【イギリス】ロンドン市やUK100加盟都市、英政府に大気汚染規制強化を要求。旧型車両廃棄支援等

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 英国自治体の環境イニシアチブ「UK100」に加盟するうち16市政府とロンドンは8月26日、メイ首相やゴーブ環境・食料・農村地域相に対し、大気汚染の迅速な対策を要求する共同書簡を送付した。英政府は2017年に大気汚染低減に向けた政策方針を打ち出していたが、その後自治体や医師団体からも不十分との声が噴出。規制強化の声が強まっている。  UK100は、2015年に発足し、現在の加盟自治体数は91。2016年12月には当時のニック・ハード・ビジネス・エネルギー・産業戦略省の気候変動担当閣外相もUK100に対する支援を表明した。現在ロンドン市は加盟していないが、人口2位以下上位のバーミンガム、グラスゴー、リバプール、リーズ、シェフィールド、エジンバラ、ブリストル、マンチェスター、レスターや、大学都市ケンブリッジ、オックスフォードは全て加盟。UK100は、2050年までの域内電力100%再生可能エネルギーを掲げ、大気汚染等でも知見共有や英政府への提言等を表明している。  今回の共同書簡に署名したのは、バーミンガム、リバプール、リーズ、シェフィールド、ブリストル、マンチェスター、レスター、ブラッドフォード、ノッティンガム、オックスフォード、ピーターバラ、サウサンプトン、ストックポート、カーディフ、ニューカッスルの市長や市議会首脳に加え、ロンドン市長も署名した。加盟都市の人口は2,000万人を超える。スコットランドの自治体は参加していない。  書簡の背景には、昨年の英政府の大気汚染方針がある。ゴーブ環境・食料・農村地域相は昨年、大気汚染方針を発表し、2040年にガソリン・ディーゼル車の走行を禁止したが、自治体が要望していた大気汚染の多い車両の走行に課金できる「大気浄化ゾーン」制度については退けた。また、ディーゼル車両の廃車に助成金を与える制度については、低所得者層に保有が多い一部車種のみに限定したことで、自治体の不満を買った。2018年6月には、ロンドン市、UK100、シンクタンクInstitute for Public Policy Research(IPPR)の共催で、英国自治体初の「Clean Air Summit」を開催。その場で、共同書簡構想が立ち上がった。  今回の共同書簡は、英政府に対し、大気汚染物質の多いタクシーやハイヤー車両に課金できる権限の自治体への付与、旧型車両の買い替え促進スキームの整備、大気浄化ゾーン設定に向けた資金提供や大気汚染の少ない車種の開発資金援助を要求した。  英国では、欧州内でも大気汚染がひどく、欧州司法裁判所(ECJ)は2018年5月、EU基準に違反していると判決。対策に乗り出さない場合は、政府に膨大な罰金を課すと警告している。同時にEU基準違反を指摘された国は、フランス、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア。

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【イギリス】ロンドン市、750億円省エネ支援ファンド新設。三井住友銀行等民間銀行も出資

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 英ロンドンのサディク・カーン市長は7月9日、都市部の省エネ推進に特化した英国最大のファンド「Mayor’s Energy Efficiency Fund(MEEF)」を新設したと発表した。ファンド規模は5億ポンド(約750億円)。ロンドン市内の中小企業及び病院、美術館、図書館、大学等の施設が省エネ設備を導入する際に資金を提供する。投資期間は最大20年。  今回のファンドは、ロンドン市内の二酸化炭素排出量を削減することが狙い。ファンドには、欧州地域開発ファンド(ERDF)とインフラ投資ファンドAmber Infrastructure Groupが出資。さらに、ロイズ銀行グループ、ナショナル・ウエストミンスター銀行、サンタンデール銀行UK、三井住友銀行、トリオドス銀行も出資する。  ファンドの資金提供対象となるのは、バッテリー(蓄電池)、電気自動車(EV)急速充電インフラ、分散型再生可能エネルギー、省エネ、低炭素データセンター等。  ロンドン市は、2050年までに二酸化炭素ネット排出量がゼロの「ゼロ・カーボン・シティ」を実現する考え。 【参照ページ】Mayor’s £500m energy fund to help cut carbon emissions

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【イギリス】治安判事裁、ウーバーにロンドン市内での仮営業免許を15ヶ月付与する考え

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 英ウェストミンスター治安判事裁判所は6月26日、現在ロンドン市でタクシー免許停止抗争中のタクシー配車アプリ世界大手米ウーバー(Uber)に対し、15ヶ月間の仮免許付与が妥当との考えを示した。これによりウーバーはしばらくロンドン市内で営業を継続できる見通し。 【参考】【イギリス】ロンドン交通局、ウーバーの営業免許更新を拒否。賛成派と反対派の対立深まる(2017年10月9日)  ウーバーは2017年9月、ロンドン交通局(TfL)により適切な民間レンタカー会社ではないと判定され、同年9月30日以降営業免許が停止された。ウーバーは不服とし控訴し、現在、治安判事裁判所で裁判中。裁判の判決が出るまでは、免許が暫定的に継続されている。  ロンドン交通局は、犯罪を警察に通報することを怠るケースが見られるとし安全面と治安面から免許の更新を拒否。しかし、今回、治安判事裁判所は、一定の業務改善が見られるとし、15ヶ月間の仮免許を与える考えを示した。  ウーバーは、創業者のトラビス・カラニックCEOが退任し、新たにダラ・コスロシャヒCEOが就任。以後、各国の当局と協調する方針を採っている。

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【イギリス】ロンドン市長、2050年環境戦略発表。CO2削減目標引上げ等。英政府にも協力要請

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 サディク・カーン・ロンドン市長は5月11日、2050年までの環境戦略を掲げた。大気汚染浄化や二酸化炭素排出量削減を打ち出し、英政府にも協力を求めた。戦略策定では、パブリックコメントの募集も実施し、3,000人のロンドン市民、370のステークホルダーが意見を寄せた。  大気汚染では、2025年までに二酸化窒素(NO2)の世界保健機関(WHO)が推奨するガイドライン基準に即した法定規制を導入する。二酸化炭素排出量削減では、2018年から2022年までの計画期間で1990年比40%削減に目標を引き上げる。これによりパリ協定の1.5℃目標に整合するという。そのためにも、太陽光発電設備容量を現行の20倍に増加させるため、2030年前に1GW、2050年までに2GWの太陽光発電パネルを敷設する。  その他、国立公園都市財団と協働し、2019年夏にロンドンを「国立公園都市(National Park City)」を宣言する目標も打ち出した。食品廃棄物も2030年までに半減させる。河川や湿地帯に関する環境インフラの定義も行い、インフラ開発に導入する予定。  カーン市長は、英政府にも協力を要請。特に、輸送分野以外でも二酸化炭素排出量を制限する権限をロンドン市長に認めるよう要望を出した。  またカーン市長は5月11日、児童の肥満対策でも新たな規制方針を発表。ロンドン市内の公共交通機関においてジャンクフード広告を掲載することを禁止すると発表した。ロンドン市は、欧州の中でも肥満児童割合が高く、10歳から11歳の児童のうち40%が肥満状態にある。今後市長は、ロンドン食料戦略の一環として同規制の導入採択を目指す。 【参照ページ】Mayor sets out bold strategy to make London the greenest global city

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【国際】世界主要25都市、2020年以前に大胆な気候変動対応を進める共同宣言。日本の都市は未参加

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 世界主要25都市の市長は11月12日、世界の気候変動を緩和するため、パリ協定が定める2020年からのアクションに先駆け2020年より前に大胆な気候変動アクションプランを導入し始めることや、2050年までに二酸化炭素の純排出量をゼロにし、気候変動に耐えられる都市を作ることを共同で宣言した。  今回の共同宣言に参加した都市は、米ニューヨーク、米ロサンゼルス、米ボストン、米フィラデルフィア、米オースティン、米ポートランド、英ロンドン、仏パリ、伊ミラノ、スペイン・バルセロナ、デンマーク・コペンハーゲン、スウェーデン・ストックホルム、ノルウェー・オスロ、カナダ・バンクーバー、豪メルボルン、メキシコシティ、ブラジル・リオデジャネイロ、ブラジル・サルヴァドール、アルゼンチン・ブエノスアイレス、チリ・サンティアゴ、エクアドル・キト、ベネズエラ・カラカス、南アフリカ・ケープタウン、南アフリカ・ダーバン、ガーナ・アクラ。25都市の合計人口は1億5,000万人。日本の都市は未参加。  今回の計画は、気候変動対策に取り組む世界の大都市で構成される国際的ネットワーク「C40」が協力する。また、Carbon Neutral Cities Alliance等のその他の都市イニシアチブとのコラボレーションも想定されている。二酸化炭素排出の抑制だけでなく、個々の都市で想定される気候関連の問題や自然災害にどう対応するかも考慮される。また、気候変動に対応することの社会的、環境的、経済的なメリットについてもまとめる。  さらに、サブ・サハラ地域のアクラ、ケープタウン、アディスアベバ、ダルエスサラーム、ダーバン、ヨハネスブルク、ラゴス、ナイロビ、ツワネの9都市は、パリ協定の内容に沿うような科学的根拠に基づく長期行動計画を策定するプロジェクト「Cities Matter; Capacity building in sub-Saharan African megacities for transformational climate change mitigation」を進めることでも合意した。こちらは、ドイツの環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が支援する。 【参照ページ】25 Cities Commit to become Emissions Neutral by 2050 to Deliver on their Share of the Paris Agreement

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【国際】世界主要12都市、交通CO2排気量削減で共同宣言。具体的アクション実施。東京都は未参加

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 世界主要12都市の市長は10月23日、都市区域内の交通分野での化石燃料消費削減を目指す共同宣言「C40化石燃料フリー道路宣言(C40 Fossil-Fuel-Free Streets Declaration)」に署名した。参加した都市は、米ロサンゼルス、米シアトル、米オークランド、カナダ・バンクーバー、英ロンドン、仏パリ、伊ミラノ、スペイン・バルセロナ、デンマーク・コペンハーゲン、南アフリカ・ケープタウン、メキシコシティ、エクアドル・キトの市長。東京都は参加していない。  宣言に署名した12都市は4つのことをコミットする。まず、都市道路網での大気汚染量の多い車両数を削減する。また、市政府車両を二酸化炭素排出量ゼロ車両に切り替えるなど範を示す。同時に、徒歩、自動車、公共交通機関の割合を向上させる。そして、自動車会社、交通事業者等と協力し二酸化炭素排出量ゼロ車両への切り替え、都市での車両移動距離も減らす。  各都市は、今後2年ごとに宣言の進捗状況を報告していく。 【参照ページ】Mayors of 12 Pioneering Cities Commit to Create Green and Healthy Streets

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【イギリス】ロンドン交通局、ウーバーの営業免許更新を拒否。賛成派と反対派の対立深まる

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 ロンドン交通局(TfL)は9月22日、タクシー配車アプリ世界大手米ウーバー(Uber)を適切な民間レンタカー会社ではないと判定し、9月30日以降、営業免許を更新しないと発表した。同社はロンドン地域ではドライバー12万人、ユーザー350万人を抱えている。同社は、TfLの決定後21日以内であれば異議を申し立てができ、最終判断が出るまでは営業を継続することができる。ウーバー側は、最終的に免許更新がされない場合は提訴する構えだが、判決までには数ヶ月かかる可能性もある。  ロンドン交通局は、今回の判定の背景について、ドライバーが関与した重大な犯罪行為を含む相次ぐ深刻な事件の報告や、ドライバーの身元調査に対する同社の対応の問題等を踏まえたとし、乗客の安全対策不足があると説明。同局の判断には、ロンドン市のサディク・カーン市長、労働活動家、ウーバーの進出に反対していたロンドン名物タクシー「ブラックキャブ」ドライバーの業界団体も支持している。彼らは「ウーバーは不正なビジネスモデルだ」「規則を遵守し、顧客の安全性を厳守すべき」と主張している。  ウーバーは、営業免許更新をも求め、オンライン署名サービスChange.orgで署名集めを開始。9月26日時点で78万人以上のユーザーから署名を集めた。英メイ首相もこの決定は不平等であると主張し、ロンドン市長を「4万人の雇用を危ぶませ、350万人のユーザーの生活に悪影響を与えた」と非難している。

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【日本】GPIF水野CIO、ロンドンでESG投資の検討状況を紹介。運用会社に大きな期待と役割

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 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道・理事(管理運用業務担当)兼CIOは6月6日、ロンドンで開催されたイベント「RI Europe 2017」の中で基調講演を行い、GPIFが検討しているESG投資の考え方や、運用会社への要望、GPIFの内部での議論状況等の一部を披露した。水野CIOは、英国でのプライベート・エクイティ・ファンドでの経験が長く、安倍政権の公的年金改革の一環として資産運用能力を高めるため、2014年7月にGPIFのアドバイザー兼運用委員会委員に就任。さらに2015年1月、GPIFの理事(管理運用業務担当)兼CIOの職についた。また、GPIFは2015年9月に国連責任投資原則(PRI)に署名して以降ESG投資の検討を開始しており、動向に金融機関や事業会社からの大きな注目が集まっている。  基調講演の冒頭では、水野CIOはGPIFの運用メンバーとして参加した当初、運用成績を上げるため運用資産構成に主眼を置いており、ESG投資には全く関心がなかったことを吐露した。その後、ロサンゼルスでのイベントなどに登壇した際に、会場からESG投資に関する質問を浴びたり、同じく登壇者であった米国年金基金のコメントなどを聞くことをきっかけに、長期投資やESG投資の重要性を急速に認識、知見を吸収していったという。水野CIOは、日本社会の中にはESG投資が重視する「持続可能性(サステナビリティ)」という概念が昔から根付いていると感じており、日本の公的年金基金が国連責任投資原則(PRI)に署名し、責任投資を実施していくことについては当然だと思うようなり、実現に向け周囲に働きかけていったという。  水野CIOは、ESG投資のコンセプトの一つである「マルチステークホルダー」についても自身の考えを披露。基本的な概念に賛同しつつも、欧米では株主だけでなく地域社会や環境など幅広いステークホルダーとの協調を推進する状況であるのに比べ、日本では株主の軽視、従業員または日本の国内社会重視への偏重が見られるとした。そのため、マルチステークホルダーという目的は同じでも、日本では異なる視点が求められることを強調した(注1)。  GPIFが抱えるESG投資への大きな課題としては、法律によりGPIFは投資先企業に対して直接エンゲージメントすることが禁止されていることを挙げた。GPIFは、投資先に直接投資できないことは知られているが、同様にエンゲージメントすることも禁止されているため、株主としてアクションは全て運用会社を通してしか実施できない。また、巨大な投資家であるGPIFは、個別企業や経済界に影響を及ぼす行動をとることも禁止されており、行動に大きな制約が課せられている。水野CIOは、クラスター爆弾企業への投資を実施していることを指摘された際のことを例に出し、厚生労働省からはクラスター爆弾等個別事案での投資継続・引揚げ検討をすることは禁止されているとの指摘を受け、GPIF自身では実施ができないことが多いという難しさを語った。  そのため、水野CIOは、個別事案への独自対応が禁止されているGPIFにとってのESG投資は、ESGインデックス投資が中心となるとの考え方を見せた。GPIFは現在、新たなESGインデックスの作成をインデックス開発会社に要請しているが、背景にはこのような事情があった。しかしながら、水野CIOは、ESGインデックス作成において重要なESG課題(すなわちGPIFが重視するESG課題)について、GPIFから特に提示することはないとした。長期的な企業の価値創造において何が重要となるかを考えることは、運用会社こそが考える仕事であり、運用会社はGPIFからの指針を待つのではなく、自ら考え抜くことが求められると述べた。同時に、ESG投資を重視しない運用会社に対しては、GPIFからの運用委託額を減額する(Smaller Check)ことになるだろうと言及した。  水野CIOは、超長期投資家であるGPIFの内部にとって長期投資の重要性が極めて高いと述べる一方、GPIFの組織内部にも依然として短期志向(ショートターミズム)の考え方を持つ幹部がいることを示唆した。昨今の内部議論の中で、トランプ大統領が天然資源政策を推進する中、気候変動などでのESG投資を開始するタイミングは今でなくてもよいのではないかという声が出たことを紹介。水野CIOは、長期的な視点に立つESG投資が、だからこそ必要なのだと回答したと述べ、GPIF内部でもESG投資への理解を促進している奮闘ぶりを語った(注2)。 (注)記事は、RI Europe 2017の場での直接聞いた内容をもとに執筆した 注1:同文に対し、記事執筆後2017年6月21日にGPIFから以下内容の補足説明を頂いた。株主への配慮が弱かった日本企業も、コーポレートガバナンス・コードの導入などによって株主重視の姿勢を強めつつある。一方、株主利益を優先してきた欧米は、シングルステークホルダーからマルチステークホルダーに移行しており、日本と欧米の企業双方とも、幅広いステークホルダーと協働するあるべき姿に向かっているといえる。 注2:同文に対し、記事執筆後2017年6月21日にGPIFから誤りの指摘を頂いた。正確には、GPIFの内部ではなく、一人の運用委員(経済または金融に関して高い識見を持つ外部のアドバイザーという位置付け)の指摘を紹介したものである。GPIFの2016年12月16日の運用委員会議事要旨によると、ある運用委員は「ブレグジットやトランプ米大統領の誕生のような今年のジオポリティクス(地政学)の大きな地殻変動は、大胆に言うとESGに辟易したグループによる揺り戻しの側面がないとは言えない。個人的にはESGは非常に重要で、その方針を支持している立場であるが、場合によってはこれに逆行する流れが生まれかねないリスクがあることを十分に注意する必要がある」という発言があった。

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【イギリス】ロンドンで地下農園栽培が本格稼働、大都市での地産地消を目指す

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ロンドン南西部にあるクラップハム・コモン(コモンは広場や公園として開放されている公共地)にある地下壕で栽培している野菜が2年以上の試作期間を経て、このほど市場に売り出されることになった。この地下農園は「Growing Underground」という名称が付けられており、大都市初の先駆的野菜農園として注目を集めている。  農園となっている地下壕は第2次世界大戦中に使用されていたトンネル状の掩蔽壕(銃撃や爆撃から人や航空機を守るための施設でバンカーと呼ばれる)で、コモンの下、約30mにわたっている。電気、水道、換気を整備し、ワサビ、葉ニンニク、ルッコラ等の香味野菜を中心に20種類ほど栽培、毎日収穫できるまでになっているという。ロンドン市民にとっては地産地消であり、輸送コストやエネルギーの削減が可能なため、持続可能な食料供給に向けた新たな一歩となる。  地下での栽培は、地上と比べ温度管理が容易な上、害虫も少なく、作物の質も高いという。これらの野菜はインターネット上での直接販売だけでなく、市内のスーパーや卸業者にも販売を行っていく。ミシュラン星付きレストランへの提供も決まっており、こだわり材料と美味なフランス料理が評判のロンドンの弁当宅配サービス、ヴァシュランも関心を寄せている。  この野菜作りが関心を集めているのは、食料や水に関する英国政府や国民の危機感が背景にあるからだ。2014年7月に学術誌“Global Environmental Change”に掲載された論文によると、世界の大都市で最も水ストレスが高い順に、1.東京 2.デリー 3.メキシコ 4.上海 5.北京 6.コルカタ 7.カラチ 8.ロサンジェルス 9.リオデジャネイロ 10.モスクワ と続き、ロンドンは15番目にランクアップされている。「水ストレス」とは水資源の枯渇化を示す代表的な尺度で、特定の地域の「人口1人当たりの利用可能水資源量」を算出し、その地域の水資源の需給のバランスが悪い状況を示している。バース大学等の研究者たちは、世界的な水不足が生じた際に英国の食糧事情は危機に陥ると警告し、政府は2040年までに食料自給率を2倍にするという目標を掲げている。またロンドン前市長のボリス・ジョンソン氏は在任時に、今回の野菜農園の成功を機に「グリーンビジネス・イノベーション」で世界をリードしたいとも述べていた。ロンドン市政府は、水と食糧問題、さらには若者の失業問題の打開策としてグリーンビジネスを促進する考えだ。  一方、英国の環境・食料・農村地域省は先月、食料・農業分野を「見習い学位制度」に組み入れると発表した。同制度は2015年3月に発表され、同年9月から創設された新たな教育システム。デジタルテクノロジーソリューション、自動車、建設、測量、電気工学等、12分野で見習い従業員として就労しつつ大学でも学ぶ仕組みだ。カリキュラム編成が各業界で求められる技能習得が中心となっているため、学位取得と就業訓練が同時に行える。学費は3分の2が政府、3分の1が雇用者負担で、学生の負担はない。食糧・農業分野の見習い学位制度は、国立飲食料スキルアカデミー(NSAFD)に3年制のコースを開設する 政府は見習い学位以外も含め、食料・農業分野での実習生を2020年までに現在の3倍に増員する目標も掲げている。  都市空間を利用した野菜作りは、フランスを本拠地として、プルマン、ノボテル、アイビス等、世界的にホテルチェーンを展開するアコーホテルズでも取り組み始めている。同ホテルが先月発表した情報によると、輸送段階での品質低下と廃棄を避けるために各地域での地産地消を目指し、ホテル内の敷地1,000か所に菜園をつくり、野菜作りを始めるという。  消費の多い大都市での野菜作りは、水や生産物の移動を最小限に抑えつつ需要に応じることができ、環境面では最も望ましい方策といえる。水ストレスが世界1位の東京でも、より積極的な空間利用や農業経営者・農業起業家の育成等、課題は多い。 【参照ページ】Underground herb farm surfaces to strengthen London's food supplies 【参照ページ】Accor to plant 1,000 vegetable gardens to tackle food waste 【参照論文】Water on an urban planet: Urbanization and the reach of urban water infrastructure

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【イギリス】気候変動報告書、ロンドン地下鉄57駅の洪水危険性が極めて高いと発表

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 英紙ガーディアン等の報道によると、ロンドンの地下鉄駅の内、ウォータールー、キングスクロス、ロンドンブリッジ等、57駅は洪水の危険性が極めて高いことがわかった。                                          報道の基となった報告書は、2012年にアメリカを襲った巨大ハリケーン「サンディ」がニューヨークの地下鉄に大きな被害をもたらしたことを受け、調査されたもの。内容は未発表のものだという。同報告書では、気候変動による荒天・嵐が以前より頻発しており、今後の激化が予測されること、ロンドンの地下鉄が洪水の被害を受けるのは「時間の問題」だと記述されていることを受け、各紙は重大な問題と報じている。洪水の原因としては大雨の他、水道管の破裂やアスファルトの多用も指摘されている。  ロンドン交通局が管理・運営する地下鉄駅は270駅あり、毎日350万人以上が利用している。報告書の中で、危険度が「極めて高い」とされた場所は85カ所。その内、57か所は駅であり、28か所はエスカレーター等のシャフトと地下への入り口だという。また危険性が「かなり高い」とされる場所も68カ所あり、その内23が駅だ。最も危険な地下鉄駅は上記の3駅の他、フィンツべリー・パーク、ノッティングヒル・ゲイト、セブンシスターズ、コリアーズ ・ウッド、ストックウェル、マーブルアーチが挙げられている。またそれらのハイリスクな駅が存在する路線としては、多い順に、ノーザン、セントラル、ピカデリー、ジュビリー、ビクトリア、サークル、ベイカールー、ディストリクト、ハマースミス&シティー、メトロポリタンとなっている。通勤客だけでなく多くの観光客にも影響が出る。  洪水の発生は乗客の生命を危険にさらすだけでなく、被害箇所の修復のための閉鎖や電車の遅れ等、経済的にも多大な損失が予測される。昨年6月の大雨の際には洪水のためステップニー・グリーン駅、エンバンクメント駅等のホームが冠水して一時閉鎖となり、ハマースミス&シティ線、サークル線で運休や大幅な遅延が生じた。  ロンドン地下鉄はロンドン市に対し、最も危険な場所および防災設備についての詳細な調査を行う費用として、今後3年間で300万ポンドを要請している。ロンドン市は2011年に市長名で「ロンドン市の気候変動対策」を発表した際、市が管轄する交通システムで洪水に対して最も脆弱なのが地下鉄だと指摘したが、リスク回避の対策はほとんど進んでいない。現在はメトロポリタン線で工事が行われており、随時、他の線でも排水工事等を進める予定だとしているが、本格的な防災対策にまでは発展しない見込みだ。  地下鉄の予算を管轄するロンドン市交通局は、調査の必要性を認識しつつも、今年5月の選挙で決まる市長の決断次第だとしている。市長は交通局理事会のメンバーと議長を任命する権限を持ち、現在は自らが議長職も兼任していることから、今後の展開が注目される。今回メディアに公表された内容は、英国の政策が気候変動に対して不十分であることも指摘しているという。そのため、地下鉄だけでなく、M25(ロンドン周辺の環状高速道路)やイミンガムのコンテナ港、配電網等にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。 【参照記事】57 tube stations at high risk of flooding, says London Underground report 【参照記事】London Underground finds 57 tube stations are at 'high risk' of flooding

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