米環境保護庁(EPA)は7月22日、商業用航空機及び大規模ビジネスジェットに対する二酸化炭素排出量規制を検討すると発表した。具体的な内容は今後詰めるが、導入時期は2028年よりも先とした。
EPAは、前オバマ政権時代の2015年に航空機に対する二酸化炭素排出量規制の導入検討を発表していたが、トランプ政権が誕生した2017年以降は一切検討が進んでこなかった。今回EPAは、規制検討を発表した背景について、国際民間航空機関(ICAO)が採択した二酸化炭素排出量規制を挙げ、国内の航空産業の国際競争力を高めるためと狙いを伝えた。
【参考】【国際】ICAO、CO2オフセット制度CORSIAで報告管理簿リリース。第1フェーズ参加が87ヶ国に(2020年7月5日)
ICAOは、2040年までを視野に、今後航空需要が増加していくことを見越しながらも、航空業界からの総排出量を2020年から横ばいに留めることを目標としている。そのための手段として、2021年から国際線のカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)を有志の国で開始。米国も参加することを決めている。
EPAは今回、ICAOで策定された基準作りには、EPA、米連邦航空局(FAA)、米航空産業が深く関わっており、米国で製造される航空機の75%は海外輸出されていることに言及。国際的な規制を見据えた戦略が必要との考えを示した。
規制導入の時期については、2020年1月1日以降の機体設計かつ2028年1月以降の生産の機体からと述べ、導入は8年も先になる考えを示した。EPAが排出基準を設定し、その後FAAが具体的なルールを策定する。EPAの基準設定の時期も「2028年より前」とのみ述べ、検討に時間をかけることとなった。
一方EPAは同日、EPAの決定に対する再考協議についての自身の権限を大幅に縮小することを決めた。具体的には、EPAの決定に対し、当事者や第三者が提訴できる「環境上訴委員会(EAB)」制度について、EABは原則60日間以内に最終決定を下すことを義務化した。トランプ政権は、EPAの環境規制は、経済活動を阻害すること考えている。
同決定により、EABは訴えに対し十分な検討をすることができなくなり、事実上EPAの決定を覆す能力を制限した。審議延長については、EABは一度だけ60日間の延長が可能。原告側からの延長要請については、1団体当たりにつき一度だけ30日間の延長ができることのみを許容する。これにより、環境NGO等はEPAの決定に対する抗議がしづらくなる。
EAB制度の大幅な変更は、1992年にEABが創設されて以来、今回が初。トランプ政権は、環境規制の権限をEPAから州政府やネイティブ・アメリカン自治区に移譲する政策も進めている。
【参照ページ】EPA Proposes First Greenhouse Gas Emissions Standards for Aircraft
【参照ページ】Trump Administration Finalizes Rule to Streamline and Modernize EPA Permit Process
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