【国際】世界のエネルギー需要は増加する中、石炭需要は2022年まで横ばい。IEA報告

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 国際エネルギー機関(IEA)は12月18日、石炭エネルギー市場レポート「Coal 2017」を公表した。同レポートによると、世界のエネルギー需要は増加していく中、世界の石炭需要は2022年までほぼ横ばい。石炭のエネルギー供給構成比や発電電源比は減少する。  IEAは、日米欧を中心した29ヶ国が加盟する国際的なエネルギー機関。1970年代のオイルショックを機に、エネルギー供給の安定化を図るため1974年に設立された。  2016年の世界の石炭消費量は、前年比で1.9%減少し、53億5,700万石炭換算tとなった。ガス価格の低下や再生可能エネルギーの台頭、エネルギー効率の改善を背景に、石炭需要は二年連続で減少となった。二年前との比較でも4.2%の減少となっており、IEAが統計を取り始めた過去40年間の中で最大の石炭需要減少期であった1990年代初頭とほぼ同じ状況だという。  2022年の石炭需要はやや戻って55億3,000万石炭換算tになると予測したが、過去5年間の平均消費量と同レベル。その結果、石炭のエネルギー供給構成比は2016年の27%から、2022年には26%にやや減少する。また、石炭火力発電による発電量は、2016年から2022年の間に絶対量で毎年1.2%増加するものの、発電電源比は2022年に36%を下回り、過去最低となる見込み。  地域別では、とりわけ中国とインドに注目。中国では、2016年に石炭火力発電所の数は増えたが、石炭消費量は減少。背景には小規模事業者や家庭での石炭燃焼の削減や、発電所や鉄工所の省エネ対応があると見られている。中国では今後石炭から天然ガスへの大きなシフトが予想されるとしたが、2022年には石炭火力発電のエネルギー供給比は依然55%と予想した。また、石炭採掘では、コスト増の傾向にあり、競争力が落ちていくだろうとした。  インドでは、再生可能エネルギーが急速に伸びているものの、石炭火力発電での石炭消費も伸びている。2022年までの石炭消費伸び率は年間約4%とした。インド政府の発表によると、インドでは2022年から2027年までの間に石炭火力発電所の新設を停止すると見られているが、現在50GW分の石炭火力発電所建設が進んでいる。一方、インドの石炭輸入については、同レポートは減少していくよ予測。政府は石炭輸入を縮小する政策を打ち出しており、国産石炭にシフトさせる見込み。しかし、国産石炭は質が低いため、燃焼効率や大気汚染等での課題を抱えていく。  その他、石炭貿易の動向については、石炭輸出大国であったインドネシアが内需を利用に輸出量を減らしていくため、需給がタイトになると予測した。一方、需要側では、石炭火力発電に対する懸念が日本、韓国、台湾で高まっていると指摘し、先行き不透明だとした。  米国では、トランプ政権誕生後の石炭推進政策により、生産が2022年までに5.1億石炭換算tにまで増加する見込みだが、一方石炭消費は、天然ガスの供給増、再生可能エネルギーの増加、電力需要総量の減少等により、2022年までに毎年約1%減少し、4.5億石炭換算tに縮小すると見通した。その分石炭は輸出に回る。一方、欧州は世界の石炭需要の6%しか占めておらず、今後もさらに割合は減少していく。  同レポートは、石炭回収・利用・貯蔵(CCUS)技術にも言及。CCUSは気候変動緩和のために重要な技術としながらも、展開が遅くれていると指摘。IEAは、加盟国や産業界とともにCCUS普及に取り組んでいると強調した。 【参照ページ】Coal demand to remain flat to 2022, resulting in a decade of stagnation

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【アジア太平洋】アジア開銀、気候変動の社会影響予測報告書発表。10億人が移住を強制される可能性

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 アジア開発銀行(ADB)は7月14日、気候変動がアジア太平洋地域の社会に及ぼす影響を分析した報告書「A Region at Risk: The Human Dimensions of Climate Change in Asia and the Pacific」を発表した。独ポツダム気候影響研究所(PIK)との共同作成。今後の気候変動は、アジア太平洋地域の社会を破壊すると警鐘を鳴らした。発表イベントでは、PIKのHans Joachim Schellnhuber教授は2100年までに10億人が移住を迫られる可能性があると語った。  アジア開発銀行のバンバン・スサントノ知識管理・持続的開発担当担当副総裁は、「気候変動は人類にとって21世紀最大の試練になりうる」と強調。同報告書は、今のペースで地球温暖化が進むと、今世紀末までにアジア太平洋地域では気温が6度上昇すると予測。中でも、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、中国北西部では8度も上昇するという。これらの気温上昇は地域の気象を大きく変え、農業、漁業、陸上・海上の生物多様性、国内・国際安全保障、貿易、都市開発、移民、健康に多大なる影響を与えるという。このシナリオのまま進めば、アジア太平洋地域での持続可能でインクルーシブな発展の望みは潰えてしまうかもしれないとした。  温暖化が進むとアジア太平洋地域では台風やサイクロンの威力が増すと予測されている。また現状のまま進めば、年間降水量はアジア太平洋地域の多くで50%以上増加する一方、パキスタンやアフガニスタンでは20%から50%減少してしまう。沿岸部は高い確率で洪水リスクに晒されることになる。海面が1m上昇すると危機に瀕する世界25都市のうち19都市はアジア太平洋地域に位置している。国別ではフィリピンだけで7都市。最も洪水の被害が甚大になるのはインドネシアで590万人が洪水被害を受けると推計されている。  また洪水は経済損失ももたらし、損失額は2005年の60億米ドルから2050年までには520億米ドルにまで8倍以上も拡大。被害が大きくなる世界都市トップ20のうち、13はアジア太平洋地域で、日本の名古屋、中国の広州、深圳、天津、張江、廈門、インドのムンバイ、チェンナイ、スラート、コルカタ、ベトナムのホーチミン、インドネシアのジャカルタ、タイのバンコクが該当する。  気候変動は食糧価格の高騰にもつながる。このままいけば、2100年までに東南アジア諸国では米の生産高が50%以上も減少。気温が2度上昇に留まったとしても、ウズベキスタンではほぼ全ての穀物の生産高が2050年までに20%から50%も減少する。これにより南アジアでは700万人の児童が栄養不足に。食糧価格の高騰により、輸入コストは2050年までに現状の毎年20億米ドルから150億米ドルに7倍以上に増加すると発表した。  その他、気温が4度上昇すると、2100年までに太平洋西部のサンゴ礁は全て白化。1.5度上昇だとしても89%が白化する。これにより東南アジアの漁業や観光業は大きな被害を受ける。また、中国、インド、パキスタン、バングラデシュを筆頭に毎年330万人が大気汚染で死亡。2050年までに暑さで死亡する年間高齢者数も5万2,000人増加する。マラリアやデング熱などが猛威振るう可能性もある。同時に、水不足等により水力発電所の機能低下、冷却水が入手しにくくなることによる火力発電所の能力低下が予測され、化石燃料に依存することへの脆弱性が高まる。エネルギー危機になれば戦争にもなりうる。  同報告書は、今後の対策として、パリ協定の遵守を強調。そのために、アジア太平洋地域の経済の急速な低炭素化と、脆弱な人々を保護するための気候変動適応に取り組むことが重要だとした。また都市インフラや交通分野での再生可能エネルギーや技術革新を進めるべきだとした。そして、アジア太平洋地域の努力が、世界を持続可能な発展へと向かわせるか否かの明暗を分けると結論づけた。 【参照ページ】Unabated Climate Change Would Reverse the Hard-Earned Development Gains in Asia — New Report 【報告書】A Region at Risk: The Human Dimensions of Climate Change in Asia and the Pacific

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【環境】2016年 CDPレポート 〜気候変動・ウォーター・フォレストとAリスト入りした日本企業〜

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 環境分野で企業の情報開示を促す国際NGOのCDPは、2016年後半に、「気候変動」「ウォーター(水)」「フォレスト(森林)」分野での2016年度レポートを続々と公表しました。この報告書には、各分野の最新動向、世界的な企業動向、各企業の評価が発表されています。 【参考】CDPとは・意味(2016年2月20日)  CDPは世界から年々大きな注目を集めています。2015年から2016年にかけて、世界では持続可能な社会に向けた2つの大きな動きがありました。一つはSD国連持続可能な開発目標(SDGs)の誕生、そしてもう一つは気候変動枠組条約パリ協定の発効です。SDGsでは企業の自発的なコミットメントが求められ、パリ協定で定められた2℃目標に向けた気候変動緩和や気候変動適応は、企業経営にとって新たなリスクと機会を生み出しています。  CDPは、機関投資家と企業の対話を促すために発足しています。機関投資家はそれぞれのプログラムに署名をし活動を支援しており、気候変動では827機関、ウォーターでは643機関、フォレストでは365機関が署名をしています。  CDPが送付してくる質問書に回答することは、企業自身にとっても大きなメリットがあります。気候変動や水、森林の分野での自身のインパクトを測定することにより、現状を正しく認識することができます。また、CDPの質問書は規格化されていて認知度も高いため、自社のレベルと他社との比較も容易に行うことができます。もちろん、情報公開を行い高い評価を得ることで、機関投資家に大きなプラスの判断材料を提供することもできます。  今回は2016年度の各レポートの要点とAリスト入りした日本企業を見ていきます。 CDPレポートの要点 CDP気候変動レポート2016  2016年度の気候変動調査では、企業からの質問書回答は世界1,089社に達し、回答企業の時価総額を合計すると35兆米ドル(約4,000兆円)に達します。また1,089社の温室効果ガス排出量の総計は、世界全体の12%を占める量です。署名している機関投資家数は827、運用資産総額は100兆米ドルに上ります。日本企業の回答社数は261社。日本の回答率は52%。米国の67%、欧州の88%、英国の67%には及びませんが、中国の10%、韓国の38%、インドの24%よりは高い回答率です。 (出所)CDP Climate Change Report 2016(日本語版)  世界全体では、回答企業のうち85%がすでに総量や原単位ベースでの二酸化炭素排出量削減目標を立てています。日本でも海外でも、大企業に対しては、排出量のスコープ1、スコープ2を測定、報告することは義務化されてきています。その上で国際的に新たな取組事項となってきているのが、SBT(科学的根拠に基づく目標設定)とスコープ3の測定、報告です。  SBT設定は、本来、SBTイニシアチブ(SBTi)に申請した後、目標設定内容についての審査を経て、正式に承認される必要があります。しかし、CDPの質問書の回答では、SBTiによる厳密なものだけでなく、自己申告で「科学的根拠に基づく目標設定」としている企業も含まれています。世界全体では、19%の企業が「科学的根拠に基づく目標設定をしている」と回答、また40%の企業が「2年以内に科学的根拠に基づく目標設定をするつもりだ」と回答しています。実際に、SBTiに申請されている排出目標は現在世界全体で85社、そのうち15社のみがSBTiから承認されています。  日本企業に絞ったSBT設定状況では、総量目標設定企業では30社(10%)、原単位目標設定企業では44社(14%)と少数でした。しかし、2年以内にSBT設定する予定とした企業は、総量目標設定企業で147社(51%)、原単位目標設定企業では110社(36%)があり、既にSBT設定している企業と合わせると、2年以内には半数を超えそうな状況で、世界平均よりも高いペースです。SBTiの申請ベースでは、レポート発表時点では19社が申請し、今のところソニーと第一三共のみが承認されています。  SBTiで申請から承認に至らない大きなハードルとなっているのが、スコープ3の測定、報告です。質問書に回答した日本企業のうちスコープ3を測定、報告している企業は、総量目標設定企業で57社(20%)、原単位目標設定企業で54社(18%)ありました。  SBTやスコープ3への対応が比較的早い日本企業ですが、遅れている分野は排出量の外部検証・保証です。外部検証・保証を受けている企業の割合は、日本は61%。世界では、北米63%、欧州70%、アジア71%であり、日本は企業内独自の測定、報告が多いことがわかります。  また同レポートでは、企業が設定している目標がパリ協定の2℃目標に則しているかも分析されています。企業の努力により2030年までの自主目標ベースで二酸化炭素排出量を10億t削減できる見通しです。しかし、2℃目標を達成するには40億t削減の削減が必要と言われており、企業の目標は必要量の4分の1しかありません。より一層の削減努力が求められていきそうです。レポートでは、内部的カーボンプライシングや再生可能エネルギー発電目標設定が、一つの対策例として挙げられています。 CDPウォーターレポート2016  2016年度のウォーター調査では、企業からの質問書回答は世界672社。署名機関投資家数は643、運用資産総額は67兆米ドルです。日本企業の回答社数は261社。日本の回答率は63%。この回答率はカナダの66%に次いで世界2番目に高く、米国は48%、英国50%、フランス46%、ドイツ54%、韓国38%を上回っています。日本の非上場企業への質問書回答社数41は、米国の27社を大きく引き離し断トツの世界1位です。 (出所)CDP Water Report 2016  世界全体では、回答企業のうち、水使用量削減に関する目標を設定している企業は54%に留まっています。気候変動の85%と比べるとかなり低い取組率だと言えます。この背景には、二酸化炭素排出量と異なり妥当な目標設定手法が確立されていないということがあるため、CDPは今後妥当な設定方法の開発に取り組んでいきたいとしています。業界別に見ると、食品や消費財メーカーの取組が進んでいることが分かります。  また日本企業は、回答率は高いものの、取組状況に課題が多いのが実状です。水リスクが企業にもたらす影響度合いを報告している企業の割合では、南アフリカが65%と最も高く、韓国47%、カナダ37%、英国36%、オーストラリア35%、フランス32%、米国29%、トルコ21%、ドイツ20%、日本13%と、調査10ヶ国の中で最低です。世界的に企業は水リスクのインパクト定量化を進めており、水リスクがますます経営判断の中に取り込まれるようになってきています。 CDPフォレストレポート2016  2016年度のウォーター調査では、企業からの質問書回答は世界201社。署名機関投資家数は365、運用資産総額は22兆米ドルです。日本企業の回答社数は32社です。CDP Forestsの質問書は、森林破壊の主たる要因として「木材」「パーム油」「畜牛」「大豆」の4つを定め、それぞれについて調査、分析を行い、企業評価を行っています。  レポートからは、72%の企業が将来に渡り4品国の安定供給に自信を示した一方、42%の企業しか今後5年から10年の森林リスクインパクト評価をしておらず、自信が極めて脆弱なことがわかります。実際に81%の農業関連企業は過去5年間の間に森林リスクが経営に影響を及ぼしたとも回答しています。回答企業全体の売上のうち24%は、上記4品目で占められており、早急なリスク評価への取組を求めています。 Aリスト入りした日本企業 気候変動  世界193社。日本企業は22社。 住友林業(製造業) ソニー(製造業) トヨタ自動車(製造業) 日産自動車(製造業) 横浜ゴム(製造業) 小松製作所(製造業) 東芝(製造業) ナブテスコ(製造業) 三菱電機(製造業) キヤノン(製造業) コニカミノルタ(製造業) アサヒグループホールディングス(食品・消費財) キリンホールディングス(食品・消費財) 日本たばこ産業(食品・消費財) SOMPOホールディングス(金融) 第一生命ホールディングス(金融) 大東建託(不動産) 鹿島建設(建設) 大成建設(建設) 戸田建設(建設) 川崎汽船(サービス) セコム(サービス) ウォーター  世界25社。日本企業は6社。 ソニー(製造業) トヨタ自動車(製造業) 三菱電機(製造業) 花王(食品・消費財) キリンホールディングス(食品・消費財) サントリー食品インターナショナル(食品・消費財)  ソニー、トヨタ自動車、キリンホールディングス、三菱電機の4社は、気候変動とウォーターの双方でAリスト入りを果たしています。 フォレスト(木材)  世界8社。日本企業は0社。 フォレスト(パーム油)  世界2社。日本企業は0社。 フォレスト(畜牛)  世界1社。日本企業は0社。 フォレスト(大豆)  世界1社。日本企業は0社。  フォレスト4品目では、日本企業のAリスト入りはなりませんでした。世界でフォレスト4品目全てでAリスト入りを果たしたのはユニリーバです。    A-リストでは、花王が木材、パーム油の2分野で、大日本印刷が木材で、マツダが木材で、味の素がパーム油でそれぞれA-リスト入りを果たしています。 【報告書】CDP気候変動レポート2016 【報告書】CDP Climate Change Report 2016 【報告書】CDP Water Report 2016 【報告書】CDP Forests Report 2016

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【中国】ファーウェイが2014年サステナビリティ報告、デジタルデバイド解消に向け前進

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 中国の通信機器大手ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)は6月5日、欧州CSR協会のイベントで、同社の2014年サステナビリティレポートを発表した。ファーウェイは非上場企業ながら世界ブランドランキング"BrandZ"でも70位をマークする世界的な大企業。通信機器業界では世界2位、3位を争う企業だ。現在世界170ヶ国以上で事業を営む同社は、日本での知名度はあまり高くない。それでも、ソフトバンク社の基地局の多くを同社が手掛け、NTTドコモやAUも同社製の情報通信端末を販売している。  同社のサステナビリティ戦略は、デジタルデバイドの解消、インターネットの安定供給・安全保障、環境保護推進、共同発展の4分野で構成され、レポートでは4分野のそれぞれの定量ゴールと進捗具合が報告された。 デジタルデバイドの解消  同社の事業は170ヶ国以上、ユーザーは30億人以上に及ぶ。特に、同社の商品は経済的途上国で多く利用されており、地球上のデジタルデバイドの解消に大きく寄与している。一例では、2014年でアフリカのザンビアの地方10県で合計169もの基地局を建設、500以上の村にインターネットを届けることに成功したことが挙げられる。また、内戦により社会的な荒廃が進んだ南スーダンでは学校支援を実施。毎月1Gバイトまでは無償で回線を提供し、生活や授業などを支援するプログラムも進めた。この取り組みにより約3,000人の生徒にインターネット接続の道を創設することができた。世界には以前43億人がインターネットに接続できない環境にあると言われており、同社はその43億人にもサービス拡大していけるような状況を創ることを目指している。  デジタルデバイドの解消にはユーザー側の支援だけでなく、デジタルサービスを提供する技術者の教育も欠かせない。しかしながら、ICT教育が以前整備されていない地域は世界中に多い。同社は、2014年までに世界各地に技術トレーニングセンターを45も開設、各地の技術力向上のための教育に力を入れている。目玉は、大学などの高等教育機関とタイアップし能力の高い学生には奨学金やインターン機会を提供、タイアップ機関は現在35ヶ国100大学以上に及ぶ。すでに1万人以上の学生がどうプログラムにより教育機関で授業を受けることができた。今後は、ICT技術を活用した公共インフラの改善や効率化に積極的に取り組んでいくという。 インターネットの安定供給・安全保障  インターネット回線の安定運用は同社が力を入れている分野の一つだ。170以上の国々で30億人以上のネットワークを支えている同社は、非常時にも回線を落とさないことを目標としている。2014年はブラジル開催のFIFAワールドカップやソチ冬季五輪など大規模イベントや中国雲南省での大地震などが発生したが、世界中の回線を落とさずサービス提供することに成功している。サイバーセキュリティの分野では、マレーシアで開催されたサイバーセキュリティーマレーシアで「2014年インターネットセキュリティー機構」として表彰されている。 環境保護推進  環境保護推進の分野では消費電力削減に関するものが多い。回線あたりの消費電力を他社製品に比べ20%削減、これにより18万トンの二酸化炭素排出量削減に寄与した。さらに、2012年比では無線通信機器のエネルギー効率を23%向上。事業運営上の消費電力削減量は中国地域だけで4万 消費電力以外では、パッケージ素材のリサイクルや軽量素材化などで、4.5万平米の森林伐採を減らし、結果的に約1.9万トンの二酸化炭素を削減できた。水使用の分野では、TÜV SÜDと協働し、水のフットプリントの監査も受けた。さらに、製品筐体にバイオプラスチックに変え、インクを大豆由来のものにするなどそれ以外にも多くを取り組んできている。 共同発展  共同発展の分野では、従業員政策が多い。2014年だけで35,000人を中国国外で採用し、そのうち75%が現地国民を採用した。女性の管理職比率も8.8%に達した。労働災害率も2013年比34%減少し、100万労働時間あたり0.06に留めた。また、サプライヤーとの共同の面では、全サプライヤーとの間で結ぶSupplier Sustainability Agreementの契約率を100%達成し、重要性の高いサプライヤーに対しては現地での実地監査も行った。同社のサプライヤー政策では、基準の100%達成を初めから求めることはせず、100%基準達成に向けて共同して取り組んでいくというスタンスを採っている。もちろん、改善傾向が見られないサプライヤーに対しては取引を停止させるという。 【サステナビリティレポート】Huawei Sustainability Report

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【ランキング】2015年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」

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※最新年度版は【ランキング】2017年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」へ 世界経済フォーラムが毎年1月にスイス東部のダボスで開催するダボス会議。同フォーラムで毎年恒例のセッションとなっているのが“Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100 Index)であり、この結果がカナダの出版社により「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。それではまず2015年、上位にランクインした企業から見て行きましょう。 Global 100 トップ10 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成) 昨年に引き続きトップ10にランクインしたのは、 バイオジェン・アイデック アディダス ケッペル ランド ケスコ BMW セントリカ シュナイダーエレクトリック の7社。つまり大半は2年連続での上位ランクインということになります。2014年のダボス会議の記事「【ランキング】2014年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」」でもお話したように、最近は上位の顔ぶれが安定しつつあり、事実この7社のうち6社は三年連続でのトップ10入りとなります。このトレンドは全体にも言え、全100社のうち64社は昨年から、そのうち45社は2年前から、つまり三年連続でランクインをしています。 また、日本でも知名度の高い以下のような企業もランクインしています。 14位 ロレアル (フランス 化粧品) 18位 ジョンソン&ジョンソン (アメリカ 医薬品) 22位 ユニリーバ (イギリス 消費財) 26位 コカコーラ (アメリカ 食品) 33位 ノキア (フィンランド ハードウェア) 45位 サムソン電子 (韓国 電機) 50位 エーザイ (日本 医薬品) 51位 LG電子 (韓国 電機) 54位 アクセンチュア (アイルランド IT) 55位 シーメンス (ドイツ 電機) 56位 インテル (アメリカ 半導体) 60位 ダイムラー (ドイツ 自動車) 61位 Adobe (アメリカ ソフトウェア) 69位 シスコシステムズ (アメリカ ハードウェア) 73位 レノボ グループ (中国 ハードウェア) 74位 GE (アメリカ 電機) 75位 H&M (スウェーデン 消費財) 81位 ルノー (フランス 自動車) 82位 BNP パリバ (フランス 金融) 88位 ロンドン証券取引所グループ (イギリス 金融) Global 100 地域別社数ランキング 次に地域別ランクイン企業数に着目してみましょう。 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成) ヨーロッパ、北米の企業で84社と8割以上を占めていることがお分かりいただけると思います。 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成) さらに過去5年間の地域別ランクイン企業数の変化に着目すると、ヨーロッパが多く占めている一方、北米地域の躍進が目覚ましいことがわかります。それに対してアジア企業のランクイン数は右肩下がりになっています。この原因は何なのでしょうか。 Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング そこで今度はアジアの詳細に着目してみましょう。 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成) 過去5年間で著しくランクイン数を減らしているのは、日本です。実際、2015年にランクインしたのは50位のエーザイのみ。他方、韓国やシンガポールは着実にランクイン数を増やしており、特にシンガポールはケッペル ランド社が2015年のグローバル100で4位につけるに至っています。また今回、2005年にランキングが始まって以来初めて香港以外の中国企業としてレノボグループがランクインしたことも注目すべき点だと言えます。 ランキングの基準①(4つのスクリーニング) それでは、具体的にどのようなプロセスを経てGlobal 100が選出されているかをご紹介しましょう。まず、毎年10月1日時点において時価総額200万米ドル以上の企業が自動的に評価対象となります。その後に4段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外されます(但し、昨年のGlobal 100ランクイン企業は、制裁スクリーニングに引っかからない限り、自動的にランキングの対象となります)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされていきます。スクリーニングは以下の4点により行われます。 サステナビリティ情報開示 財務状況 製品カテゴリー 制裁 1. サステナビリティ情報開示 まず最初にスクリーニングがなされるのは、サステナビリティ情報の開示の有無によってです。開示情報は以下の12項目に分類されます。 エネルギー生産性 炭素生産性 水生産性 廃棄物生産性 リーダーシップ多様性 役員報酬制度 CEO報酬と従業員平均報酬の比率 年金保護 離職率 安全生産性 イノベーション能力 税納付 この12項目のうち業界ごとに「優先的KPI」が定められており、その優先的KPIを9つ以上開示していれば、このスクリーニングを突破することができます。業界ごとに定められる「優先的KPI」は、業界内に属している企業のうち最低でも10%の企業が開示しているものが選定されます。 2. 財務状況 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされます。具体的には以下の要件のうち5つ以上満たす必要があります。 純利益が黒字であること 営業キャッシュフローが黒字であること (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと 流動比率が高まっていないこと 前年に普通株式発行を行っていないこと 粗利益が前年より増加していること 総資産回転率が向上していること 3. 製品カテゴリー 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われます。以下のいずれかに該当する企業はランキング対象から除外されます。 GICS業界分類でタバコ業界に属する企業 GICS業界分類で宇宙・防衛業界に属し、かつ防衛事業が売上の半分以上を占める企業 4. 制裁 最後に、2014年10月1日までの過去12ヶ月の間に、サステナビリティに関する問題で罰金を受けていないかがチェックされます。罰金額が総収益に占める割合の大きさが業界内で上位(ワースト)25%以内にいなければ、このスクリーニングを通過します。 ランキングの基準②(スコアリング) スコアリングする際の評価基準は、「サステナビリティ情報開示」のスクリーニングで使用した優先的KPIが用いられます。優先的KPIごとの数値の平均がその企業のスコアとなり、そのスコアに準じて順位が決まります。また、評価基準は毎年少しずつ変更がありましたが、2015年は前年からの変更はありませんでした。 エネルギー生産性: 売上 ÷ 直接的および間接的なエネルギー消費量 炭素生産性: 売上 ÷ 二酸化炭素排出量 水生産性: 売上 ÷ 水使用量 廃棄物生産性: 売上 ÷ 廃棄物排出量 リーダーシップ多様性: 女性役員の割合 役員報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無 CEO報酬と従業員平均報酬の比率 年金保護: 未積立年金債務 ÷ 時価総額 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数 安全生産性: 事故死者数+20万人時間当りの労働喪失時間数 イノベーション能力: R&D投資 ÷ 売上 税納付: 税金納付額 ÷ EBITDA 2015年のランキング発表を受けて Global 100のランキング上位の企業は順位を守り続けているものの、変化がないわけではなく、むしろランクインしている企業全体のスコアは前年比で向上しています。これは現状ランク外にいる企業が新たにランクインするハードルが高くなっていることを意味しており、国際的に高い評価を得ることは以前と比べ難しくなってきていると言えます。 それでは、企業にとって、Global 100にランクインすることにはどのような意味があるでしょうか。厳しいスクリーニングを通過し、財務・非財務面で高い評価を得たGlobal 100企業の投資リターンは、ベンチマーク指標であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) に比べ高いことが統計的に報告されています。すなわち、Global 100に採用されることで、投資家からの高い評価を得やすくなるということです。 実は、今回選定されたGlobal 100企業の投資パフォーマンスは、初めてMSCI ACWIを下回るという数値も観測されました。しかしこの数値の背景には、両インデックスの選定基準ではなく、単純に為替による影響が大きいと言われています。2014年は米ドルが多くの通貨に対して高騰するというマクロ経済環境となりましたが、Global 100企業の米ドル取引割合が19%に過ぎないのに対し、MSCI ACWIを構成する企業の米ドル取引割合は約50%でした。結果的に、米ドルベースでの取引が多いMSCI ACWIが為替益の恩恵を受けやすく、Global 100よりパフォーマンスが上がったと分析されています。そのため、Global 100企業に対する投資家の期待は引き続き高くなっていくと思われます。 CorporateKnights以外にもいろいろな機関が評価指標やランキングを発表する中、依然として大きな関心を集めるGlobal 100。海外のグローバル企業の取組や意識のレベルが大きく向上する中、日本企業の今後の動きにも期待していきたいです。

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2015/01/27 体系的に学ぶ

【戦略】欧米CSRの最前線 〜Sustainable Brands 2014参加レポート〜

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世界の先進企業のCSR・サステナビリティマネジメント事例が共有されるカンファンレンス、Sustainable Brands。毎年、世界約10都市で開催されており、私も今年10月に開催されたアメリカ・ボストン、11月に開催されたイギリス・ロンドンの会に参加してきました。カンファレンスは通常、2日間にわたる各企業のプレゼンテーションと、別日程1日で催される少人数のワークショップで構成。30社ほどの企業がプレゼンテーションを行い、会場にはコーポレート・サステナビリティ分野の関係者300人ほどが集います。欧米では今、何がホットな話題となっているのか。ボストン、ロンドンの2回分のイベントをダイジェストでご紹介します。 Sustainable Brands New Metrics '14 in Boston Sustainable Brands New Metricsは、サステナビリティ分野の中でも「測定」「データ管理」「定量マネジメント」「レポーティング」というMetrics(尺度・測定)にスポットを当てた特別イベント。今年からマサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン経営大学院のサポートを得てパワーアップしました。 環境・社会分野のデータ収集 欧米先進企業の特徴は、環境・社会に対するアウトプットを本業の成果指標の中に組み込んできているということです。データ収集の点でも様々な進化を遂げてきています。従来、データ計測が進んできた環境分野に対し、遅れが指摘されてきたのがソーシャル分野。ここにきて、NPOやIT企業が中心となりソーシャル分野のデータ測定インフラが整備されつつあります。 フェアトレード認証の民間団体Fair Trade USAは、フェアトレードの実施状況に関する情報を、一次産品の製造現場に従事する生産者自身から収集する体制を構築。フェアトレードの履行を確実にするとともに、生産者の生活の改善度合いを測定する手法を実現しました。オーガニック茶ブランドで全米一の売上を誇るHonest Tea社は、Fair Trade USAからの認証を獲得することで、自社製品のブランドを確実にするとともに、社会に対する正のインパクトをKPIとして測る運用を開始しています。 米国のITスタートアップであるSourceMap社は、製品のサプライチェーンを可視化して把握できるウェブツールをリリース、紛争鉱物などサプライチェーン上の課題に対する状況把握が進むことが期待されています。 オランダと米国に本拠地を置くサステナビリティ・コンサルティング企業大手のPRè Sustainability社は、商品開発の分野で社会問題へのインパクトを測定していくためのガイドライン、"Handbook for Product Social Impact Assessment"を最近リリース。すでに欧米を代表する企業であるAkzoNobel, BASF, BMW, L'Oréal, Marks&Spencer, Philips等が同社のコンサルティングのもとでガイドラインを本業の事業管理に取り入れています。 一方、環境分野のデータ測定も高度化しています。IT世界大手のHP社は、生物多様性の分野で存在感を発揮する国際NGOのConservation Internationalと提携し、ビッグデータマネジメントを環境測定分野に応用するプロジェクトをスタート。プロジェクトでは、世界17ヶ所の熱帯雨林で275種の生物を常時モニタリングするデータ測定インフラを構築し、190万枚の画像や400万種類の環境データを含む合計3テラバイトの常時データ測定を実現。実社会の複雑なデータを統合して分析・予測できるツールとしては世界に類をみない規模と精度だと言います。このプロジェクトはHPが掲げる環境への貢献だけでなく、HP社自身のR&Dとしても価値を発揮しているとのことです。 データの報告 データ報告の分野での注目は、やはり統合報告<IR>、そして米国で浸透しつつあるSASBの動きです。<IR>に関する企業報告では、<IR>ガイドライン作成にも加わったNovo NordiskやSAPがプレゼンテーションを担当し、同社においてはすでに<IR>がCXOレベルの経営サイクルの中心に据えられており、これなしでは経営管理の議論が成立し得ない次元まで来ているという共有がありました。一方、多くの企業が抱える課題、<IR>が曖昧なガイドラインでしかなく何を作ればいいのかわからない、については、「曖昧なものになってしまったことには、議論に参加していた我々にも責任があり、申し訳ないと感じてる。他社への範を示すためにも、弊社内で統合報告のあり方を進化させ、産業界をリードしていく責任を果たしたい。」と反省と抱負を吐露していました。また、財務・環境・社会という膨大なデータをグループ各社から収集するという難題をどう克服しているのかについては、「環境・社会に関するデータは、従来各部署から予算データを報告してもらっていたフローをそのまま踏襲している。報告ツールは、ある部門からはエクセルだったり、ある部門からはERPだったりと、柔軟に対応している。社会・環境の社内報告のために特別なツールを導入してはいない。」という回答でした。 SASBについては、企業だけでなく、金融業界からの参加者からも注目が集まっていました(SASBについては「【レポーティング】SASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)を徹底解説」で詳しく紹介しています)。 投資家からの発表セッションもありました。UBSやBloombergからのプレゼンテーションでは、投資家内でESG格付の重要性が年々増加していること、ESG考慮が企業の中長期的な成長と密接にリンクしているという内容が強調されていました。また、ESG格付が様々な団体によって設立されている中、業界全体を束ねる団体であるGISRからは、ESG格付自身の認証制度を整備しているという報告がありました。業界のネットワーク組織であるGISRには、金融業界からはUBS、ドイツ証券、モルガン・スタンレー、アセットマネジメント世界大手のBlackrock、情報大手のBloomberg、コンサルティング業界からは大手のCeresやSustainAbility、デロイト・トーマツ、事業会社からはP&G、マクドナルド、ボッシュ、民間団体からはGRI、SASB、CDP、BSR、Oxfamなどが参加しており、業界を牽引する知が結集しています。 事業へのデータ活用 収集してきたデータを、どのように商品開発に活かすのか。この問いに対する事例も紹介されていました。会場から大きな喝采を集めたのは、ホテル予約の世界大手TripAdvisor社。ホテル業界に対するグリーンホテル化(環境に配慮したホテル経営)への啓蒙という事例です。耳目を集めたポイントは「グリーンホテル化の取組は、当初は大きな事業になるとは考えもしなかった」というプロジェクト開始時点での内部事情です。社内からは「本当に宿泊客はグリーンホテルに泊まりたいと思っているのか?」と懐疑的な見方が噴出、さらに肝心のホテル業界自身からは「我々の経験上、グリーンホテル化は宿泊客増加に寄与しない。無駄な試みだ。」と大反対を受けたと言います。そんな逆風の中、TripAdvisorは、自分たちの企業理念の遂行のため、とりあえずスタートさせてみようという姿勢で、画面上のホテル検索をする際にグリーンホテル度合いで絞り込める機能を搭載します。結果として得られたのは、想定以上にこの絞り込み機能を使う人が多かったというデータ。このデータを武器に、TripAdvisorはホテルに対しグリーンホテルに関する情報開示を要求していきます。今やグリーンホテルの情報開示を渋るホテルから「御社のグリーンホテルへの取組のせいで自社の集客力が減ってきている。どうしてくれるのか?」という非難も浴びる程までに。そのような非難について同社は「だからグリーンホテル化が大事だと言っているのです。情報を開示してください。」と強気を貫いています。このグリーンホテル化を呼びかけられる力強さの背景には、TripAdvisor社の事業モデル自体が関係しているようです。TripAdvisor社のホテル予約サービスは、直接ホテルと契約しているのではなく、ExpediaやHotels.com等ホテル予約サイトのメタ価格比較サイトという形式をとっており、ホテルとは直接の利害関係はありません。ホテルはどの予約サイトを選ぼうとも、結果的にTripAdvisorの影響を受けることとなります。TripAdvisorはこのような自社の「立ち位置」を理解した上で、ホテル業界への強気の啓蒙を推進しているのです。 Sustainable Brands 2014 London CSR経営で注目を集めるイギリス。Sustainable Brandsは西欧地域でのカンファレンス実施国として以前からロンドンを会場とし、参加者はフランス、ドイツなどヨーロッパ各地から集まるイベントになっています。 サステナビリティと事業経営の一体化 ロンドン会場で目立ったのは、サステナビリティやCSRを「ついでにやるもの」ではなく、事業経営そのものに統合している企業事例の報告でした。前回のボストン会場でも報告を行った化学業界世界最大手の独BASFは、環境・社会ファクターをもとに事業や製品のポートフォリオの組換えまでを実施している事例を紹介していました。同社では、自社が定める環境・社会目標に対し製品の到達度を測り、Accelerator, Performer, Transitioner, Challengedの4段階に分類、Acceleratorの割合を増やして、Challengedの割合を減らすことに経営資源を集中させています。環境・社会を経営の中心に据えるBASFの考えの背景には、「社会・環境に寄与する商品ほど顧客に支持されていくはずだ」という根本的な思想があります。経済界の需要を先取りし、自社のブランドとポジショニングを際立たせる尺度として、社会・環境要素を大々的に取り入れているのです。 アルコール飲料世界大手のHeinekenは、同社のセンセーショナルなテレビCMを紹介していました。内容は、ダンスクラブを舞台とした実験について。いまいちなDJのもとではダンスクラブの客が盛り上がらず気晴らしにビールの購入数が増えるのに対し、優秀なDJの日には客がダンスに集中しビールの購入数が少なくて済む。この"Dance more, Drink less"というキャンペーンは、Heinekenにとってどんなメリットがあるのでしょうか。 一見、Heinekenの売上を傷つけかねないこのキャンペーン。なぜHeinekenの上級経営ボードは承認したのでしょうか。プレゼンターの説明は、「このキャンペーンにより短期的に売上は落ちるかもしれない。だが、長期的な視点に立つと、人々の幸福を最重要と考える同社の姿勢を顧客に示すことで、強い企業ブランドを構築できる」というものでした。会場からも"Heinekenはそこまでやるのか"という驚きの眼差しが集まっていました。 サーキュラーエコノミー ロンドンではサーキュラーエコノミーに対する取組事例も豊富に紹介されました。サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、日本語にすると循環型経済。一見すると非営利団体の活動のように見えますが、企業自身の取組です。自社製品の素材の有効活用を進めていこうという経営戦略のことを指し、今年に入り、マッキンゼー・アンド・カンパニー社からも"Moving toward a circular economy"という提唱があり、製造業を中心に注目されている概念です。 サーキュラーエコノミーの推進については、複数の企業から発表がありました。アルミニウム総合メーカー世界大手のNovelisは、同社製品を顧客から回収し再利用していく比率を2015年までに80%に高めることを経営目標として掲げ、顧客からの資源回収及び再利用を活用した製造方式へ転換するための設備投資へと大きく舵を切っているとのこと。また、電子部品大手のPhilipsは、製品の「修理・商品の再利用・素材の再利用」を高めていくだけでなく、さらにサーキュラーエコノミーを徹底するために事業モデルを「製品販売からサービス提供へ」とシフトさせていると言います。具体的な事例としては、ニューヨークの駐車場のケースがあり、電球を売るのではなく、「灯り」というサービスを提供する契約を駐車場と交わすことで、より耐久性が高く廃棄が少ない電球を開発するインセンティブを同社内でも高めているとのことです。 社外からの圧力 サステナビリティ経営が推進される要因には、企業の自助努力だけではなく、社外からの圧力もあります。Greenpeaceは、近年「IT企業のクリーンエネルギー促進」をターゲットとし、FacebookやAmazonなどの電力消費量や再生可能エネルギーによる電力シフトを独自調査し、成績の悪いAmazonに対しネガティブキャンペーンを張っているという報告がありました。同団体は、ネガティブキャンペーンとして動画やパンフレットなどをインターネット上で拡散させ、さらにCEOに対してレターを送って直接改善を迫るということまで手がけています。 気候変動に対する警鐘とガイドライン作成で有名なCDPは、最近は水問題に大きな関心を寄せているようです。CDPは、水汚染によって工場が活動停止に追い込まれた事例などを取り上げ、企業のサプライチェーンにとって水問題が死活問題となっていると断言していました。 今後のSustainable Brands開催 次回以降のSustainable Brandsの開催予定は、来年3月にタイ・バンコク、4月にスペイン・バルセロナ、5月にトルコ・イスタンブール、6月にアメリカ・サンディエゴ、8月にブラジル・リオデジャネイロ、9月にアルゼンチン・ブエノスアイレス、10月にアメリカ・ボストン、12月にマレーシア・イスタンブールが計画されています。 文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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2014/11/13 体系的に学ぶ

【戦略】アジアCSRの最新事情 〜CSRアジアサミット2014参加レポート〜

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2014年9月16日、17日、アジア地域で大きなネットワークを持つCSRコンサルティング会社・CSRアジアが香港で年次イベント「CSRアジアサミット2014」を開催、10周年となる今回のイベントには、アジア各国から事業会社、投資銀行、コンサルティング会社、NGOなど600人を超える参加者がアジアの20以上の国から集まりました。イベントでは、基調講演のほか24のテーマセッションが開催、会場となった香港のシャングリラ・ホテルにはところ狭しと人が往来する姿がありました。Sustainable Japanも今回のイベントに参加してきましたので、そこで議論されていた内容や、参加者の関心事などを踏まえ、アジア地域におけるCSRの「今」をお届けしたいと思います。 イベントの主催者であるCSRアジア、香港にグローバル拠点を置くCSRのリサーチ・コンサルティング会社で、10年前に3人のオーストラリア人によって設立されました。10年前と言えば日本でもCSRという言葉が環境経営という側面から始まった時とほぼ同時期です。その後、CSRアジアは、アジア地域のローカル企業や欧米資本企業のCSR戦略の構築を手がけ、今では中国、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、イギリス、日本に拠点を拡大しています。 今回のイベントで、参加者の関心を大きく集めていたように見えたのは、「サプライチェーン対応」「CSVと測定」「統合報告・GRI」「ESG投資」です。 サプライチェーン対応 サプライチェーンや生産現場改善というテーマには、ローカル事業会社、特にグローバルソーシングと英語では呼ばれている製造受託企業の参加者が大きな関心を持っている感じでした。中国、東南アジア、南アジアの地域は、グローバルサプライチェーンの中に組み込まれているところが多く、欧米企業が課す環境・労働規制の現状や対応方法についての関心が高いのかもしれません。サプライチェーンのセッションでは、H&Mやリーバイス、そして日本からも富士ゼロックスがアジア地域における労働環境の改善を共有していました。興味深かったのは、参加者の年齢層です。サプライチェーンの参加者には、欧米やオーストラリアなどからのNGO関係者の参加も多かったのですが、アジアのローカル事業会社からは若手の参加も目立ちました。従業員3,000人を誇る香港のグローバルソーシング企業の20代後半の女性参加者がいたので話を聞いてみると、「最近は社内でのCSRに関する関心が高まってる。ここで学んだものを社内に持ち帰って、すぐに業務に活かしたい。」と話してくれました。「こんなに若いのに自分たちだけで参加してるんですか?返ったら報告書とか書くんですか?」日本人的なこんな質問をしてみると、「別に若いのに会社を代表してるなんて変なことじゃないですよ(笑)。報告書って何ですか?そんなものはありません。自分たちの業務でしっかり活かしていいけばいいんじゃないですか?」との回答。ちなみに、このイベントの参加費用は一人8万円以上と決して安くはないのですが、香港の会社が若手に大きな権限と責任を与えている様子を垣間見ることもできました。 CSVと測定 このテーマも、コミュニティ投資が進むアジア地域ならではの関心事かもしれません。イベントの基調講演の中で、コカコーラ財団の理事長はコカコーラグループが"Me, We, the World"というコンセプトを作成し、水、女性支援、教育機会への投資の3つを事業活動に影響を与える重要テーマとして定め、この分野に特化したコミュニティ投資と測定を行っていることを紹介していました。測定のセッションには、事業会社だけでなく、NGOからの参加者も多く、NGOの活動においても「アウトカム(活動がもたらした効果)」を重視していこうという姿勢を伺うことができました。NGOの参加者側においても、アジア地域で活動をしている欧米・オーストラリア人と、アジア人の間にはまだ状況や関心の違いがあるようで、欧米・オーストラリア人がCSV・測定・SROIという概念をかなりキャッチアップしているのに比べ、ローカルNGOを運営する中国人参加者からは「最貧層や災害援助など最前線で活動をしている私たちからしたら、実際に必要なのは資金だ。企業の事業活動には影響の少ない分野なのかもしれないこの最前線に対し、企業はもっと理解を示し、資金提供をして欲しい」と切羽詰まった意見も出ていました。 NGO絡みの話以外では、スタンダード・チャータード銀行が自社の事業活動そのものをSROIで評価しレポーティングしているというプレゼンテーションもありました。彼はもともとCSRやサステナビリティ畑ではなく、資本市場部門の出身者であり、最初は何を測定していくべきか悩んだといいますが、リーマンショックで銀行が社会から大きな非難を浴びたのを機に、「バンカーとして自分の仕事に誇りが持てなくなっていた。銀行が社会に産みだしているプラスの効果とマイナスの効果を純粋に知りたいという欲求が自然と生まれてきたし、社内からも声が高まってきた。」と、SROI測定に大きな拍車がかかったことを吐露してくれました。同社にとってSROIの測定は、すでに一過性のものから毎年の事業戦略構築の中に組み込まれており、グループ経営においてすでに無くてはならない存在になっていると言います。 統合報告・GRI 日本でも徐々に関心が高まっている統合報告やGRIのG4についても、アジア企業は同様に、もしくは日本企業以上に関心を寄せています。アジア企業のCSR部門にとって、目下一番の悩みどころは「マテリアリティ特定」と言っても過言ではないかもしれません。レポーティングのワークショップでは、コンサルタントからマテリアリティ特定の業務フローが紹介されましたが、会場からは「ステークホルダーのうち、重要なものと、重要でないものを分けることは、考えとしてはわかるが、現実にはそんなことはできない」「株主のうち、少数株主の意見は重要でないと位置づけるということなのか?」と現場の難しさも率直に飛び出していました。講師役を担当したオーストラリアのコンサルティング会社Helikonia社からは、「実際にはマテリアリティ特定はサイエンスというよりアートな世界。機械的にマテリアルな(重要な)ステークホルダーやイシューを特定する方程式は存在しない。エンゲージメントで声を集めても、経営陣の判断で優先順位が変わることもあるし、そのような政治的な要素も大きく働く。様々なコミュニケーションを通じて柔軟に対応していくしかないし、今年はこのテーマ、来年はこのテーマというように、順番に対象のステークホルダーを変えていくことも可能だ」と回答していました。一般的にマテリアリティは年々変わるものではないとも言われていますが、他社との関係を重んじるアジア地域特有の環境では、柔軟なマテリアリティ特定が模索されているようです。 ESG投資 資本市場でのESG考慮をテーマとしたセッションも多くの参加者を集めていました。セッションには、クレディ・スイス、HSBC、BNPパリバ、Robecoといった世界有数の投資銀行や投資顧問企業がプレゼンターを務め、経済的リターンを追求する上でも非財務情報(ESG)の果たす役割の大きさが認識されてきており、投資先選定の上でESGがスクリーニング要素として取り入れられてきたという説明が各社からありました。一方で、会場から「アジアのローカルの金融機関はとてもとてもそんなことを考えている様子はないと感じる。」というアジア人参加者からの意見に対し、主催者であるCSRアジアからも「今回のセッションにも本当はアジアの金融機関に参加してほしくて参加依頼に尽力した。だが結果的にはどこも受けてくれず、欧米の金融機関だけが揃う形となってしまったのは残念だった。欧米とアジアの金融機関の間にはまだまだ考え方の開きが大きい。」と嘆きの声がありました。 ------------------------------------------------ イベントに参加してみた総評として、アジアのローカル企業は、もちろん実行レベルには大きな差がありますが、CSRやサステナビリティに関する欧米の情報を熱心にキャッチアップしようとしていると感じました。実際に参加者は、主に英語メディアで欧米から流れてくる業界の専門用語を次々と口にしていました。Sustainable Japanでは、情報量の豊富な欧米のニュースを多く扱うことが従来どうしても多くなってしまっていたのですが、これからはアジア企業の取組も出来る限り取り上げていこうと考えています。

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2014/09/28 体系的に学ぶ

【国際】国際取引所連合、サステナビリティ報告の統一基準づくりを開始

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サステナビリティレポートのフォーマット統一の動きが投資家サイドから始まってきた。世界各国の証券取引所が加盟する国際取引所連合(WFE)が2014年6月ワーキング・グループを立ち上げ、サステナビリティ関連情報の情報開示についての議論を開始した。それに呼応する形で、サステナビリティ関連のシンクタンクである米Ceresは、世界最大の資産運用会社BlackRockを含む期間投資家と共同で、企業のサステナビリティ報告についての統一基準案を国際取引所連合を通じて加盟証券取引所各社に提起した。投資家サイドがサステナビリティ報告のフォーマット統一に向けて動き出した背景には、ESG投資についての関心の高まりが関係している。アメリカを代表する証券取引所NASDAQ OMXグループを率いるRobert Greifeld CEOは、「情報を規格化され比較可能なものとしていくために、世界中全ての証券取引所が共同歩調を取る必要がある。いずれの証券取引所も遅れを取るような状況にはしない。」と、ESG情報を含めた銘柄情報の規格化が投資家にとって重要性を増している市場環境を語った。実際に、NASDAQ OMXグループは過去2年、Ceresとの間で合同研究を進めてきた。今回、Ceresが発表した統一基準案「Investor Listing Standards Proposal: Recommendations for Stock Exchange Requirements on Corporate Sustainability Reporting」は、Ceresに参画している6大陸100以上の機関投資家との共同提案でもあり、証券取引所、機関投資家、ESGシンクタンクが三位一体となって、企業側へのESG情報開示ルールを作る構造が浮かび上がってくる。Ceresは、すでにサステナビリティレポートのデファクトスタンダードとなっているGRIを主導する役割も果たしており、GRIの取り組みを発展させ、情報開示をさらに進めていこうという今回のCeresのアプローチに、GRIのErnst Ligteringen代表も大きな期待を寄せている。国際取引所連合には、東証、大証を運営する日本取引所グループも加盟しており、日本にもグローバルな流れに巻き込まれていくことになりそうだ。【統一基準案】Investor Listing Standards Proposal

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【フランス】二酸化炭素回収・貯留技術に関する最新トレンドレポートが発行された

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調査レポート検索ツールを提供するフランスのReportLinker社は、製造業での二酸化炭素削減に関する最新技術と、2025年までの技術ロードマップの研究成果をまとめたレポート"Moving toward Sustainability-Carbon Reduction Technologies in Industry (Technical Insights)"を発表した。レポートの中では、今後の二酸化炭素削減を左右する二酸化炭素回収貯留技術(CCS:Carbon Capture and Storage)を大きく取り上げている。エネルギー業界でのこれまでの技術開発、他の素材業界への適用可能性、技術開発を促進するための課題、各国での二酸化炭素削減取り組みのの状況などが細かく記載されている。レポートは、下記のサイトから購入できるが、53ページのレポートに$6,500はちょっと高い。サマリー版はサイト上で閲覧できるので、エネルギー分野に携わる方にはぜひ目を通しておいて頂きたい。【レポートサイト】Moving toward Sustainability--Carbon Reduction Technologies in Industry (Technical Insights)【企業サイト】ReportLinker.com

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【イギリス】銀行大手RBS、サステナビリティレポートに向けた活動を発表

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英大手銀行のロイヤルバンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)は、同社のサステナビリティレポート「2013 Sustainability Review」を発表した。同レポートの中では昨年度を振り返り、社会的な責任を意識するサステナブルな銀行になるための取り組みのほか、再生可能エネルギー分野への融資で英国最大としての地位を保ち続けたことも発表した。主たる成果として同レポートに掲載されているものは、融資総額の3%は再生可能エネルギー分野(特に風力エネルギー)へ投下イギリス国内で新規顧客に対し28億ポンドへの融資を実施イギリス国内で270万人の顧客に対しオンラインバンキングアプリを提供「公平な銀行」格付けで銀行として初めての5つ星を獲得社会・環境・倫理リスクについて2つの新しいポリシーを発表ジェンダー平等分野でOpportunity Nowよりプラチナ格付けを獲得170,000人時間のボランティア活動を実施同社は昨年、専任のチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)を置き、全社の経営戦略の中に、サステナビリティ要素がしっかり組み込まれるような体制を構築した。同社は、ステークホルダーに対するサステナビリティだけでなく、自社が業界の中でも勝ち残っていくためのサステナビリティを強く意識し、両者を融合されることで競争戦略を創りだそうとしている。また、風力発電大国になろうとしているイギリスの大規模プロジェクトを同社は資金面で支えており、最大の貸出者として業界をリードしている。【レビューサイト】2013 Sustainability Review【企業サイト】The Royal Bank of Scotland Group

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