機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+(CA100+)は1月30日、石油・ガス企業向けのネットゼロ・スタンダード(NZS O&G)の評価対象企業10社の評価結果を同イニシアチブに加盟している機関投資家のみに公表した。2023年11月に対象企業10社を発表していた。
【参考】【国際】CA100+、石油・ガス企業評価対象10社公表。エクソンモービル、BP等(2023年11月25日)
対象企業は、エクソンモービル(米国)、シェル(英国)、シェブロン(米国)、トタルエナジーズ(フランス)、コノコフィリップス(米国)、BP(英国)、オクシデンタル・ペトロリウム(米国)、Eni(イタリア)、レプソル(スペイン)、Suncor Energy(カナダ)。
同調査結果は、機関投資家の企業エンゲージメントの優先順位や、個々の企業に対するエスカレーション戦略について情報を提供し、支援することを目的としている。CA100+は、今回の結果が、有価証券の取得、保有、売却、議決権行使に関し、なんら義務的な要求をもたらすものではないことを強調した。また評価結果は2024年第1四半期の後半に公開される予定。
一方で、JPモルガン・アセット・マネジメントとステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は2月15日、CA100+からの脱退を表明した。JPモルガン・アセット・マネジメントは、単独で十分なエンゲージメント能力を有しているため、独自にエンゲージメントを行うと理由を表明。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、CA100+が2023年6月に開始した第2期の活動が、議決権行使やエンゲージメントの基準を加盟機関に求めるものとなっており、歩調が合わなくなったという見解を示している。
【参考】【国際】CA100+、第2期活動発表。三菱重工が対象追加指定。開示から行動に軸足転換(2023年6月10日)
またブラックロックも2月15日、CA100+の加盟主体を、米国事業部門から海外事業担当部門のブラックロック・インターナショナルに移すことを表明した。同社は、今回の主体移行の背景として、米共和党の反ESG政治運動があることを匂わせた。欧州の複数のアセットオーナーからは、ブラックロック・インターナショナルが加盟存続を決めたことを歓迎する声明を発表している。一方、民主党の政治力の強いのニューヨーク市財務長官からは、今回ブラックロックの米国法人を含め3社が脱退したことを非難する声明を出した。今後3社の脱退を受け、米国の公的年金基金から3社へのマンデートを見直す動きも出てきそうだ。
JPモルガン・アセット・マネジメント、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、ブラックロックの3社は、2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする運用会社のイニシアチブ「Net Zero Asset Managers(NZAM)」への加盟は続けている。
さらにピムコも2月20日、CA100+からの脱退を表明。ピムコの方針と整合しないことを理由に挙げ、独自のエンゲージメントを実施していくことを表明した。また英紙ロイターの報道によると、フィデリティ・インベストメンツ、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)、フランクリン・テンプルトンの3社も脱退を検討しているとみられる。
米国では、反ESG政治運動からの訴訟が複数始まっている。さらに2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領の勢いが増してきていることを受け、共和党側との折り合いの付け方が難しくなってきている。米国での大幅な政治分断が、巨大な社会・経済リスクになってきている。
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