する傾向もあるが、多くの人にとっては家畜や家禽の肉が主要なタンパク源となっている。  培養肉が普及した場合、環境面ではどのような影響があるだろうか。2011年にオックスフォード大学とアムステルダム大学の研究チームが試算したところ、1,000kgの培養肉の生産には、エネルギーを26から33GJ、水を367から521㎥、土地を190から230㎡必要とし、二酸化炭素排出量が1,900から2,240kg排出される。この数値をヨーロッパにおける従来の畜産と比較した場合、培養肉の方がエネルギーの使用を7%から45%、水を82%から96%、土地を99%、二酸化炭素排出量を78%から96%削減できることが明らかになった。削減幅にバラツキがあるのは、家畜類の中で環境への負荷がすべての側面で最大なのは牛肉であり、羊肉、豚肉と比較すると突出しているため。その一方、すべての側面で負荷が最少なのは家禽であり、この差が大きい。  研究チームは、上記の計算には輸送や冷凍・冷蔵に必要なエネルギー等は入っていないため、その分を加算した場合、培養肉の効用は一段と大きいと指摘する。また培養肉の製造に必要とされる面積は僅かであることから、従来の畜産で余剰となった土地を再森林化し、温室効果ガスをさらに削減することを提案している。そして、培養肉にはまだ不明な点も多いが、人口増に伴う食料需要や環境問題への対策として、従来の畜産より効率的で可能性が大きいと結論づけている。  米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)は、培養肉の研究開発が加速している状況を受けて2018年10月に公聴会を開催し、この革新的な食品の促進と、最高レベルの公衆衛生基準の維持に向けた規制の必要性がステークホルダー間で共有されたという。米食品医薬品法研究協会(FDLI)は、(1)食品添加物と同様の安全基準を満たしている、(2)公開されている科学的情報に基づき、有資格専門家によって安全であると確認される等のFDAの規定を満たしているとして、11月に培養肉の製造を認めた。  政府機関による体制としては、FDAが細胞の収集、保管、増殖と分化を監督し、細胞を収穫する段階で監督はUSDAに移行し、食品製造と表示について取り仕切ることになった。両機関はそれぞれの役割を果たすために協力体制を築き、情報を共有しつつ、培養肉に関わる技術の精緻化を積極的に推進するとしている。この新たな取り組みの実施に向けて、12月26日までパブリックコメントを募集していた。  一方、全米肉牛生産者協会(NCBA)は、従来の畜産による牛肉と、同協会が「フェイク」としている培養肉との明確な違いをラベルにより消費者に示すことに重大な関心を示している。USDAとFDAが管轄を明確にしたことを評価しつつも、「本物の牛肉の製造業者と消費者が保護され、公正に扱われるべきであり、まだ多くの課題が残されている」と訴え、製造業者に対してパブリックコメントを送るよう呼びかけた。  培養肉は動物の殺生も避けられるため、この動きを動物保護団体は歓迎しているという。さらに、鳥インフルエンザ、豚コレラ等、野外からもたらされる感染症の危険性は極めて小さくなりそうだ。今後の課題としては、更なる安全性の確保や、現在進められている低価格化の推進、そして消費者への十分な情報提供等が挙げられる。法務ニュースとリサーチを手がける米Juristは、市場に出回るまでには少なくともあと1年はかかると予測している。 【参照ページ】Lab-grown meat of the future is here – and may even sustainably fill demand 【参照ページ】Lab-grown meat would cut emissions and save energy 【参照ページ】Environmental Impacts of Cultured Meat Production 【参照ページ】Statement from USDA Secretary Perdue and FDA Commissioner Gottlieb on the regulation of cell-cultured food products from cell lines of livestock and poultry 【参照ページ】FDA and USDA announce production of lab-grown meat 【参照ページ】Cultured meat regulation ‘a step in the right direction’, says NCBA

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【ノルウェー】2018年の新車販売の31%が電気自動車で世界トップシェア。背景には政府推進

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 ノルウェーの業界団体「ノルウェー道路連盟(NRF)」は1月2日、ノルウェーの新車販売台数に占める電気自動車(EV)の割合が2017年の20.8%から2018年は31.2%に伸長したと発表した。2013年にはわずか5.5%だった。ノルウェーは政府が電気自動車を大きく推進しており、新車販売台数に占めるEV割合が世界史上最大となった。  ノルウェー政府は、2025年までにハイブリッド車(HV)を含むガソリン・ディーゼル及び天然ガス自動車の新車販売を2025年までに禁止する政策を標榜しており、EV新車購入時には、大幅な減税措置が受けられるとともに、駐車場やEV充電設備を無料で使用できる等の優遇措置も打ち出している。それにより、2017年の新車台数シェアで、ディーゼル車は28%減、ガソリン車は17%減、プラグインハイブリッド車(PHV)も20%減だった。一方、EVは40%も伸びた。  HV及びEVの新車割合は、2017年に自動車大国である米国で1.2%、中国2.2%と伸び悩んでいる一方、北欧では転換が進んでいる。HVを含めたEVの新車割合は、ノルウェーで39%、アイスランドで12%、スウェーデンで6%と世界をリードしている。ノルウェーでは、日産自動車のEV「リーフ」が最もよく売れている。

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【国際】気候変動推進NGOのFollow This、石油ガス大手4社に株主提案提出。スコープ3削減目標要求

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 蘭気候変動推進NGOのFollow Thisは12月21日、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、シェブロン、エクイノール(旧スタトイル)の4社に対し、2019年の株主総会に向けた気候変動関連の株主提案を提出したと発表した。5社に対し、スコープ1、2、3でのパリ協定に整合性のある二酸化炭素排出量削減目標を定めるよう要求している。エクソンモービルに対しては、他の団体から同様の株主提案が提出されるためFollow Thisとしての株主提案は取り下げた。  4社に対する株主提案のうち、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、Equinorに対しては、Follow Thisが主提案者となりつつも、豪ESG投資推進団体ACCRとの共同提案の形をとった。シェブロンに対しては、別の主提案者の提案に対し共同提案者の形をとる。エクソンモービルに対しては、機関投資家イニシアチブのClimate Action 100+の音頭をとっている英国国教会とニューヨーク州が同様の提案を行うことになっているため、単独での提案は取り下げた。  2019年も、オイルメジャーの株主総会に向けた委任状闘争は熱を帯びていきそうだ。 【参照ページ】Follow This files fifth climate resolution at Equinor

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【EU】欧州議会とEU理事会、2030年の自動車CO2排出基準を2021年比37.5%削減で合意

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 欧州議会と、加盟国閣僚級で構成するEU理事会は12月17日、交通・運輸分野からの二酸化炭素排出量を削減するため、自動車に課す二酸化炭素排出量規制を強化し、2030年に2021年比37.5%削減する方針で合意した。ライトバンも同様に31%引き下げる。パリ協定目標を達成することが狙い。マロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会副委員長兼エネルギー同盟担当委員は「EU産業の長期的な競争力強化」にもつながるとの見方を示した。今後、欧州議会とEU理事会双方での公式な採択手続きに入る。  2030年の自動車二酸化炭素排出量設定については、欧州委員会は当初、2021年比30%削減とする案を欧州議会とEU理事会に提出。これに対し、欧州議会は10月3日、2021年比40%削減とさらに高い目標を採択。その後、自動車業界からの抵抗もあり、最終的に37.5%削減でEU理事会と妥結した。また今回の合意では、中間目標として、2025年までに自動車とライトバン双方に2021年比15%削減という目標も設定している。  今回の発表を受け、欧州自動車工業会(ACEA)は「全く非現実的だ」と声明を発表。欧州の自動車業界にとって極めて厳しい要求となり、雇用にも「地震並み」の悪影響があると表明した。 【参照ページ】Europe accelerates the transition to clean mobility: Co-legislators agree on strong rules for the modernisation of the mobility sector

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【国際】IEA、石炭需要は今後5年間で横ばいと予測。欧米で需要減も、東南・南アジアで需要急増

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 国際エネルギー機関(IEA)は12月18日、石炭需要は今後5年間で横ばいとの見方を示した。欧州や北米では石炭需要が減少する一方、インドや東南アジアでは石炭需要が大きく伸びると予測した。エネルギー全体に占める割合は2017年の27%から2023年には25%に減少する見込み。   インドでは、再生可能エネルギーや高効率石炭火力発電により石炭需要の増加率はやや鈍化してきているものの、今後5年間は毎年3.9%増える見込み。背景にはエネルギー源として低価格であり調達しやすいという要素が大きい。インド以外にも、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシア、パキスタンで同様の傾向が見られる。  一方、中国での石炭需要は、今後5年間で約3%減少すると見立てた。中国の石炭消費は、世界の1次エネルギー消費全体の14%を占めるほど巨大だが、政府の大気汚染政策により減少に転じる。  このような状況を背景にIEAは、気候変動緩和のためには炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)技術が重要になると見ている。 【参照ページ】Global coal demand set to remain stable through 2023, despite headwinds

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【イギリス】政府、2040年までに重工業産業の二酸化炭素ネット排出量ゼロ目標を表明

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 英ビジネス・エネルギー・産業戦略省のクレア・ペリー・エネルギー・クリーン成長閣外相は12月13日、国連気候変動枠組条約カトヴィツェ会議(COP24)の場で、新たな重工業産業戦略を発表。2040年までに英国の重工業からの二酸化炭素ネット排出量をゼロにすると表明した。同様の宣言をした国は英国が世界初。  ペリー閣外相は、発表の中で、2030年までに炭素回収・貯蔵(CCS)等の先端技術等を念頭に、新たな事業分野を一つ築くと表明。気候変動に資するテクノロジー分野を育成し、新たな輸出の柱としたい考えを示した。輸出額目標は2030年までに年間1,700億ポンド(約24兆円)。200万人の雇用創出も掲げた。  英国では重工業セクターからの二酸化炭素排出量が国全体の約25%を占める。今後、1億7,000万ポンド(約240億円)規模の助成策を打ち、鉄鋼、セメント、化学、製紙、ガラス等の重工業の脱炭素化を推進する。 【参照ページ】World-first carbon 'net-zero' hub of heavy industry to help UK seize global economic opportunities of clean growth

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【アメリカ】EPA、化石燃料火力発電所のCO2排出基準緩和案を発表。CCSを導入要件から外す

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 米環境保護庁(EPA)は12月6日、化石燃料火力発電所の二酸化炭素排出について「新規汚染源排出基準(NSPS)」を改定する方針を発表した。炭素回収・貯蔵(CCS)設備の導入を促した前オバマ政権時代の基準を撤廃する。  米国では、化石燃料火力発電所の二酸化炭素排出については、大気浄化法(CAA)111条で「新規汚染源排出基準(NSPS)」を定め規制している。同規定は、以前はなかったが、2006年にニューヨーク州等11州や環境保護団体等が二酸化炭素排出量規制導入を求め提訴し、2010年にEPAが規制を導入することで原告とEPAの和解が成立。最終的に前オバマ政権時代の2015年8月、二酸化炭素排出量を規制するNSPSが導入された。  現行のNSPSでは、化石燃料火力発電所の二酸化炭素排出量基準設定に当たり、「最善の排出削減システム(BSER)」の導入を想定した際の排出量を基準値として定め、CCS技術もBSERの一つされている。今回の改定方針では、CCS技術をBSERとはみなさず、CCS設備を導入しない想定で基準値を設定しなおすため、基準値は大きく緩和される見通し。  EPAは今回の改定について、「CCS技術はまだ証明されていない技術であり、経済的に法外に高く、地理的に制約がある」とコメント。さらに今回の改定により「二酸化炭素排出量は著しく増加しない」とCCS要件を外しても二酸化炭素排出量は増えないとの見方を示した。  新基準案では、スチーム・ユニット新設では、MWh-gross当たりの二酸化炭素排出量を、現行の1,400ポンドから、大規模ユニットは1,900ポンド、小規模ユニットは2,000ポンドに緩和。また廃棄物(ごみ)発電所向けの基準を別途設定し、2,200ポンドとした。同様にスチーム・ユニットの改修等についても基準を緩和する。 【参照ページ】EPA Proposes 111(b) Revisions to Advance Clean Energy Technology 【法律】NSPS

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private 【国際】FTSE Russell、グリーン不動産インデックス新設。グリーンビルディング認証やCO2排出量考慮

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 インデックス開発世界大手英FTSE Russellは12月4日、不動産分野の新たなESGインデックス・シリーズ「FTSE EPRA Nareit Green Indexes」を発表した。対象地域はグローバル。同社の不動産インデックス「FTSE EPRA Nareit Real Estate Index」を親指数とし、気候変動リスクに少ない銘柄をオーバーウェイトするよう調整した。  今回のインデックスは (more…)

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private 【オランダ】シェル、Climate Action 100+とCO2削減短期目標設定で協働。経営陣報酬もCO2削減に連動

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 エネルギー世界大手蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは12月3日、二酸化炭素排出量の長期削減目標に基づく短期削減目標設定で、気候変動分野の機関投資家イニシアチブ「Climate Action 100+」と協働すること計画を明らかにした。両者が共同声明を発表した。シェルは2017年12月、2050年までに二酸化炭素排出量を半減する長期目標を発表。一方、道筋を示す短期目標が定まらないことを批判されていた。 【参考】【国際】機関投資家の気候変動団体Climate Action 100+、エンゲージメント対象企業を61社追加(2018年7月6日) 【参考】【オランダ】シェル、2050年までに二酸化炭素排出量を半減。3年間で再エネ投資2千億円(2017年12月25日)  今回シェルは、3年から5年の短期目標を設定すると表明。2020年から2050年まで毎年短期目標を設定し続ける。さらに (more…)

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【デンマーク】マースク、2050年までにCO2ネット排出量ゼロ目標。燃料・船舶改革進める

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 海運世界大手デンマークのA.P. モラー・マースクは12月4日、2050年までに二酸化炭素ネット排出量をゼロにする目標を発表した。中間目標として、2030年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロの船舶を実用可能な状態にし、さらに新たな技術革新を加速させる。マースクはすでに2007年比46%の二酸化炭素排出量削減を実現しており、業界平均と比べても9%低い。今後さらに大規模な削減を目指す。  海運大手が二酸化炭素排出量削減に乗り出す一方、経済のグローバル化や経済成長に伴い、世界の海運量は近年大きく増加。海運量当たりの二酸化炭素排出量削減が不可欠となってきている。  マースクは、二酸化炭素ネット排出量ゼロ海運の実現のためには、二酸化炭素ネット排出量ゼロの燃料と二酸化炭素排出量を大幅に抑えた造船が必要と言及。陸運では電気自動車等の可能性も出てきているが、海運では航行距離が長い上に、洋上には充電ステーションが設置しにくいため、別のソリューションが必要となる。同社は、過去4年間で省エネに、毎年10億米ドルを投資し、50人以上のエンジニアも投入しているが、マースクのSøren Toft COOは「今後5年から10年がカギを握る」と表明した。 【参照ページ】Maersk sets net zero co2 emission target by 2050

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