国連環境計画(UNEP)は11月2日、気候変動適応に関する年次報告書「適応ギャップ報告書」の2023年版を発行。発展途上国での適応資金需要は、前回推定値から50%以上増加し、2021年の国際的な公的資金フローの10倍から18倍にもなると発表。資金不足に警鐘を鳴らした。
同報告書では、発展途上国での今後10年間の気候変動適応コストは、年間で概ね2,150億米ドル、レンジで1,350億米ドルから4,150億米ドルと見積もっている。同コストは、気候変動リスクが増すことで、2050年までに顕著に増加すると見通されている。
また、発展途上国の国別削減目標(NDC)や国家適応計画(NAP)で示されている気候変動適応計画の資金需要を算出したところ、今後10年間で年間3,870億米ドルに上ることがわかった。この金額は従来の適応ギャップ報告書で示してきた想定額を大幅に上回っており、発展途上国のGDPの0.6%から1%占める金額となる。2021年の国際的な公的資金フローは210億米ドルにとどまっており、気候変動適応コストとの比較では10倍、資金需要との比較では18倍もの開きがある状況。
一方、発展途上国での気候変動資金フローは、気候変動緩和分野では堅調に増加しているが、適応資金フローは、2021年には252億米ドルを記録したが、2022年には213億米ドルへと減少した。2021年の国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)では、2025年までに400億米ドルにまで伸ばすことが宣言されたが、達成するには2022年から2025年までの間に年成長率16%を実現する必要がある。
同報告書によると、最も気候変動の影響を受けやすい55の経済圏だけでも、過去20年間で5,000億米ドル以上の損失と損害が発生している。これらのコストは、特に強力な緩和策と適応策がない場合、今後数十年で急上昇するという。
反面、沿岸域の洪水に対する適応策に10億米ドル投資するごとに、経済的損害が140億米ドル削減されるという研究結果もある。農業では、年間160億米ドルを投資すれば、気候変動の影響による約7,800万人の飢餓や慢性的な飢餓を防ぐことができる。
【参照ページ】As climate impacts accelerate, finance gap for adaptation efforts at least 50% bigger than thought
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