14ヶ国が加盟するインド太平洋経済枠組み(IPEF)は11月14日、米サンフランシスコで第2回閣僚級会合を開催。5月の閣僚級会合で妥結したサプライチェーン分野について、「IPEFサプライチェーン協定」を締結した。
【参考】【国際】バイデン大統領、「インド太平洋経済枠組み」正式発足。13ヶ国加盟。ESG的価値観(2022年5月24日)
IPEFの現在の加盟国は、米国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、フィジーの14ヶ国。「貿易」「サプライチェーン」「クリーンエコノミー」「税制・腐敗防止」の4分野を協定締結分野として設定している。
今回の会合は、IPEFの第7回交渉会合の位置づけ。第1回交渉会合を2022年12月10日から12日までオーストラリアのブリスベンで開催。その後、第1回交渉会合後半として、2023年2月8日から11日までインドのニューデリーで開催され、「サプライチェーン」「クリーンエコノミー」「公正な経済(税制・腐敗防止)」の特別交渉会合を実施した。第2回会合は3月13日から19日までインドネシアのバリで実施し、第3回会合は5月8日から15日までシンガポールで行われた。その後、第1回閣僚会合が5月27日に米ミシガン州デトロイトで開催され、そこでIPEFサプライチェーン協定交渉が妥結に至った。
第4回交渉会合は、2023年7月9日から15日まで韓国の釜山で、第5回交渉会合は9月10日から16日までタイのバンコクで、第6回交渉会合は10月15日から24日までマレーシアのクアラルンプールで開かれ、第7回交渉会合は、今回の第2回閣僚級会合の直前に、11月5日から12日まで米サンフランシスコで行われていた。
今回締結されたIPEFサプライチェーン協定では、サプライチェーンの強靱性、効率性、生産性、サステナビリティ、透明性、多様化、安全性、公正性、インクルージョンに影響を及ぼす貿易に対する障害を生じさせる不必要な制限又は阻害を最小化することにコミット。特に強調されたのが、労働者の権利に関するものとなった。
同協定では、「労働者の権利」を、国際労働機関(ILO)が中核労働基準として掲げる「結社の自由」「強制労働」「児童労働」「差別撤廃」「労働安全衛生」の5つのテーマに加え、法定最低賃金と労働時間基に関する労働条件まで含めると定義している。すなわち国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)の「人権」概念とほぼ一致する。その上で、サプライチェーンの強靭性を図る上で、労働者の権利を尊重し、継続的に企業だけでなく代表的な労働者団体と協議することも求めている。同協定に基づき創設される委員会では、労働者の権利に関する懸念や勧告について検討する権限も持つ。
さらに、労働者の権利を高水準で設定する企業に対するインセンティブ付与や、政府として労働者の権利を促進する技術援助及びキャパシティビルディングを促進することも盛り込んだ。
また、サプライチェーンでの安全保障リスク対策についても規定している。IPEF加盟国は、政府、企業、労働者団体、アカデミア、NGO等のステークホルダーと協議した上で、自国の重要分野または重要物品を特定しなければならない。その際に考慮できる事項としては、自国の安全保障や公衆衛生及び経済の広範な混乱、特定の国や供給者に対する依存度、輸送等の地理的要因、輸入量、国内生産能力、代替の利用可能性や信頼性等を挙げた。対策ではサイバーセキュリティリスク対策も重点分野とした。
特定後は、IPEF理事会を通じて、他の締約国と共有する。但し、当該情報を秘密で指定することもでき、その場合には情報を受領した締約国は秘密にする義務を負う。秘密指定しない場合でも、受領国の法令で開示等が規定されていない場合には同様に秘密にする義務を負う。特定した重要分野や重要物品に関しては、IPEF加盟国間で協力しあえる状況を醸成していく。また、加盟国は、サプライチェーンが途絶している場合又は急迫したサプライチェーンの途絶を予期する場合には、対面又はバーチャル方式でのネットワークの緊急会合を要請することもできる。
直前に行われた第7回交渉会合では、第1の柱「貿易」に合意が見送られた。一方、第3の柱「クリーンエコノミー」と第4の柱「税制・腐敗防止」では、進展があった模様。クリーンエコノミーの分野では、新興国のカーボンニュートラル化を支援するIPEF基金を新設することが決定。米国、日本、オーストラリアが約1,000万ドル(約15億円)ずつを拠出する予定。
【参考】上川外務大臣のインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合への出席
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