生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)は8月28日から9月2日まで、第10回総会をドイツのボンで開催。「侵略的外来種とその管理について評価した報告書」の政策決定者向け要約(SPM)を承認し、公表した。
侵略的外来種は、「気候変動」「汚染」「土地利用・土地利用変化」「天然資源利用・搾取」に並び、IPBESが生物多様性喪失の要因として特定している。今回は侵略的外来種に関する科学的な分析結果をまとめた。
【参考】【国際】人間活動により動植物100万種が絶滅危機リスク。気候変動も原因。国際機関IPBES報告(2019年5月14日)
同要約によると、世界には、37,000種以上の外来種が、多くの人間活動によって世界中の地域や生物群に持ち込まれており、控えめに推定して有害な影響を与える「侵略的外来種」が3,500種以上があると特定。生物多様性や生態系に加え、経済や食料・水確保、人間の健康等に対する大きな脅威となっているとした。
侵略的外来種による全世界の年間経済的コストは、2019年には4,230億米ドル(約62兆円)を超え、1970年と比べ4倍以上に拡大。さらに、今後も増加し続けると予測した。
侵略的外来種の全体に占める割合は、外来植物で約6%、外来無脊椎動物で22%、外来脊椎動物で14%、外来微生物で11%。3,500種以上の侵略的外来種のうち、2,300種以上が、先住民の管理下にある土地で見つかっており、先住民の権利も侵害していると指摘した。
同要約では、侵略的外来種は、世界の動植物の絶滅の60%で主要要因となっており、16%は唯一の要因と特定されている。また218種以上の侵略的外来種が1,200以上の地域で的絶滅の原因となっているという。
侵略的外来種の原因となっている人間活動は、意図的なものと非意図的なものの双方があるが、いずれも種を他の生態系に移動させることで発生している。意図的なものには、農業利用、食用、ペット、観賞用、防虫対策用微生物等の形で持ち込まれている。非意図的なものには、貨物に紛れ込んでいたり、船舶のバラスト水に紛れ込んでいたりというものがある。非意図的な原因については水際対策の強化が主要方針となるが、特に意図的な原因については、事業者の努力でリスクを軽減することができる。
その他、第10回総会では、2024年の第11回総会で、「生物多様性と生態系サービスに関する第二次地球規模アセスメント」のスコーピング文書を検討することを決定。2025年の第13回総会までに「生物多様性と自然の寄与のモニタリングに関する方法論アセスメント」、2026年の第14回総会までに「生物多様性が包含された統合的空間計画と生態系の連結性に関する方法論アセスメント」を実施することも決めた。
IPBESでは、科学的評価(アセスメント)以外の活動領域となっているキャパシティビルディング、知見形成、政策立案支援の3つは、公募でメンバーを選出するタスクフォースで実施することとなっている。今回、「キャパシティビルディング」「知識・データマネジメント」「先住民と地域社会の知識体系」「シナリオ・モデル」のタスクフォースの活動内容が承認され、今後活動をサポートする「テクニカル支援機関」のメンバーの公募が始まる。
【参照ページ】Media Release: IPBES Invasive Alien Species Assessment
【参照ページ】IPBES総会第10回会合の結果について
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