【アメリカ】蘭ING、大手210社の財務担当役員に対しサステナビリティの取組を調査。報告書発行

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 金融世界大手蘭INGグループは2月15日、米大手企業の財務担当役員を対象にしたサステナビリティ取組調査報告書「ING Sustainability Study 2018」を発行した。サステナビリティへの取組目的を、売上拡大やコスト削減と答えた企業が多かった。  同調査は、金融機関や製造業、消費財メーカー等の大企業の財務担当役員210名にサステナビリティへの取組状況や展望を聞いた。対象企業の3分の2は売上高5億から50億ユーロ規模。サステナビリティに取り組む最大の理由に関する質問では、39%が「売上の拡大」と回答。「コスト削減」35%、「ブランドレピュテーション」30%、「競合への追随」29%、「法規制対応」23%、「資本コスト低減」16%、「減税」16%、「従業員満足」13%と続いた。  しかし、サステナビリティへの取り組みから最大限の成果をすでに得た企業はまだ少数。組織全体に渡ってサステナビリティに関するフレームワークが浸透している企業では、87%の企業が過去12ヶ月間に売上を伸ばした一方、そうでない企業では67%に留まった。  サステナビリティへの取り組み状況では、多くの企業にとってまだアーリーステージにある。サステナビリティ戦略を策定している企業は80%にのぼったが、実際に成長戦略へと昇華させていると回答した企業は48%にとどまった。また、事業のオペレーション全体でサステナビリティ戦略が実行に移されている企業は34%で、実行が部分的な企業が多かった。一方、サステナビリティへの取り組みが進んでいる企業の65%は、信用格付が上がったと回答した。  今後2年間で最も重要な取組では、サステナビリティへの取組からの将来リターンを設計できる能力開発が60%、サステナビリティ分野での測定指標開発が49%、グリーンファイナンス知識の強化が47%、伝統的なバランスシート・アプローチから価値資産モデルへの適応が41%と高かった。目的を持たないと応えた財務担当役員は1%だけだった。  サステナビリティへの取組への障壁に関する設問では、「新たな事業機会発掘の難易度」と答えた企業が52%。続いて、「将来パフォーマンス推定の難易度」が50%、「パフォーマンス測定の難易度」が50%と高かった。また法規制が取組への障壁となっていると答えた企業も40%あった。   【参照ページ】Here's what 200 US execs told us about sustainability and business value

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【ランキング】2017年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」

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※最新年度版は【ランキング】2018年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」へ  毎年恒例の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)。2017年は1月17日から20日までスイス・ダボスで開催されました。今年のダボス会議は、中国の国家主席が市場初めて参加する一方、米次期トランプ政権の主要メンバーがほぼ出席しないなど、昨今の政治状況を反映する場ともなりました。ダボス会議のの目玉のひとつは、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価する"Global 100 Most Sustainable Corporations in the World" (Global 100 Index)のセッション。ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。それでは今年も2017年の顔ぶれを見ていきましょう。 Global 100 トップ10 順位 企業 国 業界 1 シーメンス ドイツ 電機 2 ストアブランド ノルウェー 金融 3 シスコシステムズ 米国 ハードウェア 4 ダンスク銀行 デンマーク 金融 5 INGグループ オランダ 金融 6 オーストラリア・コモンウェルス銀行 オーストラリア 金融 7 フィリップス オランダ 電機 8 ジョンソン・エンド・ジョンソン 米国 医薬品 9 DSM オランダ 化学 10 エナガス スペイン エネルギー (出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成 昨年に引き続きトップ10にランクインしたのは、 オーストラリア・コモンウェルス銀行 エナガス ダンスク銀行 の3社。後述するように、今回はランキングの評価方法に大きな変更がありましたた。これまでは全業界一律の評価項目でランキング付がされていましたが、業界ごとに優先順の高い項目のみを評価するものに変更されましたた。これはGRIスタンダードの「マテリアリティ」の概念に似ていますが、GRIではマテリアリティは企業が自身で設定するのに対し、Global 100では業界に応じて一律に設定されるため、むしろSASBの「マテリアリティ」概念に近いと言えます。また、評価項目単位でも、再生可能エネルギーが考慮され、さらに金額のドル換算でも従来は名目為替レートが使われていましたが、今回は購買力調整為替レートが用いらるなど、細かい変更点も多数あります。その結果、昨年はトップ10から姿を消した米国企業が2社トップ10入りし、一方昨年は2社トップ10入りしたシンガポール企業がゼロとなりました。  また、日本でも知名度の高い以下のような企業も11位から100位の間にランクインしています。 18位 ノキア(フィンランド ハードウェア) 27位 シュナイダーエレクトリック(フランス 電機) 35位 ポスコ(韓国 鉄鋼) 38位 ロレアル(フランス 化粧品) 42位 BNPパリバ(フランス 銀行) 43位 プジョー(フランス 自動車) 49位 アディダス(ドイツ アパレル) 53位 コルゲート・パーモリーブ(米国 消費財) 54位 H&M(スウェーデン アパレル) 57位 アクセンチュア(アイルランド IT) 63位 インテル(米国 半導体) 66位 LG電子(韓国 電機) 67位 武田薬品工業(日本 医薬品) 68位 ノバルティス・ファーマ(スイス 医薬品) 70位 シスメックス(日本 医療機器) 74位 ダイムラー(ドイツ 自動車) 75位 マイクロソフト(米国 IT) 82位 HP(米国 ハードウェア) 84位 アップル(米国 ハードウェア) 85位 アステラス製薬(日本 医薬品) 86位 日本電気(日本 ハードウェア) 91位 メルク・アンド・カンパニー(米国 医薬品) 92位 ゼネラル・ミルズ(米国 食品) 98位 レノボ(中国 ハードウェア) 99位 GE(米国 電機)  日本からは、武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬、日本電気の4社が入りました。2015年まで毎年数を減らしていた日本企業は、2015年の1社から2016は4社へと挽回、2017年も4社を維持しました。武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬の3社は昨年に続くランクイン。一方、昨年ランクインしていた日産自動車が外れ、日本電気(NEC)が今年はランクインしました。  また、一般的には日本で知名度が低いものの、Sustainable Japanで度々取り上げている企業では、 32位 マークス・アンド・スペンサー(英国 小売) 47位 スタトイル(ノルウェー エネルギー) が高位にランクインしています。 Global 100 地域別社数ランキング 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59 北米 21 14 20 31 32 27 25 アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14 中南米 3 3 5 2 1 2 2 中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0 (出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成 ヨーロッパ企業が再び数を挽回し、ヨーロッパと北米を合わせた企業で84%を占めました。一方アジアは順位を落としています。 Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 アジア 31 23 18 18 15 18 14  日本 19 12 4 5 1 4 4  シンガポール 1 2 3 4 4 4 3  韓国 1 2 1 [...]

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【インタビュー】ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏「事業成長を支えるグローバルCSR戦略」

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 携帯電話基地局など通信関連機器で世界第2位のシェアを誇り、スマートフォンでは世界第3位のシェアを誇る、中国発のテクノロジー企業があるのをご存じだろうか?それが、今や世界のICT業界を代表する1社となった、ファーウェイ(華為技術有限公司、以下「ファーウェイ」)だ。  中国の深圳に本拠を構えるファーウェイは、1987年の設立以降、積極的な研究開発投資を武器に事業を急拡大させ、現在では世界170以上の国と地域で事業を展開し、160以上の国籍にまたがる17万人以上の従業員を抱えるグローバル企業へと成長している。  2015年の売上高は約3,900億元(約7.2兆円)に達する見込みであり、世界のICT通信インフラを支える企業として世界人口の約3分の1にサービスを提供している。2005年には日本にも進出し、ファーウェイ・ジャパンを設立。現在760名以上の従業員を抱えている。  そんなファーウェイはCSRを事業戦略の核に据えており、従業員が全額出資しているプライベートカンパニーでありながらも自主的に非財務情報開示を継続しているなど、アジアを代表するサステナビリティ先進企業としても知られている。  同社は「Bridging the Digital Divide(デジタル・デバイドの解消)」「Ensuring Stable and Secure Operation of Network(安定性・安全性の高いネットワーク運用のサポート)」「Promoting Green Environment(環境保護に向けたイノベーション)」「Seeking win-win development(相互に利益のある発展の追求)」という4つをCSR戦略の柱に据えて、世界各地でテクノロジーを強みとする革新的なCSRプロジェクトを展開し、コミュニティ投資を行ってきた。  中国発のファーウェイがこの短期間でどのようにグローバル企業へと成長し、その成長を同社のCSR・サステナビリティ戦略がどのように支えてきたのか。そしてそれを実現するために、グローバル、ローカルの双方において社内ではどのようなCSRマネジメントが行われているのか。その秘密を探るべく、Sustainable Japanでは1月18日に開催されたCSRアジア主催の「CSRアジア東京フォーラム2016」に参加するために来日したファーウェイのグローバルCSR責任者、Holy Ranaivozanany氏にインタビューを実施した。  Holy氏はフランスの通信事業者大手、オレンジで組織開発や人材育成、マーケティングなどに携わった後に2011年にファーウェイに入社。現在では同社のグローバル全体のCSRを統括する責任者として活躍している人物だ。フォーラムの講演では同社のコミュニティ投資の取り組みについて、グローバル全体としての戦略とローカルプロジェクトの事例をバランスよく交えながら解説し、改めてファーウェイのCSR推進力の高さを力強く印象づけるとともに、参加者らに多くの気付きを与えていた。  インタビューではHoly氏が強調していたグローバルとローカルにおけるCSRマネジメント推進のポイントを中心に話を伺った。 ファーウェイ Holy Ranaivozanany氏 インタビュー ポイントは、グローバルにおける一貫性とローカルにおける重要性 ―世界中で多くのCSRプロジェクトを展開しているが、ローカルに最も適したプロジェクトはどのように決定しているのか?  CSRプロジェクトの決定にあたっては、企業としての戦略と地域にとっての優先順位を整合させる必要があります。我々はグローバルにおける一貫性を非常に重要視しており、実施する全てのプロジェクトはCSR戦略の4つの柱のいずれかに関連している必要があります。  加えて、我々はグローバルだけではなくローカルの視点も大事にしており、その地域にとって重要な課題は何かという点を重視しています。それを理解するためには、ローカルレベルのCSRトレンドや優先順位の高い課題を教えてくれるパートナーを特定し、彼らと協働する必要があります。  このように、政府やCSRネットワーク、顧客、学術機関、メディア、ローカルコミュニティなどのステークホルダーと深く関わることはとても大事です。彼らが、我々が向かうべき方向についての理解を深めてくれるのです。また、ローカルの課題は常に変化していますから、常にステークホルダーの声に耳を傾け続け、毎年レビューを行いながら変化に対応していくことも重要です。 CSRプロジェクトを主導するのはローカルオフィス ―例えばマレーシアのプロジェクトについて決める際、深圳の本社にいるHoly氏はどのように情報を得て、どのように意思決定をしているのか?  日本と同様にマレーシアにもCSRチームがあり、責任者がいます。前提として大事なことは、まずグローバル全体で企業戦略に関する共通理解を醸成しておくことです。そのために我々は定期的にトレーニングを実施しています。その上で、マレーシアのチームは何がローカルのコミュニティにとって重要な課題なのか、マレーシアにおける優先順位についても理解する必要があります。  ローカルの状況を理解し、優先順位を定め、それが企業全体としての戦略やCSR上の優先順位とマッチしているかを見極め、それが正しいプロジェクトなのかを判断する意思決定は各ローカルオフィスに委ねられています。そのために、ローカルオフィスはステークホルダーの声を何度も聞きながら地域社会にとってもファーウェイにとっても重要な課題を特定していきます。  このように、マレーシアのプロジェクトについて決めるときは基本的にマレーシアのチームが主導するのですが、そこには私も関わります。なぜなら、その中でグローバル全体に適用できる素晴らしいアイデアを発見する可能性があるからです。例えばマレーシアでは6年間にわたり教育プロジェクトを展開していますが、それはアジアやアフリカ、南米や欧州でも適用できるかもしれません。マレーシアのプロジェクトが我々に新たなアイデアを与えてくれて、グローバルのプログラムに発展する可能性もあるのです。 重要なのはガバナンスとストラクチャー ―マレーシアの場合、ローカルの戦略担当者、CSR担当者、コーポレート全体の戦略担当者、CSR担当者はどのようにコミュニケーションを図っているのか?  ガバナンスと組織構造に関するとても重要な問題ですね。まず、マレーシアのCSRチームとは私が直接コンタクトをとっています。私が彼らにファーウェイ全体としての経営目標とCSR戦略を共有し、マレーシアのチームはファーウェイ・マレーシアとしての目標を共有します。コンタクトポイントを一つにしたほうが簡単ですしガバナンスも明確になりますので、ローカルとのやり取りはこのようにしています。  また、コーポレートレベルで言えば、当社にはCSD委員会があります。この委員会は全ての事業部門から構成されており、その中には戦略部門や人事部門や広報部門、調達部門など全ての間接部門も含まれます。私は、戦略の意思決定にあたってコーポレートレベルでの情報や協力が必要な場合、その中で一人のキーパーソンにコンタクトするようにしています。特定の国や課題について最新の情報を持っているキーパーソンを特定しておくことは非常に重要です。関わる人が多すぎると意思決定が難しくなり、上手く機能しなくなります。だからこそ、コーポレートレベル、ローカルレベルにおいても組織のストラクチャーはとても重要です。 パートナー選定のポイントは「戦略との整合性」「活動記録」「モニタリング」 ―ローカル・パートナーを選定する際の判断基準やスクリーニングプロセスは?  我々はパートナー選定における基準を持っており、パートナーシップを締結する前にデュー・デリジェンスを実施します。その際の最初のポイントは、我々の事業戦略との整合性です。当社の掲げるCSR戦略の4つの柱と全く関わりがないパートナーと協働することはできません。また、相手の過去の活動記録も確認します。パートナーシップの締結は結婚のようなものですから、提携先が過去に社会からの信頼を損ねるような大きな問題を起こしていないかなどを確かめる必要があります。  そして、提携時には互いの責任と役割を明確にすることも重要です。我々が望むのはパートナーシップであり、スポンサーシップではありません。ただお金を提供するのではなく、実際に自社が貢献することを望んでいますので、互いの責任と役割についての共通理解が得られるかは重要です。例えば、当社は技術的なサポートを提供し、相手はコンテンツを提供する、といった形で、お互いがそれぞれ何を期待されているのかを明確にすることが大事です。  その上で、明確なモニタリングプロセスを用意します。例えば3年間のパートナーシップを締結するとして、その間にどのように資金が使われたのかを何もチェックしなかったとしたらそれはお互いにとって時間とお金の無駄になってしまいます。もちろんローカルのプロジェクトを主導するのはローカルオフィスであり、パートナーなのですが、我々が常に現場にいられるわけではない以上、明確なガバナンス、モニタリング、トラッキングができるかという点は重要になってきます。 ステークホルダーからフィードバックを得る仕組みづくり ―プロジェクトの成果(アウトカム)はどのように測定しているのか?  具体的な成果の測り方は、担当するステークホルダーによってそれぞれ異なります。当社にはCSD委員会があり、そのメンバーはフルタイムでCSRに従事しています。責任は一人一人に移譲されており、例えばサプライチェーン担当のメンバーは、何社のサプライヤーに対してトレーニングを実施したか、サプライチェーンの安全衛生環境がどの程度改善されたかなどの指標に責任を負っており、その進捗を管理しています。  また、我々は毎年マテリアリティ・イシュー・アセスメントというサーベイを実施しており、政府やメディア、顧客、サプライヤー、地域社会、学術機関など、200以上のステークホルダーに対して調査を実施しています。それによりステークホルダーが重要だと考えている課題を把握し、毎年情報をアップデートします。  我々はその結果を共有し、ステークホルダーの関心の高さと、自社にもたらすインパクトという2つの観点からそれらをマッピングすることで、我々が目を向けるべき最も重要な課題を特定します。  さらに、我々は当社だけではなく、我々のパートナーも有益なフィードバックを得られる機会も設けています。具体的には自社が主催でカンファレンスを開催し、ステークホルダーから影響力のある人々を集めて相互理解を深めるための会議を行います。これは当社にとっても大きな利益をもたらしますが、出席した全員が多くのフィードバックを得られます。  2014年には深圳で初めてサステナビリティカンファレンスを実施しました。そのときは参加者の多くがテクノロジー業界でしたので、テクノロジーの話題が中心となりました。2015年には少しアプローチを変えて、夏にヨーロッパのブリュッセルで会議を開催しました。  その際はテクノロジー業界から対象を広げ、小売業界など他業界からも参加者を招きました。もしかしたら彼らと協働できることはないかもしれませんが、異なる業界の話には驚くべきことが多くありますので、その中から素晴らしいアイデアが見つかるかもしれません。  そして昨年12月には、日本オフィスの協力も得て、SDGsに関するテーマでステークホルダーを集め、25名という小規模のサステナビリティサロンを開催しました。これは当社について話す場ではなくSDGsについて話す場です。国連からゲストを招いてSDGsについて話してもらい、コカ・コーラやVISAなど異業界の担当者、アカデミアの人々も招きました。  このように、当社ではサーベイ以外にも他者から学び、フィードバックを得られる新たなプラットフォームづくりに取り組んでいます。 ローカルの仲間が共有するローカルのストーリーが、グローバルに共感を呼ぶ ―サステナビリティレポートの中で、ケニアから日本にいたるまで非常に多くの国々の課題を網羅しているが、どのようにそれを実現しているのか?  我々も以前は年次のサステナリティレポートと各地域に特化したローカルレポートとを別々に作成していました。今でもいくつかの地域ではローカルレポートがあります。我々は170ヶ国で事業を展開していますから、全ての国の課題についてレポートの中で触れることはできません。  しかし、我々はできる限り多くの地域の異なる課題に対する異なる事例を紹介しようと努めています。なぜなら、そうすることで国を超えてパートナーや他企業に対し、我々の取り組みに加わるように鼓舞することができるからです。実際、ほとんどのケースにおいて我々が取り組んでいる課題はグローバルイシューですから、例えばウガンダで起こっている問題は、他の多くのアフリカ諸国の人々の共感を呼ぶかもしれませんし、南米諸国の人々に響くかもしれません。また、我々は先進諸国が高い関心を持つ課題についても取り上げており、バランスをとろうと試みています。これを実現する上で重要なことは、我々にはローカルのステークホルダーにアプローチすることができ、ローカルのストーリーを共有してくれる仲間がいるということです。 CSRにおいては、全ての国が等しく重要 ―事業機会が多い国のCSRプロジェクトを重視するなど、国ごとの優先順位づけはしているのか?  全ての国が等しく重要だと考えています。当社はほぼ全ての国々でCSRプログラムを展開しており、その規模や内容は国によって異なりますが、それは国としての優先順位があるからではなく、各地域のローカルな課題やニーズに基づいているからです。  例えば日本では環境問題に積極的に取り組んでおり、植林活動もその典型例の一つですが、他の国では環境よりも教育のほうが重要かもしれません。解決すべき課題はローカライズされるべきであり、そのために我々はローカルのステークホルダーと協働する必要があります。そうしない限り、インパクトを生み出すことはできません。  より多くの人々が関心を持ち、より多くのステークホルダーがいる課題という意味での優先順位付けは大事ですが、ポイントは、あくまでそれらがローカルの人々にとって本当に重要な課題なのかどうかという点なのです。  もちろん、我々も完璧ではありません。大事なことは、限られた資源の中でいかに大きなインパクトを生み出せるかという点です。我々の場合、専門はテクノロジーですから、いかにテクノロジーを活用して貢献できるかを考えます。我々にはテクノロジーに精通した人的リソースがあり、ナレッジが共有できる。そしてそれは時にお金に代えがたいほどの価値を生み出します。ただお金を寄付するよりもはるかに大きなインパクトを生み出せるのです。 きっかけは海外進出。外部からの支援がCSRレベルを高めてくれた ―ファーウェイは一般的な中国企業と比較してはるかに先進的なCSRを展開しているが、何かきっかけがあったのか?  きっかけは、2000年から本格化した海外進出です。そのとき経営陣は、環境や社会といった側面に配慮をしなければ事業を継続することはできないことを悟りました。今から16年前のことですから、とても早い時期ですね。しかし、本当の意味でCSRやサステナビリティの重要性を理解し、それを戦略レベルで実行するまでにはそこからさらに数年がかかりました。  当時から経営陣からの多大なるサポートはあったのですが、実際に戦略を実行するミドルマネジメント層が、具体的に何をすべきかが分からなったのです。我々にはコアとなる事業がありますが、サステナビリティがそれらの事業にとってどんな意味を持つのかを理解するのに時間がかかりました。サステナビリティ報告書を発行し始めたのも2008年のことです。当社はプライベートカンパニー(非公開企業)ですので報告する義務はないのですが、我々はそれが改善の手助けとなることを知っていますので、現在もレポートを発行し続けています。  また、2004年に国連グローバルコンパクト(UNGC)に加盟したのですが、これはとても良い経験となりました。なぜなら、UNGCは我々にフレームワークを与えてくれたからです。UNGCの提示する10原則は戦略を形作るうえで非常に役立ちました。我々は今もなおUNGCと密接に協働しています。彼らは中国ネットワークも持っていますし、ニューヨークを拠点とするグローバルネットワークも持っています。UNGCはサステナビリティ課題の優先順位を決める上でも役立っています。  そして、UNGCと同様に大きかったことは、パートナー、とりわけ我々の顧客企業が、当社のサステナビリティの取り組みを手助けしてくれたという点です。特にヨーロッパの顧客企業は様々な要求を通じて我々のCSRの水準を高めてくれました。これこそが、我々が現在サプライヤーを支援している理由でもあります。我々が彼らにしてもらったことを、今度は我々がサプライヤーに対してお返しする番なのです。 ブリティッシュテレコムのサプライヤーフォーラムでゴールドを受賞 ―具体的にどのような企業が後押ししてくれたのか?  多くはヨーロッパの通信キャリア企業でした。彼らは非常に先進的なサステナビリティ戦略を持っており、我々にそのやり方を示してくれました。例えばブリティッシュテレコムは"Better Future Supplier Forum"(BFSF)という非常にユニークなイニシアチブを展開しています。  昨年、我々はBFSFでゴールドサプライヤーとして表彰されました。2年前はシルバーでしたので、我々の取り組みは改善されたということです。常に自らの課題に挑戦し続け、改善を継続する上でこうしたイニシアチブの存在はとても重要です。 ミドルマネジメント層への働きかけ、経営陣の理解 ―経営陣からのサポートには満足しているか?現状の課題は?  経営陣はとても協力的で、これは素晴らしいことです。現在の我々の課題は、いかにミドルマネジメント層を巻き込むかという点です。戦略もあり、経営陣からのサポートもある。あとはその戦略を実行するだけです。我々は部門を超えてミドルマネジメント層に対して戦略の実行を促しており、新しいCSRプログラムを開始するときは彼らからのサポートを得ようと努めています。  これは簡単なことではありませんが、我々にはCSD委員会があり、四半期ごとに全事業部門が集まり進捗を確認する機会があります。これはとても良い仕組みです。なぜなら、目標の達成に向けた障壁があれば、経営陣がそれをサポートすることができるからです。  一方で、経営陣は協力的ですが、この機運を失わないことも重要です。彼らのサポートを受け続けるためには、常に彼ら自身に関与してもらい、常に状況は変化しているということ、例えば彼らが数年前に決定したことはもう機能しないかもしれないといったことを理解してもらう必要があります。そのためには、彼らに対してCSRが進展していることを示す必要があります。  これはとても重要なことで、もしも彼らがCSRと事業戦略との関連性や実行したプログラムの結果を見ることができなければ、彼らのサポートや推進力を失ってしまう可能性があります。だからこそ我々は社内のコミュニケーションを強化しており、経営陣に対してもCSRのトレーニングを実施し、最新の課題やトレンドを伝えながら、我々は変化し、適応する必要があり、ときには優先順位を変える必要があるということを理解してもらおうと取り組んでいるのです。 オフライン、オンライン双方を活用したCSRトレーニング ―世界中にオフィスを展開しており、多くのミドルマネジメント層を抱えていると思うが、どのようにトレーニングに取り組んでいるのか?  いくつかの方法があります。幸運なことに、本社では外部のトレーナーがいます。我々はBSRと協働しており、彼らは専門家としてサプライチェーンや環境など様々な課題に関するトレーニングをCSD委員会に対して定期的に実施してくれています。  しかし、その場には海外拠点のスタッフは参加できませんので、我々はオンラインプラットフォームを活用して研修資料を共有したり、ビデオカンファレンスを行ったりしています。私自身も年に一度はローカルオフィスから責任者を集め、半日かけてCSRトレーニングを実施しています。  このようにオンライン、オフライン、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを通じてトレーニングを行っていますが、全ての情報はオンラインプラットフォーム上で更新されています。全ての国を網羅するためには、テクノロジーを活用する必要があります。 SDGs達成の鍵を握るのはテクノロジー。業界を超えた協働も必要 ―MDGsとSDGsの一番の違いとして「テクノロジーによる解決」を挙げていたが、テクノロジーとサステナビリティの関係についてはどう考えるか? [caption id="attachment_21038" align="alignright" width="350"] UNHCRとの協働により、ケニアの難民キャンプでタブレットを使った教育を展開[/caption]  テクノロジーとSDGsとの間には非常に高い関連性があると考えています。SDGsで掲げられた17の目標のうちいくつかは我々がこれまで取り組んできたことと非常に関わりが深く、テクノロジーの活用により確実に目標の実現を後押しできる分野だと言えます。  例えば教育は非常に重要なテーマですが、これには単なる能力開発といった観点だけではなく、遠隔地における教育課題の解決に向けていかにコミュニケーションテクノロジーを活用するかといった点も含まれます。ビデオカンファレンス、スマートフォン、アプリ、タブレットなどをどう活用するかも重要です。こうした活動は既に我々が行っていることでもあり、例えばケニアの難民キャンプでは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と協働し、彼らにタブレットを提供することで難民の子供たちの学習支援を行っています。 ※参考記事:Innovation: Instant Network Schools open up a new world for Somali refugees ※参考記事:Huawei supports Vodafone Foundation Instant Network Schools Programme with tablet donation  ヘルスケアの分野も同様です。健康のモニタリング用デバイスやデータ収集、リモート手術など、テクノロジーが解決できることは数多くあります。  そして最大のグローバルイシューの一つでもある気候変動について言えば、スマートシティの推進もテクノロジーの活用分野です。COP21では各国に向けてCO2削減に向けた更なる努力を求める合意が実現しましたが、その手段の一つとして不可欠なのがスマートシティです。全ての交通や住宅をスマート化するというのはとても野心的な目標ですが、一歩ずつ着実に取り組んでいくことが重要です。  これらの課題は確実にテクノロジーが解決できるものです。MDGsの時期を振り返ってみると、我々は現在のようなテクノロジーを持っていませんでした。テクノロジーは我々により多くの機会をもたらしているのです。  将来的には、より業界横断型の協働も必要となるでしょう。例えばCO2排出を削減し、低炭素経済への移行を推進するためには、我々ICT業界が自動車業界やインフラ業界といかに協働するかが鍵を握っています。 プログラムに参加した学生とは常にコンタクトを取り続ける ―コミュニティ投資についての話があった。コミュニティ投資のメリットとして人材プールを作ることができる点を挙げていたが、人材が実際に育つまでには時間がかかる。そうした中・長期的な投資について、どのようなマネジメントをしているのか?  それはとても重要なテーマで、フォローアップについての話です。我々は学生を対象とするSeed for the Futureというプログラムを展開しています。プログラム参加者の中には修士や博士に進む学生もいれば卒業してすぐに働き始める学生もいますが、我々はプログラムの終了後も参加者全員とコンタクトを取り続けています。(※参考PDF:Seed for the Future) [caption id="attachment_21036" align="alignleft" width="350"]Seeds for the Futureの様子(2015年8月)[/caption]  我々のプロジェクトへの参加機会を提供することもありますし、単にイベントへ招待するだけのこともありますが、我々はプログラムの終了後も彼らのキャリアパスをフォローできるように努めています。  例えば、企業レベルでの取り組みとしては、我々はオンラインプラットフォームのリンクトインにコミュニティを作っており、プログラムに参加した全ての学生がそのコミュニティに参加しています。我々はそこで彼らの進路を確認することができますし、ICT業界の最新ニュースなども共有しつつ、もし当社に空きポジションがあれば彼らに最初にその機会を伝えるようにしています。例えば日本のプログラムに参加した学生が日本ではなくスペインでの就業を希望する場合、彼らはそれに応募することもできるのです。  このように我々は彼らとコンタクトを取り続けるためのプラットフォームを持っていますが、さらにローカルレベルでもローカルチームが大学と協力して彼らをフォローしています。もちろん彼らの全員を当社が採用できるわけではありません。一部は我々の顧客企業で働くかもしれませんし、競合企業に入社するかもしれません。しかし、我々はそれでいいと思っています。彼らは依然としてICT業界に関わっているわけですから。  そしてさらに面白いことに、彼らの一部は起業家となります。プログラムに参加し、ファーウェイのストーリーに鼓舞されたのかもしれません。我々も最初はスタートアップでしたから。彼らは会社を作るという決断をしましたが、我々はいつでも彼らに対してアドバイスをすることができますし、将来はファーウェイファミリーになる可能性もあるのです。 CSR部門とHR部門との協働が生んだプログラムが、学生の人生を変えるきっかけに ―サステナビリティ部門とHR部門が協力的な体制を築けている印象を受けるが。  我々CSR部門は、HR部門と多くの面で協働しています。Seeds for the Futureはインターンシッププログラムであり、HRに関わるものです。しかし、このプログラムにはそれ以上の意味があり、採用活動を超えたリーダーシップ育成プログラムなのです。 [caption id="attachment_21035" align="alignright" width="350"]Seeds for the futureの様子(2015年8月)[/caption]  プログラムに参加する学生は中国に来ると、トレーニングの内容を学ぶと同時に中国のカルチャーについても理解を深めます。また、彼らは世界中の仲間とコネクションを作ることができます。我々は現在このプログラムを60ヶ国で展開していますが、参加した学生はたったの数週間で、世界に対してはるかにオープンな視点とマインドを手にします。  例えば日本人の学生はパキスタンとポーランドの学生とチームを組み、そこから多くを学びました。これには採用活動以上の意味があります。我々は彼らに対してグローバルな視点を持つことを望んでおり、将来ビジネスを行う際に、より大きく、よりグローバルに考えられる人材に育って欲しいのです。たった数週間で世界を変えられるわけではありませんが、彼らにとってはその数週間がスタート地点となるのです。  実際に彼らは中国にやってきたときと帰るときでは大きく見違えたようになります。スキルトレーニングとリーダーシップ育成を統合したこれほどユニークなプログラムを私はこれまでに聞いたことがありません。彼らはとても優秀ですが、エンジニアにはテクニカルなスキルだけではなく、人と関わり、物事をより早く前に進めるためのリーダーシップも必要なのです。 「スキル」「カルチャー」「グローバルネットワーク」のバランス ―同様のプログラムをIT各社が提供しているが、他社と比較した際の貴社プログラムの特徴は?  我々のプログラムのユニークな点としては、社内の異なる事業部からエキスパートのエンジニアを呼んで、学生に対して最新のテクノロジーに関するトレーニングを実施します。レクチャーもありますが、それに加えてハンズオン型のプラクティスもあり、展示ホールや工場など社内のキャンパスビジットも多く含まれています。製品がどのように作られているのかを実際に目で見て手で触って確かめることは、我々がグローバルに展開しているビジネスを理解する上でとても良い経験となります。 [caption id="attachment_21037" align="alignleft" width="350"]Seeds for the Futureの様子(2015年8月)[/caption]  また、もう一つのポイントは、彼らに対して中国に対する新たな見方を提供できるという点だと思います。これはプログラムの文化的なパートですが、参加学生は北京に行き、中国語のクラスなども体験しながら、中国の文化に肌で触れます。  さらに、先ほどお伝えした異文化交流も重要な要素です。中国の文化だけではなく、グローバルなメンバー構成によるプラクティスに参加することで彼らは将来的にファーウェイに入社する、しないにかかわらず、グローバルコミュニティの一員になることができます。  このようなプロフェッショナルスキルの育成、中国の文化理解、そしてグローバルネットワークの構築というバランスが、我々のプログラムをとてもユニークなものにしています。 CSRの柱は災害復興 ―日本におけるサステナビリティプログラムの特徴や課題は?  日本チームは素晴らしい働きをしています。あえて海外と日本を比較するとすれば、日本のCSRには災害復興というとても重要な柱があります。これは日本特有の取り組みで、地震の多いフィリピンなどでも同様の取り組みはありますが、日本ほど強いエンゲージメントは実現できていません。  これは我々がグローバル全体で推進しているローカリゼーションの観点からも重要です。ローカルにとって重要な課題に取り組むことが最優先であり、日本の場合、それは災害復興というテーマです。  また、日本はCSRに対する理解という点でも進んでいると思います。これまでは国内にどのようなベストプラクティスがあるかを聞く機会にあまり恵まれませんでしたが、CSRネットワークやプラットフォームなども数年前と比較して増えてきているのは素晴らしいことです。それにより、アジアで何が起こっており、何が重要なのかを理解することができます。災害復興以外に目を向けるべき問題がないか、中国や韓国などと協働できることはないか、など、我々が考えるべきことは多くあり、そのために我々は日本チームとも密接に協働しています。また、我々はアジアについてより大局的な理解を得るために、日本のアカデミアとも協働しています。  さらに、昨年の夏には先ほどご紹介したSeeds for the Futureプログラムに20人の日本人学生が参加し、深圳の本社にやってきましたが、彼らは中国企業がテクノロジー面でいかに進んでいるかを知り、とても驚いていました。  日本人は中国から歴史的に文化面の影響を強く受けているためか、中国といえば「文化」に関するイメージを強く持つ日本人学生も多いようですが、アフリカの学生は中国のイメージについて聞かれると「テクノロジー」だと回答します。このように、中国に対する認識も国によって異なります。実際に今や中国はテクノロジー分野において世界で最も先進的な国の一つです。我々は学生に対してこうしたグローバルに対するニュートラルな視点を持って欲しいと考えています。欧米だけを見るのではなく、もう一つの視点を持って欲しいのです。 あきらめず、社内へ働きかけ続ける。 ―日本のCSR担当者に向けたメッセージをお願いします。  Don’t Give Up!(あきらめるな!)。これが一番大事です。CSRの仕事は、とても長い道のりです。私は既にこの仕事に10年近く取り組んでいますが、残りの人生全てを費やすこともできるでしょう。常に状況は変化しており、常に多くの課題が存在しています。我々は幸運にも経営陣からのサポートを受けていますが、それでもなお我々は取り組みを強化し、継続的に改善を重ねながら彼らに結果を示していかなければいけません。  決してあきらめず、社内に働きかけましょう。「CSRを事業に統合する」というのは言葉で言うのは簡単ですが、1日でできるようなことではありません。マインドセット、プロセス、ガバナンスなど、注意を払うべきポイントは数多くあります。パートナーとの協働やコミュニティ投資よりも前に、まずは社内において共通のビジョンを持つことがとても大事なのです。  そしてそのためには、コミュニケーションが重要です。社内の人々は、あなたが偉大な仕事に取り組んでいるということを知らないかもしれません。もし彼らがあなたの仕事を理解していなければ、彼らはあなたに協力しようとは思わないでしょう。でもお互いをよく知り合っていれば、お互いにより多くの貢献をすることができるのです。だからこそ、社内を歩き回って、話に行くのです。  「戦略を持ち、実行し、コミュニケーションをとり、改善する。」これら全てには多くの努力が求められますし、忍耐も必要となるでしょう。常に創造的で、批判に対してオープンであるべきです。そして、変化に適応できるようにしておくことも大事です。これら全てが、将来大きなインパクトを生み出す上で重要なのです。 インタビュー後記 [caption id="attachment_21024" align="alignright" width="350"]中央右はファーウェイ・ジャパン CSR担当シニア・マネジャー 柳原 なほ子氏)[/caption]  Holy氏が講演の中でもインタビューの中でも繰り返し強調していたのが、「ステークホルダーにとって何が重要なのかを理解すること」、そしてそのためには「ステークホルダーエンゲージメント」が非常に重要だということだ。  社外のパートナーとの協働によるプロジェクト推進やフィードバックの仕組みづくりはもちろん、社内における部門を超えた協働、経営陣やミドルマネジメントへの働きかけ、トレーニングの実施など、あらゆるステークホルダーに対する強力なエンゲージメントがファーウェイのCSR推進力を支えていることが良く分かる。  これらのエッセンスを全て自社に取り入れることは難しいかもしれないが、Holy氏が語るように、まずはステークホルダーと密なコミュニケーションをとり、相手のニーズや課題をしっかり理解するというところからCSRの仕事は始まるということを改めて強く認識させられた。  2015年はSDGsやCOP21におけるパリ合意など歴史的転換点となるイベントが目白押しの年だったが、2016年は各企業がそれらの実現に向けて具体的にアクションを起こす最初の年となる。ぜひHoly氏のインタビューを参考にしつつ、最高のスタートダッシュを切りたいところだ。 参考サイト Huawei Huawei Sustainability CSRアジア東京フォーラム2016 CSRアジア

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【ランキング】2016年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」

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※最新年度版は【ランキング】2018年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」へ  毎年恒例の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)。1月20日から23日までスイス・ダボスで開催され、日本からも大臣が複数名参加しました。同フォーラムのひとつの目玉は、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価する“Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100 Index)のセッション。ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。2016年の顔ぶれはどうだったでしょうか。 Global 100 トップ10 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成) 昨年に引き続きトップ10にランクインしたのは、 BMW ダンスク銀行 レキットベンキーザーグループ の3社のみ。今年はトップ10の企業が大きく変化しました。特に注目なのは、米国企業が0社となり、変わってシンガポールから2社が入っています。これまでトップ10の常連であったバイオジェン・アイデック(アメリカ)の名前がなくなったのも印象的です。 また、日本でも知名度の高い以下のような企業もランクインしています。 13位 コカコーラ (アメリカ 食品) 14位 ロレアル (フランス 化粧品) 20位 H&M (スウェーデン 消費財) 22位 フィリップス (オランダ 電機) 35位 BNP パリバ (フランス 金融) 38位 インテル (アメリカ 半導体) 42位 シーメンス (ドイツ 電機) 44位 LG電子 (韓国 電機) 47位 ユニリーバ (イギリス 消費財) 48位 ダイムラー (ドイツ 自動車) 57位 シスコシステムズ (アメリカ ハードウェア) 59位 ジョンソン・エンド・ジョンソン (アメリカ 医薬品) 60位 ノキア (フィンランド ハードウェア) 68位 レノボグループ (中国 ハードウェア) 70位 GE (アメリカ 電機) 76位 アクセンチュア (アイルランド IT) 78位 プルデンシャル (アメリカ 金融) 80位 武田薬品工業 (日本 医薬品) 81位 プジョー (フランス 自動車) 84位 アップル (アメリカ ハードウェア) 88位 シスメックス (日本 医療機器) 89位 ネスレ (スイス 食品) 92位 Adobe (アメリカ ソフトウェア) 94位 サムスン電子 (韓国 電機) 95位 アステラス製薬 (日本 医薬品) 96位 HP (アメリカ ハードウェア) 97位 日産自動車 (日本 自動車) 98位 ノバルティス (スイス 医薬品)  日本からは、武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬、日産自動車の4社が入りました。毎年数を減らしていた日本企業は昨年の1社から今年は4社へと挽回しました。一方、昨年日本企業で唯一入っていたエーザイは今年はランクインできませんでした。 Global 100 地域別社数ランキング (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)  ヨーロッパ、北米の企業で80社となり、昨年に引き続き欧米で8割を占めました。 (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)  今年の変化ポイントは、昨年躍進した北米が数を減らし、一方でアジア・太平洋の数字が戻ったことです。では続いてアジア・太平洋の中身を見ていきましょう。 Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング (CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成)  過去5年間ランクイン数を大きく減らしてきた日本が今年やや回復したことで、アジア・太平洋の数が戻っています。また、シンガポールの数は年々増え、ついに今年はTOP10の中に2社が入るまでになりました。日本と同数の韓国企業も、日本の最高ランクが武田薬品工業の80位だったのに対し、新韓フィナンシャルグループ(18位)、ポスコ(40位)、LG電子(44位)、サムスン電子(94位)と多くが日本企業を上回りました。中国大陸企業のレノボも昨年の初ランクインに続き今年も維持、73位から68位へと順位を上げました。 ランキングの基準①(4つのスクリーニング)  Global 100の選出方法は昨年からの変更はありません。まず、毎年10月1日時点において時価総額20億米ドル以上の企業が自動的に評価対象となります。その後に4段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外されます(但し、昨年のGlobal 100ランクイン企業は、制裁スクリーニングに引っかからない限り、自動的にランキングの対象となります)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされていきます。スクリーニングは以下の4点により行われます。 サステナビリティ情報開示 財務状況 製品カテゴリー 制裁 1. サステナビリティ情報開示  まず最初にスクリーニングがなされるのは、サステナビリティ情報の開示の有無によってです。開示情報は以下の12項目に分類されます。 エネルギー生産性 炭素生産性 水生産性 廃棄物生産性 リーダーシップ多様性 役員報酬制度 CEO報酬と従業員平均報酬の比率 年金保護 離職率 安全生産性 イノベーション能力 税納付  この12項目のうち業界ごとに「優先的KPI」が定められており、その優先的KPIを9つ以上開示していれば、このスクリーニングを突破することができます。業界ごとに定められる「優先的KPI」は、業界内に属している企業のうち最低でも10%の企業が開示しているものが選定されます。 2. 財務状況 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされます。具体的には以下の要件のうち5つ以上満たす必要があります。 純利益が黒字であること 営業キャッシュフローが黒字であること (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと 流動比率が高まっていること 前年に普通株式発行を行っていないこと 粗利益が前年より増加していること 総資産回転率が向上していること 3. 製品カテゴリー  財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われます。以下のいずれかに該当する企業はランキング対象から除外されます。 GICS業界分類でタバコ業界に属する企業 GICS業界分類で宇宙・防衛業界に属し、かつ防衛事業が売上の半分以上を占める企業 4. 制裁  最後に、2015年10月1日までの過去12ヶ月の間に、サステナビリティに関する問題で罰金を受けていないかがチェックされます。罰金額が総収益に占める割合の大きさが業界内で上位(ワースト)25%以内にいなければ、このスクリーニングを通過します。 ランキングの基準②(スコアリング)  スコアリングする際の評価基準は、「サステナビリティ情報開示」のスクリーニングで使用した優先的KPIが用いられます。優先的KPIごとの数値の平均がその企業のスコアとなり、そのスコアに準じて順位が決まります。また、評価基準は毎年少しずつ変更がありましたが、2015年は前年からの変更はありませんでした。 エネルギー生産性: 売上 ÷ 直接的および間接的なエネルギー消費量 炭素生産性: 売上 ÷ 二酸化炭素排出量 水生産性: 売上 ÷ 水使用量 廃棄物生産性: 売上 ÷ 廃棄物排出量 リーダーシップ多様性: 女性役員の割合 役員報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無 CEO報酬と従業員平均報酬の比率 年金保護: 未積立年金債務 ÷ 時価総額 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数 安全生産性: 事故死者数+20万人時間当りの労働喪失時間数 イノベーション能力: R&D投資 ÷ 売上 税納付: 税金納付額 ÷ EBITDA 最終ランキングの作成  最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られます。そして、ベンチマーク指標であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てます。そして、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられていきます。 2016年のランキング発表を受けて  Global 100の特徴的な点は、そのランキングの順位もさることながら、絶対的なスコアも算出されていることにあります。すなわち企業が同じスコアを取り続けていたとしても他社がそれより努力をすれば順位が下がっていくということです。ランキングの手法は明確ですので、順位を上げるのであれば、挙げられているサステナビリティ項目の状況を改善していかなければなりません。  それでは、企業にとって、Global 100にランクインすることにはどのような意味があるでしょうか。厳しいスクリーニングを通過し、財務・非財務面で高い評価を得たGlobal 100企業の投資リターンは、ベンチマーク指標であるMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI) に比べ高いことが統計的に報告されています。すなわち、Global 100に採用されることで、投資家からの高い評価を得やすくなるということです。  今年は日本企業のランクイン数が大きく増えました。来年もより多くの業界からより多くの企業がダボス会議の場で脚光を浴びられるとよいなと思っています。

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2016/01/25 体系的に学ぶ

【アメリカ】ペプシコ、サステナビリティ戦略の推進により3億7500万米ドルを削減

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 米飲料大手のペプシコは9月24日、水やエネルギーの使用量削減、包装、廃棄物削減などの環境・サステナビリティプログラムを推進した結果、2010年以降で3億7500万米ドルのコスト削減を実現したと発表した。ペプシコは同期間中に売上高および営業利益も10%以上成長させており、サステナビリティへの投資が事業と社会の双方に利益をもたらしていることを示した形だ。  ペプシコによると、同社は2006年から生産単位あたりの水使用量を23%削減しており、既に2015年末までに20%削減するという目標を達成しているという。この取り組みにより2014年は約1700万ドルのコストを削減し、さらに同社は2014年の水使用絶対量を約10億リットル削減したとのことだ。  また、同社の2014年の温室効果ガス排出絶対量は大幅な事業成長にも関わらず2008年時の排出量と同程度に抑制できており、代替燃料や電気自動車への投資などによりエネルギー効率は2006年時と比較して約16%改善しているとのことだ。 さらに、同社は2014年には埋め立て廃棄物の93%を削減し、廃棄物の90%をリサイクルおよび再利用するという目標を達成した。加えて包装量も前年と比較して8900万ポンド削減したという。  上記の他にも、同社は消費者の健康促進の一環として食品や飲料に含まれるナトリウムや砂糖を減らす取り組みや、Sustainable Farming Initiativeを通じた農家支援、ペプシコ財団の慈善部門を通じて途上国に住む600万人の人々に安全な水へのアクセスを提供するなど、環境以外のサステナビリティ活動にも幅広く取り組んでいる。  同社はPerformance with Purposeというビジョンを掲げており、サステナビリティを事業戦略に統合し、社会と環境に良い影響を与えることで長期的な財務パフォーマンスを高めるという取り組みを進めている。同社のサステナビリティ活動はCSRレポートに加えて新たにストーリーテリングを意識したインタラクティブなサステナビリティ専門マイクロサイトも立ち上げている。同社の取り組みは戦略、活動、報告に至るまでのプロセス全てにおいて参考になる点が多い。興味がある方はぜひ下記から確認して頂きたい。 【サステナビリティサイト】How will we 【参照リリース】PepsiCo Sustainability Initiatives Delivered More Than $375 Million in Estimated Cost Savings Since 2010 【企業サイト】PepsiCo (※写真提供:BrooklynScribe / Shutterstock.com)

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【アメリカ】小売業界団体のRILA、2015年度版のサステナビリティレポートを公表

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 年間総売上1.5兆米ドルに相当する200以上の小売企業やメーカー、サプライヤーからなる世界最大の小売業界団体、Retail Industry Leaders Association(RILA)は9月16日、今年で3度目"2015 Retail Sustainability Management Report(2015年度小売業界サステナビリティレポート)"を公表した。同レポートは小売企業らが展開しているサステナビリティプログラムの注力領域や業界全体のサステナビリティ指標の進捗状況についてまとめたものだ。  同報告書では小売企業42社のプログラムについて27の領域から現状および今後の見通しを分析し、合わせて小売業における効果的なサステナビリティプログラムを特定している。報告書は今年の初めにRILA公表したツール"Retail Sustainability Management Maturity Model"に沿って作成されており、現状だけではなく2年後の2017年における将来予測も把握できるようになっている点が特徴だ。  同報告書が測定している27領域の中で、小売業界において最も取り組みが進んでいたのは戦略・測定基準および測定、協力的な関係、倉庫と物流拠点、廃棄物とリサイクルで、対照的に未だ取り組みが途上段階にあるのはインセンティブとステークホルダーの参画だった。  また、今後2年間で大きな成長が見込まれる領域は、戦略、マテリアリティとリスク特定、目標設定、ガバナスと経営陣の関与、マーケティングキャンペーン、倉庫と物流拠点、サプライヤーの関与、廃棄物とリサイクルとなっている。  RILAにてサステナビリティ・コンプライアンス担当責任者を務めるAdam Siegel氏は「小売業界のサステナビリディプログラムは、重点領域の絞り込みや経営資源の統合、活動範囲の広がりなどを通じて進化し続けている。今後、より多くの小売企業がサステナビリティ戦略および報告を強化するにつれて、彼らのサステナビリティに向けた事業はより強固なものになるだろう。そのことがプログラムへのコミットメントや資源の拡大に繋がり、業界全体の気運を高めることになる」と語った。  過去2回のレポートは大まかなトレンド概要とケーススタディを中心としたフォーマットだったが、今年のレポートでは現在および未来のサステナビリティプログラムの進捗に関する詳細な知見が加えられている。世界を代表するグローバル企業を多く有する米国小売業界の最新のサステナビリティ活動について知りたい方はぜひ参考にして頂きたい。 【レポートダウンロード】2015 Retail Sustainability Management Report 【参照リリース】RILA RELEASES 2015 RETAIL SUSTAINABILITY REPORT 【団体サイト】RILA

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【アメリカ】コカ・コーラ、水の還元目標100%達成に向けて順調に進捗。2015年末までに実現へ

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 米飲料大手のコカ・コーラおよびボトリングパートナー各社(以下、コカ・コーラシステム)は8月25日、同社が2007年に設定した2020年までに「ウォーター・ニュートラリティ(製品に使用した量と同量の水を自然に還元すること)」を実現するという目標を2015年末までに達成できる見込みだと発表した。今日までに行われてきた世界各地の水還元プロジェクトの成果に基づくと、2014年の販売量をベースとした最終飲料製品の水使用量の約94%に相当する量の水の相殺を実現したという。  2004年以来、コカ・コーラは世界61カ国、209の水資源プロジェクトを通じて推計1536億リットルの水を地域社会や自然環境に還元してきた。また、コカ・コーラシステムは2014年、製造過程で使用した約1267億リットルの水を処理済排水として地域社会と自然環境に還元している。目標を達成すれば、コカ・コーラは「ウォーター・ニュートラリティ」を実現する世界初のグローバル食品・飲料メーカーとなる。  コカ・コーラは、工場の水利用効率向上や廃水処理による水域や自治体への還元を通じ、最終飲料製品とその製造過程で使用された水に相当する量の水を還元できる仕組みを完成させつつある。同社は目標達成に向けた取り組みの一部として、地域社会に焦点をあてた多様な水資源プロジェクトに関与している。プロジェクトには、安全な水利用と公衆衛生へのアクセスを提供・改善、水域保全、水資源保護の支援、水課題への関心向上など幅広い取り組みが含まれる。  現在、ますます多くの企業が意思決定を行う際に環境への影響を考慮するようになってきている。コカ・コーラにとって事業の根幹をなす自然資源は「水」であり、水使用の実質ゼロに向けた取り組みは長期的な事業成長に欠かせない。同社の取り組みは事業戦略としての環境への投資が事業と地域社会の双方にとってプラスの利益を生み出すことを裏付けている。 【参照リリース】Coca-Cola on Track to Meet 100% Water Replenishment Goal 【企業サイト】Coca-Cola (※写真提供:oneinchpunch / Shutterstock.com)

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private 【食品・消費財】組織変革に寄与するサステナビリティ 〜ユニリーバに学ぶ長期成長戦略とは〜

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 オランダのマーガリンメーカーのマーガリン・ユニ社とイギリスの石鹸メーカーのリーバ・ブラザーズ社が経営統合し、設立されたユニリーバ社。現在は業界だけでなく世界を代表する企業の一社となるまで成長し、ブランド力はもちろんのこと、サステナビリティの観点でも世界をリードする企業となっています。今回はそんな同社がサステナビリティ活動を核とした経営の実施にいたった背景や、実際の活動内容、そしてその効果に迫ります。 サステナビリティに仇なす存在と考えられていた過去  現在はサステナビリティ先進企業と言われるユニリーバ社ですが、以前は社会起業家に仇なす存在だと考えられていました。事実、2000年にアイスクリームブランドのベン&ジェリーズを買収した際には、社会起業家の築き上げた「社会性」を浸食する存在として非難されたほどです。  ベン&ジェリーズは買収される以前より、業界のパイオニアとしてダブルボトムライン(経済性および社会性)を追求し、社会的価値を追求する姿勢が高く評価されていました。ところがその後ベン&ジェリーズは社会性こそ革新的であるものの、経済性すなわち収益が思うように上がらず、株価もピーク時の半分にまで低下するなど経営が逼迫していきます。経営状態は悪かったもののベン&ジェリーズの潜在的収益性に目を付ける企業は少なくなく、いくつかの企業が買収に乗り出しました。その際に最高値を入札し買収を成功させた企業がユニリーバ社でした。  かくしてベン&ジェリーズは子会社化されたもの、ユニリーバ社の管理下に置かれるのは飽くまで財務・オペレーションであり、本社とは独立した取締役会の下で創業者らの掲げてきたソーシャルミッションに基づき運営されることが約束されました。実際、ユニリーバ社はベン&ジェリーズ基金への寄付、従業員へのボーナス、マイノリティの経営する中小企業や資金不足の企業への支援にそれぞれ500万ドルずつ提供しています。それにも関わらず、創業者にとって「不本意な売却」というイメージが広く流布してしまい、社会起業家を落胆させることとなってしまったのです。 長期業績不振に喘ぐグローバルカンパニー  その後はユニリーバ社自体も業績低迷に喘ぎます。グローバル展開を進めつつも、国ごとに幅広く商品展開した結果、全社レベルでの製品ポートフォリオが複雑になり合理性を欠くようになったため、製造における規模の経済も機能しなくなってしまいました。  そこで2005年に「ワン・ユニリーバ (One Unilever)」という方針を打ちたて、保有ブランドのグローバルでの統一化と製造工程における生産性向上を図ります。結果、純利益を大きく伸ばすことに成功しました。しかしこの方策はコスト体質の改善にこそ寄与したものの、売上そのものを大きく伸ばすには至りませんでした。 (2000〜2008年アニュアルレポートに基づきニューラル作成)  このように長期わたる業績停滞は株主からの強いプレッシャーを招き、同社は当時ITシステムや社員教育といった長期的に競争力をもたらすであろう分野への投資を諦め、短期的な業績向上を追求せざるをえない状況にありました。 サステナビリティを核とした長期成長戦略の標榜  長きにわたる業績停滞に加え、さらにリーマン・ショックで業績は落ち込みます。不景気に喘ぐユニリーバでしたが、Paul Polman氏のCEO就任を機に風向きが変わり始め、現在ではサステナビリティと収益向上を両立し世界からの賞賛を浴びています。それではその長期成長戦略の全容および10年間の財務分析結果からはじき出される同社のサステナビリティ活動の有用性、さらにはこの戦略がいかに日本企業にも適しているかについて見ていきましょう。  まずPaul氏は2009年の就任と共に (more…)

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2015/07/29 事例を見る

private 【食品・消費財】コカ・コーラ社に学ぶ経営戦略とサステナビリティの統合

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 1886年5月アメリカ・ジョージア州アトランタの薬剤師ジョン・S・ペンバートン博士の薬品や飲みものを研究に端を発し、現在ではソフトドリンクメーカーとして世界的に圧倒的な知名度を誇るコカ・コーラ社。2014年末には世界での売上が65億1000万ユーロに達し、13万人近くの従業員を抱える企業へと成長を遂げました。また、同社はそのブランド力だけでなく、サステナビリティの分野においても先進企業として名を轟かせています。今回は同社におけるサステナビリティの戦略的位置付けや、その先進的活動の詳細に迫ります。 経営戦略におけるサステナビリティの位置づけ  コカ・コーラ社はサステナビリティをビジネスの中核に置きつつも、サステナビリティ活動それ自体がサステナブルであるためには、その活動が事業の成長を促すものでなければならないとしています。こうしたサステナビリティ活動に対する姿勢は「2020年までに世界での収益を2倍に成長させる」という同社の長期成長戦略2020 VISIONにも反映されており、同社にとってサステナビリティとは、単に社会貢献というわけではなく、ステークホルダーと自社のサステナブルな関係を構築し継続的成長を達成するための戦略の一つとして位置づけられていることが伺えます。 me, we, worldの活動詳細  では、コカ・コーラ社が掲げた目標の達成のために実際にどのような活動をしているのかをご紹介していきます。下図はサステナビリティ活動me,we,worldの全体像です。 (出所:2013/2014 SUSTAINABILITY REPORTより抜粋) meに関する活動事例  meは (more…)

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2015/07/01 事例を見る

【国際】サステナビリティ・リーダーに最も必要なのは「価値基準」

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 サステナビリティリサーチGlobeScanおよびサステナビリティコンサルティングのSustainAbilityは5月28日、企業、NGO、政府の各分野においてサステナビリティ・リーダーと認識されている組織について分析した調査報告書"The full 2015 Sustainability Leaders report"を公表した。世界82ヶ国、800名以上のサステナビリティ専門家らに対するアンケートに基づく調査結果によると、企業がサステナビリティを推進する上で最も重要なのは「価値基準」であることが分かった。  同調査によると、企業がサステナビリティ分野のリーダーとして認識される上で最も重要なのは、経営陣の信念なども含めてサステナビリティが重要だという価値基準が組織に統合されていることだという。また、その次に重要な点として挙げられたのが「サステナビリティが企業のビジネスモデルの中核の一部となっているかどうか」で、そう回答した専門家の数は昨年の調査と比較して大幅に増加した。  SustainAbilityで調査ディレクターを務めるChris Guenther氏は「アクターの範囲を超えたリーダーシップに対し、よりバランスの取れた期待をする傾向が生まれている。特に、国府に対する期待が低下し続けるにつれて、民間セクターやNGO、国際連合といった他団体がより大きな責任を担うことが期待されている」と語る。  同調査では、企業以外にもNGO、政府というそれぞれのセクターごとにどの組織が最もリーダーシップを発揮しているか、またリーダーシップを測るうえで何を重要視しているかがまとめられている。主な内容は下記の通り。 企業によるリーダーシップ  サステナビリティのビジネス戦略への統合において最もリーダーシップを発揮していると認識されている企業は昨年に引き続きユニリーバだった。続いてパタゴニアが2位となり、今年はBASFが初めてトップ10にランクインした。その他のトップ10企業の顔ぶれは、インターフェイス、マークス&スペンサー、ナチュラ、イケア、ネスレ、GE、ナイキ、そしてコカ・コーラとなっている。  また、同調査は、世界のあらゆる地域においてリーダーシップを発揮している企業がますます一部の先進企業に集中するようになってきている傾向を示しており、例えばユニリーバは、アジア(33%)、アフリカ・中東(36%)、北米(39%)、そしてヨーロッパ(44%)という幅広い地域においてリーダーとして認識されている。一方で、南米・カリブ地域ではナチュラ、オセアニアではインターフェイスがサステナビリティ・リーダーとして認識されている。 NGOによるリーダーシップ  市民社会におけるサステナビリティ・リーダーとして、最も多くの名前が挙がったのがWWF(世界自然保護基金)だ。次いで、グリーンピース(18%)、オックスファム(9%)、WRI(世界資源研究所)(6%)、WBCSD(5%)、セリーズ、そしてEnvironmental Defense Fund(共に4%)が続く。  どのNGOが最もリーダーシップを発揮しているかという点については異なる地域の専門家の間でもおおむね意見は共通しており、WWFとグリーンピースは、グリーンピースは北米の専門家らの間では取り上げられていることが少ないという例外を除いて世界の全地域で強い影響力を持っている。WWFは特にヨーロッパや南米・カリブ地域での高い評判を得ており(それぞれ30%)、グリーンピースのリーダーシップはオセアニアが最大となっている(23%)。  専門家の31%がNGOのリーダーシップを測る際の最も重要な要素として様々なステークホルダーを効果的に巻き込み、協力的なイニシアチブをとる能力だと考えており、これは持続可能な開発においてパートナーシップの重要性が高まっていることを浮き彫りにしている。 政府によるリーダーシップ  サステナビリティの分野で最もリーダーシップを発揮している政府としては、ドイツ政府(25%)とスカンジナビア政府(スウェーデン21%、デンマーク16%、そしてノルウェー13%)が挙げられた。ヨーロッパ以外ではコスタリカ(8%)が最上位にランクインしたほか、サステナビリティの分野において存在感を高めつつある中国はアジア・オセアニアの専門家らの間では最も目立った存在として評価されており、世界ランキングにおいても8位(7%)に選ばれている。  また、政府のリーダーシップを測る際の重要な要素としては価値基準(31%)、エネルギーと気候変動(27%)、そして政策(22%)が挙げられた。  同調査結果を受けて、GlobScanのサステナビリティのディレクターを務めるEric Whan氏は「他者を巻き込み、協働する能力がNGOの評判を左右する一方で、政府や企業のリーダーシップは、彼ら自身の価値基準をいかに持続可能な開発目標と一致させることができるかによって測られる。また、ますます多くの専門家らが、企業がリーダーシップを発揮するためにはサステナビリティをビジネスモデルの中核へと統合する必要があると考えるようになってきている。そして政府にとっては、エネルギーや気候変動における効果的な取り組みが、真のリーダーとして2つ目に重要な特質として見られている」と語った。  企業、NGO、政府によって期待されるリーダーシップの中身が異なるという点は非常に興味深い。セクターに関わらず、サステナビリティ分野において先進的な取り組みを実施している組織をベンチマークすることは非常に役に立つ。同レポートはそのうえでとても参考になるはずだ。興味がある方はぜひ下記からダウンロードして頂きたい。 【レポートダウンロード】The full 2015 Sustainability Leaders report 【参照リリース】Values Paramount to Achieving Sustainability Leadership 【企業サイト】GlobeScan 【企業サイト】SustainAbility

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