国際環境NGO世界資源研究所(WRI)は8月29日、自然を軸としたソリューション(NbS)以外の技術的な二酸化炭素除去(CDR)の技術開発が遅れていることの危機感を表明。学術界やNGOに対し、CDRの必要性を明らかにし、1.5℃目標の達成に向けたアクションを強化することを提言した。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、気候変動目標の達成に向けては、大幅な排出削減を成し遂げた上で、それでも削減しきれない分野についてはNbSとともに、技術的なCDRについても必要とのシミュレーション結果を示している。また、62ヶ国政府が提出した「長期戦略(LTS)」のうち、26ヶ国が技術的CDRに関心を示しており、各国での目標達成でも技術的CDRが不可欠となっている。
WRIは今回、技術的CDRへの関心が、将来の技術が大規模な炭素除去を実現するという誤った安心感を与え、緊急に必要な排出削減への関心を低下させるという懸念があることに言及。それを避けるためには、技術的CDRの必要量を特定する必要があるとした。同時に、公平性(エクイティ)と、正確な測定・報告・検証(MRV)を確保するためには、多くの指針が必要との考えも表明した。
一方、指針が国際的に確立されていないことを課題視。また、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)では、CDRも焦点となることから、早急に指針を整備していく必要があるとした。
具体的提言としては、まず、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、IPCC、アカデミアに対し、排出削減が困難で、CDRによる相殺が必要な分野を特定することを要請した。これにより、排出削減努力を犠牲にせず、必要な量についてのCDRの需要規模を明らかにさせたい考え。またUNFCC事務局は、各国政府に排出削減とCDRでの相殺量の中間目標を個別に設定するよう呼びかけるべきとした。
公平性の確保では、炭素除去の便益と費用の負担を公平に分配することを提言。特に、気候危機を最も引き起こした国々が、これらの技術開発に率先して投資し、コストを下げ、より広く利用されるようリスクを軽減する責務があるとした。そのため、UNFCCC事務局に対し、気候技術センターとネットワークを活用し、 共同研究開発を促進し、キャパシティ・ビルディングを支援することや、国際的な対話の促進を要請。また、ミッション・イノベーション(MI)のCDRミッションやクリーン・エネルギー閣僚会議(CEM)のような機会を活用し、CDRについての議論を深めるべきとした。NGOに対しても、公的所有やコミュニティ所有等の調査を深め、各地域に便益が行き届くような所有スキームを検討すべきとした。
MRVでは、パリ協定第6条のカーボンクレジットの議論を踏まえ、明確なスキームを構築すべきとした。UNFCC事務局に対しては、第6条カーボンクレジットを排出削減とCDRに区別して整理することや、IPCCに対し技術的CDRのインベントリー及び報告のガイダンスを策定するよう求めた。
【参照ページ】Recommendations for Governing Carbon Removal in Long-term Climate Planning
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