英国で10月26日、エネルギー新法「エネルギー法2023」が成立した。エネルギー安全保障やエネルギー価格高騰に苦しむ中、英政府として、クリーンエネルギー促進や送配電網の強化に関する基本的な方向性を定めた。
【参考】【イギリス】政府、エネルギー安全保障戦略発表。再エネ・次世代原発・水素への転換加速(2022年4月17日)
同法は、再生可能エネルギーに関しては、英国での洋上風力発電プロジェクト開発に関する同意プロセスの簡素化を主軸に据えた。また、送配電網整備では、競争入札制度を導入し、陸上電力ネットワークの競争を促進する。当局として「独立系統運用者兼計画立案者(FSO)」を創設し、英国のエネルギーシステム開発の調整と計画策定と、電力系統の運用の監視を担い、ガス、電力、水素等を一体として所管できる体制に移行する。
また、ガス・電力市場規制局(Ofgem)の権限を強化し、日常的な意思決定の一環としてカーボンニュートラル目標を考慮することや、所管分野を熱供給ネットワークにも拡大することが決まった。過剰な価格設定を抑制する関するルールを整備し、全国50万人の熱供給ネットワーク消費者のためのサービス改善を睨む。OfgemはFSOの業務もサポートする。大規模集落での水素暖房実証も始める。
炭素回収・貯留(CCS)や低炭素水素の分野に民間投資を促進する内容も盛り込んだ。核融合型の原子力発電に関しても、規制を法制化した世界初の国となった。2040年までに核融合発電所のプロトタイプを建設するという英国の目標に向けて前進した。
英政府は、同法により、エネルギーインフラへの民間投資を合計1,000億ポンド(約18兆円)呼び込む考え。また今回の施策を実行することで、エネルギーコストを削減できると見積もっている。削減効果は、送配電網の競争入札導入で2050年までに10億ポンド。競争・市場庁の下にエネルギー網に特化した合併制度を設け、エネルギーインフラ企業の合併を促進し、今後10年で最大4.2億ポンドの削減を見込んだ。
他にも、スマート電力システムの導入で2050年までに年間100億ポンド、ヒートポンプへの投資奨励やスマートメーターの普及等で56億ポンドの削減を見積もっている。
各施策の具体策については、今後二次法で整備する予定。
【参照ページ】New laws passed to bolster energy security and deliver net zero
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