国際海事機関(IMO)は7月7日、第80回海洋環境保護委員会の中で、「IMO温室効果ガス戦略」を改訂した。2050年目標を、2018年制定の「2008年比50%減」から「カーボンニュートラル」へと大幅に引上げた。
今回の目標改訂は、2021年4月に英政府が提唱。同11月には、14ヶ国政府が、2050年までの国際海運カーボンニュートラル目標を支持し、国際海事機関(IMO)との交渉で結束すると宣言していたが、日本政府は不参加だった。2年をかけ、IMOは合意に漕ぎ着けた。
【参考】【国際】国際海事機関、海運業のCO2削減長期目標採択。2050年までに半減(2018年4月19日)
【参考】【国際】英政府、国際海運でのCO2排出量を2050年カーボンニュートラル提唱。IMOでの合意目指す(2021年9月17日)
【参考】【国際】14ヶ国政府、国際海運での2050年カーボンニュートラルで結束。日本は参加せず(2021年11月2日)
今回の改訂では、海運での排出量を「2050年頃までに、つまり2050年近くまでに」カーボンニュートラルにすることを掲げた。
また、中間目標も引上げた。2018年制定目標では、輸送当たりの原単位排出量、2030年までに2008年比40%以上減、2050年までに70%減としていた。新目標では、輸送当たりの原単位を、2030年に2008年比で30%減、2040年には70%以上減、できれば80%とすることでも合意した。さらに、総量排出量でも、2030年までに2008年比で20%以上、できれば30%減、2040年までに同70%減以上減とした。
実現に向けては、船舶の省エネ設計要件を強化するとともに、排出量ゼロあるいはゼロに近い動力、燃料、エネルギー源の利用割合を、2030年までに国際海運全体で使用するエネルギーの5%以上、できれば10%とすることも掲げた。
今回の目標では、国際民間航空機関(ICAO)のCORSIAのように、海運排出量価格設定メカニズムを導入する案も盛り込んだ。今後協議し、最終決定の是非を決定する。同時に、技術要件では、船舶燃料の原単位排出量を段階的に削減することを義務化する政策も検討する。2026年までに最終採択を目指す考えで、最終決定の16ヶ月後に措置を発効させる。
【参考】【国際】ICAO総会、国際線への温室効果ガス排出削減制度で画期的な合意。排出権購入を義務化(2016年10月24日)
今回決定の戦略では、発展途上国に対するキャパシティビルディングと技術支援が必要となることも認識。IMOとしても各プログラムを導入して、発展途上国を支援していく考え。
さらにIMOは別途、海運で発生するプラスチックの削減プロジェクト「PRO-SEAS」も展開中。選考して、国連食糧農業機関(FAO)と連携し実施している「GloLitter Partnerships Project」では、主導的パートナー10カ国と協働し、20カ国を支援。すでにマダガスカルやバヌアツ等7カ国で国家行動計画(NAP)が発表されている。「PRO-SEAS」では、2025年から2029年にかけ、国家行動計画の実行を支援していく。アジア地域では、韓国政府が支援するRegLitterプロジェクトが、2023年から2027年にかけ国家行動計画の実行を支援する。
【参照ページ】Revised GHG reduction strategy for global shipping adopted
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