国際エネルギー機関(IEA)は10月24日、世界エネルギー展望をまとめた「世界エネルギー見通し(WEO)」の2023年版を発行した。今後のエネルギー・シナリオを改訂した。
WEO2023では、「現状政策シナリオ(STEPS)」「発表誓約シナリオ(APS)」「ネットゼロ排出量シナリオ(NZE)」の3つを用意。昨年版からアップデートした。
(出所)IEA
過去1年の動向では、化石燃料価格は2022年をピークに下がってきてはいるものの、地政学的リスクも踏まえ依然として見通しは不透明とした。その中でも太陽光発電や電気自動車(EV)のが急速に拡大していることを高く評価。二酸化炭素排出量は依然としてピークアウトしていないものの、1.5℃目標に向けて、良い兆候も出てきているとした。
一方、ウクライナ戦争以降の天然ガス投資の増加により、2025年以降に開始される液化天然ガス(LNG)の新規プロジェクトにより、2030年までに年間2,500億m3を超える新規生産能力が追加される見通し。これは現在の世界のLNG総供給量の約45%に相当する。IEAは、天然ガスの需要が大幅に鈍化していることを踏まえ、今後の供給過剰リスクになる可能性もあると警戒している。
STEPSシナリオでも、2030年までに、石炭、石油、天然ガスの需要はピークアウトする見通しで、エネルギー全体に占める化石燃料の割合も80%横ばいで続いていたものが、2030年には73%にまで減少していくという。但し、化石燃料の需要が高止まりしてしまう可能性もあるとした。化石燃料消費の要因となっている中国での需要も、中国経済が減衰する中で、かつてほど需要は伸びないだろうとした。
またSTEPSシナリオでは、太陽光発電の導入がポテンシャル以下にとどまりると予測。世界は年間で1,200GWの太陽光発電生産能力を持つものの、実際に導入されるのは500GWにとどまるとし、導入に向けた政策や投資を加速させる必要があると伝えた。
NZEシナリオ達成のためには、化石燃料への投資を減らすだけでは不十分で、特に新興国と発展途上国を中心に、クリーンエネルギーへの投資を増やす必要があると指摘した。また、エネルギー価格の高騰が社会的課題となる中、アフォーダビリティ・リスク、電力の安全保障、クリーンエネルギー・サプライチェーンのレジリエンスの3つを重視し、迅速ながらも人間中心で規律のあるエネルギー転換がカギを握るとした。
またNZEシナリオでは、2030年までの重要アクションとして、再生可能エネルギーの設備容量を3倍、省エネ改善速度を現状の2倍の毎年4%、化石燃料上流サプライチェーンでのメタンガス漏出の削減の3つを挙げた。
モビリティでのエネルギーについても、陸上交通では、2050年には、内燃機関自動車が大幅に減少し、電力と水素が大半を占めるになると提示。海運や航空までは、水素燃焼動力のポテンシャルも大きくなると見立てた。
【参照ページ】The energy world is set to change significantly by 2030, based on today’s policy settings alone
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