世界保健機関(WHO)は8月19日、8月14日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」が再宣言されたエムポックスに関し、緊急委員会の第1回会合を開催した。
【参考】【国際】WHO、エムポックスにPHEIC再宣言。新株出現。EUはMVA-BNワクチンをアフリカへ寄付(2024年8月15日)
2024年上期のエムポックス感染症例は、世界全体で5,199件で、そのうちアフリカ地域が36%の1,854件。さらにコンゴ民主協和異国が95%の1,754件を占めている。コンゴ民主共和国では、15,000人以上の臨床症例と500人以上の死亡が報告されており、2023年にコンゴ民主共和国で観測された症例数をすでに上回っている。
コンゴ民主共和国での感染急増は、株クレードIの2つのサブクレードであるクレードIaとクレードIbに関連したアウトブレイクが原因。1980年代にWHOが実施した調査では、クレードIのサル痘による死亡率は約10%で、そのほとんどが小児だった。クレードIaはコンゴ民主共和国の風土病であり、主に小児が罹患し、2024年のデータでは症例致死率は3.6%。クレードIbは、コンゴ民主共和国で出現したエムポックスの新型株で、同国の東部で性的接触によるヒト感染が拡大している模様。
クレードIbは、2023年9月頃に出現したと推測され、最初の症例は2024年。コンゴ民主共和国でのクレードIbクラスター発生は、主に商業性行為や性ワーカーに関連するネットワークで成人が罹患。但し、性接触以外の感染例もみられる。クレード1bの感染は、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダでも確認されている。2024年には、クレードIaが中央アフリカとコンゴ共和国で、クレードIIがカメルーン、コートジボワール、リベリア、ナイジェリア、南アフリカで症例が報告されている。
エムポックスが2022年7月から2023年5月までPHEICが宣言されていたときの流行株はクレードII。クレードIaはクレードIIよりも重症率が高い。クレードIbの重症率の判断は現状では情報が不足している。
現在のリスク評価状況では、コンゴ民主共和国東部とその近隣諸国は「高」、コンゴ民主共和国のうちエムポックスの流行が確認されている地域は「高」、ナイジェリアと西、中央、東アフリカの国々でエムポックスが流行している地域は「中」、その他のアフリカ諸国と世界各国は「中」。
WHOの対策状況では、リスクが高い締約国に対し、WHO緊急時対応基金から145万米ドルを拠出。2種類のワクチンの緊急時使用リスト登録のためのプロセスを開始。ワクチン、治療薬、診断薬への公平なアクセスを促進するためのパートナーや利害関係者との調整も開始。初期費用1,500万米ドルの地域対応計画の策定等も実施済み。抗ウイルス薬テコビリマットへのアクセスに関しては、MEURI(登録されていない実験的治療薬の緊急時監視使用)のプロトコルに基づき、MEURIの使用に関するエビデンスを収集中。
WHOはすでに、国際保健規則(2005年)(IHR)に基づき、恒常的勧告措置を発出している。その上で今回、テドロス・アダノム事務局長は、緊急委員会からの助言に基づき、コンゴ民主共和国、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダを含むエムポックス感染国に限定し、追加となる暫定勧告を発出した。勧告内容には、緊急事態対応体制の整備、サーベイランスの強化、クレード識別のための安価な診断へのアクセス拡大、感染モニタリング、必要かつ可能であればケアセンターでの隔離や在宅ケアの指導、感染拡大防止のための個人防護具の提供、密な場所での感染予防・管理対策と基本的な水・衛生サービスの推進・実施等。渡航や貿易の制限は現段階では検討していない。ワクチン接種に関しては、性的接触者、子ども、保健・医療従事者を含む感染者の接触者を対象とし、過去2週間から4週間の間に感染発生した地域でのアウトブレイク対応において、ワクチン接種を進められる計画策定を開始する。
今回の暫定勧告では、ワンヘルスアプローチに基づき、エムポックスの感染動態、危険因子、感染の社会的・行動的要因、疾病の自然史、新規治療薬や天然痘ワクチンの臨床試験、公衆衛生的介入の有効性について、知識のギャップに対処し、発生時および発生後のエビデンスの創出に投資することも要請した。
暫定勧告の適用は、2025年8月20日までが予定されている。
【参照ページ】First meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the upsurge of mpox 2024
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