国際労働機関(ILO)は4月27日、移民労働者(外国人労働者)の賃金保護に関する新たなガイダンスを発行した。賃金未払や支払遅延等、移民労働者が直面する賃金関連の問題に焦点を当てた。
ILO専門家委員会(CEACR)は以前から、賃金未払と支払遅延は、債務拘束と強制労働につながるおそれがある問題と指摘してきていた。同問題には、退職金の未払、福利厚生の未払、違法な賃金控除、最低賃金未満の賃金支払等も含まれる。
同ガイダンスでは、ILO95号条約では、賃金を定期的に支払うことを義務付けており、日当勤務等の場合は、月に2回以上、給与所得者は毎月支払われるべきとのILO勧告にも言及した。労働契約が終了し場合は、合理的な期間もしくは法定期間内に支払いを終えるべきとした。
賃金控除については、同条約に基づき、法規則や労働協約、仲裁裁定で定められた条件や範囲に限り認められており、さらに内容を労働者自身に事前に通知することが必要と指摘した。特に、採用手数料や関連費用については、控除することが禁止されていることを強調した。その中には、渡航費、医療費、技能・資格試験費等を含む。
ILOは今回、賃金保護に関する規定は、当該国の法規制の如何を問わず、ILO97号条約に加盟している国の国内の全ての労働者に適用され、移民労働者に対しても適用されると伝えた。家事労働者に関しても、国の法規制で敢えて賃金保護の対象から除外している場合もあるが、ILO189号条約に加盟している国には全て適用されるとした。
強制労働に該当する債務拘束リスクでは、建設部門等では、元請企業が下請企業の支払いが遅くなるため、下請企業の労働者への支払が遅延しがちと紹介。同様に、支払サイトが長い業界では、債務拘束が発生しやすいと言及した。
会社が倒産した場合の賃金保護については、ILO95号条約と173号条約に基づき、労働者は賃金債務に関する特権的債権者として扱われることが決まっていると紹介した。
ILOは企業に対し、サプライチェーン上の賃金保護を人権課題として認識し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づき対処していくことを要請した。
【参照ページ】ILO issues wage protection guidance for migrant workers
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