米連邦政府の下に設置されている米国地球変動研究プログラム(USGCRP)は11月13日、気候変動に関する政策提言の役割を果たす「全米気候評価報告書(National Climate Assessment)」の第5次報告書(NCA5)を発行した。
UNGCRPは、1990年地球変動研究法(Global Change Research Act)に基づき設置された政府機関で、最長でも4年毎以内に連邦議会と連邦政府大統領に対し、地球規模の変動を報告することが義務付けられている。第1次報告書(NCA1)は1990年に発行。その後、NCA2が2009年、NCA3が2014年、前回のNCA4は第1版が2017年、第2版が2018年に発行されいた。NCA4はトランプ前政権中の発行となり、トランプ大統領は当時、NCA4をざっくり読んだが内容は信じていないと表明していた。
今回のNCA5はバイデン政権になって初のNCAとなる。同報告書は、豪雨、旱魃、洪水、山火事、ハリケーン等の気候関連の異常気象が、いまだ急速に強まっており、米国に毎年1,500億米ドル(約26兆円)以上の損害をもたらしていると伝えた。特に、低所得コミュニティに大きな損害が出ているとした。1980年代には4カ月に1度起きていた10億米ドル規模の災害が、最近では平均して約3週間ごとに起きている状況にある。
気候変動緩和では、米国では人口とGDPが増加しているにもかかわらず、米国の二酸化炭素排出量は減少していると指摘。さらに、バイデン大統領の政策により、全米でクリーンエネルギーの雇用が増加しながら、2030年までに排出量を半減させる道を歩んでいるとした。但し、1.5℃目標を達成するには、風力発電や太陽光発電の設備容量を増やす等、現在利用可能で費用対効果の高い排出削減オプションを広く実施した上で、大気中から炭素を除去する技術や方法を急速に拡大していく必要があるとした。
NCA5では、初めて「社会システムと正義」の章も設けられ、気候変動緩和や適応に起因した移住やエネルギー転換について、経済格差を考慮しながら勧めていく必要があることを論じた。NCA5では、公正な移行(ジャスト・トランジション)にも重きを置き、負担の大きいコミュニティへの影響を軽減し、十分なサービスを受けていないコミュニティへの資源を増やし、多様な世界観、文化、経験、能力を緩和策と適応策に統合することが必要であるとした。
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Releases Fifth National Climate Assessment and Announces More Than $6 Billion to Strengthen Climate Resilience Across the Country
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