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【EU】WBCSD、デジタル製品パスポート制度で欧州委に提言。4セクターで方向性示す

 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は8月4日、EUのデジタル製品パスポート(DPP)制度に関する提言報告書を発表した。WBCSDは2023年1月、企業向けの報告書を発表しており、今回は欧州委員会への提言をまとめた。

【参考】【EU】WBCSD、デジタル製品パスポート制度で企業に提言。不確実性の高い段階からのアクション開始を(2023年2月2日)

 欧州委員会は、サーキュラーエコノミー化を加速させるため、2022年3月に成立した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」で、DPP制度の導入を盛り込んでおり、2024年に詳細設計の完成目指している。DPPには、原材料の成分や原産地をトラッキングできるようになっており、トラッキング対象には容器・包装も対象となる。また、修理、改修、リサイクル性に関する情報も盛り込まれ、クローズドループ型のサーキュラーエコノミー化を制度面で下支えする考え。

 DPP制度の導入は2027年までに第1弾の製品群で開始予定。優先産業として、エレクトロニクス、自動車、アパレル、プラスチック、建設・建築物、家具、化学の8つを特定しており、これらを含む13以上の産業で2030年までに導入される見通し。

 今回の報告書は、デジタル製品パスポート(DPP)制度が、化学、エレクトロニクス、建設、アパレルの4つのセクターに及ぶす影響を分析したもの。サーキュラーエコノミー戦略には、ステークホルダー内での信頼できる最新データを利用することが必要不可欠だが、利用できるものが現状ほぼない点を課題とした。そこで今回、バリューチェーン全体の様々な立場のステークホルダーと協議し、データ共有ツールに対する関係者の要望や課題をまとめた。

 まず現状認識としては、現在の世界のサーキュラー化された素材の割合は7.2%だが、2018年の9.1%、2020年の8.6%から低下していると報告。DPP制度等のデータ共有ツールは、バリューチェーン全体の関係者が定量的な判断に基づく意思決定を行うことで、プロセスを最適化し、サーキュラーエコノミー化の機会を特定できるポテンシャルが高いと報告した。

 DPP等のデジタル共有ツールに関するセクター共通の課題では、まず、サプライチェーンはEU域外にも広がり複雑であることを挙げた。現在のESPR案では、欧州市場に製品を上市する企業がサプライチェーン全体の報告義務を負い、サプライヤーに対する開示を求める動きへと波及する効果が想定されている。しかし、企業は、二次サプライヤー以降への実効性には懐疑的だとし、報告義務を負う企業を巻き込んだ詳細な制度設計の必要性を訴えた。

 次に、データ共有ツールが報告負担の増加に繋がる可能性を指摘。特に、化学企業のような複数の製品を特定のサプライチェーンで展開するような企業への影響が大きいとし、既存の報告活動を合理化し、定義や計算方法等の規格を統一する必要があるとした。他にも、データの安全性、アクセシビリティ、互換性の確保が必要となることや、データ共有ツールの管理負担が中小企業の参入障壁となり、DPPを実現するリソースのある大企業が優位になることも指摘。欧州委員会がこれらの課題をすでに視野に入れていることにも言及し、大企業と中小企業の公正な競争を高めるための共通の枠組みが必要であるとした。

 セクター別の分析では、化学、エレクトロニクス、建設、アパレルの4つのセクター毎に、バリューチェーン上に存在するデータをマッピング。各ステークホルダーがどのデータを保持し、どのようにデータを受け渡すことでサーキュラーエコノミー実現に向けた業務となるかを概説した。セクター毎の重点分野、DPPのようなツールを活用することによる機会のリストと課題も提示した。

 その他、「DPP等のデータ共有ツールの技術的要件策定時には、複雑なITインフラを検討してきた専門家の経験を有効活用すること」「製品グループへのQRコード発行や類似製品への識別子の付与等については、実用性を考慮するためバリューチェーン上の関係者と協力すること」等を提言した。

【参照ページ】Achieving a circular economy: using data-sharing tools, like the Digital Product Passport

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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