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【EU】GHG排出量、2005年比47%減達成。再エネ発電量比率50%。欧州委年次報告

【EU】GHG排出量、2005年比47%減達成。再エネ発電量比率50%。欧州委年次報告 1

https://sustainablejapan.jp/2024/09/15/eu-energy-union-2024/105813

【EU】欧州委、エネルギー政策評価報告書の2024年版を発表。GHG排出量を2005年比で47%削減達成

 欧州委員会は9月11日、EUのエネルギー政策目標達成に向けた進捗状況を評価する年次報告書の2024年版「State of the Energy Union 2024」を発表した。

 同報告書は、欧州グリーンディール政策やREPowerEU等の政策評価と、現状に関して脱炭素化、エネルギー効率、エネルギー安全保障、域内エネルギー市場、研究・イノベーション・競争力の5つの観点での分析結果を報告した。

 EUでは、温室効果ガス排出量の約75%がエネルギーを占める。2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして、欧州委員会は2019年12月、EUの新たな環境・経済・金融政策「EUグリーンディール政策」を発表。EUとして高い環境基準をルール化することで、投資促進と経済競争力、雇用創出の3点を強化することを目的とした。

 2021年5月には、欧州気候法が成立。2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比55%以上削減する目標を策定した。さらに、欧州委員会は2021年7月、同目標を実現するための包括的な気候変動政策パッケージ「Fit for 55」を採択した。

 また、欧州委員会が2023年3月、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、欧州の化石燃料調達で、ロシア依存度を2030年よりかなり前にゼロにする計画「REPowerEU」を発表。その中で、再生可能エネルギー割合の目標を「Fit for 55」で示されていた40%から45%に引き上げた。

【参考】【エネルギー】世界各国の発電供給量割合[2023年版](火力・水力・原子力・再生可能エネルギー)(2024年8月15日)

 同報告書では、まず、Fit for 55関連で立案されたエネルギー、EUの二酸化炭素排出量取引制度(EU-ETS)、土地利用、交通、税制等での主要なEU法をすべて採択したことを報告。2023年4月には、EU-ETS対象セクターでは、温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに2005年比62%の排出削減を法定化。新たに海運がEU-ETSの対象セクターとなった。

【参考】【EU】EU-ETS改革と炭素国境調整メカニズム(CBAM)の関連法成立。CBAMは2026年から(2023年4月27日)

 EU域内のGHG排出量は1990年比で32.55%、2005年比で47%を削減、同期間のEU経済は約67%成長となった。経済成長とGHG排出量削減を切り離し、2030年までに2005年比62%削減目標の達成に向けて順調だと成果を強調した。

 電力、ガス価格は、現在も高止まりしているものの、2022年のピーク時に比べて大幅に減少。ガス需要に関しては、2022年8月から2024年5月までに18%削減し、大幅にガス利用量を削減した。

(出所)欧州委員会

 REPowerEUによる制裁措置によりロシア産のパイプライン及びLNGの輸入量は、2021年にはEU全体のガス輸入量の45%から2024年8月には18%にまで減少。ノルウェーと米国からの輸入が増加し、ノルウェーはEU全体のガス輸入量の34%、米国は18%にまで増加した。REPowerEUの目標達成により、2030年までに350万人以上の雇用が創出される見込み。

 再生可能エネルギーの導入では、2023年には風力発電が16GWが新たに設置。風力発電の発電量はEUで初めてガスによる発電を上回り、原子力発電に次ぐ第2位に浮上。太陽光発電は2022年の40GWから増加し、2023年の新規設備容量は56GW増加した。2024年上半期のEUの発電量における再生可能エネルギーのシェアは50%となった。

(出所)欧州委員会

 同報告書では、クリーンエネルギーへの移行は安全で競争力のある安価なエネルギーを確保、EU域内の産業と質の高い雇用の維持につながり、欧州の経済安全保障の鍵となると主張。ネットゼロに関する市場は2030年までに3倍に拡大し、年間約6,000億ユーロ(約103兆円)に達する見込み。
 
 欧州委員会は2023年3月、グリーンディール産業計画の一環として、「ネットゼロ産業法」を制定する政策を発表した。国内生産を政策として掲げた米国のインフレ抑制法に同調する措置となる。

【参考】【EU】欧州委、ネットゼロ産業法と重要原材料規則を制定へ。域内生産やリサイクル強化(2023年3月17日)
【参考】【EU】ネットゼロ産業法、改正エコデザイン規則、成立。デジタル製品パスポート等(2024年5月29日)

 同法案は、2030年までに、エネルギーのカーボンニュートラル化に必要な機器や設備の40%以上をEU域内で生産することを法定目標として掲げるもの。対象分野は、太陽光発電と太陽熱発電、陸上風力発電と洋上再生可能発電、バッテリーとストレージ、ヒートポンプと地熱エネルギー、電解槽、燃料電池、バイオガス/バイオメタン、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、グリッド技術、持続可能な代替燃料技術、燃料サイクルからの廃棄物を最小限に抑えて原子力プロセスからエネルギーを生産する先進技術、小型モジュール炉(SMR)、その他、関連ベストインクラス燃料。

 同法案では法定目標を達成するための施策も打ち出しており、水素関連の事業者が銀行から資金調達をしやすくする欧州水素銀行、人材開発のためのネットゼロ産業アカデミー、EUの重要原材料サプライチェーンの多様化と弾力性の強化を図るための重要原材料規則、EUレベルでのガスの共同購入制度「EUエネルギー・プラットフォーム」の推進、小型モジュール炉(SMR)に関する産業連盟の発足等、各方面での施策が進められている。

【参考】【EU】欧州委、再生可能水素オークションの入札基準発表。RFNBOに限定。11月23日開始(2023年9月20日)
【参考】【EU・日本】日EU両政府、重要鉱物代替等で政策対話強化。共同研究プラットフォーム構築目指す(2024年4月3日)
【参考】【EU】欧州委、ガス共同購入制度で第1回の需要登録開始。5月2日まで(2023年4月26日)
【参考】【EU】欧州委、2040年CO2を1990年比90%減提案。今後EU加盟国との協議(2024年2月8日)

 欧州委員会は2024年2月、EUで2050年カーボンニュートラルを達成するためのロードマップに関する詳細な影響評価結果を発表。それに基づき、2040年までに二酸化炭素排出量を1990年比で90%削減する必要があると勧告した。今後、EU加盟国を含め、全てのステークホルダーとの協議を開始する。

【参考】【EU】欧州委、2040年CO2を1990年比90%減提案。今後EU加盟国との協議(2024年2月8日)

 2024年7月には、欧州委員会委員長にウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が再任。カーボンニュートラル化と産業成長を推進するための新たなクリーン産業ディール政策、イノベーションを促進するための欧州競争力基金等の主要政策を発表。

 気候変動適応のための農業計画や、女性の権利に関するロードマップも提案。若年層のウェルビーイングに向け、エラスムス+プログラム、メンタルヘルス・依存症を含むスクリーンタイムやSNSに関する問題への対策も強調した。

【参考】【EU】欧州議会、フォン・デア・ライエン欧州委員長を再任。欧州議会議長も現職再任(2024年7月19日)

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