国際的な鉄鋼業界気候変動イニシアチブ「世界鉄鋼気候評議会(GSCC)」は8月2日、鉄鋼サプライチェーン上の二酸化炭素排出量算定・報告の国際基準として「Steel Climate Standard(鉄鋼気候基準)」を策定したと発表した。
GSCCは2022年11月、スペインのセルサ・グループ、米コマーシャル・メタルズ、米ニューコア、米スチールダイナミクス、米国再生資源協会(ISRI)、米鉄鋼製造業協会(SMA)の6団体が創設。主に電炉製鉄企業が中心となり、サプライチェーン全体を適切に評価できる二酸化炭素排出量算定手法の策定をミッションとしている。GSCCには現在、創業メンバーの他、35社・機関が加盟している。日本からは東京製鐵と大和工業の2社。
GSCCは、「スライディング・スケール方式」と呼ばれる算定方式を掲げる高炉製鉄企業に対抗する思惑がある。スライディング・スケール方式とは、高炉製鉄で鉄スクラップを原料とする割合に応じ、二酸化炭素排出量が少なくなる計算方式のこと。スライディング・スケール方式は、鉄鋼サステナビリティ国際団体ResponsibleSteelが2022年9月に発表した国際算定基準「ResponsibleSteel International Standard Ver 2.0」で中核的な概念として提唱されている。
【参考】【国際】ResponsibleSteel、鉄鋼業界でのCO2削減目標設定で考慮要件を提言。大手15社が協働(2021年8月4日)
【参考】【国際】ResponsibleSteel、金融大手6社創設のサステナブルSTEEL原則と覚書。製鉄サステナビリティ (2023年2月4日)
これに対し、GSCCは、スライディング・スケール方式がデファクト・スタンダードとなると、製鉄でのカーボンニュートラルでの電炉製鉄側の優位性が損なわれると懸念。スライディング・スケール方式は、「グリーンウォッシュ」になりうるとし、電炉製鉄が正当に評価される算定方式を今回打ち出した形。
GSCCの「The Steel Climate Standard」では、カーボンオフセット及びカーボンインセット、または削減貢献量等を算定に含めることを認めていない。一方、再生可能エネルギー証書(REC)、電力購入契約(PPA)、仮想電力購入契約(vPPA)等を通じた排出量削減は認めている。
また、高炉側のResponsibleSteelは、現状ではスクラップの量が需要に対して不足しているため、高炉製鉄が少なくとも暫くの間は不可欠になると主張しているのに対し、電炉側のGSCCは、スクラップ量は十分に確保できていくと主張している。
二酸化炭素排出量の多い製鉄業界では、以前は環境NGOとの溝が大きかったが、現在では、算定方法の正当性を巡って、環境NGOを自陣営に呼び込む展開となっている。ResponsibleSteelは、「ResponsibleSteel International Standard Ver 2.0」の発表に際し、Ceresやマイティ・アース、The Climate Group(TGC)、We Mean Business等が歓迎したことを敢えて発表している。
【参照ページ】Low-carbon coalition publishes a global steel standard to measure and report carbon emissions
【スタンダード】THE STEEL CLIMATE STANDARD
【参照ページ】Global Civil Society Groups Applaud Launch of New International Standard Defining Sustainably Produced and Sourced Steel
【参照ページ】The ‘Sliding Scale’: Setting Equitable Thresholds to Drive Global Steel Decarbonisation
【スタンダード】ResponsibleSteel International Standard Version 2.0
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