【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[2018年版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等)

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 ここ数年、世界のエネルギーや発電に関する状況は様変わりしました。まず、東日本大震災を機に、日本でも世界でも原子力発電に関する否定的な考え方が強くなりました。また、アメリカでのシェール革命により天然ガスや石油の価格が急落。化石燃料の輸出入ルートも大きく変化しました。その中で、日本のエネルギー・電力の供給量割合がどのように変化したのか、紹介していきます。 日本のエネルギー・発電の供給量割合 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  こちらは経済産業省エネルギー庁が発表している「2018年度エネルギー白書」のデータです。この表は、日本の発電事業者全体での、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、再生可能エネルギー(風力、地熱、太陽光など)別の電源割合を示したものです。統計対象については、昨年度のエネルギー白書までは、旧一般電気事業者、すなわち「電力会社」10社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)のみが集計対象(「電源開発の概要」「電力供給計画の概要」)でしたが、今年度からは、製鉄や重工業メーカーや再生可能エネルギー発電事業者が主な主体となる独立系発電事業者(IPP)を含む発電事業者全体を集計対象(「総合エネルギー統計」)とする大きな変更がありました。それに伴い、2010年移行のデータも新手法により再計算されました。  この推移から、日本の発電の歴史が垣間見られます。発電の主要電源は、1965年頃までは水力、1973年の第一次オイルショックまでは石油、そしてその後は石油に変わって石炭とLNG、そして原子力が担っていきます。2011年の東日本大震災以降は、原子力発電の割合がほぼゼロにまで減り、その減少分の大半をLNGがカバーしています。  2016年時点で、割合が最も大きなものがLNGで42.1%、その他、石炭と石油を合わせた火力発電で、実に83.8%を占めています。火力発電の割合は2009年当時は61.7%でした。この急速な火力発電依存の背景には、ご存知の通り原子力発電所の稼働停止があります。  歴史の長い水力発電は一般水力と揚水発電を合わせて7.6%。揚水発電とは何かは後ほど説明します。一方、期待されている再生可能エネルギーは6.9%。こちらも2009年当時は1.1%でしが、電力固定価格買取(FIT)制度の導入により5.8%伸びました。  発電総量が2010年以降減少していることも、興味深いポイントです。東日本大震災から約4年経ち、市民の生活にはほぼ節電の印象はなくなりましたが、実際には電力会社の発電総量は当時には戻っていません。日本が発電量を減らしながら持ちこたえている背景には、企業による節電努力があると言えそうです。また、2015年末の気候変動枠組み条約パリ条約で化石燃料、とりわけ石炭火力発電からの脱却が世界的なトレンドとなる中、日本では石炭火力発電の割合が2012年の31.0%から2016年の32.3%へと増加したことにも注目です。 各電力源の状況 水力発電(一般水力・揚水水力)  上記のグラフからの分かるように、1960年代まで水力発電が日本の主要電源でしたが、1975年に落差日本最大の黒部ダムが完成した頃からほぼ変化していません。水力発電は、維持コストが低く、CO2排出のない自然エネルギーである反面、ダム建設時の莫大なコストと水没による社会・環境コストが大きく、世界的な統計でも水力発電は、再生可能エネルギーとして扱われるケースと扱われないケースがあり、意見が分かれています。日本で水力発電が伸長しなかった背景には、1990年代以降の公共事業の見直し、2001年に当時の田中康夫・長野県知事が掲げた「脱ダム宣言」があり、大規模工事となるダム建設に社会全体が慎重になっていくという状況の変化がありました。  また、2015年には揚水式水力発電が0.7%を担っています。こちらも水力発電ですが、少し特殊な発電方式です。揚水式発電とは、電力需要の少ない夜間に電気を使ってポンプを動かし水を高地に引揚げ、電力需要の多い昼間に、その水を使って水力発電を行うというものです。電力を使って発電をするという方式のため発電総量を増やすことには寄与しませんが、昼間の最大電力量を増やす需給バランス調整機能として活用されています。  昨今では、再生可能エネルギー型の水力として「中小水力発電」にも注目が集まっています。こちらは巨大なダム施設を建設するのではなく、河川の自然の急流を利用して発電を行う中型・小型のタイプです。中小水力発電は、一般的な水力発電が持つ巨大な初期投資や水没というデメリットがないのですが、規模が小さいため、発電量そのものが小さくなってしまったり、河川の生態系へも悪影響を与えるという懸念もあり、日本ではほとんど建設されていません。 石油等  日本の火力発電は当初は石油が主要燃料でした。その背景には、中東からの石油販路の確保がありました。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  こちらは1960年から2016年まで長期に渡る日本の原油輸入量の推移です。1960年から1973年にかけて、急速に原油の輸入量が増加していったことがわかります。当時の日本は高度経済成長期。日本の電力及びガソリン需要の増加していました。そしてその電力需要を賄うために、発電所建設コストの低い火力発電所の建設ラッシュが起き、その燃料として原油が用いられていました。  しかし、1973年から原油の輸入量は減少に転じます。第一次石油ショックです。発電を原油だけに依存することのリスク認識が高まっていきます。また、同時にマイカー時代の到来を支えるため、原油をガソリンに回す必要も出てきました。そんな環境下で、1975年、第3回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会が開催され、「石炭利用拡大に関するIEA宣言」が採択、石油火力発電所の新設禁止が盛りこまれました。その後も日本では、既存の石油火力発電所を石炭またはLNG火力発電へ転換することが促進されていきました。結果、火力発電の主役は、石炭やLNGに変わっていきました。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  東日本大震災まで石油での火力発電は減少の一途を辿ります。2012年からは増加に転じましたが、それ以上に石炭・LNGでの発電量は増えています。今でも火力発電と石油を結びつけて考えられることが多いですが、発電における石油の割合は大きくはありません。もちろん、原油はガソリンという貴重なエネルギー源でもありますので、エネルギー全体にとって重要性が低いわけでは決してありません。原油の輸入元も、過去しばらくは中東依存度を下げるためインドネシアからの輸入が増加していましたが、インドネシアの経済発展に伴い原油が輸出に回せなくなった結果、中東依存度は90%近くにまで戻っています。最近はイランからの原油輸入も減る一方、ロシアからの輸入が増えています。 (出所)経済産業省エネルギー庁総合資源エネルギー調査会「エネルギー基本計画の要点とエネルギーを巡る情勢について」  原油価格のトレンドはこの数年で急速に変化しています。リーマンショックの2009年頃から原油価格は急速に高騰していきましたが、2014年秋から反落、今は2005年頃の水準に回帰しています。背景には、シェールガスやシェールオイルにより米国を始め世界中で化石燃料供給量が一気に増え、それに対し従来は価格調整機能を果たしていたOPECが対抗するために原油産出量を減らさない方針を発表したことがありました。その結果、石油火力発電のコストは減少していますし、この価格トレンドはこれからお話する、天然ガスや石炭の価格にも大きな影響を与えています。 石炭 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  こちらのグラフは日本の石炭の国内生産量と輸入量の推移を示しています。今ではほぼ100%が輸入石炭となりましたが、かつて日本は石炭大国でした。明治時代から日本では機関車や工場の燃料、製鉄業の原料として石炭を大量に生産していました。中学校の教科書に出てきた福岡県の筑豊炭田、三井三池炭鉱、映画「フラガール」の舞台となった福島県の常磐炭田、世界遺産となった長崎県の軍艦島を始め、日本には北海道・福島県・山口県・九州北部を中心に800近くの生産量の豊富の炭鉱がありました。ところが戦後、液体で輸送利便性が高くさらに熱変換効率も高い石油と、安価な海外石炭に押され、国内石炭は競争力を失いました。その後、炭鉱の閉山が相次ぎ、現在、釧路炭田が国内唯一の坑内掘り炭鉱です。  一方、第一次石油ショック以降、火力発電の主役となった石炭は輸入量を急速に増やしていきます。石炭は石油に比べて地理的分布が偏在していないのが特長で、日本の一般炭の輸入元は、オーストラリアが76.5%、インドネシアが10.8%で、二カ国合計で全体の87.3%を占めています。日本は数年前まで世界一の石炭輸入国として君臨し続けていましたが、ついに中国が日本を抜き、現在世界一の石炭輸入国となりました。中国は少し前では世界有数の石炭輸出国だったのですが、国内の石炭需要が急増し、輸入国となったのです。同様にインドも近年石炭輸入を大幅に増やしており、2014年に日本を抜き世界第二位の石炭輸入国となりました。世界最大の石炭輸出国であるインドネシアにも変化の兆しが見られます。2014年6月に、ロイター通信が、「世界最大の一般炭輸出国インドネシアが生産抑制と輸出管理強化に向けた新たな規制を検討していることが6日、政府関係者の話で分かった」と報じました。インドネシアも国内の石炭需要が増えていることで、石炭輸出を控えようと言うのです。このように、石炭の需給は逼迫してきています。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  輸入石炭の価格は、石油や天然ガスと比べ遥かに安いですが、それでも近年じわじわと上昇してきており、昨今の石油・天然ガスの価格下落に比して、石炭価格はそこまで下落していません。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  石炭の今後を見ていく上で、やはり注目は中国の動向です。 (出所)IEA "Key World Energy Statistics 2017"  実は中国は世界でダントツナンバーワンの石炭生産国です。その生産量32.4億トンで、2位インドの7億トンの約4.5倍です。その旺盛な石炭需要は国内の石炭だけでは賄い切れず、2010年には輸出国から純輸入国に転じました。2013年には世界最大の石炭輸入国となり、2014年の中国の石炭輸入量は3位日本の1.5倍の量まで増えましたが、2015年には大気汚染や気候変動の問題から中央政府が石炭への依存度を低減する政策に乗り出し、輸入量は日本と同等まで減少。しかしその後輸入は増え2016年には再び日本の1.3倍ほどに上がりました。 (出所)IEA  中国が膨大な石炭を必要としている背景には、石炭を用いた火力発電の伸長があります。中国は現在、再生可能エネルギーや原子力発電の建設を推し進めていますが、火力発電、特に石炭火力にかなり依存しています。石炭は石油や天然ガスと比しても世界での埋蔵量が多く、今後も安定的なエネルギー源として用いられていく見込みですが、需給が逼迫すれば当然価格は高騰します。また、石炭は他のエネルギー源に比べ、燃焼による窒素加工物含有量や硫黄加工物含有量が多く、後処理をしなければ深刻な大気汚染を引き起こします。環境対策も今後の大きな課題です。大気汚染問題を重く見た中国は、エネルギー消費量全体は伸ばしつつも、石炭の消費量は2014年以降は減少に転じています。 天然ガス (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  ガスと言うと、お風呂やガスコンロで用いられるガスのことを想像するかもしれません。確かにガスという燃料はそのまま家庭用や産業用に「ガス」という状態のままで使用されています。ところが、実際の日本での消費量を見てみると、都市ガスとして使われているのは全体の30%弱にすぎず、ほとんどのガス燃料は、火力発電のための燃料して使われています。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  天然ガスには、ガス採掘所から気体のままパイプラインを通して流通させるものと、一度冷却し液体状態にしたLNG(液化天然ガス)の2種類があります。ヨーロッパや米国では一般的に天然ガスはパイプラインで輸送されています。日本でも国内で採掘させる天然ガスはパイプラインで輸送されています。しかし国内天然ガスの採掘量は非常に少なく、日本は海外からの輸入天然ガスに頼っています。日本が輸入している多くの天然ガス産地は日本から離れており、LNGの形でタンカーに載って国内に入ってきています。  冒頭で紹介したように、日本は現在電力の44.0%を天然ガスで調達しています。では、その天然ガスはどこから輸入しているのでしょうか。 (出所)経済産業省エネルギー庁「エネルギー白書2018」  過去の推移を眺めると、日本の電力会社や商社は、天然ガス調達のために次々と輸入元を開拓してきたことがわかります。特に、2000年代に入ってから依存度の高かったインドネシアからの輸入量が減少したこと、そして東日本大震災以後の原子力発電所の稼働停止に伴い、マレーシア、オーストラリア、カタール、赤道ギニアからの輸入量が増えています。また、近年、「サハリンⅡプロジェクト」等の進展によりロシアからのLNG輸入も始まっています。一方、米国からの天然ガス輸入が少ないことに疑問を持つ方もいるかもしれません。確かに米国では昨今シェールガス開発が急伸しています。米国から日本へのシェールガス輸入は2017年1月から始まりました。 (出所)CSIS  さて、ガスの価格はどうでしょうか。こちらは世界の主要市場である米国、ドイツ、英国、日本を比較したものです。この3本の線はそれぞれ違う動きを見せています。まず日本。東日本大震災後価格が急騰しているのがわかります。通常天然ガスは安定的な輸入供給を実現するため長期契約で価格を取り決めています。そして長期調達で融通しきれない場合は、スポットで取引されているものを買うことになります。日本は震災後、一気に購入量を増やしたためスポット市場でも取引を行い、需給バランスが売り手優位に動いた結果、価格が高騰しました。  一方、米国ではシェールガス革命が始まったおかげでリーマンショックからの経済回復後も価格は低位へと推移しました。また、欧州では安全保障リスクの観点からロシアからの天然ガス購入を控え、中東からの石油・天然ガス輸入を強化した結果、価格は下がってきています。日本でも2014年以降は、世界的なガス価格の低下の流れや、ガス供給者との価格交渉等により価格が下がってきています。 (出所)EIA  今後の注目はやはり米国でのシェールガス採掘の動きです。2015年時点での予測では、今後米国でのガスは大半がシェールガスとなっていく見込みで、全体のガス生産量も急増していくと言います。2014年後半のガス価格の下落以降、シェールガス開発の動きも少し緩慢になってきているといいますが、米国の潜在的なシェールガス産出規模は巨大です。膨大なガスが市場に出てきますし、2017年からは日本にも米国からのガス輸入が開始され、日本のガス輸入価格も下落していきています。また、日本政府やエネルギー各社、商社は協力して新たな天然ガスの調達先を開拓しています。米国では、中部電力・大阪ガスがフリーポートLNGプロジェクトに、住友商事がコーヴポイントLNGプロジェクトに、東芝がフリーポート(拡張)LNGプロジェクトに、三菱商事・三井物産がキャメロンLNGプロジェクトに関与しています。カナダでは、三菱商事がLNGカナダプロジェクトに、石油資源開発がパシフィック・ノースウエストLNGプロジェクトに、出光興産がトリトンLNGプロジェクトに、国際石油開発帝石がオーロラLNGプロジェクトに関与しています。オーストラリアでは北部準州のイクシスLNGプロジェクトに、国際石油開発帝石が関与しています。インドネシアでは、東部のアラフラ海海上のガス田開発プロジェクトに国際石油開発帝石が関与しています。 原子力発電  東日本大震災後に原子力発電所が全て稼働停止となりましたが、その後も2013年まで少量ながら原子力発電量が存在している理由は、関西電力の福井県大飯発電所の原子力発電所が一時的に再稼働されていたためです。もともと原子力発電は、日本の高度経済成長期に膨れ上がる電力需要を賄うため政府主導で進められてきました。1955年12月原子力基本法が成立し原子力利用の大枠が決定、1957年には原子力発電を行う事業者として日本原子力発電が発足します。1963年に日本初の原子力発電に成功し、1966年には日本初の原子力発電所・東海発電所が完成し、商用の営業運転を開始しました。「省資源・二酸化炭素排出量ゼロ・エネルギー安全保障の確立」という夢の技術として期待された原子力発電は、2011年の東日本大震災で社会の捉え方が大きく変化しました。その後全ての原子力発電所は全て活動を停止しましたが、2015年8月に九州電力の川内原子力発電所が運転を再開、2016年2月に関西電力の高浜原子力発電所が運転を再開しました。しかし同3月大津地方裁判所の仮処分を決定、高浜原子力発電所は運転を再び停止しました。 (出所)経済産業省エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会「参考資料(事務局提出資料)」  原子力発電の魅力的な点は発電コストの低さです。現在日本政府の検討会議で使われている比較データでも、原子力発電は最も発電コストの低い手法の一つとして扱われています。しかしこの発電コストの低さを強調する議論に対し、「原発事故が起こった場合の対策費用や社会的損失費用などがしっかり考慮されていない」という、原子力の発電コストの計算方法に異議を唱える人々も少なくありません。日本政府は2015年1月30日、経済産業省エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に「発電コスト検証ワーキンググループ」を設置し、最新のエネルギー市場を踏まえて再度エネルギーコストを試算することとしています。 (出所)経済産業省エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会「参考資料(事務局提出資料)」  また、日本政府が原子力発電を推進したいもう一つの要因は、日本の原子力発電産業の振興です。かつて原子力発電の将来の国内の主要電源として位置づけてきた日本は、原子力技術は言わば長期にわたって官民で投資してきた分野。これを海外に輸出することを産業振興の一つの柱としてきました。世界の主要原子力プラントメーカーは再編が進み、現在は3つのグループに分かれています。1つが三菱・アレバグループ、2つ目が東芝・ウエスチングハウスグループ、そして日立・GEグループで、いずれにも日の丸電機メーカーが入っています。しかしながら、東日本大震災以後、日本国内での原子力に対する期待が大きく下がる中、韓国・中国・ロシアの新興原子力プラントメーカーが台頭してきており、日本の産業界からは危機感が募っています。 (出所)日本原燃  原子力発電にはメルトダウンなどのリスク以外にも、放射性廃棄物の再処理・中間貯蔵・最終処分の問題があります。そのためもあり、日本政府が2014年4月に閣議決定した新しい「エネルギー計画」では、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。」という方針が決まりました。しかしながら、全面廃止するという意味合いではなく、発電コストを下げるためにも、目下のところ経済産業省は原子力発電の再稼働に躍起になっています。 再生可能エネルギー(新エネルギー)  最後に、「未来のエネルギー」と呼ばれてきた再生可能エネルギーの状況を見ていきましょう。再生可能エネルギーと一言で言っても実は定義は曖昧です。経済産業省は、再生可能エネルギーと新エネルギーの用語を使い分けており、再生可能エネルギーは広義で、太陽光発電(PV)、太陽熱発電(CSP)、風力発電、地熱発電、潮力発電、バイオマス発電、水力発電などを全て含みます。一方で新エネルギーは、再生可能エネルギーから大規模水力発電、フラッシュ方式地熱発電、空気熱発電、地中熱発電を除いたものを指します。ですが、実態としては専門家の間でも定義は今でも揺り動いていますし、外国にいけばなおさら定義は異なります。  日本の2014年の電力事業者が行っている発電のうち、新エネルギーが占める割合は3.2%。震災前の2009年には1.1%でしたので多少は増えましたが、それでも微々たる数値です。期待されても期待されてもなかなか日本で導入が進んでこなかった理由はコスト面です。原子力発電所のコーナーでご紹介したように、再生可能エネルギーのコストは比較的高いと計算されているのです。しかしながら、近年諸外国では再生可能エネルギーは積極的に導入されてきており、技術革新が進展。結果として、コストはどんどん下がってきています。 (出所)IRENA  こちらは国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表したデータです。再生可能エネルギーの発電コストについて、2010年と2017年を比べたものですが、特に太陽光(PV)、太陽熱(CSP)でコストが大きく下がり、風力もコストが低減していることが見て取れます。背景には、太陽光発電パネルメーカーも風力発電機メーカーもグローバル規模で熾烈な企業競争があります。とりわけ、中国やインドなどの新興国メーカーの台頭が目覚ましく、それらが発電コストをどんどん押し下げてくれています。日本政府も、固定価格買取制度を2012年に本格開始しました。その後、電力事業者各社から送電網の不安定さを理由に電力買取を拒否する動きも出てきましたが、経済産業省は送電網強化指導に乗り出しています。  再生可能エネルギーのシェア目標については、低く設定されたままです。2010年6月に改訂された日本政府の「第3次エネルギー基本計画」では、原子力発電と再生可能エネルギー(水力含む)の比率を、2020年までに50%、2030年までに70%とする計画を打ち上げました。さらに、その中で、再生可能エネルギーが占める割合を、2020年までに全体の10%に達するという計画も含まれました。しかし、東日本大震災によって計画は方向性を失い、2018年7月の「第5次エネルギー計画」では、2030年目標として水力と再生可能エネルギーで22%から24%、原子力を20%から22%としています。  では、再生可能エネルギーはやはり期待できない電力源なのでしょうか。世界に目を向けるとそうとも言えません。世界各国の電力統計をまとめている国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2015年時点で世界主要国は再生可能エネルギーを重点的に強化しています。定義が異なるため、こちらの統計では日本の発電における再生可能エネルギー割合は8.2%(バイオマス発電が3.3%で牽引)です。この数値で比較していきましょう。ドイツはそれぞれ27.1%、同じ島国英国は23.8%、デンマークはなんと68.0%です。また、各国では2018年までの間にさらに再生可能エネルギー投資を活発化させており、年々この差は開いていきそうです。 電力の行方  電力問題の課題には基本的に2つの大きなテーマがあります。 ピーク電力需要の削減(ピークシフト・ピークカット) 電力コストの削減(再生可能エネルギーの技術革新)  ピーク電力需要の削減とは、1年や1日の中で最も電気を必要とする時間帯の電気使用量を減らすということです。電気は1日中満遍なく使われているわけではありません。基本的には夏の昼間が最も電力需要が大きく、春秋の夜は電力需要が著しく低下します。すなわち1日をかけて電力消費量を減らす必要はなく、ピーク時の電力需要を削減できれば発電容量を大きくする必要がなくなるというわけです。そこでピークシフトとピークカットという考え方が出てきます。ピークシフトとはピーク時に節電しピーク時でないとき電気を使うという電力需要の差を平準化する試みです。その方策としては、ピークでないときに蓄電してピーク時に使用するという供給側の対策と、電気料金を時間帯ごとに変えピーク時に高くそれ以外に安くすることで利用者のピーク時以外利用を促すという需要側の対策の2つが大きく検討されています。ピークカットとは節電技術を開発・導入して常時電力を下げるという方法と、ピーク時に活用できる太陽光発電などを利用してピーク時の商用発電量を減らすという方法があります。  一方で、電力コスト削減の突破口は技術革新です。特に上述したように再生可能エネルギーのコストは年々大きく低下しており、これは全て開発している研究者やエンジニア、企業や研究機関の努力によるものです。当サイトでも、太陽光、洋上風力、バイオマスの技術革新の様子をご紹介しています。この分野の技術革新には海外ではESG投資として年々多くの資金が投じられており、ますますテクノロジーの進化は進んでいきそうです。従事する企業にとっては国際競争がより激化していくことも意味しています。事業会社にとってもエネルギーの安定供給を実現していくことは企業のサステナビリティを高めることにも繋がり、アメリカのIT業界では再生可能エネルギーでの発電を自社で推進しています(参考:【IT】Greenpeaceの巨大な影響力 〜Amazon, Appleがクリーンエネルギー推進へ転換〜)。エネルギーの分野はこれからますます多くの企業の関心と協力を必要としていきます。

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【エネルギー】世界の風力発電導入量とビジネス環境 〜2015年の概況〜

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風力発電は再生可能エネルギーの中で最大規模  大きな風車が象徴的な風力発電。風力発電は気象現象として気圧差から発する風力を、風車で捉えてタービンを回し、その動力エネルギーを電力エネルギーに変える発電手法です。従来の化石燃料エネルギー型発電と比べ、二酸化炭素の排出量が著しく小さく、気候変動を抑制する効果が大きいとされています。 (出所)IEAのデータをもとに、ニューラル作成  一般的に再生可能エネルギーには、太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、地熱発電、潮力発電、バイオマス・廃棄物発電の5種類がありますが、これまでの導入実績は大きく異なります。再生可能エネルギーの中で最大規模の発電量を誇るのは風力発電。2013年の世界全体での風力発電電力量は年間63万GWh、世界の年間総発電量の2.7%を占めています。また、再生可能エネルギー発電量全体を分母とすると、約半数の48.4%を占めています。風力発電の特徴のひとつに海上での発電が可能だというものがあります。そのため、洋上風力発電は、世界の広大な海を発電所に変えることができるため、候補地となる面積が広大。風力発電は、今後、再生可能エネルギーの中で最も伸びる分野だとも言われています。 風力発電の増加率は過去20%以上を超え、今後も増加傾向は続く (出所)GWECのデータをもとに、ニューラル作成  世界の風力発電に関する統計は、世界風力エネルギー会議(GWEC)がデータを集めています。GWECの報告書によると、風力発電の設備容量は、2001年から平均20%以上の年間成長率で増加してきました。また今後も2020年まで約13%の成長率で伸びるという予測も立てています。風力発電設備が20%成長を続けているということは、産業全体としても20%伸びているということです。つまり、風力発電の設備メーカー、建設事業者も同様に業績が拡大し、雇用も創出されています。 中国の導入量がヨーロッパを抜いた (出所)GWECのデータをもとに、ニューラル作成  世界の風力発電を牽引しているのは、今や中国です。風力発電は2000年前後から米国、ドイツ、スペイン、デンマークの4カ国がリードしてきました。特にドイツ、スペイン、デンマークは環境政策の一環として再生可能エネルギーに注力、風力発電の建設が急速に増加しました。2005年からはそれに加え、 イギリス、イタリア、フランス、ポルトガル、スウェーデン、オランダといったEU諸国も追随、またこの頃から経済発展に応じて急速に電力需要が増加した中国とインドでも導入量が増えていきます。日本は2004年時はイギリスに次ぐ世界第8位の風力発電国でしたが、その後は新規導入量が停滞。2015年時点では世界第18位にまで後退しています。今日、風力発電はEU諸国と北米、そして世界の人口大国である中国、インドが牽引しています。また、ブラジル、トルコ、ポーランドなど新興国も積極的に風力発電を伸ばしています。 ヨーロッパでは風力発電が幅広く浸透 (出所:GWEC、IEAのデータをもとに、ニューラル作成)  これまで風力発電の中心地域はヨーロッパでしたが、2015年に中国がEU28カ国全体の風力発電設備容量を超え、世界のリーダーとなりました。中国は2015年時点で世界の1/3の風力発電設備が設置されています。中国の風力発電割合は2.7%、EUの7.2%には及びませんが、日本の0.5%より高い水準です。同じく風力発電導入量が増えているインドは、2015年にスペインを抜き世界第4位となりました。  洋上風力の分野では、世界の9割以上の設備はEU諸国に偏在しています。特にイギリスが牽引しており、イギリスだけで世界の4割以上を占めています。また、イギリスの風力発電設備全体に占める洋上風力の割合も37%と高く、イギリスは洋上風力に注力していることもわかります。その他、ドイツとデンマークを足した3ヶ国の世界シェアは約80%、洋上風力は北海・バルト海で占められています。一方で、他の風力大国であるアメリカ、インド、スペイン、カナダ、フランスなどでは洋上風力は全く進んでいません。  風力発電が全発電に占める割合ではドイツ、スペイン、ポルトガル、デンマークという国で非常に高い数値が見られます。特に、スペイン、ポルトガル、デンマークでは上記の推移グラフで近年導入量が停滞しているのがわかりますが、その背景にはすでに風力発電での発電シェアが高い水準にあるためということが言えます。 風力発電の種類(陸上・着床式洋上・浮体式洋上・小型) 陸上風力発電  陸上風力発電は、風力発電の中で最も伝統的なタイプです。日本でも山間部や海外付近で風車が回転しているのをご覧になったことがある方も多いと思います。今でも世界の風力発電全体の95%以上はこの陸上風力発電です。発電機にとって命となるのは発電効率。風力発電の場合、発電力は、(1)風速の3乗、(2)風力発電の羽(ブレード)の受風面積、に比例し、すなわち風がたくさんある環境の立地であることが最も重要で、さらにその地に羽の大きな風力発電を建てるほど発電力が高まることになります。一般的に風が強い場所は、山頂と海岸。そのため、山頂と海岸が風力発電の候補地として検討されています。  風力発電が太陽光発電と大きく異なるのは発電設備の規模。太陽光が基本的に太陽光パネルを設置しさえすれば、どこでも太陽光発電が可能となるのに比べ、風力発電を効率よく行うには大きなブレードが必要とあり、自ずと発電設備が大型となります。結果的に、広い用地となります。その上、製造場所と設置場所が離れていると膨大な輸送コストもかかります。したがって、山頂部は風が多い反面、平面の場所が少なく、輸送コストもかさむため、経済合理性からみてあまり設置には適しません。また、大きな羽を陸上輸送する場合、風力発電の一基あたりの出力容量は2MWが限界とも言われています。  陸上風力発電にはさらなる制約があります。落雷や台風など自然災害の多い地域では、風力発電の破損による事故の観点から立地には適しません。また、国立公園などでは景観の観点から風力発電の設置が禁止されている国も少なくありません。風力発電は再生可能エネルギーの中でも発電効率が良く注目されてきましたが、陸上の設置には制約が多い。そこで新たに注目を集めているのが、洋上風力発電です。 着床式洋上風力発電 (出所:EWEA)  着床式洋上風力発電は、水深20m以内の遠浅の地形を活かした海の上の風力発電です。海上は陸上に比べて風が強く、設置のための輸送制約も少なく、より大型のブレードを用いることも可能なため、発電力の高い風力発電が実現できます。洋上での発電効率は陸上の1.5倍とも言われています。さらに、海上は人間社会からの距離もあるため、社会的な制約も少なくなります。こうして、着床式洋上風力発電は、2011年末の時点で設置容量は4,096MWに到達。割合は風力全体の2%と小さいですが、今、ヨーロッパで急速に増加しています。  ヨーロッパで洋上風力が伸びている背景には、遠浅の地形が多いという地理上のメリットがあります。特に力を入れているのがイギリスとデンマーク。とりわけイギリスは単独で着床式洋上風力発電の40%を占めています。さらにイギリスでは数百MWの大規模洋上風力発電プロジェクトが次々と始まっており、風力発電をまだまだ増加させる見込みです。日本もこの洋上風力に力を入れています。すでに、北海道、山形県、茨城県、千葉県、福岡県で、1GW〜3GW程度の着床式風力発電所が営業運転されていますが、ヨーロッパ諸国と比べると規模の見劣りは否めません。そんな日本でも、茨城県鹿島港で100MWの大規模洋上風力発電がソフトバンクや丸紅の出資で建設されています。 (出所)Crown Estate 浮体式洋上風力発電 (出所:国土交通省)  浮体式洋上風力発電は、最新の手法で、現在、実用化に向けた実証研究がノルウェー、ポルトガル、日本などで行われています。浮体式洋上風力発電の特徴は、浮いているということです。風力発電の発電効率をより高くするには、風がより強い沖合へと出て行く必要がありますが、沖合は水深が深く、着床式で海底に固定するためには大規模な構造物と工事を要し、非常にコスト高となってしまいます。沖合は水圧も強く耐久性も問題となります。そこで考案されたのが、海底に固定させずに洋上に浮かべる風力発電です。  この浮体式洋上風力発電を熱心に推進しているのが日本です。着床式洋上風力発電は水深50mを超えるとコストが跳ね上がるため、ヨーロッパと違って遠浅が少ない日本は着床式洋上風力を推進しづらい。そこで、水深50m~200mで実現可能と言われる浮体式洋上風力を用いて、一気に遅れを取り戻そうとしています。それを具現化したのが、福島洋上風力コンソーシアム。日本政府が、東日本大震災後の2011年度第3次補正予算で福島復興のために125億円を計上し、丸紅、東京大学、三菱商事、三菱重工業、アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド、三井造船、新日本製鐵、日立製作所、古河電気工業、清水建設、みずほ情報総研の11社からなるコンソーシアムが、経済産業省から委託を受けて進めています。使われるブレードは、三菱重工業が同じく政府の助成金を受けて開発した一基7MWという世界最大級のものが使われる予定です。 (出所:日本風力発電協会。日本の将来展望を示したもので計画値ではない。)  浮体式洋上風力発電の実用化には多くのハードルがあると言われているのも実状です。日本政府は7MWブレードの実績を引っさげて新たな産業育成にしようとも考えていますが、世界には有力な風力発電メーカーが多数あり、日本企業は遅れをとっているのも事実。風力発電という領域で、日本政府や日本企業が注目されるようになるには、まだまだ努力が必要なようです。 小型風力発電 (出所:ウィンドパワー社)  本稿では触れていませんが、太陽光発電と同様「どこでも型」の風力発電として考案された小型風力発電というものもあります。小型で設置が容易なため、発展途上国など電気がまだ届いていない山間部の地域や遊牧民族用の電力として期待されています。街灯や公園などで見かけることがありますが、やはり発電力が小さく補助電源レベルに留まっており、送電網でグリッド接続されているのは多くはないのが現状です。まだ風力発電の柱のひとつして認知されるまでには時間がかかりそうです。 世界の風力発電メーカーの顔ぶれ  風力発電と太陽光発電の違いは、機器の構造にもあります。太陽光発電は太陽光パネルとバッテリーとそれを支えるフレームという非常にシンプルな構造をしているのに対し、大型化が進む風車設備は、電気機器、制御装置、駆動部、ブレードなどが凝縮された電気工学・機械工学の結晶。大型風車一基あたりの部品は2万点近くにものぼり、自動車産業にも匹敵すると言われています。そのため、風力発電産業は産業としても大規模となり、多数の雇用を生むとも言われています。 (出所:Nagigant Research、2014年の数値)  世界の風力発電メーカーの競争は激化しています。上位を占めるのは欧州勢で、1位は老舗のデンマーク・ヴェスタス社。1945年に風力タービンメーカーとして誕生し、1979年に風力発電機を製造開始。2012年時点では、累積で世界70ヶ国、46,000基以上の風力タービンを設置。2014年には世界最大8MWの風力タービンV164の試験発電を開始し、歴史・技術力ともに高い実績を誇っています。2位は老舗の独シーメンス社、洋上風力で特に強い存在感を示しており、欧州の洋上風力の約2/3はシーメンス製です。3位は、世界的な総合電機メーカーのGE、早くからで風力発電設備を手掛けており、シーメンスと同様老舗ブランドです。4位は新興の中国Goldwind社、高まる中国内需を後ろ盾にしつつ、低コスト戦略で海外市場でも力を伸ばしています。5位にはドイツのエネルコン社、7位米国のユナイテッドパワー社、8位スペインのガメサ社と風力発電の導入量が多い国の企業が並びます。また、新興勢力としては6位のインド・Suzlon社、8位の中国・明陽風電(Ming Yang Wind Power)の姿も見られます。老舗メーカー、新興メーカーともに、近年同業企業の買収合戦が展開さており、各社生き残りをかけ規模の拡大を続けています。  日本で風力発電を手がけているのは、三菱重工業、日本製鋼所、日立製作所の3社。数年前までは10位以内にランクインしていたのですが、近年、中国勢に押され、残念ながらマーケットシェア上位企業から姿を消してしまっています。日本国内の風力発電にも海外製のものが多数採用されているのが現状です。日本企業が生き残るためには、福島洋上風力コンソーシアムで高い実績を上げるともに、海外での販売力の強化や、海外M&Aが必要となります。このような市場環境下で、三菱重工業はトップのヴェスタス社と洋上風力発電事業に特化した合弁会社「MHI Vestas Offshore Wind A/S」を2014年4月にデンマーク・オーフス市に設立、両社の洋上風力発電設備事業を分割集約しました。 風力発電と証券化ビジネス  繰り返しになりますが、風力発電は太陽光発電と異なり、大規模投資事業となります。そのため、風力発電の建設は、従来は国家予算がサポートして実現していました。しかし欧米ではすでに新たな時代に突入しています。民間資金の活用です。世界には国家予算の何倍もの投資資金が運用されています。投資家にとって、魅力的な投資先とは、長期にわたって安定的にキャッシュを生み、リターンをもたらしてくれる事業。人間社会にとって今後数十年は電気が必要であることは確実で、電気料金が大きく減少するリスクも少なく、売電事業は投資家にとって魅力的に映る事業です。さらに、近年、投資家たちは社会にとって価値のある事業を投資先に選定する傾向があり(世界と日本のSRI・ESG投資最前線)、売電事業は投資先としてますます魅力的になっています。 (出所:環境省)  大規模な風力発電事業の資金調達には、証券化という金融手法が活用されています。証券化とは、プロジェクト単位で資金調達を行う手法のことです。発電事業を運営する企業(例えばソフトバンク)とは切り離された特別目的会社(SPV)を設立して倒産リスクを隔離し、SPVが発電事業を行います。こうすることで、今後発電事業を運営する企業がどうなろうとも、投資家は安心して発電事業からの収益を期待できます。SPVには、事業を運営する企業の他、投資銀行や商社、ファンドが出資し、さらに銀行がシンジケートローンを組んでレバレッジドファイナンスを実施します。こうして、年間キャッシュフローの何倍もの大規模な資金調達が可能となっています。近い将来、国内でも再生可能エネルギーを対象とした上場ファンドが誕生するとも予想されます。 風力発電と事業会社サステナビリティ  比較的導入が容易な太陽光発電は、日本国内でも固定買取価格制度の開始ともに普及しましたが、風力発電はなかなか普及してきませんでした。原因には立地制約、投資規模、プロジェクト規模などが関係しています。事業会社がCSRの一環として風力発電に取り組もうとしても、事業所内に風力発電に優れた立地はあまりなく、あったとしても膨大な投資額にリスクを取れないという状況に陥りがちです。実際に、エネルギーに対するサステナビリティの取組が多い欧米でも、風力発電を事業会社が自らの施設内に建設する企業は極めて少なく、辛うじて米Safewayなどが大規模店舗に風力発電を設置している程度です。一方で、RE100など再生可能エネルギー100%での事業運営を目指すグローバル企業たちは、昨今風力発電からの電力の購入を積極的に進めています。 (出所:日本政府エネルギー・環境会議)  再生可能エネルギーの中でも風力発電が注目されている理由には、その発電コストの低さがあります。風力は、太陽光やバイオマスより発電コストは格段に安く、好立地での風力発電は火力発電と同等です。ヨーロッパでは、風力発電が、従来型の化石燃料の発電コストを下回るグリッド・パリティをすでに迎えた地域もあります。資本効率の良い風力発電は、エネルギーのサステナビリティを高める上で欠かせません。そこで、事業会社のサステナビリティとして可能なことは、第一に自社の電力割合における風力発電の割合を高めていくために、風力発電電源の電力を積極的に購入することです。欧米のグローバル企業では、事業用電力のサステナビリティを高めていくため、事業用電力における電源別割合を公表し、再生可能電源のシェア目標を具体的に設定しています。さらなるステップとして、米グーグルのように風力発電ファンドを組成したり、ファンドに出資していくことも可能です。風力発電は、規模の大きなサステナビリティ事業であるからこそ、複数社が協力して大きな安定電源を獲得していくというアクションが必要なのです。

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2016/05/06 体系的に学ぶ

【エネルギー】石油産業の構造② ー原油価格と産油コストの世界ー

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 原油価格。その変動は世界経済に大きな影響を与えると言われています。では原油価格は一体どのように決まるのでしょうか。経済学の原理に基づけば、原油価格も需要と供給の状況によって決定されます。原油需要が増えれば価格は上がり、供給が増えれば価格は下がります。原油需要の変動には、世界経済の好不況、気温、経済発展などが関係しています。供給に関しては産油国の産油量調節が原油価格に影響を与えるとニュースなどでも報道されています。しかし供給サイドにはもっと複雑な事情があります。原油と一言で言っても、世界には様々な種類の原油があり、それぞれ取引価格が異なっているのです。  産油コストについても産油地によって大きく異なります。中東の原油と北米のシェールオイルではコストは数倍も異なっています。今回は原油価格と産油コストの状況についてみていきます。  本題に入る前に、石油と原油の違いを説明しておきます。「原油」という言葉から、石油の原型が「原油」だと思ってしまうかもしれませんが、石油から原油は作られます。地中や海底に埋まっているものは石油(OilまたはPetroleum)です。油田で汲み上げられた石油には、水分、ガスなどの異物がたくさん混ざっています。その異物を取り除いたものが原油(Crude oil)です。この原油を精製して、ガソリン、重油、灯油、ナフサなどが製造されていきます。実際には石油と原油は非常に曖昧に使われています。ですので、原油貯蔵量と言ったり、石油貯蔵量と言ったり、用法が統一されてはいません。 供給者サイドの状況  産油国も国際原油資本も産油から利益をあげなければなりません。国際石油資本は営利企業としてリターンを投資家に返さなければいけませんし、産油国は産油からの利益が国家予算にとっての重要な歳入源となっているからです。利益を上げるためには、原油売上と産油コストを把握し、損益分岐点を意識しなければなりません。  原油売上の計算式は「産油量」×「原油価格」。そのうち供給者がコントロールできるのは産油量のみで、原油価格は今や市場メカニズムで決定されてしまいます。原油市場間に価格差がある場合には裁定取引が発生し価格差は縮小しますし、原油購入者もより安い原油を求めて移りますので、原油価格は世界的に連動するようになっており、産油側がコントロールできなくなっているためです。そのため供給者は原油価格の動向を注視しなければならなりません。  コストの状況はどうでしょうか。産油コストには様々なものが含まれます。石油探査、採掘、プラント建設、修繕、オペレーションなどは全て産油コストに含まれます。さらに広義の産油コストには油田から主要取引所までの輸送コストも含まれます。原油価格が単位当たり産油コストを上回っていれば利益を上げることができますが、逆であれば損益分岐点を下回り利益が出なくなります。利益が出なければ石油企業には倒産リスクが生まれますし、産油国は財政破綻リスクが生じます。供給者にとってはコストも非常に重要な数値です。 原油価格 原油価格と原油品質  原油と一言で言っても実際には様々な品質のものがあります。その品質は原油の成分によって決まります。原油の成分は、炭化水素の混合物が大半を占めていますが、硫黄化合物、窒素化合物、金属類も含んでいます。その中で原油の品質で重要な尺度が「密度」と「硫黄含有量」です。  まずは原油の密度。密度の計算には「API比重(API gravity)」という単位が一般的に用いられています。ちなみにAPIとはAmerican Petroleum Institute(米国石油協会)のことです。API比重が軽いものを「軽質油(Light crude)」、重いものを「重質油(Heavy Crude)」と呼びます。そして、軽質油のほうが価格が高くなります。それは、原油からの精製品の中でも需要の大きいガソリンや軽油(ディーゼル車の燃料)は軽質な原油と形状が近く、軽質油のほうがガソリンや軽油に精製加工するコストが低いためです。通常API比重が30より小さいものは「重質油」、34より大きいいものは「軽質油」、その間のものは「中質油」と呼ばれています。  続いて原油の硫黄含有量。硫黄化合物は、石油製品にとっての異物であり環境汚染物質であるため最終製品生成までの除去コストや加工コストが高くつきます。そのため硫黄含有量の多い原油は価格が低くなります。硫黄化合物を1%以上含む原油は「高硫黄原油(Sour crude)」、0.5%未満のものは「低硫黄原油(Sweet crude)」と呼ばれています。  その結果、軽質低硫黄原油(Light and Sweet)は価格が高く、重質高硫黄原油(Heavy and Sour)は価格が低くなります。 (出所:EIA)  上図は主要な産油地と原油品質を表しています。世界原油価格の指標として特に重要なのは、◆が少し大きくなっている4ヶ所、米国WTI、北海Brent(ブレント)、ドバイ、オマーンです。詳細は後ほど説明しますが、ここでおさえておきたい点は、米国WTIや北海ブレントはLightでSweetな原油であるのに対し、ドバイはややHeavyでSourな原油、オマーンはLightですがSourな原油であるということです。すなわち、最もLightでSweetな米国WTIが最も高い価格がつき、次いで北海ブレント、そしてドバイ・オマーンの順となるのが原油価格の基本的な動向です。 指標原油  ではここで、WTI価格、ブレント価格、ドバイ価格など、よく聞くキーワードをおさえていきます。WTI価格、ブレント価格、ドバイ価格はいずれも、現在の世界の原油価格を決定する代表的な「指標原油(マーカー原油)」の価格です。WTIは北米、ブレントは北海油田、ドバイ原油はドバイの原油です。ここでひとつの謎が生まれます。なぜ原油大国のサウジアラビアやロシアが入らず、比較的産油量の少ない北海やドバイが選ばれているでしょうか。  この内容を理解するためには「スポット価格」と「ターム価格」という言葉を理解する必要があります。スポット価格とは原油の売買契約の度に当事者間で決定される価格。一方ターム価格は6ヶ月や1年という長期的な売買契約のもとで決定される固定価格です。ちなみに日本が輸入している原油のうち8割が長期契約での「ターム価格」で取引されていると言われています。このうち変動する市場価格を算出するのに適しているのは、その時々の需給の実勢を反映するスポット価格です。  原油取引は、当初は長期契約が主流であったため、スポット取引の歴史は浅く1980年代頃から活発になってきました。1980年代当時、スポット取引の重要拠点であり指標原油となったのは、産油量の豊富なサウジアラビアのアラビアンライト原油(AL)と英国領北海のフォーティーズ原油(Forties)でした。アラビアンライト石油は1980年代にサウジアラビア政府がスポット取引を制限しターム契約を柱に据えてから指標原油としての地位を失い、全量をスポット取引で扱っていたドバイ原油が代わって指標原油となります。一方、フォーティーズ原油は産油者がBP社に限られていたため、産油者が複数社に分散しているブレント原油へと指標原油の地位が移りました。ブレント原油は近年産油量を減らしていますが、近くのニニアン原油と合流させることで産油量を確保し今でも指標原油の地位を保っています。  WTIの歴史は少し異なります。米国はニクソン政権のもとで1971年から始まる経済政策の下、国内産原油の価格統制がスタート、米国産原油は指標原油になるどころではありませんでした。しかし、レーガン政権が1981年に原油価格統制を廃止し、さらに1988年にはターム価格がスポット価格と連動する動きが始まり、米国アラスカ産のANS原油(Alaskan North Slope)が指標原油として浮上しました。その後1980年代にニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物市場が立ち上がり、WTI原油の取引数量が急増したことから、WTI原油がANS原油に代わり指標原油となりました。WTIという指標原油には今ではWT(テキサス西部)だけでなく他の州の原油価格を反映する指数にもなっており全米の原油価格を映すものとなっています。巨大な産油量・取引量を誇り、NYMEXという発達した先物市場で取引されるWTI原油価格は世界で最も重要な指標原油とも呼ばれています。  今ではターム価格もスポット価格を参考に決定されているため、原油価格において指標原油価格の意義はますます大きくなっています。 <3大指標原油> ① WTI原油  世界で最も重要な指標原油で、特に北米の指標原油となっています。WTIとはウェスト・テキサス・インターミディエイト(西部テキサス媒体物)の略。WTIはテキサス州とニューメキシコ州を中心とする複数の油田の総称でアメリカ国内産原油の6%、世界全体では1〜2%を占めるにすぎません。WTI原油の受け渡し場所はオクラホマ州のクッシング(Cushing)の貯蔵庫で行われるため、今ではクッシングにはパイプラインや鉄道網を通じて周辺各州の原油も集まってきています。  品質は世界でも有数の軽質低硫黄原油。WTI原油先物はニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されています。WTI価格はこの取引価格で決定します。WTIの一日あたりの産油量は100万バレル未満と少量ですが、NYMEXでの先物取引量は一日あたり1億バレルと100倍を超え、活発な先物売買の材料となっています。産油量以上の取引受け渡しに対してはWTI原油以外の他の原油を同等品質となるよう加工ブレンドして受け渡しがなされています。またWTI原油先物は2006年からはブレント原油を扱うイギリスICEフューチャーズでも取引されています。 ② ブレント原油  北海にあるブレント油田から産出される原油です。実際には英国領フォーティーズ油田、英国領エコフィスク油田、ノルウェー領オセバーグ油田の原油と混ぜて(ブレンドして)受け渡しがされています。ヨーロッパやアフリカ、中東の指標原油となっています。  品質はWTIよりやや劣るが良質の軽質低硫黄原油。ブレント原油先物はICEフューチャーズで取引されています。ブレント価格はこの取引価格で決定します。ICEフューチャーズとは米国ジョージア州に本部を置くインターコンチネンタル取引所が2001年に開設した先物取引所。それ以前にはロンドン国際石油取引所(IPE)で取引されていましたが、2001年にインターコンチネンタル取引所が同社を買収、開設に至りました。同じく2001年からはNYMEXでも取引を開始しました。 ③ ドバイ原油  アラブ首長国連邦の7首長国の1つドバイで産出される原油です。ドバイ産原油は全量がスポット取引で売買され、仕向地(輸出先)の制限もないことから、重要指標原油となりました。米国ニューヨークに本社を置くマグロウヒルファイナンシャル社傘下のプラッツ社によってドバイ原油のスポット価格が計算、発表され、それがドバイ原油価格となります。ドバイ原油は産油量が多量ではないため、2015年5月まではドバイ原油の平均価格と隣のオマーン原油の平均価格を足して2で割ったものが指標原油の「ドバイ原油」として算出されていましたが、2015年6月からはドバイ原油の平均価格をもって「ドバイ原油」となりました。その背景にはオマーン原油もドバイ原油価格をもとに算出されていたことも関係しています。  品質は重質高硫黄原油。ドバイ原油先物は東京商品取引所(TOCOM)とシンガポール取引所(SGX)で取引されています。日本を含めたアジア地域の指標原油となっています。 <その他指標原油> ④ マーズ原油  新興のメキシコ湾油田から産出される原油です。マーズ原油先物はNYMEXで取引されています。品質は中東産に近い重質高硫黄原油。マーズ原油価格はここ数年で注目を集めています。背景には中東諸国の政策変更が関係しています。2010年1月、サウジアラビアやクウェートなどの中東諸国は、米国向けの原油輸出ターム契約における価格フォーミュラを見直し、これまでのWTI価格連動から、中東産に品質が近いASCI(Argus Sour Crude Index:米国メキシコ湾岸地域で取引される中質マーズ原油、ポセイドン原油およびサザン・グリーンキャニオン原油の加重平均価格)連動に変更すると発表しました。その結果、その中でも産油量の多いマーズ原油価格の動向が注視されているのです。 ⑤ タピス原油  マレーシアを代表する油田、タピス油田から産出される原油です。産油量は多くはありませんが、WTIを上回る軽質低硫黄原油という世界でもトップクラスの品質を誇ります。 (出所:EIA)  上図は実際の各指標原油価格の推移を示しています。多くの期間、タピス原油>WTI原油>ブレント原油>マーズ原油またはドバイ原油 の順で価格がついてきているのがわかります。ですが、2011年から2014年まではWTI原油価格がドバイ原油を下回るという異常事態が発生しました。その背景に関しては諸説ありますが、上記で解説した中東諸国が米国向け原油の価格フォーミュラでマーズ原油を採用し、米国内の原油価格に下げ圧力が働いたことが一つの要因のようです。また他の要因としては、2011年頃からシェールオイルが米国内で増産され供給が増えた結果価格が下がったこと、さらに米国が米国産原油の輸出を禁止されていることが供給過多に拍車をかけたことも指摘されています。 原油決済通貨  原油国際取引の決済は基本的には米ドル建てで行われています。しかし最近米ドル建て以外の決済が増えてきました。2015年7月中国人民銀行が中国本土の原油先物取引について表示と決済を人民元建てで行うことを決定しました。現在中国向けの原油はほぼ人民元建てとなっています。これは中国政府が進める米ドル依存からの回避の一環としての動きです。またイランは原油輸出の決済をユーロ建てで求める方針を2016年2月に発表しました。こうして国際的な原油取引の決済通貨は米ドルが独占していた状況から変化が生まれてきています。 産油コスト 地理的条件と産油コスト  原油価格が品質による価格差を持ちつつもともに上下する傾向にあるのに対し、産油コストは産油コストは油田ごとに大きく異なっています。例えばアラブ諸国の石油は地理的に産出が容易な地盤にあり、産油コストが低い。一方で、地中深くに存在するシェールオイルの採掘には水圧破砕や水平掘削などの新型設備が必要なため産油コストが高くつきます。また、海底油田などは大掛かりな海底油田プラントが必要となります。 (出所:Morgan Stanley Research)  結果、上図からわかるように、産油コストは低い順から、「中東陸上油田」「大陸棚油田」「重質油油田」「ロシア陸上油田」「その他地域陸上油田(RoWはRest of the Worldの意味)」「深海底油田」「超深海底油田」「北米シェール油田」「オイルサンド」「北極油田」となっています。中東陸上油田では損益分岐点が27米ドルだと言われるのに対し、北米シェール油田は65米ドルと非常に高いということがわかります。このように中東の油田は、石油貯蔵量が豊富なだけでなく、世界で産油コストが低い地域としても知られています。昨今の原油価格の低下状況下で、中東加盟国の多いOPECが強気でいるのは、他の油田よりも産油コストが低く「粘ることができるから」だとも言われています。 地理的条件と輸送コスト  広義の産油コストには輸送コストも含まれます。例えばWTI原油はオクラホマ州クッシングが受け渡し場所となっており、各地の原油は油田からクッシングまで輸送しなければいけません。当然地理的にクッシングに近ければ輸送コストは低く、遠ければ高くなります。 (出所:The Watchers)  油田から受け渡し地への輸送手段には主にパイプラインと鉄道があります。上図は北米の原油パイプラインの状況です。例えば、シェールオイルで急速に産油量を増やし全米を代表する油田のひとつとなったノースダコタ州バッケンで採掘される原油はパイプラインを通ってカナダ西部やアメリカ西部、アメリカ南部などに送られています。これから米政府の原油輸出解禁となればそこからアジアやヨーロッパに輸出される可能性も出てきます。 (出所:Oil & Gas Journal)  もうひとつの輸送手段である鉄道も存在感が増してきています。原因はパイプラインの不足です。米国では急速に産油量が増えた結果パイプラインの輸送キャパシティが限界を迎え代替手段として鉄道の重要性が再考されています。特にシェールオイルは高コスト体質で原油価格の変動とともに産油量が変動したり、経営難になったりと不安定なため、固定設備としてのパイプライン設備投資にはリスクが高いと見られ鉄道網の方が使い勝手がいいということも影響を与えています。

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2016/02/10 体系的に学ぶ

【エネルギー】環境政策の盲点(1) 〜電気料金の段階制は省エネに寄与するのか?〜

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私たちの社会のサステナビリティに欠かせない要素のひとつ、環境問題。その問題に取り組むプレーヤーのひとつに政府があります。政府は環境問題をしかるべき方向に向けて解決するため、規制整備を行ったり、補助金を出して行動を誘導したりしています。しかしながら、このしかるべき方向に進めるという目標と、規制や補助金の効果が必ずしも一致しているとは限りません。実際の環境政策の効果を実証経済学の観点から検証を行っている研究者の一人が、米ボストン大学ビジネススクール伊藤公一朗助教授です。伊藤氏は、当サステナビリティ研究所所長を務める夫馬賢治の古くからの友人ということで、今回伊藤氏から、当サイトで研究内容を紹介する許可を頂きました。そこで、今回から数回に渡り、環境政策の効果を検証をしていきます。 伊藤 公一朗(いとう・こういちろう) 米ボストン大学助教授 宮城県仙台市生まれ。仙台一高、京都大学経済学部卒業。ブリティッシュ・コロンビア大学修士課程、カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了(Ph.D)。スタンフォード大学経済政策研究所研究員を経て、2013年よりボストン大学ビジネススクール助教授。専門は、環境・エネルギー経済学、産業組織論、公共経済学。 電気料金の段階制は省エネに寄与するのか? 2011年3月の地震以降、電気料金はより一層、一般消費者にとっても関心の高いテーマとなりました。省エネルギー推進の名の下に1974年から採用されている「段階料金制度」。電気を多く使えば使うほど、電気の単価が上がるという仕組みを導入することで、消費者の省エネ意識を向上させる効果が期待されてきました。 しかしながら、この段階料金制度は本当に省エネに寄与してきたのでしょうか。伊藤氏は2013年に、経済学の論文「Do Consumers Respond to Marginal or Average Price? Evidence from Nonlinear Electricity Pricing」(消費者は限界価格と平均価格のどちらに反応するのか?段階料金制度からの検証)を世界で最も権威のある経済学術誌の一つであるAmerican Economic Reviewで発表し、このような省エネ政策の効果検証を行っています。政府が導入した段階料金制度の目的と結果は一致しているのか、伊藤氏の論文を基にその実態に迫ります。 段階料金制度とは まずは段階料金制度とは何なのかについてお話しします。現在我々が支払っている電気料金は、使用電力量に応じて変わります。しかしその変化は直線的に比例関係で上がっていくのではなく、階段式に上がっていく仕組みになっています。 (東京電力のデータを基にニューラル作成) この仕組みは、所得税における累進税率制をイメージすると理解し易いでしょう。日本において所得税は、所得が一定額以上になった場合にその超過金額に対してのみ、より高い税率を適用する超過累進税率方式を採用しています。例えば、年間所得が500万円の場合を考えてみましょう。500万円の所得税率は20%ですが、500万円全体に20%の税率がかかるわけではありません。195万円までの部分の税率は5%、195万円から330万円の135万円には10%、330万円から500万円の170万円には20%の税率がかかります。これを電気料金に当てはめると、「使用電力量が一定以上になった場合にその超過量に対して高い料金を適用する」ということになります。 この料金体系が導入された背景には省エネ推進があると言われています。一定以上の電気使用量に対して、適用料金を高くすることで、各家庭の電気使用量を一定以下に抑えようという試みです。しかし、この仕組みが成り立つには、消費者が電気料金が割高になるタイミングを適格に捉え、節電しようというインセンティブが働くということが前提となります。伊藤氏は上述の論文の中で、この前提に対して本当にそう言えるのかということを検証したのです。 消費者は何を指標に電気使用量を決めるのか 一般的に人は商品・サービスを購入する際に、商品の価格を感覚的に思考していると言われ、その頭のなかで想定した価格を基準に「高い」・「安い」といった判断をしています。この感覚的に想定している価格は、他の商品の価格や料金体系に基づいて計算されているため、その価格の想定方法が単純で理解し易いものである場合には、消費者は便益を最大化する結論を出すことがこれまでの経済学によって判明しています。それを踏まえた上で電気料金について考察してみましょう。 経済学の基本前提に立つと、消費者は便益を最大化するために、料金が割高になる前のギリギリの点まで電気を使用することになります。つまり消費者は、電気料金が跳ね上がる階段の真下の点に集中するはずです。ところが、伊藤氏が実際に世帯別消費電力を調査したところ、消費者は必ずしも階段の真下の限界点に集中しないということが見えてきました。つまり、政府が意図した一定以下への消費電力抑制の試みに反し、そもそも消費者は電気料金が割高になる限界点を考慮せず電気を使用しているということがわかったのです。 では、一体、消費者は何を目安にして、電気使用量をコントロールしようとしているのでしょうか。可能性として2つの仮説が立ちます。 1. 消費者は電気料金の変化を全く気にしない(=価格弾力性ゼロ) 2. 消費者はこの限界点以外の別の指標を認識し、それに従って行動している 伊藤氏は、カリフォルニア州の実際の電力使用量データを計量分析することで、消費者が何に反応して電気使用量をコントロールしているのかを突き止めました。消費者の反応因子となっていたのは、政府が意図した限界価格ではなく、平均価格でした。すなわち、消費者は電気料金が大きく跳ね上がるタイミングではなく、頭の中でなんとなく電気使用量と電気料金の総額を想起し、その平均価格をイメージし、それに応じて電気使用の最適量を求めているということです。 それでは何故、消費者は限界価格ではなく平均価格に反応することとなったのでしょうか。それは、月単位の電気使用量を限界点に着地させることがそもそも困難だからです。まず、消費者は月単位でしか電気使用量と電気料金を把握できないため、日々どれだけ電気を使用しているか知りようがありません。また、月の電気使用量を正確に予測しながら日々電気使用量をコントロールすることもほぼ不可能です。したがって、消費者はより単純化して理解するために平均価格を使うというわけです。そしてそれは単純化しているが故に、消費者が想定する電気使用量・料金とも近いものになります。 実証研究から見えてきたこと 消費者が反応しているものが、限界価格なのか平均価格なのかということが、どうしてそれほど重要なのでしょうか。限界価格であろうと平均価格であろうと、電気使用量とともに増加していくものであるため、結果的には消費者が電気使用をセーブしそうにも思えます。伊藤氏の研究の大きな成果は、反応因子が限界価格か平均価格かによって、段階料金制度が電気使用量の抑制に全く逆の効果をもたらすこと見出したことにあります。研究では、一律料金制度と比較して、段階料金制度は、消費者が限界価格に基づく行動をするときは2.33%の電力消費量を減少させるのに対し、平均価格に基づく行動をした結果、電力使用量は反対に0.27%増加してしまったと発表しています。つまり、省エネを期待した段階料金制度は、実際には省エネではなく、電気使用量を増加させてしまっているというのです。 電気使用量が増加してしまうカラクリはこうです。まず、電気料金が使用量に応じて変化しない一律料金制度の時代には、電力会社の発電コストや事業コストから一律の価格を算出していました。それを段階料金制度に変え、階段上の料金体系を構築すると、電気消費量が少ない間は以前の一律料金制度より低い料金が、電気使用量が多くなると、一律料金制度時代の料金より高い料金が適用されるようになります。そして、電気使用量が少なかった消費者は、電気料金が安くなったためより多くの電気を使うようになります。一方、電気使用量が多かった消費者は、電気料金が高くなったため電気使用量を減らそうとしますが、どれだけ減らすかは、彼らが平均価格に基づくか、限界価格に基づくかによって結果が大きく変わるのです。限界価格に基づく場合は、電気料金が大きく上がるため、省エネのインセンティブが大きく作用します。しかし、平均価格に基づく場合は、もともと電気使用量が大きいため、多少電気料金が上がっても平均価格は大きくは増加せず、省エネのインセンティブはあまり働きません。結果として、電気使用量が少ない消費者の電力使用増加分より、電気使用量が多い消費者の電力使用減少分が小さくなり、一律料金制度のときより全体の電力使用量が増えてしまうのです。 環境政策の盲点 環境政策は倫理的に反駁することが忌避されるが故に、効果検証が疎かになりがちです。伊藤氏の論文では、カリフォルニア州政府が導入した段階料金制度が制作の意図に反し、省エネ効果が大きく期待できないことを示しました。同様に段階料金制度を導入した日本での結果はどうなのでしょうか。伊藤氏は現在日本の経済産業省とも協力しながら、日本での状況を検証しようとしています。一見すると正しそうに見える政策や事業にも、本当に狙った効果が出ているのかどうか、検証することの大切さを伊藤氏の論文は教示してくれています。

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2015/01/20 体系的に学ぶ
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