持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の不平等(格差)に対処するためのイニシアチブ「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」は5月3日、不平等是正での企業の役割とアクションをまとめたレポート「不平等への対処」を公表した。
WBCSDは2021年7月、不平等に対処するための新たなイニシアチブ「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」を発足。さらに2022年6月には中間レポートを発表しており、今回の報告書が完成版となる。BCTIの共同議長は、ユニリーバ、ソルベイ、マンパワー・グループ、オーラム・インターナショナル、ITCの各CEOの他、WBCSD、Council for Inclusive Capitalismの両CEOが務めている。
また委員には、フィリップモリス・インターナショナル、エクイノール、ペトロナス、アヤラ、ヴァーレ、エネル、BP、ネステ、インター・イケア・グループ、メルセデス・ベンツ、HSBCアセット・マネジメント、横河電機、タタ・サンズ等が参加。国連グローバル・コンパクト(UNGC)、We Mean Business、JUST Capital、Capitals Coalition、World Benchmarking Alliance(WBA)、Living Wage Foundation、Shift、国際使用者連盟(IOE)、世界食糧計画(WFP)、国際労働組合総連合(ITUC)等の機関も参画し、全体で60人を超える。
【参考】【国際】WBCSD、不平等対処イニシアチブBCTI発足。若年スキル・ミスマッチではUNICEFと共同提言(2021年7月16日)
【参考】【国際】WBCSD、企業に社会格差是正でアクション要請。システミックリスクが増大(2022年6月8日)
同報告書は、過去数十年間に、社会的・経済的格差を拡大させたビジネスモデルや慣行があることを認識。さらに、今日の世界における不平等の高水準かつ構造的な性質がシステミック・リスクとなり、我々の社会と経済に存続的な脅威をもたらすと捉えた。そこで、格差を是正するために、個々の企業がその潜在能力を確実に発揮できるよう、具体的な行動を特定した。具体的には、
- 国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)を実践する
- 必要な製品・サービスをより身近で安価なものにする
- ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)のある職場とバリューチェーンをつくる
- 未来の働き方に対応できる人材を育成する
- 安全・安心で十分な雇用を提供する
- 生活賃金と生活所得を支払い、促進する
- 労働者代表を支援し、尊重する
- 実効性のある公共政策を支持する
- 責任ある税慣行を採用する
- カーボンニュートラルかつネイチャーポジティブへの公正な移行(ジャスト・トランジション)を実現する
同報告書は、不平等の是正が、企業が一連の複合的な業務リスク、風評リスク、規制リスク、財務リスクを軽減するのに役立つと強調。さらに、不平等是正アクションは、ビジネスの持続的な成功のための重要な投資と見なされるべきであり、大きな市場機会を引き出す可能性を持っていると伝えた。
対策面では、コラボレーションとステークホルダー・エンゲージメントの2つを柱に据えた。不平等はシステム的な問題であり、企業が、政府、投資家、NGO等と緊密に連携し、規模に応じた変革を推進することが極めて重要と位置づけた。また企業自身が、直接影響を及ぼすステークホルダー・グループと積極的にエンゲージメントし、彼らの視点をビジネスの意思決定に反映させなければならないとした。
BCTIは今回、「不平等への対処は、道徳的義務であるだけでなく、長期的な経済成長を確保するためのビジネスの必須事項」とのコメントも紹介。今後、ガイダンスやスタンダードを作成しつつ、コラボレーションを推進するためのプラットフォームとしても活動していく予定。
【参照ページ】More than 60 business and civil society leaders recognize inequality as a systemic risk and lay out a roadmap for private sector action
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