国際環境NGO世界自然保護基金(WWF)は6月22日、自然ポジティブ実現に向けた水力発電プロジェクトに関する保険企業向けガイダンスを発表した。
今回の発表は、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)の国連持続可能な保険原則(PSI)の支援を受けて作成されたもの。水力発電が自然に与える影響の大きさと保険会社が果たすべき役割・アクションについて見解を示した。
まず、水力発電所が環境や人権に与える影響について言及。水力発電所の建設により、川の流れやつながりに対して人為的な影響を受けない自由な川は、世界で最も長い河川246の中で3分の1しか残っていない。これが原因となり、1970年以降、淡水生物の個体数が84%減少している。
また、水力発電事業は再生可能エネルギーの中で、地域住民の権利の侵害、移住や生計への損失など人権侵害に関する申し立てが最も多いセクター。ダムによる土砂の巻き上げにより、河床低下や下流の三角州の縮小を引き起こし、海水の侵入による水供給への影響や下流に洪水をもたらす原因となっている。
さらに、水力発電所の建設には、生態系、地域住民や下流へ与える影響の大きさから、メディア、NGO、政府等多くの監視の目を集めるため、関わる保険会社の質も問われる。
水力発電プロジェクトはm複雑で膨大なコストが掛かるプロジェクトであり、保険が適用されないとプロジェクトは進まない。そのため、保険企業は水力発電セクターにおいて重要な役割を担っており、不適切な水力発電プロジェクトを抑止するための行動が必要とした。
保険会社に推奨した7つのアクションは、
- 再生可能エネルギープロジェクトを優遇し、低炭素、低コスト、自然や人と摩擦が少ないエネルギーへの移行の支援
- 水力発電の保険引受および投融資に関する会社独自のESG方針の策定
- 自然保護区内の水力発電プロジェクトの保険対象からの除外
- 独立した信頼できる社会・環境への影響アセスメントの実施確保
- 厳しいフレームワークと基準の適用の要求
- 水力発電プロジェクトの二酸化炭素排出量算出と上限値の設定
- 水力発電への投融資を忌避すべく、具体的な基準を設けた一貫した投融資判断/li>
なお、保険会社が水力発電に関する独自のESG方針を策定するのを支援するため、評価マトリクスも掲載。今後、保険業界からのフィードバックを募り、水力発電に関する保険会社のコミットメントに関するガイダンスを作成していく予定。
【参照ページ】Insuring a Nature Positive World: An insurers' guide to hydropower
【参照ページ】Free-flowing rivers are the freshwater equivalent of wilderness areas.
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