アサヒグループホールディングス傘下のアサヒグループ食品と三菱ケミカルグループ傘下の三菱ケミカルは9月3日、「パン酵母由来の酵母細胞壁」と有胞子性乳酸菌「Weizmannia coagulans SANK 70258」の組み合わせに関して、腸内環境を改善する効果(シンバイオティクス効果)を確認したと発表した。
グルカンやマンナン等の食物繊維が含まれる酵母細胞壁は、大腸に到達すると腸内細菌の菌の増加に繋がると報告され、一部の腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は、腸内環境を良好にするだけでなく、様々な臓器においてヒトの健康維持に繋がることが示唆されていた。またアサヒグループ食品が行った研究では、酵母細胞壁はin vitro ヒト糞便培養系試験において短鎖脂肪酸の産生を有意に増強したことから、プレバイオティクス(善玉菌を育てる)機能があることも示唆されていた。
さらに三菱ケミカルが開発した有胞子性乳酸菌「Weizmannia coagulans SANK 70258」は、一般的な乳酸菌とは異なり胞子を形成するため、耐熱性、耐酸性、耐糖性に優れ、胃酸で死滅せず、生きたまま腸まで届くことが報告されている。これにより免疫機能の調節、肌の状態の改善等の機能を有する可能性や、ビフィズス菌の増加や腸内腐敗産物の低減、排便回数の増加等のプロバイオティクス(善玉菌を届ける)機能があることが示唆されていた。プレバイオティクスとプロバイオティクスの双方の効果をシンバイオティクスと言う。
これを受け、今回の研究では、Weizmannia coagulans SANK 70258を対象とし、2素材の組み合わせによる相乗効果の有無をヒト糞便を用いたin vitro培養系システムで評価。具体的には、健常者13名から採取した便を培地に混合し、評価サンプルを添加して48時間の嫌気培養を実施した。培養後には、培養液からDNAおよび代謝物質の抽出を行い、腸内フローラおよび短鎖脂肪酸の解析を行った。
研究結果では、酵母細胞壁を添加することにより、培養液中に含まれる短鎖脂肪酸の濃度が、非添加群と比較して有意に高い値を示すことが分かった。また、腸内フローラを調べた結果、酵母細胞壁を添加することにより、多糖分解菌であるB. thetaiotaomicronおよび、酢酸産生菌であるB. faecis、酪酸産生菌であるFaecalibacteriumの存在比が有意に増加した。
この結果より、酵母細胞壁は、多糖分解菌B. thetaiotaomicronを増加させ、酵母細胞壁自身の食物繊維を分解し、その食物繊維が酢酸産生菌B. faecisのエサとなり、酢酸産生を促すこと、さらに酵母細胞壁により増加した酪酸産生菌Faecalibacteriumにより、酢酸が酪酸に変換され、酪酸産生が増加したというメカニズムが推察された。
両社は今後、詳細な機能性、作用機序の解明を目指す。
【参照ページ】「酵母細胞壁」と「有胞子性乳酸菌 (生きて腸まで届く乳酸菌)」の組み合わせで、腸内環境を改善する効果を確認
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら