【インド】気候変動とコメ農家のサステナビリティ。伝統的コメ品種復興運動が示すもの

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 コメ生産大国のインドで、伝統的コメ品種への回帰運動が起きている。政府が高収率のハイブリッド米の品種を強力に推し進めてきた一方、インド東部のオーディシャ州コラプット地域では、1,400人以上の農民が「遺伝的資産」としての先祖伝来の米の品種を守るために運動を展開している。インドでは、気候変動がコメの生産にも影響を及ぼしており、不作や借金等による農民の自殺も相次いでいる。その中、地元の生態系に適応している先祖伝来の品種が、害虫や干ばつ等への耐性が高いことが再び注目を集めている。  インドでは、半世紀前には10万種類以上のコメが栽培されていた。味や栄養素の多様性、害虫耐性を持ち、長い年月をかけて厳しい自然環境へ適応してきた品種たちだ。しかし今日、このような多様な品種の多くは消失している。背景には、政府によるハイブリッド米の水深があり、現在インドの稲作面積の80%以上をハイブリッド米が占めている。農民に高収入をもたらす筈だったハイブリッド米だが、気候変動への耐性は低い。  その中、生態学者であるDebal Deb博士は、インド東部のオーディシャ州コラプット地域で、伝統的コメ品種の生産運動を展開している。同地域では、かつて1,700種以上のコメ品種が栽培されていたことが記録されており、コメの多様性に富むことで世界的に注目されていた。このことにDeb博士が着目し、コメ品種の遺伝的資産を収集し、保護する活動を開始。収集した種が「絶滅危惧種」にならないよう、農家が種を栽培し流通させるよう取り組んでいる。  同地域の農民は、政府が推奨したハイブリッド米「sarkari dhaan」に対し、先祖伝来のコメ「desi dhaan」を放棄しない経済的理由についてこう語る。ハイブリッド米では次のシーズンに蒔く種籾(たねもみ)を買い続けなければならない。しかし、desi dhaanの場合は、種を慎重に保管すれば次のシーズンに使用できるという。また、ハイブリッド米を栽培にするには、土壌の質や生物多様性に悪影響を及ぼす農薬を継続的に使い続けなければならない。さらに、試験場や研究室で生育されたハイブリッド米は、機械化による型通りの集中的な農業のために設計されており、大量の化学肥料と水供給を前提としている。しかし、起伏のある土地や予測できない天候といった変化の激しい条件には適していないという。  一方、昔ながらの「desi dhaan」は、河岸沿いの洪水可能性の高い地域でも育ち、害虫にも強い。数種の伝統的品種が現代品種よりサイクロンに耐えたという報告や、干ばつや降水量の少ない条件でも適応できたという報告もある。また、伝統的品種が持つ長い茎は、家畜のための飼料、土壌の覆い、家の茅葺き屋根等にも使える。ハイブリッド米にはない甘い香りを持ち味も勝る伝統的品種もあるようだ。  今年7月にカリフォルニア大学バークレイ校の研究者によって発表された論文「Crop-damaging temperatures increase suicide rates in India」によると、インドの過去30年間の稲を含む農作物の生育期に発生した農民の自殺は59,300件。年平均だと約1,977件だが、2014年まで同国では自殺が犯罪扱いだったため、実際の自殺者はもっと多いと同論文は指摘している。生育期の気温が20℃以上となると、1℃の気温上昇により70人の自殺者増加に繋がるという計算も発表されている。同国の農民の自殺に関しては、気候変動との関係が必ずしも明らかでないものも含めると、1995年以来全土で30万人以上に達するという。  運動を率いるDeb博士は、多数のコメ品種を存続させること自体が運動の最終的な目的ではないという。コメの持続可能性を追求することは、社会の持続可能性を築く方法を自問するきっかけとなる。干ばつ、土壌劣化、温室効果ガス、農民を自殺へと追い込む負債等、インドが直面している問題を改めて捉えなおすことこそが、本来の目的なのだと語る。コラプット地域の農民たちも、種や殺虫剤等の販売業者、政府補助金や銀行融資等、外部機関への依存を減らし、耐性の高い品種を復活させる道を模索している。 【参照ページ】Why India's farmers want to conserve indigenous heirloom rice 【参照ページ】Suicides of nearly 60,000 Indian farmers linked to climate change, study claims 【論文】Crop-damaging temperatures increase suicide rates in India

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【インド】タタ・グループ、自然資本プロトコル(NCP)を活用したアセスメント実施

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 印財閥大手タタ・グループは、一部事業で自然資本プロトコル(NCP)に基づく自然資本アセスメントを実施した。NCPに基づくアセスメントは、企業がサステナビリティレベルを改善するために自主的に行うもので、従来の環境評価よりも広範囲で包括的に実施することが特徴。今回タタ・グループは、対象事業として、鉄鋼子会社タタ・スチールの資源採掘部門、電力子会社タタ・パワーの水力発電部門、化学子会社タタ・ケミカルのソーダ灰工場、自動車子会社タタ・モーターズのプーネ事業所、コーヒー子会社タタ・コーヒーの農園を自主的に選定し、結果を対外的に公表するため実施した。 【参考】【国際】自然資本連合(NCC)、ついに「自然資本プロトコル」初版を発行(2016年8月1日)  タタ・グループは、社会全体への影響を広く分析するため、自社だけでなく、上流サプライチェーン、下流サプライチェーンも含めて自然資本アセスメントを実施。二酸化炭素排出量、大気汚染、水質汚染、生物多様性、固形廃棄物のインパクト評価では、経済的価値評価も含めた定量評価を行った。また、海水、石灰については資源依存度の経済的価値評価・定量評価を行った。データ収集が難しかった水消費量、土地利用のインパクトや、天然水への依存度については定性評価を行った。インパクト評価を行う上では、社会・経済価値評価の算出も必要となるが、直接的なデータが採れないところは代理データ(Proxy Data)を活用。しかし、代理データの分析が難しい内容もあり、そこは今後の課題とした。  タタ・グループは、今回NCPを活用した目的について、「今後の事業戦略構築に向けたインサイト獲得」「インパクトを理解した上でのリスク管理」「サプライチェーン・エンゲージメント」「統合報告を通じた対外的コミュニケーション」と説明。成果としては、取締役やCEO、CFO、COO等経営陣に自然資本アセスメントの重要性を認識してもらうことができたことと語った。現在、タタ・グループでは、設備投資の意思決定を精緻化する上での内部炭素価格付けの導入も検討。今後は、自然資本アセスメントを他の事業部門にも拡大し、自然資本価値を経営の意思決定の中に組み入れていく取組を続けていく。 【参照ページ】Natural Capital Protocol: Case Study for Tata Group

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【インド】仏経済学者ピケティ氏ら、広がるインドでの所得格差の実態を分析。ペーパー発表

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 ベストセラー本「21世紀の資本」で著名なトマ・ピケティ氏と経済学者リュカ・チャンセル氏は9月5日、新たな研究ペーパー「Indian income inequality, 1922-2014: From British Raj to Billionaire Raj」を発表した。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国中、とりわけ経済発展が遅れてきたインドでの所得格差の状況を分析した。1922年に英国の植民地統治下にあった同国で所得税制度が導入された時期から2014年までの、家計消費量調査、国民所得勘定(国民会計)そして所得税のデータを調査し、上位者1%の人々が得ている所得の割合が、2013年から2014年に最高レベルになっていることを突き止めた。  1930年代後半には、所得の上位者1%が国家収入の21%以下を占めていた。この数字は1980年代初めには一旦6%に低下したが、2013年から2014年には22%に再上昇した。「インドは、この30年間で上位者1%の所得分配率が最も高い国の1つとなっている」と両氏は語る。では、なぜこのような事態に陥ったのだろうか。最も大きな要因は、国民全体の収入が向上するような包括的な政策が採られてこなかったこと、そして格差の推移を正確に把握できるデータが不足していたことだという。  確かにインドの経済は、過去30年間に急激な変化を遂げた。1970年代までは、インドは厳しく規制された社会主義的な計画を伴う制約の多い経済制度に基づいていた。経済成長のスピードは年3.5%程度と緩やかで、開発は遅れ、貧困が蔓延していた。1980年代に入ると、規制緩和、税率引き下げ、中規模の経済改革などにより経済成長が加速し、年5%程度に浮上。その後、1990年代初頭には大規模な改革が行われ、成長は加速し、2000年代半ばには2桁近い成長へと推移した。しかし、インド経済は依然として世界で最も成長著しい経済の1つであることは確かだが、この時期以降、経済は大幅に減速している。  今年4月から6月の四半期を見ると、ここ3年間で最も成長が遅い5.7%であり、減速は進行中だ。このような状況の誘因となっている点として、両氏は、貧弱な需要、多くの混乱や議論を巻き起こした昨年11月の500ルピー紙幣と1,000ルピー紙幣の廃止、民間投資の減少、銀行貸し出し額の低迷等を挙げた。 とりわけ、賄賂や闇取引に多用される紙幣の使用を廃止するという「ブラックマネー対策」として政府が突然断行した2種類の紙幣の廃止は、国民の半数以上が銀行口座をもっていない状況下での施策だけに、特に貧しい人々を困難な立場に追い込んだと言われている。昨年11月12日付のBBCニュースによると、インドでは約90%の取引が現金で行われるれる。さらに全人口中、約3億人が政府発行の身分証明書を持っていないという。人々の多くは現金を個別に保管し、現金以外での取引が困難であることから、突然の紙幣廃止による打撃の大きさを窺える。  チャンセル氏とピケティ氏は、1991年から2012年にかけて、特に2002年以降は、富の集中が急激に増加していると分析。2014年には、所得の上位10%に該当する約8,000万人だけが、中間層に位置していた40%の人々よりも遥かに富を享受していたという。しかし、この調査を遂行する上で両氏が最も注目したのは、2000年に所得税当局が統計の発表を停止し、2016年になってから2011年以降のデータを発表したことだ。両氏はデータが公表されなかった時代を「black decade(暗黒の10年)」と呼び、インドの不平等が拡大した要因の1つと位置付けている。  一定期間にわたる不平等な成長はインドに特有ではないが、市場経済の活発化が常に不平等をもたらすとは限らない。インドのケースは、上位1%の成長と、残りの全人口の成長との間に最も大きい格差を持つ国であるという点が際立っている。 トップの人々の所得は、中国よりも速いペースで成長している。  両氏は、これまでインド政府が実践してきた成長戦略も、不平等の急激な拡大に繋がったと主張する。中国もまた1978年以降自由化と開放を開始し、急激な所得の増加と格差の拡大を経験した。しかし、この格差は2000年代には安定し、現在はインドよりも低いレベルにある。ロシアでは、共産主義者から市場経済への移行が「迅速かつ無慈悲な」事態を生じさせ、現在もインドと同様の格差問題を抱えている。  今回の研究は、高度に規制された経済から自由経済への移行時における戦略が極めて重要だということを強調している。インドは一連の選択肢の中で、非常に不公平な方法を選んだ。世界の多くの地域で所得格差が拡大している一方で、一部の国々ではそれ程大きな問題にはなっていない。 例えば西欧においては、アングロサクソンの国々や新興市場よりも遥かに格差が少ない。それは、資本家よりも労働者にとって有利な社会保障制度や効率的な税制、そして教育、住宅、健康、交通機関等、公共財への政府の投資に起因しているという。  インドは、より包括的な成長戦略と、所得に関する透明性の高いデータの蓄積が必要だ。今年12月には、100人以上の研究者からなるネットワークによって作成された初の世界不平等報告書が発表される予定で、両氏はインドの不平等を他国と比較し、是正する方策を提言する予定だ。 【研究ペーパー】Indian income inequality, 1922-2014: From British Raj to Billionaire Raj? 【参照ページ】How India's currency ban is hurting the poor

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【インド】モディ首相、BRICS首脳会議で太陽光発電プロジェクトへの参加呼びかけ

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 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの首脳が集う第9回BRICS首脳会議が9月3日から5日まで中国の厦門で開催され、インドのモディ首相は9月4日、太陽光発電プロジェクト「国際太陽光連盟(ISA)」への参加を他の四カ国に呼びかけた。ISAは、2015年にモディ首相と当時の仏オランド大統領が始めたイニシアチブ。2030年までに世界で合計1兆米ドルの太陽光発電投資を目指している。  モディ首相は、2017年末に予定されている仏マクロン大統領の訪印を機に開催される太陽光エネルギーサミットで、ISAを法的組織にすることを目指している。しかし、ISAに署名した39か国のうち、批准を終えたのは5か国に留まり、法的組織化に必要な15ヶ国に足りていない。  BRICS首脳会議では、2年前に設立された新開発銀行(NDB)の環境融資もアピールされた。NDBは中国、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカの5ヶ国が100億米ドルずつ拠出して設立された銀行。開発銀行が欧米諸国で占められている現状を打破する目的があったと言われている。しかし、その融資実績は芳しくない。NDBは先週、総額14億米ドルの、洪水対策、リサイクル、飲料水供給プロジェクトへの融資を決定した。これにより、累計融資総額は合計300億米ドルに達する。融資対象11案件のうち7つが再生可能エネルギー関連プロジェクト。  再生可能エネルギーへの投資を進めるBRICS5か国は、世界の再生可能エネルギー発電設備容量の38%を占めるまでになった。22.5%であった2015年に比べ、その割合は大きく伸びている。中国は2020年までに39%を再生可能エネルギーまたは原子力発電でまかなうこと、インドは2022年までに175GWの再生可能エネルギー設備容量開発を目指している。他の3か国も規模は小さいものの、再生可能エネルギーセクターは順調に成長してきている。 【参照ページ】India’s Modi pushes international solar agreementClimate Home “”

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【インド】GRIスタンダードやSDGsに基づく企業報告、大手企業中心に浸透進む

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 サステナビリティ報告国際ガイドライン世界大手GRIは8月8日、インドでGRIスタンダードの浸透が進んでいるという最新状況を報告した。インドでは、2014年に大企業に対し当期純利益の2%をCSR活動に支出するよう義務付ける法令が施行されており、CSR活動が先行してスタートしているが、サステナビリティ関連情報開示の面では欧米に遅れをとっていた。しかし、インドの大企業がGRIに積極的に参加する姿勢を見せており、東南アジアと同じくインドでもサステナビリティ報告が進展してきた。  GRIは7月6日、南アジア支部のGRI Regional Hub South Asiaがボンベイ証券取引所と協働でGRIスタンダードを用いたサステナビリティ報告のイベントを開催。印セメント大手ACCや印財閥大手マヒンドラ・グループも参加した。ACCは、2016年度サステナビリティ報告書をGRIスタンダードに基づいて作成しており、インドでGRIスタンダードを採用した第1号企業になっている。インドでは、インド証券取引委員会(SEBI)が2015年に企業責任報告書(BRR)の提出義務化ルールを制定し、上場企業で時価総額上位100社に対し社会や環境に対する取組を示した企業責任報告書を作成することを義務化している。今年2月にGRIはこのBRRルールとGRIスタンダードとの対応表を作成したことも、GRIスタンダードに対する追い風となっている。 【参考】【インド】GRI、インド証取委の企業責任報告書義務化ルールとGRIスタンダードとの対応表を発表(2017年2月27日)  またGRI Regional Hub South Asiaは7月5日、インド工業連盟(CII)の持続可能な開発卓越センター(Centre of Excellence for Sustainable Development)と協働で、国連持続可能な開発目標(SDGs)に関する第1回ダイアログフォーラムを開催。SDGsを考慮した報告書作成についても議論を深めた。参加企業には、タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)、マヒンドラ&マヒンドラ、リライアンス・インダストリーズ、アディティア・ビルラ・グループ、インドステイト銀行、インドの国営送電会社Power Grid Corporation of India(PGCI)、印たばこ大手ITC、JSWグループ、Jindal Stainless(JSL)、Jubilant Life Sciences等、インドを代表する企業が集結した。今後2年をかけて、第8回まで開催し、貧困と経済成長、投資家の期待、食糧危機、健康、公平性と教育、自然資源の管理、ステークホルダーの巻き込み等のトピックで意見交換を進めていく。 【参照ページ】Leading Indian companies join GRI's reporting network

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【インド】政府、児童労働撲滅に向けILO「最低年齢条約」と「最悪の形態の児童労働条約」を批准

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 インド政府は6月13日、児童労働撲滅のための主要な国際条約を2つ批准した。1つ目は、1973年に国際労働機関(ILO)が採択した「最低年齢条約(第138号)」および同時採択の補足的勧告「就業の最低年齢に関する勧告(第146号)」。もうひとつは、1999年に同機関が採択した「最悪の形態の児童労働条約(第182号)」。これにより政府は、未成年の雇用に関する国際労働基準を適用し、他国による監査に対する受け入れを容認。政府としてこの問題への取り組みを本格化させた。  2011年のインドの国勢調査によると、全世界で1億6,800万人いる5歳から14歳の児童労働者のうち、インドには400万人以上が存在していたとされている。しかし児童労働問題の活動家は、さらに数百万人の児童が貧困のため児童労働リスクにさらされていると述べている。バンダルー・ダタトレヤ労働大臣は、今回の批准について、「児童労働のない社会へのコミットメント」の再確認だと表明した。  先述の児童労働に関する条約2つは、各国が国内法を整備するための基本的な原則を規定している。就業の最低年齢は、義務教育終了年齢後で原則15歳とされているが、軽労働については一定の条件の下に13歳以上15歳未満とされている。また危険有害業務については、18歳未満は禁止されている。しかし発展途上国のための例外措置として、就業最低年齢を14歳に引き下げ、軽労働については12歳以上でも可としている。    また、最悪の形態の児童労働とは、18歳未満の児童による(1)人身売買、武力紛争への強制的徴集を含む強制労働、債務奴隷等のあらゆる形態の奴隷労働またはそれに類似し行為、(2)売春、ポルノ製造、わいせつな演技のための児童の使用、斡旋、提供、(3)薬物の生産、取引等、不正な活動に児童を使用、斡旋または提供すること、(4)児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働、と定義されている。  これらの条約を批准すると、各国は4年ごとに進捗状況をレビューする義務を負う。インドの批准が遅れた背景について、児童労働問題の活動家は、政府が同国における児童労働の存在を否定していたため、批准には否定的だったと説明している。今回の決定について、児童の権利擁護の活動家でノーベル賞受賞者のカイラシュ・サティアテイ氏は、大きな転換だと語る。児童労働および最悪の形態の児童労働の存在を政府が認めたことにより、児童に対する予算の増加や、関連団体への強力な法的ツールの提供に繋がるという見解を示した。  2011年の国勢調査によると、インドの人口12億人のうち、18歳以下が実に40%以上。この比率は世界最多クラスだ。過去20年間の急速な経済発展により、数百万人が貧困から脱した。また、社会福祉制度の導入、未成年者保護や教育確保に関する法律が制定されたことで、児童労働も抑制されてきている。しかし、依然として、世界の3億8,500万人の最も貧しい子供のうち30%以上がインドに住んでいることが、2016年の世界銀行とユニセフの報告で明らかになっている。  このような子供達は、より良い人生をという誘いに応じて人身売買業者の犠牲者になりやすく、強制労働や債務奴隷状態に陥ってしまう頻度が高い。インドの児童労働者の半数以上が農業に従事しており、4分の1以上が、衣服の刺繍、絨毯織り、マッチ製造業等で雇用されている。また、レストランやホテルに加え個人の家庭での家事労働などにも従事し、女の子の多くは性的な奴隷として売春宿に売られている。従って貧困との闘いが、条約の有効性の鍵になる。  今回はインドの児童労働について述べてきたが、日本で第138号条約および第146号勧告が批准されたのは2000年6月であり、第182号が批准されたのは2001年6月だ。2015年10月時点での批准国は、前者が168カ国、後者が180カ国となっていた。 【参照ページ】India commits to global pacts on eradicating child slavery 【参照ページ】ILO駐日事務所:児童労働に関するILO条約 【参照ページ】ILO駐日事務所:1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号) 【参照ページ】ILO駐日事務所:1973年の最低年齢条約(第138号)

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【インド】政府、2030年までに自動車販売を全て電気自動車に限定する方針

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 インド政府は6月4日までに、2030年までに国内で販売する自動車を電気自動車のみに限定する方針を固めた。ナレンドラ・モディ首相は4月23日、同氏が創設した政府直属のシンクタンク「NITI Aayog」との会合の中でこの考えを示しており、ピユシュ・ゴヤル電力・石炭・新エネルギー・再生可能エネルギー・鉱山担当国務大臣も4月28日、インド工業連盟(CII)の会合の中で、この考え方を表明していた。  現在インドは、深刻な大気汚染に見舞われている。これまでは中国の大気汚染に耳目が集まっていたが、今や世界で最もPM2.5などの大気汚染が申告なのはインドとも言われている。主要な原因の一つは、自動車からの排気ガス。インドは排気ガス対策を通じて、大気汚染を改善していく考えだ。  同国政府の計画では、電気自動車とハイブリッド車の年間販売台を数年までに600万台から700万台にまで上げることをを見込んでいる。ゴヤル大臣によると、重工業大臣とNITI Aayogは目下、電気自動車を推進させる政策の策定に取り組んでいる。  電気自動車が普及すると、当然のエネルギー源としての発電量も増やさなければならなくなる。今後同国では洋上風力発電などに期待をしているが、具体的な道筋はまだはっきりとは立っていない。ゴヤル大臣は、電気自動車の普及には価格の下げなければいけないと考えており、今後価格についても検討をしていく考えだ。 【参照ページ】India will sell only electric cars within the next 13 years 【参考ページ】India eyes all-electric car fleet by 2030, says Piyush Goyal 【参考ページ】India's economy poised to hit $7.25 trillion by 2030: NITI Aayog

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【インド】今月前半だけで石炭火力発電建設計画13.7GWが中止。稼働中発電所の停止の可能性も

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 米IEEFA(エネルギー経済・財務分析研究所)は5月17日、今月のみでインドで建設予定の石炭火力発電所(合計設備容量13.7GW)が建設中止となったと発表した。同時に、現在稼働中の輸入石炭を用いた石炭火力発電(合計設備容量8.6GW)も稼働停止となる可能性があるという。IEEFAは、石炭火力発電そのものは引き続き行われつつも、増強スピードは落ち込んでいくと見通している。  石炭火力発電所建設計画の背景には、太陽光発電価格の大幅な低下と連邦政府の政策が関連している。インドでは太陽光発電は入札によって売電する制度が採用されており、この入札価格が大きく低下している。最近の入札では、kWh当たり2.5インド・ルピー(約4.3円)程度で落札。今月には、日本のソフトバンク、台湾の鴻海、インドのバーティ・エンタープライズの3社の合弁会社であるSBG Cleantechが、ラジャスタン州の太陽光発電入札で、2.44円(約4.2円)で落札し、インド史上最安価格をマークした。  また、連邦政府も今後の発電所増強計画で、石炭火力発電から再生可能エネルギーへのシフトを鮮明にしており、現在もピユシュ・ゴーヤル連邦政府エネルギー大臣の強いリーダーシップで同政策が推進されている。 【参考】【インド】政府、今後10年間の国家電力計画案を公表。石炭火力発電の新設をゼロに(2016年12月31日)  その結果、輸入石炭を用いた石炭火力発電が割高になっており、経済的にも石炭火力発電を推進するメリットがなくなってきている。インドでは、州によってはすでに電力余剰のところもあり、各州は割高な電源を自前で開発するより、市場を通じた他州からの電力購入に活路を見出すところも出てきた。そのため、現時点で稼働している石炭火力発電所も、価格を下げることができなければ、停止に追い込まれる可能性が出てきている。 【参照ページ】IEEFA Asia: India’s Electricity-Sector Transformation Is Happening Now

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【アメリカ】印インフォシス、米国で1万人雇用計画発表。トランプ政権の批判に対応

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 インドIT大手インフォシスは5月2日、今後2年間で米国で1万人の雇用を増やす計画を発表した。インフォシスは、欧米企業からIT関連業務を受託する形で急成長を遂げており、現在世界で20万人を雇用している。一方米国トランプ政権は目下、IT受託企業が米国国民の職を奪っていると強く批判しており、インフォシスは米国内での雇用を増やすことを表明することで、批判をかわそうとしている。  インフォシスは今後、米国内に、人工知能、機械学習、ユーザーエクスペリエンス、最先端デジタル技術、クラウド、ビッグデータなどの分野の技術開発センターを4ヶ所設置する。最初のセンターは今年8月にインディアナ州で開設される予定で、同センターで2021年までに2,000人を雇用する。  同社は発表の中で、過去3年間でシリコンバレーでのイノベーションセンター開設に注力してきたことや、2015年から同社の米国財団を通じて生徒約13万人、生徒約2,500人に対してIT教育を実施してきたことなどもアピール。米国での雇用環境の改善に努めて来ていると理解を求めている。  インフォシスが米国内での雇用を増強する中で懸念されるのは、人件費の高騰だ。これまでインフォシスは、インドという人件費メリットを活かし、欧米から仕事を取ってきていたが、米国内での事業遂行は人件費が上昇し、競争力が下がりかねない。インフォシスはこの点について、顧客である米国の金融機関、製造業、小売企業、エネルギー企業と近い場所でシステム開発を進めることで、今まで以上に的確に需要を掴めるというメリットを強調した。 【参照ページ】Infosys to Hire 10,000 American Workers Over the Next Two Years and Establish Four Technology and Innovation Hubs in the United States

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【インド】風力発電買取価格、FITから入札へ移行の展望。風力発電関連事業者に動揺広がる

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 インドで風力発電の買取価格が大きく減少していきそうだ。インド政府は、「2020年までに175MWの再生可能エネルギー導入」を掲げており、再生可能エネルギーの拡大と同時に再生可能エネルギーのコストを削減していく方針を定めており、今年から風力発電の買取制度を、固定価格買取制度(FIT)から入札オークション制度に変更しようとしており、2月に実施された初回の入札では、各州の従来の固定買取価格を大きく下回る結果となった。ブルームバーグが3月29日報じた。  現在、インドの電力公社は、FIT制度のもとで長期的な風力発電電力の購入計画を結んでいるが、今回入札で価格下がる結果となったことで、既存の長期購入契約そのものを見直す動きが出る可能性が出てきた。既存の契約が破棄され、低い価格での購入計画に切り替わると、FIT買取価格を基にして事業計画を立ててきた再生可能エネルギー発電事業者にとっては大きな痛手となる。当面は、過去のFIT買取価格での売買が維持されるという見通しもあるが、連邦政府はこの件に対し立場を明確にはしていない。  連邦政府の政策について予見できない状況になっていることで、再生可能エネルギー電力事業の幅広い関係者には動揺が広がっている。インド連邦政府は、2022年までに風力発電の設備容量を現在の29GWから66GWに拡大する計画を打ち上げていることもあり、インドでは風力発電の設備メーカーが多く、世界的に大きな存在感を示している企業も少なくない。ブルームバーグによると、インドの再生可能エネルギー事業者ReGen Powertechや、風力発電設備メーカーSuzlon Energy、ガメサ、Inox Wind、Tecnologicaなどが大きな影響を受けそうだという。 【参照ページ】Wind Developers at Risk as India Copes With Dual Payment System

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