世界経済フォーラム(WEF)事務局が主導する「CEO気候リーダーズ同盟(Alliance of CEO Climate Leaders)」は11月8日、1.5℃目標を達成するために必要なアクションに関して分析した報告書を発表した。同イニシアチブには、世界大手120社以上のCEOが参画している。
CEO気候リーダーズ同盟は2023年10月、化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーや二酸化炭素除去(CDR)の大規模な拡大を求めた公開書簡を発表。同報告書は、それを受け、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に向けてボストンコンサルティンググループ(BCG)と共同で作成された。
同報告書は、1.5℃目標を達成するためには2030年まで年間7%ずつ二酸化炭素排出量を削減する必要があり、大胆な行動変革の必要性を訴えた。現時点で、各国のネットゼロ目標がカバーする世界の二酸化炭素排出量の割合は80%を超えている。しかし、2050年までの1.5℃目標を達成するために必要なネットゼロ目標でカバーされているのは世界の二酸化炭素排出量の3分の1しかなく、1.5℃目標の上限に合わせた国別削減目標(NDC)が設定されている二酸化炭素排出量も20%しかない。
企業においても2020年末から2023年8月までに、科学的根拠に基づく目標イニシアティブ(SBTi)へのコミットメントを宣言した企業は6倍に増加したが、世界の大企業1,000社で見るとSBTiの目標設定をした企業は20%以下、40%近くがそもそもネットゼロ目標を設定していない。
また、ネットゼロ目標を達成するために必要なグリーンテクノロジーの大半は既存技術として存在しているが、世界の二酸化炭素排出量の約55%しかカバーできていないと報告。水素、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、二酸化炭素除去(CDR)の技術は開発の初期段階にあり、規模拡大が遅すぎると指摘。前例のないレベルで拡大を加速させる必要性を訴えた。
規模拡大が遅れている原因として必要な技術への投資額の低さを挙げた。バイオ燃料、水素、持続可能な航空燃料(SAF)、CCUS、バッテリーへの投資総額は、世界の気候変動緩和資金の2%しかない。低所得国と高所得国への投資額の差も約2倍あり、必要な技術や地域への適切な投資の実行が必要だとした。
同報告書では、1.5℃目標の達成に向けて複数の短期的な優先事項を提示した。
- 各国のより大胆で迅速なコミットメントと行動の促進
- カーボンプライシングと国境炭素税を導入し、自然、農業、食料での行動支援
- 様々な許認可に関わる時間の短縮、サプライチェーンのリスク、スキル不足等の課題の解決
- 企業のより野心的な目標設定とサプライチェーン全体の透明性を高めることへのアクションの促進
- インパクトの大きい技術や必要なインフラの大規模な拡大に向けてインセンティブの強化
- 野心的な気候変動への緩和策の実行を条件に、グローバル・サウス向けの気候変動資金の調達
【参照ページ】Climate CEO Alliance: Cut Global Emissions 7% Annually to 2030 to Maintain Paris-Agreed Global Warming Limit
【参照ページ】Alliance of CEO Climate Leaders share open letter to world leaders for COP28
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