EUは5月2日、運輸・通信・エネルギー閣僚級の臨時EU理事会を開催。ウクライナ戦争でのEUのエネルギー情勢で意見交換を行った。特に、ガスプロムのガス供給停止声明を受け、EUとしての結束を図る考え。
【参考】【ヨーロッパ】ガスプロム、ポーランドとブルガリアへの天然ガス輸出停止声明。代替で北海に熱視線(2022年4月28日)
今回の会合では、ガスの供給保証及び輸送・在庫管理の観点から、欧州委員会が発表した今後数週間から数ヶ月を視野に入れた追加的措置を評価。特にガス備蓄に関する規制対応の調整が急速に進呈していることを歓迎した。
また、EUの化石燃料のロシア依存度を徐々に解消するコミットを再確認。欧州委員会が3月に発表した「REPowerEU」計画で、具体的内容が5月に提示されることについても強い期待感を示した。また、ガスの代替調達先を探す政策でも、EUが一体として交渉する「欧州ガス購入プラットフォーム」を迅速に立ち上げることで合意した。
【参考】【EU】欧州委、ロシアからの化石燃料依存度を2030年前にゼロへ。再エネ・グリーン水素加速(2022年3月9日)
今回の会合では、ロシア経済制裁の対象を拡大し、ロシア産石油の輸入禁止措置についても議論されたとみられている。欧州委員会は、年内までにロシア産石油の段階的廃止を提案した模様だが、加盟国の間では見解は一致できていない。特に、ロシア産石油・ガスの依存度が高いハンガリー政府は同日、欧州委員会がハンガリーの石油輸入能力を制限しようとするのであれば、拒否権を行使すると表明。ハンガリー政府は、ロシア政府との間で、ガス決済をルーブルで行うことにも合意しており、EU内での強硬姿勢を強めている。
【参考】【EU】EU理事会、追加ロシア経済制裁を決定。石炭禁輸等。石油輸入制限も検討開始(2022年4月10日)
EUとハンガリーの関係は、かなりギクシャクしてきている。欧州委員会は4月27日、ハンガリー政府がEUからの補助金を継続的に不正使用としているとし、ハンガリー政府に対する行政手続きを開始。手続きには5ヶ月から9ヶ月かかるとみられているが、両者がスムーズに解決できない場合、欧州委員会は、懲罰的ではないとしながらも、「行政的救済措置」を打ち出す可能性にも言及した。
同事案では、欧州委員会は、ハンガリー政府の公共調達、EU予算の執行、監査、監視と説明責任のプロセス、透明性、不正行為の防止、汚職について懸念を表明し、過去10年以上問題を孕み続けていると主張している。ハンガリー政府は、欧州不正対策局(OLAF)の不正歳出リストで2021年に加盟国中1位。ハンガリー政府の不正は、EUからの補助金の2.2%に及んでおり、EU平均の0.29%より遥かに多い。
欧州委員会は近年、「法の支配」基準の強化を求め、基準を満たさないと判断する場合には、EUからの補助金を凍結・減額する政策を打ち出している。これを不服とするポーランドとハンガリーは、欧州司法裁判所に提訴したが、2月16日に棄却。欧州委員会が勝訴し、今回の措置の実行の道を開いた。
欧州委員会が行政的救済措置をハンガリーに求める場合、EU理事会での採決が必要。採決は、単純多数決ではなく、「特定多数決」方式で、加盟国の55%以上の賛成と、EU総人口の65%以上を占める加盟国の賛成の双方の要件を満たす必要がある。
【参照ページ】Extraordinary Transport, Telecommunications and Energy Council (Energy), 2 May 2022
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