コンサルティング大手KPMGは10月12日、2017年の企業サステナビリティ報告書の分析レポートを発表した。KPMGは2年毎に同様のレポートを発表している。世界大手4,900社のサステナビリティ報告書発行率は、前回2015年の73%から75%に上昇した。
同レポートは、世界49ヶ国の売上上位10社を対象とした「N100」と世界売上上位250社を対象とした「R250」の2つの軸で、2017年度の企業報告状況を分析した。R250対象企業の国別数は、米国75、中国49、日本25、フランス20、ドイツ18、英国10、韓国7、オランダ・イタリア・スイス・ブラジル5、スペイン・ロシア・インド4、オーストラリア3、メキシコ2、その他9ヶ国が1。
R250のサステナビリティ報告書発行率は、2005年には64%だったが、2011年以降は93%前後を推移している。2017年は93%だった。一方、N100対象4,900社の発行率は2005年の41%から2013年には71%に向上。前回2015年は73%、2017年は75%だった。国別では、英国、日本、インド等は99%と高く、フランス、マレーシア、デンマーク、南アフリカ、米国も90%以上に上がってきている。2015年から大きな改善があったのはメキシコで、58%から90%に一気に跳ね上がった。
サステナビリティ関連の非財務情報を財務レポートの中にも記載している企業の割合は、R250では前回の65%から78%に大きくアップ。N100でも56%から60%に向上。非財務情報が財務パフォーマンスに影響を与えると考える企業が増えてきていることがわかる。とりわけこの率が高い国は、インド98%、マレーシア93%、英国92%、南アフリカ91%、台湾88%、デンマーク86%、フランス83%、米国81%。EU、マレーシア、南アフリカ、台湾では、非財務情報開示が法令義務化されており、法令義務化が非財務情報開示を推し進めていることがわかる。
財務レポートとサステナビリティレポートを統合させた統合報告書の発行状況では、R250では15%、N100では10%とまだ浸透してない。しかし国毎で見ると大きな差があり、統合報告書発祥の地である南アフリカでは90%。日本42%、スペイン36%、オランダ26%などが比較的進んでいると言える。日本は、IIRC(国際統合報告評議会)の国際統合報告フレームワークの発表以降、CSR報告コンサルティング会社等が統合報告を大きく宣言した結果、南アフリカに次ぐ発行率となった。
レポート作成ガイドラインでは、GRIスタンダードのリリースがあったものの、最多はGRI G4で88%。GRIスタンダードは10%で、G3も2%あった。
最近注目されている気候変動関連の財務情報開示については、R250では48%が、M100では28%が、報告書の中に記載していた。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が求めるシナリオ分析までやった企業がR250で3%、N100で2%。定量化分析まで実施した企業がR250とN100双方で2%。一方、定性でのインパクト記載を行った企業がR250で76%、N100で63%と圧倒的多数を占めた。国別では、エネルギー転換法173条で気候変動情報開示が義務化されているフランスでは90%。ドイツ61%、英国60%と、欧州勢が高い。米国でも49%。日本は48%だった。
国連持続可能な開発目標(SDGs)に関する内容を盛り込んだ企業は、G250で43%、N100で39%あった。国別ではドイツが83%と牽引。フランス63%、英国60%とこちらも平均を大きく上回った。日本は平均近くの46%だった。
日本企業のサステナビリティ報告書発行率はかねてから非常に高く、今回のレポートでも重要事項をカバーしていることが高く評価されている。一方、内容面や戦略面でのサステナビリティランキングでは、必ずしも上位を採れていない。日本企業の課題は、一定レベルの報告書を作成することから、中身へのと移ってきていると言える。
【レポート】The KPMG Survey of Corporate Responsibility Reporting 2017
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