国土交通省は3月29日、企業の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)開示を支援するガイドとして、気候変動物理的リスクの洪水リスクに関する評価手引を発行した。
同ガイドは、洪水リスクの評価フローとして、「現在の洪水リスクの把握」「将来リスクの評価」を実施した上で、将来の洪水リスクの財務的影響がマテリアルと判断した場合に、気候関連情報開示の物理的リスク(急性リスク)として、洪水リスクに関する開示を行う「リスクの開示」の3つのステップを提示した。
現在の洪水リスクの把握では、国内では国土地理院の「浸水ナビ」等、海外では広域洪水ハザードマップの情報を推奨。広域洪水ハザードマップについては、東京大学の「CaMa-Flood」を用い、東京大学、芝浦工業大学、インターリスク総研の共同研究プロジェクト「LaRC-Flood」が開発したハザードマップや、Gaia Vision が開発し公開予定のプロダクトを紹介。同じく、世界資源研究所(WRI)が開発した「Aqueduct Floods Hazard Maps」も紹介した。
将来の洪水リスク評価では、国内では「浸水ナビ」のデータ元となっている洪水浸水想定区域図を紹介。広域洪水ハザードマップでは、現在リスク把握と同様に、「CaMa-Flood」を用いたハザードマップと「Aqueduct Floods Hazard Maps」を紹介した。
リスク評価では、上記のハザードマップ等を活用し影響度を大まかに評価する定性評価を行うことが最初のステップとなる。その上で、財務インパクトの定量評価を行う場合の4つのステップも提示した。
- 評価拠点の現在の浸水深を確認
- 現在の被害・損失額を算定
- 将来の洪水頻度倍率を確認し、対象洪水規模での将来の被害・損害額を推定
- 対象洪水規模における将来のリスク増分を評価
被害・損失額の算定では、国土交通省が作成している「治水経済調査マニュアル(案)」を紹介し、建物被害額と、事業所の営業停止に伴う損失額を合計する算定方法を提示した。建物被害額は、対象資産価格に被害率を乗じて算出する。浸水深毎の被害率も掲載した。営業停止に伴う損失額は、1日あたり売上額・生産額に、浸水深により決まる影響日数を乗じて算出する。浸水深毎の影響日数も掲載した。
また、「将来の洪水頻度倍率を確認し、対象洪水規模での将来の被害・損害額を推定」については、洪水頻度倍率と洪水規模が比例するという考え方を用い、将来の洪水規模(浸水深)を推定するという手法も提示した。その上で、将来の被害・損害額を、確率から想定損害額をかけ合わせた期待値として算出することになるが、期待値算出では、6年ほどのケースで被害・損失額を求め、それらの発生確率を回帰分析してカーブを描き、足し合わせて年間の想定被害・損失額を算定する手法を提示した。
【参照ページ】民間企業の気候関連情報開示におけるリスク評価をサポート
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