米ESG投資推進NGOのCeresは11月7日、食品企業が農業セクターでイノベーションを推進するための方法についてまとめた報告書を発表した。
今回の発表は、ゼネラル・ミルズ、タイソン・フーズ等の食品大手の二酸化炭素排出量削減に向けた農業に関するイノベーションの活用方法に関して具体的な事例を報告したもの。農業セクターは世界の二酸化炭素排出量のうち約3分の1を占める。既存の農法では1.5℃目標を達成するために必要な二酸化炭素の排出削減量の20%程度しか削減できないとされており、イノベーションの促進が重要となる。
Ceresが運営する機関投資家の集団的エンゲージメント・イニシアチブ「Food Emissions 50」は2023年5月、同イニシアチブに加盟する企業を対象に初のベンチマークを実施。対象となった27社のうち気候変動関連の研究開発に投資をしている企業は9社、企業成長、イノベーション戦略、二酸化炭素排出量削減を整合させた事業戦略を開示している企業は2社しかなかった。
同報告書は、企業が農業セクターのイノベーションを加速させるために実行できる戦略として「即時導入が可能なソリューションへのインセンティブ」と「新たなイノベーションへの投資」の2つを挙げた。即時導入が可能なソリューションへのインセンティブでは、実績ある既存のソリューションをサプライチェーンに導入するために、これらの解決策を採用していない農家とパイロットテストを行い、財政面、技術面での支援を行うことで推進可能だとした。
(出所)Ceres
新たなイノベーションへの投資では、まず、アドボカシーとコラボレーション戦略を挙げた。イノベーションのためには研究開発への投資が極めて重要だが、コストや時間がかかりすぎることも多い。そのため、公的研究機関との連携、官民パートナーシップ、規制改革支援、セクター全体でのコラボレーション等を行うことでリスクを軽減できるとした。
次に、有望なソリューションに対しての継続的な投資が必要だとした。初期の研究開発で一定の成果が出ていても、継続した研究開発や実証試験が必要となる。有望なイノベーションに対して、ベンチャーキャピタル、社内の研究開発部門、官民パートナーシップでの投資等を行うことで支援することが可能となる。また、自社のサプライチェーン内でのパイロットテストを行うことで更に技術発展に貢献できるとした。
同報告書では、世界の食品企業が取り組むイノベーションの事例も紹介。牛から出るメタンを補足するウェアラブルデバイス、糞尿のメタン抑制剤、肥料の栄養放出タイミニングをコントロールする高効率な肥料、グリーンアンモニア、メタン排出量を削減する品種、EVトラクター等を紹介した。
【参照ページ】New Ceres report outlines innovative solutions for companies to reduce agricultural emissions
【参照ページ】First analysis of food sector climate transition plans finds much progress is needed by 2030
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