英国でレベルアップ再生法が成立した。英国で社会不安となっている住宅供給に関し、抜本的な対策を講ずる。
「レベルアップ」は、2019年に保守党のマニフェストの中で初めて登場した政策で、英国の豊かさがロンドンを中心とした南東部に偏在していることを問題視し、各地域の活性化を目指している。その一環で、2021年には「住宅・コミュニティ・地方自治省」を「レベルアップ・住宅・コミュニティ省」に改称。2023年2月には「レベルアップ白書」を発表し、通信網、鉄道網、雇用、人材育成等の包括的な強化分野を提示した。住宅対策もその一環として進められており、政府として100万戸の住宅供給を実現するという目標を掲げている。
【参考】【イギリス】企業と社会的企業を巡る議論続く。英政府は社会課題対応の新政策「レベルアップ」提示(2022年2月13日)
【参考】【イギリス】政府、コミュニティ主導型住宅建設で4.6億円補助。1200戸。レベルアップ政策の一環(2022年4月16日)
住宅分野では、レベルアップ・住宅・コミュニティ省は7月、「レベルアップ白書」で示されたイングランド地方の20の町と都市を再生するというコミットメントを達成するため、ケンブリッジ、ロンドン中心部、リーズ中心部の3地区での再生計画を掲げている。その前には、シェフィールドやウォルバーハンプトン等の地方都市の再生計画や、バローを北部の新たな中心都市として位置づける政策も打ち出している。
また7月の発表では、住宅需要の高い地域での未利用土地に住宅を建設できるようにするための改革パッケージも示している。これにより、特に都市部での住宅需給逼迫状況を緩和し、住宅価格や賃料を押し下げる考え。具体的には、新たな開発許可権制度を設け、大型デパートや店舗上部のスペース、オフィススペースを住宅に転用できるようにする。また住宅建設を阻害している各々の要因についても、一つ一つ対処していく。
今回制定されたレベルアップ再生法は、住宅建設の長期計画の中核をなす法律。地域計画の策定に関し、住宅の建設場所や外観を定めるデザインコードの制定を義務付け、地域に適した方法での住宅供給を実現する。また、開発事業者に重要なインフラの整備も義務付け、学校、医院、公共施設を開発事業者が提供できるようにする。詳細は後日発表する。
また、地方議会に空き家に対する市税を引上げる権限を与え、正当化される場合には「希望価格」を削除し、強制購入命令時の補償金額についても是正する。さらに、地方議会が地主と直接協力し、ハイストリートの賃貸オークションを通じ、空きビルを地元企業やコミュニティグループが再利用できる権限を地方議会に付与。また、地方自治体がホテル等に屋外席の使用許可を与えるまでの時間を短縮する。
加えて同法は、土地開発での環境アセスメントを任意に調整する権限も認めており、EU時代から継続されてきた制度を改革する。
【参照ページ】New laws to speed up planning, build homes and level up
【参照ページ】Levelling Up the United Kingdom
【参照ページ】Long-term plan for housing
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