private 【日本】東証、改訂コーポレートガバナンス・コード対応状況報告。コンプライ率が大幅低下

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 東京証券取引所は1月28日、2018年12月末時点の改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応状況を発表した。2017年7月時の改訂前のコーポレートガバナンス・コードへの対応状況に比べ、コンプライ率は大幅に下がっていることがわかった。  東京証券取引所と金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コードは、東証一部と東証二部の上場企業に対しては全78原則(基本原則が5原則、原則が31原則、補充原則が42原則)が、マザーズとJASDAQ上場企業に対しては基本原則5原則のみに適用されており、「Comply or Explain」が求められる。今回の調査では、東証一部及び東証二部の2,621社が提出した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」をもとに集計した。  全78原則をコンプライしている企業は (more…)

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【日本】金融庁、「投資家と企業の対話ガイドライン」発行。SSコードとCGコードの附属文書の位置付け

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 金融庁は6月1日、「投資家と企業の対話ガイドライン」を発行した。同ガイドラインは、スチュワードシップ・コード(SSコード)及びコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、機関投資家と企業のエンゲージメントにおいて重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたもの。同ガイドラインの制定については、2018年3月の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」で策定が提言されていた。  同ガイドラインは、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの附属文書として位置づけられており、「コンプライ・オア・エクスプレイン」が求められてはいないが、両コードを有効に機能させるために参照することが期待されている。  同ガイドラインは、「経営環境の変化に対応した経営判断」「投資戦略・財務管理の方針」「CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」「政策保有株式」「アセットオーナー」の5つの項目を設定。各々について詳細原則を定めた。取締役会の機能発揮に関しては監査役の適格要件や役割、アセットオーナーの項目では企業年金の人材登用、資質、専門性についても言及した。 【参照ページ】「投資家と企業の対話ガイドライン」の確定について

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【日本】金融庁、コーポレートガバナンス・コード改訂案発表。今後、東証で最終検討

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 金融庁は3月26日、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」がとりまとめたコーポレートガバナンス・コード改訂案を発表した。同時に、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードが求める企業の持続的成長と中長期的価値向上に向けた機関投資家と企業の対話ガイドライン「投資家と企業の対話ガイドライン案」も発表した。今後、金融庁及び東京証券取引所で、フォローアップ会議がまとめた案の最終検討に入る。  コーポレートガバナンス・コード改訂案では、上場企業が他の上場企業の株式を保有する「政策保有株」について、現行コードでは、保有方針を開示すべきとしていたところを、「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方等」を開示すべきと、縮減とう言葉を盛り込んだ。また、開示方法についても、「個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」と個別の保有について適否や便益・コストについて精査することを求めた。  また、上場企業が設置している企業年金の責務も明確化した。年金基金については、別のスチュワードシップ・コードで責務を定めているものの、今回、コーポレートガバナンス・コード側でも、企業年金が「運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮」するよう求めた。具体的には、人材の計画的な登用や配置に言及した。また企業年金の受益者と親会社との利益相反についても適切に管理することを求めた。  さらに、取締役の報酬設計に関し、持続的な成長につながるインセンティブを客観的かつ透明性ある手続を経て付与するよう求めた。CEOの選任及び評価についても、客観性、適時性、透明性を要求した。欧米で関心が高まる取締役ダイバーシティについても、「ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」と言及した。  投資家と企業の対話ガイドライン案については、4月29日までパブリックコメントを受け付ける。コーポレートガバナンス・コード改訂案のパブリックコメント受付については、別途、東京証券取引所から近日中に発表する。 [追記] 2018年6月1日、東京証券取引所は「改訂コーポレートガバナンス・コード」を公表し、同日から施行した。 【参照ページ】「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」の公表について 【参照ページ】投資家と企業の対話ガイドライン(案)の公表について 【参照ページ】「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」の公表について 【参照ページ】改訂コーポレートガバナンス・コードの公表

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private 【イギリス】英国財務報告評議会、コーポレートガバナンス・コード2018改定版原案公表

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 英国財務報告評議会(FRC)は12月5日、英国コーポレートガバナンス・コードの改定版原案を公表した。英国のEU離脱が迫る中、EU離脱後も海外から投資を促進するために、企業のガバナンスを正し持続可能な成長への基盤を固め、市場・企業への信用を醸成していく。FRCは2018年2月末までパブリックコメントを受け付け、6月に発行する予定。  改定版は、現行版に比べてより完結かつ端的な表現となっている。特に、ガバナンス強化に果たす企業文化の価値に重点を置いている点が新しい。また、英国政府が2016年11月に発表した英国がバナンス改革の方針の提言内容も反映された。企業が具体的に取るべきアクションも列挙し、ガバナンス改革の実効性を高める。 【参考】【イギリス】政府、コーポレートガバナンス改革案を発表。役員と従業員の給与格差是正が大きな焦点(2017年9月16日)  改定版は、原則1の始めで、取締役会は、企業の長期的で持続可能な成功を促進し、株主価値を生成し、広く社会に貢献することと言及。取締役会が大きなリーダーシップを発揮する意義を高く掲げた。そのため、役員報酬や役員賞与の方針や決定では、報酬委員会に広い独立的な意思決定機能と広い裁量を与えることを定めた。また、株主からの反対意見に対しては、具体的な行動案を提示することも盛り込み、株主による企業監視機能を高めた。  英国のコーポレートガバナンス・コードは、取締役会議長の独立性を強調しており、以前から社外取締役が議長を務めるよう求めている。今回の改定ではこの規定をさらに進め、 (more…)

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【イギリス】政府、コーポレートガバナンス改革案を発表。役員と従業員の給与格差是正が大きな焦点

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 英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は8月28日、コーポレートガバナンスの改革案概要を発表した。英国全上場企業に対して、CEOと一般従業員の給与格差の公表を義務付ける点などが特徴。英国政府は、改革骨子の導入に向け、関連法案の改正、英国財務報告評議会(FRC)が定めているコーポレートガバナンス・コードの改訂、業界団体が作成している関連基準の改訂などを同時に進め、2018年6月の発効を目指す。  今回のコーポレートガバナンス改革は、昨年11月に英国政府が国会審議用に作成した政策提案書「グリーンペーパー(緑書)」を発表したことから始まった。グリーンペーパーには、役員報酬、流動しない固定株比率の高い企業のコーポレートガバナンス、従業員やサプライヤー等ステークホルダーの声を取締役会の意思決定に反映させるプロセスの3つが大きなポイントとして掲げられていた。  グリーンペーパーはすでに広くパブリックコメントを集めるプロセスを経ており、375の回答が寄せられた。パブリックコメントの内容は、英国下院のビジネス・エネルギー・産業戦略委員会の中で議論され、同委員会は今年4月にパブリックコメントを踏まえたコーポレートガバナンス改革提言書を発表している。今回ビジネス・エネルギー・産業戦略省の発表したファイルは、この下院の提言を受け、政府のコーポレートガバナンス改革の骨子を改めて固めたものという位置づけとなる。  今回の改革議論の中で、とりわけ焦点が当たっているのが役員報酬。社会格差は世界の深刻な社会問題の一つと認識されており、英国EU離脱や米トランプ政権誕生の背景にも広がる社会格差があると言われている。英国は2013年に役員報酬に関する規制を強化し、役員報酬は最低でも3年に一回株主総会で承認されることが義務化され、取締役一人ひとりの報酬開示も義務化された。しかし、それでも社会格差の問題は引き続き根強いとみて、グリーンペーパーでも、株主の権限をさらに強める方向性を示していた。そして今回、英国政府は新たに、全上場企業に対して、CEOと一般従業員の給与格差の公表を義務付け、さらに給与格差の是正に関する説明も義務化する法改正を行っていくと発表した。  固定株比率の高い企業のコーポレートガバナンス強化では、非上場企業を含めた大企業に対して、コーポレートガバナンスのための取組を開示する義務を課すことを決めた。これにより、企業が外部基準等に準拠した社外に説明のつくコーポレートガバナンスを行っていくかがチェックされるという。  また、ステークホルダーの意見を取締役会の意思決定に反映させることについては、一定規模以上の上場・非上場企業双方に対して、英国2006年会社法172条が定める従業員や他の関係者の意見を考慮する義務を取締役が遵守しているかについて説明を求めるという内容となった。  今後、改革案は国会での審議に入っていく。政府は必要があれば、再度パブリックコメントを募集することにも前向きな姿勢を示している。同時に、英国財務報告評議会(FRC)は今年後半にも、改革案を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの改訂作業を開始する見込みだ。 【参照ページ】World-leading package of corporate governance reforms announced to increase boardroom accountability and enhance trust in business 【改革案】CORPORATE GOVERNANCE REFORM

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【フィリピン】証券取引委員会、コーポレートガバナンス・コード改正。サステナビリティ情報開示強化も盛り込む

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 フィリピン証券取引委員会(SEC)と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が策定したフィリピン証券取引所の上場企業向けのコーポレートガバナンス・コード改訂版が1月1日発効した。今回の改訂版には、取締役会の責任強化、株主保護の強化、財務及び非財務情報の開示強化などが盛り込まれている。フィリピンのコーポレートガバナンス・コードも日本と同様「Comply or Explain」ルールに基づくもの。遵守しない原則がある場合は、毎年提出が義務付けられている「コーポレート・ガバナンス報告書」の中で、遵守しない原則とその理由を説明しなければならない。今回の改訂版については、フィリピン証券取引所の上場企業は全て2017年5月3日までに遵守項目を示す「Manual on Corporate Governance」をフィリピン証券取引委員会に提出しなければならない。  フィリピンのコーポレートガバナンス・コードの歴史は古く、初めて同コードが制定されたのは2002年。背景には、1998年に世界銀行が社会開発や金融機関支援のためフィリピンに約30億米ドル融資をしたことをきっかけに、世界銀行がコーポレート・ガバナンス強化を要求したことがある。その後、コーポレートガバナンス・コードは度々改訂され、現在では全部で16原則で構成されている。今回の改訂では、G20やOECD加盟国が定めるコーポレートガバナンス・コードや、ASEANコーポレートガバナンス・スコアカードを参照し、国際基準レベルを意識したものとなっている。改訂の内容としては、取締役3名以上もしくは取締役の3分の1以上を社外の独立取締役とすることを求めるガバナンスの向上が盛り込まれた。また、非財務情報やサステナビリティに関する情報開示についても、GRIやIIRC、SASBなどを参照しつつサステナビリティ報告を強化していくことや、貧困、格差、失業、気候変動など世界的課題に対して貢献する役割を果たしていくことも謳った。  国際金融公社とフィリピン証券取引委員会は、投資環境や規制分野での幅広い提携を結んでおり、今回のコーポレートガバナンス・コード改訂もその提携作業の一環。国際金融公社はその他30ヶ国以上でコーポレートガバナンス規制策定の支援を実施している。  【参照ページ】PHILIPPINES REVISES CORPORATE GOVERNANCE CODE FOR PUBLICLY LISTED COMPANIES 【コーポレートガバナンス・コード】CODE OF CORPORATE GOVERNANCE FOR PUBLICLY LISTED COMPANIES

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【戦略】コーポレートガバナンス・コードへの対応〜社外取締役の役割とその重要性とは?〜

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 中長期の企業価値向上を目指し、株主を含むステークホルダーとの対話や取締役会の責務を規定した「日本版コーポレートガバナンス・コード」が6月1日に施行されました。コーポレートガバナンス・コードは5つの基本原則、その詳細を示した原則、そして38の補充原則により構成されています。また、それぞれについて“Comply or Explain”(原則を実施するか、実施しない 場合にはその理由を説明するか)が求められ、上場企業各社はその対応に迫られることとなりました。  コーポレートガバナンスに関する報告書は、6月1日以後最初に開催する定時株主総会の日から6か月を経過する日までに東京証券取引所に提出することとなっており、既に提出を完了している企業も少なくありません。しかしながら、内容が取締役会の責務や構成などを含んでおり、企業にとって「重みのある」ものとなっていることから、「とりあえずはComply」という対応をしている企業も少なくないと言われてもいます。コーポレートガバナンス・コードが設立した背景には、近年増加する海外株主比率に伴い、日本企業のガバナンスを海外基準に照らしあわせた上でも納得感の高いものにしていきたいという当局の思いも込められています。そこで今回は、コーポレートガバナンス・コードの実施に向けた課題を明確にし、どのように対応していくべきかを説明していきます。 ガバナンスに関する現状と課題 コーポレートガバナンス・コードが掲げる基本原則は5つあります。 株主の権利・平等性の確保 株主以外のステークホルダーとの適切な協働 適切な情報開示と透明性の確保 取締役会の責務 株主との対話  この中で特に注目が集まっているものが「4.取締役会の責務」です。とりわけ、4-8で独立社外取締役2名以上の選任、4-8①で、独立社外取締役のみの定期会合の開催等による客観性確保、4-8②筆頭独立社外取締役の決定等による監査役会との連携、4-9で、独立社外取締役の独立性判断基準の開示などには、独立社外取締役の位置づけを明確にすることを求めています。また、「3.適切な情報開示と透明性の確保」においても、3-1で、取締役や経営陣幹部の指名と報酬に関し方針と手続の開示、3-2①で監査役会による外部会計監査人評価基準の策定を要求しています。いずれも、代表取締役や取締役会が任意に行ってきた役員候補の選定や報酬決定において、基準を明確にすることやさらに開示することを求める内容であり、コーポレートガバナンスの客観性と透明性を高めることが意図されていると言えます。しかしながら、これらの内容は企業にとって簡単に整備することはできない問題でもあり、現時点で東京証券取引所への報告を済ませている企業においても、上記条項をComplyしなかった企業数は少なくありません。  その背景には、近年の会社法の進化に伴い、取締役会の役割というものがよりわかりづらくなってきているという事情も絡んでいます。現在、上場会社に課せられているガバナンス形態には、「監査役会設置会社」「監査等委員会設置会社」「指名委員会等設置会社」の3種類があり、それぞれにおける取締役会の位置づけには当然違いが出てきます。 (出所)ニューラル作成 監査・監督  まず、一番歴史の古い「監査役会設置会社」では、社外監査役が過半数を占める監査役会が取締役会および執行者である代表取締役や業務執行取締役を監査・監督する役割を有しています。それに対し、「監査等委員会設置会社」「指名委員会等設置会社」では、取締役会の内部に監査委員会を置きつつ、その監査委員会の客観性と独立性を担保するために、委員会委員の過半数は社外取締役とすることが定められています。 指名・報酬  取締役や監査役の指名や報酬については、「監査役会設置会社」では、取締役会が一手に担います。監査役会は取締役会での議決権はありませんので、指名や報酬には関与しません。実情としては、取締役会の議長を兼任することの多い代表取締役社長が指名や報酬を掌握していることも多いと言われています。「監査等委員会設置会社」も同様に取締役会が指名と報酬を担いますが、監査委員会委員である社外取締役は取締役会での議決権があり、客観性と独立性が多少担保されている点に違いがあります。一方、「指名委員会等設置会社」では、社外取締役が過半数を占める指名委員会と報酬委員会が役割を担い、客観性と独立性を十分に担保する制度設計となっています。 執行と監督の分離  コーポレートガバナンスのあり方については、常に「執行と監督の分離」というテーマが重要視されてきました。監査役制度が定着してきた日本では、取締役会が業務執行機関、監査役会が監督機関という意識が強く、2008年に経済産業書の企業統治研究会がまとめた報告書でも「日本の取締役会は執行機関だという認識が非常に強い」としています。監査役会を設けない、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社においても状況はさほど変わりません。監査等委員会設置会社では監督機関である取締役会のメンバーと業務執行者である業務執行取締役が同一であることが多く、また指名委員会等設置会社では、監督機関である取締役会メンバーと業務執行者である執行役の兼任が容認されているためです。 コーポレートガバナンス・コードにおける取締役会の責務  では、今回コーポレートガバナンス・コードで定められている取締役会の責務は、従来の会社法とどのように異なるのでしょうか。違いのポイントは、コーポレートガバナンス・コードの序文に表れています。 「本コード(原案)では、会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置いている。」  近年の会社法改正では、取締役会には不祥事の防止やリスク回避などの監督機能の強化を目的とするものが多かったのに対し、中長期価値の向上に対する責任というものが新たに強調されています。  そして、基本原則4は取締役会の責務について、 企業戦略等の大きな方向性を示すこと(中長期戦略策定機能) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと(経営環境整備機能) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと(監督機能) を挙げ、日常的な業務執行でも監督でもない、新たな機能を提唱しています。また、この3つの責務は、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社のいずれでも適用されるとしています。  また、執行と監督の分離については、原則4-6は、「上場会社は、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべきである」と掲げおり、執行と監督の分離をさらに一層進めるよう求めています。 海外の視点  コーポレートガバナンス・コードが、取締役会の位置づけを大きく再定義しようとしている背景には、海外での新たなトレンドがあります。PwC社が2014年に米国で実施した調査「PwC Investor Survey on Governance Identifies Areas where Investors Want Boards to Improve」では、多くの投資家がガバナンスに関して改善を期待する事項として「取締役会における専門的知見を有し、多様で独立性のある取締役」を挙げています。同様に、日本CFA協会が今年7月に開催した「ジャパン・インベストメント・カンファレンス2015」でも、ジェイ・ユーラス・アイアール社より、「投資家がガバナンスを評価する際に最も重視しているのは『取締役会とその構成』である」との指摘がありました。とりわけ投資家にとって、取締役会の多様性は価値があり、またダイバーシティの社内浸透のために取締役の担う責務が大きいと考えていることがその背景にあるといいます。  EUでも2014年4月に会社法が改正され、従業員500名以上のEU域内企業(主に上場企業や金融機関)は、年齢、性別、学歴、職歴など、取締役会構成員の多様性に関する方針の開示もしくは開示しない理由の説明が義務づけられました。  欧米で取締役会の多様性に関心が集まっている背景には、取締役会から「バイアス」と「しがらみ」を排除し、より正しい判断ができるようにするという意図があります。バイアスとは、人ひとりひとりが持つ思考の偏りのことを指し、人はバイアスをゼロにすることはできないというのが根本の考え方にあります。取締役会の多様性を確保することで、組織全体でバイアスをなくしていこうというのがその発想です。一方、しがらみとは、人間関係のパワーバランスから来る心理を指します。企業や上位者と利害関係のある人は、判断の客観性が鈍るという考えから、独立した社外取締役の起用を求めています。これが最近の欧米の取締役会の理想の姿と位置づけられているのです。  また、欧米では取締役会の責務に関して、日本での議論の中心であった「監督機能」だけでなく、「中長期戦略策定機能」や取締役会の選定・報酬を含む「経営環境整備機能」も同時に重視しており、これらにも「しがらみ」や「バイアス」を廃した取締役会が果たす役割が大きいと捉えてきたということも重要な視点です。実際、マッキンゼー社が公表したレポート「Is there a payoff from top-team diversity?」によると、取締役会の多様性を女性と外国人で計り、上位25%であった企業は下位25%の企業と比較してROEが平均53%、EBITも平均13%高かったことが観測されています。このようにダイバーシティが企業のパフォーマンス向上に貢献することが、欧米の投資家の間での共通認識となりつつあります。 日本における取締役会の多様性と社外取締役の在り方  海外でコーポレートガバナンスに関する新たな共通認識が生まれたことが、今回のコーポレートガバナンス・コード制定を大きく後押ししました。独立社外取締役を2名以上選任することを要求されたことについては、監査役会設置会社の中には、社外監査役をすでに選任している上にさらに社外取締役の2名以上の選任を要求されたことに大きな負担感を感じているところもあるようです。しかし、そのような項目が制定された理由には、監督機能だけでなく、中長期的戦略策定機能や経営環境整備機能も取締役会の責務として挙げられ、それに関与する独立社外取締役が必要であるとの考え方があります。  それでは、日本において、中長期的戦略策定機能や経営環境整備機能を果たすための多様な取締役会とはどのようなものになるのでしょうか。世界最大手のエグゼクティブサーチ会社であるエゴンゼンダー社の2014年の調査は、取締役に外国人がいる割合は世界平均で17.1%、ヨーロッパでは32.3%、日本においては3.3%と報じています。社会的同一性の高い日本においては、幾分仕方がないとも思えますが、今後市場の舞台を海外へと移していく企業には、外国人取締役や外国人社外取締役の存在はますます重要となっていきます。また、同調査によると、取締役に女性がいる割合に関しても世界平均が68%、ヨーロッパでは96%なのに対し、日本では36%に留まっています。これは日本企業が「性別に関係なく適切な人材配置を実施している」とは言うには厳しい数値だと言えるでしょう。  中長期的戦略策定や経営環境整備、そして従来から着目されてきた監督責任のために、取締役会の構成においてどのような多様性を重視するかは業界や企業によって異なります。たとえば、新EU会社法でも、年齢、性別、学歴、職歴等の多様性のどれを重視するかは企業に委ねられています。だからこそ、対外的に取締役や独立社外取締役の選任要件や理由をしっかり説明できるかどうかがますます問われていきます。コーポレートガバナンス・コード元年である今年は、取締役会構成の再定義・再検討までにかけられる時間はあまり多くはありませんでした。来年度の株主総会に向けて新たな一歩が期待されています。

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2015/08/31 体系的に学ぶ

コーポレートガバナンス・コード

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 上場企業のガバナンスのあり方を示した行動規範のことで、元々は1990年代後半のイギリスではじまったとされます。2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融不安は、短期的利益を追求する金融機関が投資先のガバナンスを含むリスク面を軽視したことが引き金の一つになったと言われており、投資する側の「スチュワードシップ・コード」と投資される側の「コーポレートガバナンス・コード」が整えられました。  日本でも日本版スチュワードシップ・コード導入とともに、2015年6月コーポレートガバナンス・コードが設定され、上場企業に適用されました。日本版スチュワードシップ・コード同様、法的拘束力はありませんが、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」の原則の下、コーポレートガバナンス・コードを遵守するか、さもなければ遵守しない理由を説明するかが求められます。コードには、①株主の権利・平等性の確保、②株主以外のステークホルダーとの適切な協働、③適切な情報開示と透明性の確保、④取締役会等の責務、⑤株主との対話が盛り込まれています。東京証券取引所の発表によると、コーポレートガバナンスとは「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」を意味するとしており、本コードは、対象企業が持続的成長と中長期的な企業価値の向上を自律的に実践し、経済発展に寄与することを目指しています。 参考サイト 日本証券取引所グループ「コーポレートガバナンス・コード」(PDF) 日本証券取引所グループ「コーポレートガバナンス」

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2015/08/31 辞書

【9/30・東京 CSRセミナー】第6回東洋経済CSRセミナー「今知っておくべき!必要とされるCSR・ESG情報の開示」を開催!

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 今年6月から適用開始されたコーポレートガバナンス・コード、統合報告など上場企業を中心に非財務情報の開示を要請される機会が増えています。これらは主な利用対象が投資家で、これまでの幅広い層を対象としてきたCSR報告書等とは異なる情報開示が必要になってきています。    こうした変化の中で企業はこれまでのCSR・ESGの開示を見直し、さらに進化させていかなければならないのは明らかです。ただ、多くの利用者がいるCSR・ESG情報をどう変えていけばよいかを明確にすることはベテランのCSR担当者でも悩むところではないでしょうか。  そこで今回は、こうした方々のヒントになるように企業が知っておかなければいけない「必要とされるCSR・ESG情報の開示」について皆様と一緒に考えていきます。    前半の講演では、 株式会社イースクエア代表取締役社長・本木啓生氏に「企業に求められるCSR・ESG情報開示の最前線」というテーマでお話いただきます。グローバルを含めた大きな環境変化の中で、企業に求められる非財務情報とは何なのか。さらによく使われる開示の枠組みやステークホルダー視点での情報開示のあり方など、基本から詳しくご説明いただきます。  続いて、後半のパネルディスカッション(「CSR担当者が考えるステークホルダー視点での情報開示」)では、企業のCSR担当者などにご登壇いただき、各社の現在の開示状況や課題、将来あるべき開示の姿などについて議論していきます。    本セミナーはCSR担当になったばかりの方はもちろん、大きく変化するCSR・ESGの開示について体系的に理解したいという方にもお勧めです。CSR部署だけではなく、広報やIRといった企業の情報開示に深く関係する部署の方、さらにこうした開示に興味のある研究者や学生の方にもぜひご出席いただきたいと思います。皆様のご参加を心よりお待ちしております。 セミナー概要 日時:2015年9月30日(水) 14:00~17:00(受付開始13:30) 会場:社団法人経済倶楽部ホール(東洋経済ビル9階) 東京都中央区日本橋本石町1-2-1  アクセス (最寄駅:地下鉄半蔵門線「三越前駅」B3出口から徒歩0分など) 定員:100名(最少開催人員:30名) ※お申し込みが最少開催人員に達しない場合は開催を中止させていただくことがあります  主催:東洋経済新報社CSRプロジェクトチーム(担当:岸本・市川) 協力:日本橋CSR研究会、CSRのその先へ、Sustainable Japan 予定プログラム ご挨拶 講演(14:05~15:35) 「企業に求められるCSR・ESG情報開示の最前線」 株式会社イースクエア代表取締役社長:本木啓生氏 ■主な内容 ・CSRに取り組む前提となる事業環境の変化 ・CSR先進企業と企業業績との連動 ・CSR・ESG情報開示の枠組み(GRI、SASB、IIRC) ・ステークホルダー視点でのCSR・ESG情報開示 ・投資家から評価を得るための情報開示 休憩(15:35~15:45) パネルディスカッション(15:45~17:00) 「CSR担当者が考えるステークホルダー視点での情報開示」 パネリスト:本木 啓生氏(株式会社イースクエア代表取締役社長) 安藤 光展氏(CSRコンサルタント) 井手 一代氏(ヤフー株式会社 社長室 社会貢献本部) 岩澤 亨氏(トピー工業株式会社 総務部広報IR担当) モデレーター:岸本 吉浩(東洋経済新報社『CSR企業総覧』編集長) 閉会のご挨拶 参加費:Peatix3,500円(税込み)、当日お支払い4,000円(税込み)  詳細・お申込み Peatix(外部サイト)からお申し込みください。

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【9/28・東京 セミナー】「投資家に伝えるべき非財務情報は何か?-CSR情報とESG情報の違い-」

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 株式会社シータス&ゼネラルプレスは、2015年9月28日(月)に本社(東京都文京区)にてセミナー「投資家に伝えるべき非財務情報は何か?-CSR情報とESG情報の違い-」を開催いたします。  日本版スチュワードシップ・コードの策定とコーポレートガバナンス・コードの施行によって、企業と投資家の「対話」を求める動きが加速しており、6月には経済産業省を中心とした「第1回経営者・投資家フォーラム」が都内で行われました。  企業が日々発信する情報を、投資家はどのように活用しているのでしょうか。また、アニュアルレポート、統合レポート、CSRレポート等の任意開示ツールを、投資家はどのように読んでいるのでしょうか。  このたび、グローバルなIRとコーポレートガバナンスのコンサルティング会社として、日本企業の要望に応える世界レベルのIR活動を支援するジェイ・ユーラス・アイアール株式会社(以下、J-Eurus IR)との共催により、セミナーを開催します。J-Eurus IRが有する機関投資家のリアルな声と、弊社が有するCSRコミュニケーションのノウハウを融合させ、今後の企業と投資家とのコミュニケーションを円滑に進める、具体的な情報を提供する機会にできれば幸いです。 当セミナーのポイント 投資家に伝えるべき情報は何かを知ることができる。 今後、任意開示ツールを作成するうえで、投資家視点でのヒントが得られる。 開催概要 日時:2015年9月28日(月)15:30~17:30 (受付15:00~) 場所:株式会社シータス&ゼネラルプレス 本社 5F会議室 東京都文京区小日向4-5-16 ツインヒルズ茗荷谷(地図) TEL 03-6902-2001(代表) 最寄り駅からのアクセス:東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」3番出口より徒歩約3分 参加費:無料 定員:40名 対象:企業のIR、CSR、広報、経営企画、法務ご担当者 (※コンサルティング会社様、広告制作会社様などはご遠慮いただく場合がございます。) プログラム (120分) 15:30~16:30(60)「投資家に伝えるべき非財務情報は何か?」 プレゼンテーション: ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社 岩田 宜子氏  16:30~17:00(30)「国内外の統合レポート優良事例」    プレゼンテーション: 株式会社シータス&ゼネラルプレス 斉藤 肇 17:00~17:25(25)ディスカッション 17:25~17:30(5)弊社ご紹介、今後のセミナー予定、アンケート記入 17:30 終了 講師プロフィール 岩田 宜子氏 ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社 代表取締役 米系銀行の東京支店にて、外国為替、融資、さらにALM分析、リスク管理計画など多岐にわたる業務を経験。1992年よりIR業界でのキャリアを開始。米国IRコンサルティング会社、テクニメトリックス(現、トムソン・ファイナンシャル・インベスター・リレーションズ)の日本・韓国担当シニア・ディレクターを経て、現在に至る。東証優良企業選定委員〈2007年より2011年まで〉、日本IR学会理事。2013年10月、経産省では、「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」における対内直接投資研究会を発足し、その委員に選ばれる。 斉藤 肇 株式会社シータス&ゼネラルプレス コミュニケーション革新部 コンサルタント 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 博士前期課程修了(MBA 社会デザイン学)。研究テーマは、日本でESG投資を促進していくための、上場企業の任意情報開示のあり方について。日本インベスター・リレーションズ学会、社会デザイン学会会員。 お申し込み お申し込みはこちらから

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