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【国際】ICGN、機関投資家向けに生物多様性ガイド発行。押さえておくべき5つの専門概念

 コーポレートガバナンス推進の国際機関投資家団体ICGNは5月11日、投資家向けに、生物多様性リスク軽減のためのガイドを発行した。

 ICGNは、1月にも、生物多様性喪失が企業と投資家にもたらす重大かつ直接的なリスクを解説した文書を発行。現在の10大動向と、企業及び投資家の取締役会に対するセルフチェック項目をまとめていた。

10大動向

  1. 昆明-モントリオール生物多様性枠組みの採択
  2. 国連総会でクリーンで健康、かつ持続可能な環境へのアクセスは普遍的人権と宣言する歴史的な決議の採択
  3. 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)
  4. ENCORE等の生物多様性の測定、データ、評価指標、ガイダンス
  5. 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)と生物多様性
  6. Nature Action 100(NA100)
  7. 国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程にエコサイドの罪を追加する提唱運動
  8. 責任ある採掘保証イニシアチブ(IRMA)
  9. サーキュラーエコノミー
  10. プラネタリー・バウンダリーとシステミックレベルの投資

セルフチェック項目

  • 取締役会は、この分野における十分なスキルや専門知識を有しているか、または利用することができるか。もしそうでない場合、取締役会は、関連するビジネス上の専門知識を有する個人を確実に特定し、この種の専門知識の収集を開始する方法を検討しているか。取締役会、役員及び従業員が、この分野の能力を高めるために、どのような研修が必要か。取締役会は、生物多様性リスクに投じた時間や経営資源の妥当性を評価できる状況にあるか。企業は、学習とパフォーマンスを高めるために、関連するネットワークやイニシアティブに参加しているか?この分野における無数の進展を追跡し、適切な行動を確保する責任を負う役職者は明確か。
  • 企業は、潜在的な訴訟を評価するために法務部門を従事させたか?自然の権利やエコサイドという国際犯罪の動向を把握しているか。
  • COP15や2022年の昆明・モントリオール生物多様性枠組みの進展と、それらが事業にどのような影響を与えるかについて、取締役会で議論したか、あるいは議論する予定か。2022年以降のアジェンダに沿った形で、生態系レベル、地域、国際的な生物多様性目標への貢献をどのように説明する予定か。
  • 気候変動に関するガバナンスや情報開示の専門知識やリソースを、生物多様性の問題にどのように適用できるかを検討したか。気候変動と生物多様性を統合し、相互の関連性を考慮した全体的なアプローチをとっているか。例えば、コモンウェルス気候&法イニシアチブや気候ガバナンス・イニシアチブが提供する原則、ガイダンス、トレーニング、専門知識を利用することは可能か。会社は、気候変動、生物多様性の喪失、社会的混乱、低炭素経済への公正な移行との関連性について議論したか。
  • EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に規定されているデューデリジェンスや開示要件を確認しているか。国連ビジネスと人権に関する指導原則、OECDの多国籍企業行動指針、CSRDの要求事項に関連する形で、CSRDがクリーンで健康で持続可能な環境への権利を適用したことでどのような影響を受けるか確認しているか
  • 適切なピアグループに対する報告やパフォーマンスのベンチマーキングを行っているか。生物多様性の測定、データ、指標、分析ツールの開発をウォッチしているか。戦略への情報提供のためにこれらをどのように実施するかを検討し始めたか。生物多様性の喪失への対応を、プラネタリー・バウンダリーとIPBESの生物多様性損失の要因の文脈で検討しているか。NA100から生まれる需要に対応する準備はできているか。
  • ISSBの開示と生物多様性に関する進化する立場にどのように対応する予定か。TNFDのフレームワークの開発を進めているか、および/またはTNFDに準拠した報告を計画しているか。
  • 企業は、依存関係や影響を管理するための戦略やプログラムを構築しているか。優先順位付けが必要な種、生息地、生態系は何か。関連する指標やターゲットは何か。LEAPを活用しているか。金融機関の場合、ENCOREを活用しているか。取締役会は、生物多様性のリスクと戦略を、企業のリスク管理および戦略全体にどの程度統合しているか。バリューチェーン全体における重要な鉱物生産の影響を緩和する方法として、IRMAの潜在的価値を検討したか。生物多様性への影響を軽減する方法として、サーキュラーエコノミーモデルを検討しているか。
  • 取締役会は、生物多様性、気候、人権に関する会社の目標、リスク、方針、全体的な戦略がどのように相互に関連し、潜在的なトレードオフや対立を引き起こすか予期しているか。会社が低炭素経済を計画し、解決策を実施し始めるにあたり、生物多様性への潜在的な影響を考慮したか。会社は、科学的根拠に基づく目標の設定を検討したか。また、その目標を「科学的根拠に基づく自然界の目標」と整合させることを計画しているか。ダッシュボードや地図等、計画を支援し、パフォーマンスを示すための可視化の開発を開始する機会を検討したことがあるか。
  • 事業環境に必要な成果や、適切な行動を妨げている障壁を強調するために、どのように政策立案者と関わっているか。責任ある気候ロビーイングに関するグローバルスタンダード(気候ではなく生物多様性に適用)の指標を参考に、生物多様性の特性に関連したロビー活動 、業界団体への加盟、政策立案を見直すことを検討したか。

 今回のガイドは、1月に発表した文書を補足する役割のもの。機関投資家に対し、生物多様性について精通しておくべき5つの概念を提示した。

  • 平均種数(MSA):ある生態系における在来種の相対的な存在量を、撹乱されていない生態系における存在量と比較して表したもの。MSAが0%の場合、生態系は元の生物多様性を全て失っていることを意味する。MSAが100%であれば、生物多様性が乱されていない元の生態系と同等であることを意味する。
  • 潜在的消失率(PDF):生息地の喪失や劣化につながる資源利用や排出に関連する特定の時間内に、種が絶滅する可能性を示したもの
  • 生物多様性の脅威の軽減と回復(STAR):生物多様性の脅威の軽減と生息地の再生が、絶滅危惧種のために利益をもたらす可能性を評価するもの。投資家や企業が生物多様性保全に貢献することを定量化することができる
  • 企業生物多様性フットプリント(CBF):企業が影響を与え、依存している生態系の劣化にどの程度寄与しているかを測定するためのアプローチ。カーボンフットプリントと類似。
  • 緩和ヒエラルキー:企業や投資家が生物多様性への悪影響を最小限に抑えるための指針。負の影響を回避し、最小化することを重視し、プロジェクトで使用されなくなった場所を再生し、最後に残存するインパクトをオフセットするという優先順位。

 その上で、生物多様性の評価ツールとして、オープンソースのものと、有料のものを紹介。また、機関投資家が加盟できるイニシアチブとして、Finance for Biodiversity(FfB)と金融セクター森林破壊アクション・イニシアチブを紹介した。

【参照ページ】ICGN Biodiversity Action Toolkit

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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