欧州委員会は12月14日、7月に採択した包括的気候産業規制パッケージ「Fit for 55」を補完するため、ジャストトランジション(公正な移行)を実現するための政策ガイダンスを発表した。
【参考】【EU】欧州委、包括的気候産業規制「Fit for 55」採択。国境炭素税も盛り込む。大企業賛同(2021年7月15日)
「Fit for 55」パッケージには、722億ユーロ(約9.4兆円)の社会的気候基金の創設が含まれており、気候変動による産業転換で影響を受ける事業者や地域コミュニティ、消費者の支援を盛り込んでいる。財源は、EU排出量取引制度(EU-ETS)運営からの収益金。今回の示した政策ガイダンスは、2021年末までにEU理事会勧告として加盟国向けに発表するガイダンスの原案。
同ガイダンスでは、グリーントランジションは、EUで2030年までに100万人、2050年までに約200万人の雇用を創出する可能性があると言及。同時に誰一人取り残されないトランジションを実現するため、EU及び加盟国で、将来変化を先取りし、課題に直面する地域、産業、雇用、家計に焦点を当てた支援策を各加盟国に提唱する。
政策の骨子は主に6つ。まず、質の雇用を創出し、既存の雇用の転換を実現しするため、オーダーメイドの雇用創出・転職支援制度を展開。さらに気候変動目標の達成に貢献する企業への金融・市場アクセス強化を支援する。
次に、質の高い教育・訓練への平等なアクセスを支援するための施策。具体的には、労働市場のスキル需要に関する最新情報の開発、グリーントランジションに関連するスキルとコンピテンシーに関する高品質で包括的な教育・訓練の提供、生涯学習(リカレント教育)への成人の参加拡大等。
3つ目は、税制や社会保護制度を支援するための措置。加盟国に対し、気候変動目標に資する事業者への減税措置や、支援金の拡大等を行う。
4つ目は、基礎的サービスへの手頃な価格でのアクセスを支援するための措置。特に、再生可能エネルギー、ゼロ・エミッション・モビリティ、サーキュラーエコノミーに関連したコスト削減を官民の資金を通じて促進する。
5つ目は、各ステークホルダーを積極的に巻き込んだ政策形成。特に科学的根拠を重視しつつ、議論での定義や方法論の一貫性を高めていく。
6つ目は、官民資金の活用。加盟国向けに、EU等からの資金供給を強化。特に提案されている722億ユーロの社会的気候基金を通じて、モビリティや不動産で使用する燃料の排出量取引制度導入によって影響を受ける家庭、交通機関の利用者、零細企業を積極的に支援する。他にも、EUの新型コロナウイルス・パンデミック復興予算「NextGenerationEU」でも、公正移行メカニズム(JTM)と欧州社会基金プラス(ESF+)が用意されており、人材開発支援を中心に2021年から2027年までで993億ユーロ(約130兆円)の予算を供給する。また、復興・レジリエンス・ファシリティ(RRF)に基づきEU加盟国が策定する「復興・レジリエンス計画」でも社会政策が重視されている。
【参照ページ】Commission presents guide for a fair transition towards climate neutrality
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