経済産業省とエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は11月8日、海底熱水鉱床開発に関する2回目の総合評価を実施した。前回発表の2018年度から2022年度までの5年間の成果や経済性の評価結果、今後解決すべき課題について整理した。
日本政府は、2023年4月に閣議決定した「海洋基本計画」の中で、海底熱水鉱床に関し、「2020年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトの開始を目指」すとしている。また、経済産業省とJOGMECは、同計画及び2019年策定の「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」に基づき、日本周辺海域での海底熱水鉱床の資源量調査や生産技術の検討を進めている。
JOGMECは、2018年以降、沖縄海域や伊豆・小笠原海域で資源量調査を実施。概略資源量合計5,180.5万tを把握している。新規鉱床発見のための広域調査では、沖縄海域で天美サイト、豊見サイト、梯梧サイト、吾妻サイト、令宝サイト、伊豆・小笠原海域で東青ヶ島鉱床、須美寿リフト中央鉱床の合計7つの海底熱水鉱床を発見した。
(出所)経済産業省
経済性評価では、概略資源量を把握した2つの鉱床を対象とし、採掘量日量5,000tで合計18年間操業したケースを仮定し、これまでに検討してきた生産技術に基づき、現時点での市場価格条件にて経済性を評価。その結果、支出1兆2,259億円に対して収入は1兆1,421億円との算定結果となった。経済産業省は、「生産システムの改良や操業の効率化により生産コストを削減し、新鉱床発見、生産効率の向上、金属価格の上昇により収入が増加すれば、十分なIRRが確保され、経済性を見出しうると評価」した。
同報告書は、今後の課題の一つとして、環境影響評価(環境アセスメント)を挙げており、長期間の流況を反映した流動場の作成方法の検討及び粒子追跡モデルへの適用と、生物多様性を保全するために保護すべき範囲の設定の2つを記載している。
国際法上、公海上の海底のことを「深海底」と呼び、排他的経済水域(EEZ)内の海底と区別する概念がある。しかし、地理区分として水深200mから6,500mの海底を「深海底」と呼ぶことも多い。日本の海底熱水鉱床は概ね地理区分として「深海底」に該当する。
国連環境計画(UNEP)は、地理区分としての深海底での資源開発について、持続可能なブルーエコノミー原則に反するとの見解を発表。他のG7諸国でも、深海底資源開発を禁止する動きが出てきている。この分野でも、日本政府の政策舵取りに暗雲が立ち込めている。
【参考】【国際】UNEP、深海底資源開発に全面ノー。持続可能なブルーエコノミー原則に反する(2022年6月6日)
【参考】【国際】ドイツ政府、深海底資源開発の凍結宣言。他国にも要請。新たな政治フェーズに(2022年11月3日)
【参考】【フランス】マクロン大統領、深海底資源開発に「No」。深海底探査はOK。議論白熱(2022年11月15日)
【参考】【アメリカ】海底資源採掘は海洋生態系と人間生活に悪影響。論文発表。連邦と州で禁止立法進む(2023年8月16日)
【参照ページ】海底熱水鉱床開発に関する総合評価を実施しました
【画像】JOGMEC
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